K148. 市街気温の高精度観測、平塚


著者:近藤純正・近藤昌子・内藤玄一
水平スケール10km程度の地域内における気温の高・低は観測地点の風通しと日当 たりに依存する。この問題について神奈川県平塚市の市街地・住宅地で観測した。 相模湾に面する平塚市では、晴天日の海風は南寄りの風となる。 東西道と南北道に分けて解析する。

晴天日の正午前後の1~3時間平均の気温を観測する。広い公園の気温を基準と して、気温差(=気温-基準気温)を定義する。
①気温は広い道路(空間広さが大きく風通り良好)で低く、狭い道路(空間広さ が小さく風通り不良)で0.5℃程度高い。この傾向は市街上空の風向と道路走向が 異なるとき顕著になり、風向と道路走向がほぼ同じとき弱くなる。
②直射光が路面を占める面積比が概略40%以下では、気温は0.2~0.5℃程度 低くなる。ただし、40%は不確定で今後の観測から確かめたい。 (完成:2017年4月30日)

本ホームページに掲載の内容は著作物である。 内容(新しい結果や方法、アイデアなど)の参考・利用 に際しては”近藤純正ホームページ”からの引用であることを明記のこと。

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更新の記録
2017年4月25日:素案の作成

    目次
        148.1 はじめに
        148.2 観測
        148.3 道路の日向側と日陰側の気温差
        148.4  道幅と気温差の関係
      (a) 東西道
       (b) 南北道
        148.5 道路走向と上空風向の関係による気温差  
        まとめ
        文献               


研究協力機関
平塚市みどり公園・水辺課の了解を得て公園内で気温(基準値)を観測した。


148.1 はじめに

最近、気温観測用の高精度通風筒が市販化された。従来よりも正しい 気温が観測されるようになり、これまでに見えなかった新しい現象がわかり、 自然の理解が進むことになる (「K126.高精度通風式気温計の市販化」; 「K146.高精度気温観測用の横型通風筒」)。

地上気温は、地物を含む地表層の熱物理係数(体積熱容量×熱伝導率)、 蒸発効率、日射に対するアルベド、風速などで決まる。もっとも重要なのは 観測地点の風通し(熱拡散の強さ)と日当たりに依存する。そのため、 当初の気象観測所は「開けた、日当たり良好な場所」に設置されてきた。

前報で述べたように、本研究は日本の地球温暖化量を正しく評価 する目的から始まったものであり、観測所の環境が悪化すると「日だまり効果」 によって平均気温が上昇することなど、観測環境と風速・気温の関係を調べてきた (「K147.市街気温の高精度観測、模型都市」

気象観測所の観測環境が変化した場合、気温の観測値がどのように変化 していくか。これを定量的に明らかにする目的で、本シリーズ研究が始まった。 本研究は、これまでの常識にとらわれることなく、新しい視点から正しい都市 気候を知る目的で、高精度通風式気温計を用いて観測する。

近年深刻化した熱中症対策や快適な都市設計にも役立つものである。

148.2 観測

相模湾に面した平塚市街地はほぼ平坦である。海岸線はほぼ東西に延び、 晴天日の海風は南寄りの風となって内陸へ入る。

相対的に海上気温が低いとき(夏)、海風が内陸へ侵入するにしたがって、 気温は海岸距離とともに上昇し、海岸から約1km範囲内で上昇率が大きい。この ことを考慮して、気温観測は海岸近くを除き、海岸から1~1.5kmの範囲で 行う。

8月の晴天日に観測した気温の海岸距離依存性を示した報告 「K79.都市の地上気温の分布ー新しい視点・解析法」 の図79.4によれば、海岸から1km~1.5km範囲で、気温は0.2℃程度の差が できる。したがって、通常の場合(春、秋)は1km~1.5km範囲内で 気温観測値の代表性の誤差は0.2℃以下と考えてよい。

気温観測の方法
高精度の通風式気温計を自転車のハンドルの軸に固定した伸縮棒の 先端に取り付ける。図148.1はその写真である。自転車を押しながら観測区 間をゆっくり歩き、1~3時間かけて10~20往復する。地上高度1.8mの 気温を観測する。身体からの放熱の影響を受けないように注意する。

自転車の観測
図148.1 自転車に取り付けた高精度通風式気温計、荷かごにデータロガーと 乾電池が積まれている。ファンモータは12V、0.06A、単1乾電池で延べ200~250 時間程度の使用が可能である。

地図平塚
図148.2 平塚市内の地図(東西=2.8km、南北=1.5kmの範囲、上が北)。
赤の横線・縦線は移動観測の範囲、赤丸印は固定観測点を示す(Google マップに 加筆)。

表148.1 道路の一覧表、長さは観測範囲の距離
道路一覧表


図148.2は観測路の地図、表148.1は道路の詳細である。桜ヶ丘と中里およびJT 東側通りは住宅地、平塚駅の北西側と駅南は市街地である。

晴天日中の海風が南寄りであることを考慮して、東西路と南北路に大別する。

東西路では、道路の南部分は日陰面積が多く、北部分は日当たりがよい。 南北路では、道路の東部分では午前中は日陰が多いが午後になると日当たり が良くなる。道路の西部分はこれと逆の関係になる。

自動車が多い道路では、両側の歩道で観測し、その平均値を平均気温とする。 歩道では車道近くを歩く、または車道を移動する。

自動車が少ない道路または自動車通行禁止路(紅谷町)では、道路中央付近を通 って観測した気温を平均気温とする。また、紅谷町では両歩道のみアーケードで あり、両歩道で測ったこともあり、その場合は両測定値の平均値を平均気温と する。

気温の記録と解析
気温は10秒間隔で記録し、30分間(180データ)ごとに平均気温を求め、異常値 など無いか確認したのち、最終的に1~3時間の平均値を1データとする。

広い公園(見附台公園、または桜が丘公園)の気温を基準として、 気温差を次式で定義する。

気温差=気温ー芝地の気温

なお、2017年4月2日の10:30~12:30に見附台公園と桜が丘公園で同時に 観測した気温は、北東~東の風のとき、見附台公園で10.38℃、桜ヶ丘公園で 10.44℃、両地点の差は0.06℃、ほとんど同温と見なしてよい。

広い公園の気温は、その都市を代表する値と見なされる。東京都心部の北の丸 公園の池端の広い芝地、新宿御苑の広い芝地、明治神宮北部の広い芝地、代々木 公園中央広場の気温はほとんど一致し、都心部を代表する。今回も同じことが 確認できた。

注意: 前記したように、平塚では南寄りの風のとき、海岸に近い 「湘南海岸公園」では海風の影響を受けるので、この公園の気温は内陸1~2km の市街部を代表しない。

市街地の状況
図148.3~図148.14は観測した主な道路の写真である。
国道1号線
図148.3 国道1号線。上:西方向を撮影、下:東方向を撮影

見附町
図148.4 見附町の東西路。上:西方向を撮影、下:東方向を撮影

銀座西
図148.5 平塚銀座西の東西路。上:西方向を撮影、下:東方向を撮影

紅谷町
図148.6 紅谷町、歩道はアーケード、歩行者天国。 上:西方向を撮影、下:東方向を撮影

明石町2道
図148.7 明石町の東西路の2つ、東向きに撮影。上:北側の道、下:中央の道

西一番街
図148.8 西一番街。上:東方向を撮影、下:西方向を撮影

伊勢原道
図148.9 伊勢原道。上:北方向を撮影、下:南方向を撮影

プラザロード
図148.10 プラザロード。上:北方向を撮影、下:南方向を撮影

駅南口
図148.11 平塚駅南口の南北路、南方向を撮影。

JT東側道
図148.12 JT東側の南北路、南方向を撮影。

ヱビス通り
図148.13 ヱビス通り。上:北方向を撮影、下:南方向を撮影

代官町交番前
図148.14 代官町交番前、北東から南西方向を撮影。道路幅=36mのうち、東側 の歩道幅は9mある。その9mのうち、車道から1mの定点で観測する(赤矢印)。


148.3 道路の日向側と日陰側の気温差

市街路では、両側に建物が並び路面の一部は日陰となる。東西路では、 道路の南部分に日陰ができる。日陰の占める面積は正午ころに最小になる。

南北路では、道路の西部分は午前中は日向であるが、午後になると日陰の面積が 時間とともに増える。いっぽう、道路の東部分は逆で、午前中は日陰が多いが 正午を過ぎると日向となる。

図148.15は南北路のプラザロード(道幅=32m)の東側歩道(黒丸印)と西側歩道 (赤丸印)で同時に観測した気温差の時間変化である。10:15 (10:00~10:30の平均)の気温差の差(赤丸印と黒丸印の差)は 約0.5℃であるが、時間とともに差は小さくなり、12:15(12:00~12:30の 平均)には気温差は一致している。

プラザロードでは、11:28に太陽が南中(正しくは太陽方位と道の向きが 一致)した。南中時から約50分後に西側歩道と東側歩道の気温差が同じになった (×印と破線を参照)。南中時からの時間遅れは、道路と建物壁面の熱慣性 (体積熱容量×熱伝導率)によるものと考える。

つまり、地表面に入る太陽放射熱は地方時の南中時に最大 になるが、地温・壁面温度を上げるために地中伝導熱は正午の前に最大となり、 地表面温度・気温は正午過ぎに最高となる(「水環境の気象学」の第6章)。

東西歩道の気温差
図148.15 南北路のプラザロードの両歩道の気温差の時間変化。


148.4 道幅と気温差の関係

気温を記録しながら観察していると、ほぼ真っすぐに延びる市街路では、地上風は ビルや建物の谷間に沿うように吹く。建物上空の風向きと道路の方向が大きく 異なる場合、風が建物の壁面で反転したりしながら地上では道路の方向に吹く ようになる。

この状況は、すでに静岡地方気象台の露場で観測している。 静岡地方気象台の露場は、南側には住宅が東西方向に並び、北側には2階建ての 気象台庁舎が東西に長く、東西路の環境にある。

測風塔の風向が東か西のときは露場風向は同じように東か西となるが、測風塔の 風向が南寄り・北寄りのときでも露場風向はいつも東・西となる。 「K61.露場風速の解析ー静岡」の図61.4(上図)に 示されている。

平塚では、晴天日中は海風は南寄りとなるので、空間広さの違い(風通りの 良し悪し)を考慮して、まず、東西路と南北路に大別して解析する。

現実の都市は建築物が不均一で複雑なため、空間広さの評価方法に ついて検討中である。定義通りの計算方法では複雑で実用的でない。今後の多くの 観測結果がまとまる簡易な方法について、諸都市の実態を観察しながら見出 したい。

空間広さはX/hで表される。ここに、X は樹木や建物までの水平距離、hは樹木 や建物の高さである。まっすぐに延びた通常の通りでは、道幅の両側に建物が 並んでおり、X は道幅に比例する。それゆえ、便宜的に道幅を空間広さの 第一近似値に比例する広さとして横軸に選ぶことにする。


(a)東西路
図148.16は東西路で観測した道幅と気温差の関係である。横軸の道幅は 対数目盛で表してある。これまでの研究によって、気温差は空間広さの対数差 に近似的に比例することがその根拠である。

当初の推論「気温差は空間広さの対数差に近似的に比例する」ということ を検証するまでには長い道のりがあった。多数の研究協力者によって多くの論文 が出来上がり、この web site に掲載されている (「K121.空間広さと気温ー”日だまり効果”のまとめ」 )。

図148.16にプロットした観測資料は表148.2の一覧表に示した。平塚沖の 風向・風速は、平塚沖1kmにある海洋観測塔の海面上22mで観測された値である (神奈川県平塚沖波浪等計測データ)。

東西路の道幅と気温差
図148.16 東西路の道幅と気温差の関係、横軸は対数目盛。

表148.2 晴天日における東西路の気温観測表
気温、基準点:広い公園の気温(勾当台公園または桜が丘公園)
気温差、陽:「道路の日向側(東西路では北側)の気温」と「基準点の気温」の差
気温差、影:「道路の日陰側(東西路では南側)の気温」と「基準点の気温」の差
気温差、平均:「日向側と日陰側の平均気温」と「基準点の気温」の差
気温差、陽ー陰:「日向側の気温」ー「日陰側の気温」
平塚沖風向と風速:海岸から沖合1kmの海面上22mの風速
路面直射(%):気温を観測した道路の直射光面積の割合(道路の平均値)
色塗りは市街上空の風向(平塚沖風向)と道路走向がほぼ一致するとき
東西路の気温差観測表


図148.16によれば、気温差は道幅が広い道路で小さく(気温は低く)、 道幅が狭くなるほど大きくなる(気温が高くなる)。この傾向は、これまでに 示してきた「日だまり効果」による気温上昇と同じである。つまり、道幅が 狭くなると、風通しが悪くなり地上付近の熱拡散が弱く、地上気温が高くなる のである。

図中に黒丸印で示したのは、路面の直達光が占める面積が40%以下の(日陰が多い) 道路であり、気温は0.5℃程度低くなっている。この傾向は、森林公園で見出した 木漏れ日率と気温差の関係に似ている。

都市と森林内との違いは、森林公園では木漏れ日率=20%(林床面日射量が林外 の15%)付近であった。木漏れ日率の定義は観測地点の周囲約20m範囲内の木漏 れ日率に対し、都市では直達光の占める面積率は道路の範囲内で定義した。

一方、林内では風はどの方向へも通り抜けることができるのに対し、市街路では 風のほとんどが道路走向の方向へしか通り抜けることができないという違いが ある。これらの違いが、40%と20%の違いとなっている理由の一つであろう。

注意:市街路における「40%以下」は少ない観測による暫定値であり、 今後の観測から訂正される可能性がある。

次の「林床の木漏れ日率と林内の見通し(詳細)」 をクリックして参照し、ブラウザの「戻る」を押してもどってください。

林床の木漏れ日率と林内の見通し(詳細)


(b)南北路
図148.17は南北路で観測した道幅と気温差の関係、表148.3はその観測一覧表 である。

南北路の道幅と気温差
図148.17 南北路の道幅と気温差の関係、横軸は対数目盛。

表148.3 晴天日における東西路の気温観測表
気温、基準点:広い公園の気温(勾当台公園または桜が丘公園)
気温差、西側:「道路の西側歩道の気温」と「基準点の気温」の差
気温差、東側:「道路の東側歩道の気温」と「基準点の気温」の差
気温差、平均:「東側歩道と西側歩道の平均気温」と「基準点の気温」の差
気温差、西ー東:「西側歩道の気温」ー「東側歩道の気温」
平塚沖風向と風速:海岸から沖合1kmの海面上22mの風速
路面直射(%):無記入は道路の直射光面積の割合が50%以上の場合
色塗りは市街上空の風向(平塚沖風向)と道路走向が大きく異なるとき。
東西路の気温差観測表

図によれば、道幅が狭くなるほど気温差は大きく(気温は高く)なる傾向に ある。東西路の図148.16と比較すると、気温差は全体として低いほうに プロットされている。南北路では、市街上空の風が南風のとき風通しが良くなる。 つまり、風上が開けているので風に対する空間広さは広くなる。

148.5 道路走向と上空風向の関係による気温差

前節では、市街上空の風向(海洋観測塔における風向)にかかわらず、東西路と 南北路に大別して見てきた。晴天日中の平塚では南風の頻度が高いが、東寄り や西寄りの風も吹く。

それゆえ、本節では、道路走向と市街上空の風向がほぼ一致するときと一致 しないときに大別し、道幅と気温差の関係を見ることにする。このほうが、 道幅が市街上空の風に対する空間広さをより良く代表するからである。

図148.18は道路走向と風向(市街上空の風向=海洋観測塔における風向)が 大きく異なるとき(不一致)、図148.19は風向と道路走向がほぼ一致するとき のときの道幅と気温差の関係である。

表148.4と148.5は、それぞれ図148.18と148.19の観測一覧表である。

道路走向と風向不一致
図148.18 道路走向と市街上空の風向が不一致のときの道幅と気温差の関係。

道路走向と風向の一致
図148.19 道路走向と市街上空の風向がほぼ一致のときの道幅と気温差の関係。

表148.4 晴天日における道路走向と風向が不一致のときの気温観測表
気温、基準点:広い公園の気温(勾当台公園または桜が丘公園)
気温差、陽:「道路の日向側(東西路では北側)の気温」と「基準点の気温」の差
気温差、影:「道路の日陰側(東西路では南側)の気温」と「基準点の気温」の差
気温差、平均:「日向側と日陰側の平均気温」と「基準点の気温」の差
気温差、陽ー陰:「日向側の気温」ー「日陰側の気温」
平塚沖風向と風速:海岸から沖合1kmの海面上22mの風速
路面直射(%):気温を観測した道路の直射光面積の割合(道路の平均値)
ただし、無記入は直射光面積の割合>50%
向き不一致のときの観測表

表148.5 晴天日における道路走向と風向がほぼ同じときの気温観測表
気温、基準点:広い公園の気温(勾当台公園または桜が丘公園)
気温差、西側:「道路の西側歩道の気温」と「基準点の気温」の差
気温差、東側:「道路の東側歩道の気温」と「基準点の気温」の差
気温差、平均:「東側歩道と西側歩道の平均気温」と「基準点の気温」の差
平塚沖風向と風速:海岸から沖合1kmの海面上22mの風速
路面直射(%):無記入は道路の直射光面積の割合が50%以上の場合
向きがほぼ一致するときの観測表


方向が不一致のときのほうが、気温差が0.2℃ほど大きくなる傾向にある。
その条件のとき道路上では風通しが悪く、日だまり効果が強くなるために気温 上昇が大きくなると考えてよいだろう。


まとめ

気象観測所近傍の観測環境と気温の関係を明らかにするために開始した本研究 は、新しい視点による都市気候の研究そのものでもある。

本論では、気温の高・低は観測地点の風通しと日当たりに依存することを 確認するために、神奈川県平塚市の市街地・住宅地で晴天日の正午前後の 1~3時間平均の気温を観測した。

(1)気温は広い道路(空間広さが大で風通り良好)で低く、狭い道路(空間広さ が小で風通り不良)で0.5℃程度高い。この傾向は市街上空の風向と道路走向が 異なるとき顕著になり、風向と道路走向がほぼ同じとき弱くなる。

風向と道路走向が不一致のとき気温差が大きくなるのは、この条件のときのほう が道路上では風通しが悪く、日だまり効果が強くなるためと考えてよいだろう。

(2)直射光が路面を占める面積比が概略40%以下では、気温は0.2~0.5℃程度 低くなる。これは森林内で得た「木漏れ日率と気温差の関係」によく似ている。 ただし、森林内では木漏れ日率20%以下で気温低下が生じた。

今回の面積比40%は観測数が少なく暫定値であり、今後の観測から 確定したい。

備考:
市街の道幅の違いなどで生じる晴天日中の気温の違いは1℃程度である ことがわかった。
気温が高い場所は風が弱く熱拡散が弱いために地表面付近の熱が拡散され難い ことによる。1℃の高温は、空間広さの対数差で概略 0.5~1 で生じる ( 「K121.空間広さと気温ー”日だまり効果”のまとめ」図121.6を参照)。

すなわち、空間広さは約1/3 ~1/10に相当する。この場合、風速はおおよそ 1/2~1/3 となる。したがって、体感温度は気温の差1℃以上、数℃の高温と して感じることになる。熱中症対策などでは重要な値である。

地球温暖化に加えて、都市化による気温上昇が深刻な問題となってくるだろう。 そうしたとき、本研究を活用した、より良い都市環境、都市設計が必要となる。


文献

近藤純正(編著)、1994:水環境の気象学ー地表面の水収支・熱収支ー. 朝倉書店、pp.350.


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