K61.露場風速の解析ー静岡


著者:近藤 純正・菅原 広史
静岡地方気象台の露場の風速比(=露場風速 / 測風塔風速)と露場の風通し 「露場通風率」を評価した。いずれも、方位ごとの露場の広さと強い相関関係 にあることがわかった。 (完成:2012年7月6日)

本ホームページに掲載の内容は著作物であるので、 引用・利用に際しては”近藤純正ホームページ”からの引用であることを 明記のこと。

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更新の記録
2012年6月13日:素案の作成
2012年6月18日:測量の方法、一部訂正
2012年7月06日:図8と図9と表61.1を追加、完成

  目次
        61.1 はしがき
        61.2 風速比の風向依存性
        61.3 露場通風率
        61.4 露場の風向・風速の変動の大きさ
        61.5 仰角の測量方法(魚眼レンズ含む)の問題点
        61.6 5月~7月(48日間)の観測結果
        61.7 まとめ
        文献


61.1 はしがき

これまでの研究では、防風林風下の風速や森林内の開放空間内の風速、つまり基本的な ことを理解しやすい理想的な空間の風速について調べてきた。その結果、風速比と露場 通風率は露場の無次元広さ(=X/h)の関数で表される ことがわかった。

ここに、
風速比=露場風速/測風塔風速
露場通風率(風通しの良し悪しの成績)=風速比/風速比理想値
露場の無次元広さ=X/h=1/tanα
αは露場からみた周辺地物の仰角
X は露場の広さ(m)
h は周辺地物の高さ(m)
である。

詳細は、「K57.森林内の開放空間の風速」「K59、露場の風速と周辺環境の管理―指針」 に説明されている。なお、露場の無次元広さは、以下では略して 「露場の広さ」と呼ぶ。

現実の気象観測所の露場は複雑であり、住宅やビルに囲まれた場合や丘陵地など斜面を 含むこともある。それゆえ、現実の観測所でも露場風速を観測し、問題点を見つけ 環境管理の指針づくりに生かしたい。

静岡地方気象台は平坦地にあり、露場周辺は住宅・マンションで囲まれ都市内観測所 の代表とみなされるので、最初に、この露場を選んで露場風速を観測することとした。

静岡地方気象台の庁舎は東西方向に長く、2階建て、その南側に露場がある。露場の 広さは気象観測所としては中程度である。露場フェンスの東隣は空き地、露場フェンス の南側に接してマンションや住宅が並び、露場は東西方向に風通りがよい。 露場の南西隅にウインドプロファイラが設置されている。

露場の写真、北
写真1a 露場から北方向の写真(2012年6月11日撮影)

露場の写真、東
写真1b 露場から東方向の写真

露場の写真、南
写真1c 露場から南方向の写真

露場の写真、西
写真1d 露場から西方向の写真

露場付近に超音波風速計(PREDE 社製、ウインドソニック、PGWS-100-1 RS232C出力、 株・プリードの取扱)とデジタルロガー(P-RS)を設置した。風速計は三脚に取り付け、 感部の地表面からの高さは1.6mとした。この装置は単1乾電池8個で1ヶ月程度、 1秒毎の風速と風向を自記記録できる。さらに乾電池8個を並列に接続できるように 作ってあるので、2ヶ月ほどの連続記録も可能である。

デジタルロガーと乾電池を入れたボックスは 三脚の足元に置いた台に固定した。ボックス内のデジタルロガーが直射光で60℃以上 の高温にならぬよう、ボックス上面から少し離して白色板の放射除けをつけた。 通風をよくする ためにボックスの下側も地面から離してある。三脚、ボックス、台などはすべて ホームセンターで入手できるものを利用した。

1秒ごとに記録された風速と風向の資料から10分間平均の風速と風向、及び風速変動 の標準偏差と風向変動の標準偏差を計算した。この露場風速と測風塔における 風向・風速との関係を求める。

風速が弱いときは大気安定度の影響が強く現れ複雑になるので、風が強い場合を解析 する。解析に利用した資料と条件は次の通りである。

2012年5月11日~6月6日(25日間)の観測
測風塔風速>3m/s のみ解析(下記で全資料とはこの条件の資料)

測風塔の風向風速計の高度:Z=16.3m
セロ面変位補正高度:Z-d=6.3m
露場風速の高度:Zr=1.6m
風速比の観測値(全資料平均)=露場風速 / 測風塔風速=0.483±0.102
風速比理想値=0.821・・・・・芝生で覆われた無限に広い平坦地の風速比
露場通風率(全資料平均)=風速比 / 風速比理想値=0.483/0.821=0.588

仰角平均=<α>=15.0°±7.4°
1/tan<α>=X/<h>=3.65・・・・・・・・露場の広さ1(無次元)
<1/tanα>=<X/h>=4.75±2.48・・・露場の広さ2(無次元)

なお、この観測は気象庁観測部と静岡地方気象台のご協力によって行ったものである。

61.2 方位別の露場の広さと風速比

当初の解析では、露場の広さは気象台が測量した周辺地物の仰角分布を用いたが、 精度が不十分で、本研究の目的に適していないことがわかった。 この問題は、最後の章で議論する。

ここでは、筆者が改めてセオドライトで測量しなおした仰角分布を用いて解析する。

図61.1は風速比(=露場風速/測風塔風速)と測風塔風向との関係である。 プロットは10分間平均値であり、四角印は10~30回の平均値(延べ観測時間は 100~300分)、緑色の大きい丸印は30回以上の平均値(延べ観測時間が300分以上)である。 赤破線はプロットを滑らかに描いた関係である。

静岡の風速比
図61.1 風速比の風向依存性、2012年5月11日~6月6日(25日間)。

静岡の露場広さ
図61.2 方位角別の露場の広さ(無次元)。赤線は方位角±20°の範囲(50°範囲) の移動平均値。

方位別の露場の広さ(図61.2)と比べると、風速比は露場の広さが大きい東・西方向 (90°と270°)で大きく、小さい南・北方向(0°と180°)で小さくなっている。 露場の南・北には、それぞれマンションと気象台庁舎があり、風が遮られて露場風速 が弱いことを意味している。

図61.2に描かれた赤色の曲線は方位角の前後±20°、つまり10°間隔で測量した露場の広さ(1/tanα) の値 5 点の移動平均である。現実の風向は変動しており、ある方位の風速比は露場の 広さの移動平均(赤線)と比較することが望ましい。

61.3 露場通風率

この節では前半25日間(5月11日~6月6日)の結果を述べるが、後半23日間 (6月11日~7月4日)も含めた48日間をまとめは後掲の図61.9と表61.1に 示されている。

前節で求めた風速比から、露場の風通しの良し悪しを表す成績「露場通風率」を 求めた。露場通風率=100%は無限に広い芝生地上の値である。気候観測所として 適しているかどうかは他の風速条件なども考慮することになるが、露場通風率>60% がおおよその目安である。ただし60%以下であっても時代によって変化しなけれ ばよい。

参考1: 静岡地方気象台は都市内にあり、周辺環境の変化が大きく都市化に よる気温上昇(年平均気温で約0.7℃の上昇)があるので、地球規模の気候変化を 監視するための観測所ではない。

静岡の通風率
図61.3 露場の広さと露場通風率の関係。

図61.3は、露場通風率と露場の広さとの関係である。赤四角印は全資料の平均値、 緑丸印は観測時間が300分間以上の平均値、小さい四角印は観測時間が100分以上 300分未満であり、それぞれ図61.1の緑丸印と小さい青四角印に対応する。 横軸は各方位の露場の広さ(1/tanα=X/h)であるが、全資料の平均値(赤四角印) に対しては「露場の広さ1」(=1/<tanα>)を用いてある。

緑の破線は森林内の開放空間でもとめた従来の実験式である。全体の傾向は実験式と よく対応しているが、縦軸は若干大きめに出ている。その理由として次の(A) (B)(C)が考えられる。

(A)静岡の露場は東西に広く南北に狭い
仰角の平均値:<α>=15.0°±7.4°
露場の広さ1:X/<h>= 1/<tanα>=3.7
露場の広さ2:<X/h>=<1/tanα>=4.8±2.5

「露場の広さ1」より「2」が大きいのは、露場の広さの割に風が入り易い方位が あることを意味しており、露場風速が大きめとなる。

(B)風速計の誤差
露場風速の観測に用いた超音波風速計は検定していなく、±5%程度の誤差を含む 可能性がある。

(C)周辺が都市構造物
実験式が得られたのは露場周辺が主に樹木の場合であるが、静岡の露場周辺は住宅や マンションなどで囲まれており、従来の結果と違う可能性がある。今後の他所での 観測結果に注意していたい。

61.4 風向変動と風速変動

これは結果の理解に役立てるための補足的な解析である。

静岡の露場は南北が建物に挟まれており、測風塔の風向が南・北のときは建物の影響 が大きく露場の風向がずれる。図61.4上図は風向のずれ(=測風塔風向-露場風向) である。東・西風のときの風向のずれはほとんどゼロであるが、風向が南東~南南東 のときの露場風向は東寄りとなり、南風のときは風向のずれはプラス・マイナスに 大きく変動、つまり渦をまいている。風向が南南西~南西のときの露場風向は西寄り になることを表している。これらは予想された結果である。

同図の下図は露場の風向変動の標準偏差と測風塔風向との関係である。比較的に 開けた東の方向から風が吹くときの標準偏差は30°前後、西風のときは30~60°前後、 南風と北風のときは60~90°前後で渦を巻いていることになる。

静岡の風向のずれ
図61.4 測風塔風向と露場風向のずれの関係(上図)、および露場の風向変動の 標準偏差(下図)。

静岡の風速変動
図61.5 露場の乱れの強さ(=風速変動の標準偏差 / 露場平均風速)と測風塔風向 の関係。

図61.5は露場における乱れの強さの風向依存性である。東・西風で0.25前後、南・北風 で0.2前後であり、風向依存性は大きくはない。

参考2: 風速変動の標準偏差は、トレンドを含む計算とトレンドを除去した 計算の2通りをおこなった。図61.5ではトレンドを除去した計算値を示したが、 乱れの強さの全資料(ただし測風塔風速>3m/s)の平均値は、次の通りで全体と しては大差はない。

トレンド含む計算値・・・・0.218±0.039
トレンド除去計算値・・・・0.213±0.035

61.5 仰角の測り方の問題点

「はしがき」で述べたように、この観測の目的は、周辺が複雑な現実の露場で風速を 測り、問題点をみつけ、今後の環境管理の指針づくりの参考とするものである。

図61.6は当初に作成した図であり、横軸は、気象台がセオドライトで測量した 仰角αの方位角分布から計算した露場の広さである。

静岡の気象台測量値と通風率
図61.6 当初に作成した図: 露場の広さと露場通風率の関係、図61.3に同じ、 ただし気象台の測量による仰角分布図を用いた場合。

横軸の露場の広さ>12 の範囲のプロットが破線(従来に実験式)から大きく離れて いる。

静岡の仰角分布図では、仰角=0が4方位(40°、220°、270°、280°) にプロットされている。日本の陸上観測所で仰角=0°はおそらく存在しないと 予想されるにもかかわらず、静岡ほかの多くの気象観測所で同様に仰角ゼロの プロットが多い。

他の観測所でも、仰角はセオドライトによる測量と、カメラに魚眼レンズをつけて 撮影した全天の写真から読み取る方法が用いられているが、精度が不十分で、本研究 の目的(したがって気候観測所の環境管理の目的)には利用できない。

魚眼レンズによる写真は天頂付近では画素あたりの立体角が大きい(感度が高い)が, 水平付近では画素あたりの立体角も小さく,収差も一定しないものが多く(感度が 低く),精度が悪い。特に仰角ゼロの基準の決め方が非常に難しく仰角の値が曖昧に なる。

露場の管理で重要なのは、仰角の小さい値で変化が生じないことである。 露場の広さ X/h <10は、「日だまり効果」による平均気温が上昇しはじめ、 仰角が6°に対応する。この角度では魚眼レンズによる測量誤差が大きく、 環境管理に用いるのには不適当である。

そこで、超音波風速計を設置した地点で、簡易セオドライト(牛方のポケットコンパス) を用いて周辺360°の仰角分布を10°間隔で測量し、気象台測量値と比較した。

図61.7の赤線は簡易セオドライトによる正確な仰角分布図、黒線は気象台による 測量である。両者の測量地点は南北に離れているので、完全に一致しなくてよいが、 東・西寄りの方位ではほぼ一致しなければならない。

静岡の仰角測量の比較
図61.7 仰角分布図
赤線: 簡易セオドライトによる測量、ただし高さ1.3mの測量値を地面レベルに補正(α=α1+α0)。
黒線: 気象台による測量。

露場風速の解析で重要なのは、仰角が小さい範囲であり、魚眼レンズでは精度の悪い 範囲となる。それゆえ、露場管理上では、別の方法、つまり普通の写真機で8方位を 撮影する方法が考えられる(その具体的な手法は別の章で説明する予定である)。

図61.7の黒線において、特に注意すべきは、西寄りの方位で仰角<10°となっている ことである。この範囲の仰角測定・読み取りが不正確なために図61.6の横軸>12の 範囲のプロットが破線から大きく離れている。新しく測量しなおした仰角分布(赤線) を用いて作成した前記の図61.3ではプロットは破線周辺に分布しており、疑問点が 解決した。

参考3: 当初作成した図61.6において、露場通風率が西寄りの風のとき破線 で示す実験式より小さくでた原因として、

(1)気象台による仰角の測量値に疑問
(2)測風塔の風速が西寄りのとき強めに観測される可能性
(3)超音波風速計が指向性をもつ可能性
を考えた。

(1)については上記の通りで、これで疑問点は解決されたが、 参考のために(2)と(3)についても結果を述べておきたい。

(2)について、測風塔風速計のすぐ近傍に西風を強める障害物がないか、 あるいは気象台の西遠方に特殊な建築物がないか、測風塔に登り観察したところ、 西遠方には変わった状況はみられなかったが、風向風速計の西南西の隣に照明用 ランプが並んでいた。

静岡の測風塔風速計近傍写真
写真2 測風塔の風向・風速計と照明用ランプの写真(2012年6月11日撮影)。

写真2 は風向風速計の北西側から撮影した風向風速計と照明用ランプの写真である。 この照明用ランプが存在することで、西南西の風のときの測風塔の風速は1~5%程度 強めになる(「K57. 森林内の開放空間の風速」 の図57.1の左図を参照)。

つまり、障害物の上側では気流が収束し強めの風速となり、その強風域は後方斜め 上方に傾いた形となる。非粘性流体のポテンシャル流では気流に対し風上風下、 あるいは物体の上下で対称的な風速分布となるが、粘性流体の大気の流れでは、 風速分布の形が風下側に傾く。

西南西寄りの風のときの風速増加は1~5%程度と考えられるので、風速比と露場通風率 の結果は大きく変わらない。

通常の気象観測(アメダスなど)では、風速の観測誤差±5%程度は許される範囲内 であるが、高精度が要求される気候観測では±5%は許容範囲の限界であろう。

(3)について確かめるために、2012年6月11日14時48分に超音波風速計の感部を水平面 で180度回転させた。その後の風速比に変化がでるか、東西風の特徴が反転するか どうかで確認できる。

風速計感部を回転させて観測した、6月11日から7月4日までの23日間の風速比の風向依 存性を図61.8に示した。図61.3と比べた結果、プロットのばらつき(誤差)の範囲内で 違いは認められない。

よって、風速比(露場通風率)が小さめに観測されたのは(図61.6の右のほうの プロット)、超音波風速計の風向性による誤差はではないことがわかった。

風速比28日間
図61.8 図61.1に同じ、ただし後半期間の2012年6月11日~7月4日(23日間)。


61.6 5月~7月(48日間)の観測結果

図61.9は前半(5月11日~6月6日)と後半(6月11日~7月4日)の48日間についての 各方位ごとの露場の広さと露場通風率の関係である。ただし、赤四角印は全48日間の 平均値であり、横軸は「露場の広さ1」で表してある。

大きい緑丸印は10分間平均風速のデータ数が100以上の信頼性の高い値である。

通風率全53日間
図61.9 図61.3に同じ、ただし全期間2012年5月11日~7月4日(ただし6月6日~11日の 5日間を除く48日間)の観測に基づく。
赤四角印:48日間の全資料平均値(ただし測風塔風速>3m/s)、横軸は「露場の広さ1」、
緑丸印:観測数が100以上(1000分以上)、横軸は各方位の露場の広さ(±20°範囲平均)、
小さい四角印:観測数が10以上100未満、横軸は各方位の露場の広さ(±20°範囲平均)。

表61.1は10分間平均風速のデータ数が10以上の風向についてまとめた風速比と露場 通風率である、ただし測風塔風速>3m/s の解析結果。

表61.1 全期間48日間(2012年5月~7月)の風速比と露場通風率のまとめ
  X/h=1/tanα:各方位の露場の広さ(±20°範囲の平均、
   ただし全資料53日間平均値は「露場の広さ1」
  風向:測風塔風向
  資料数:10分間平均値の数、10以下(延べ100分間以下)は掲載しない

        風向   風速比 露場通風率 資料数 
    X/h  (°)        (%)
    -       0        -          -      <10
    6.5     22.5     0.447       53.3      68
    7.8     45       0.556       68.0     422
    7.1     67.5     0.597       72.8     224
    7.7     90       0.609       74.3      57
    6.4    112.5     0.529       64.3      43
    3.5    135       0.549       66.9      21
    3.0    157.5     0.388       47.2      65
    2.6    180       0.396       48.1     283
    2.1    202.5     0.447       54.3      80
    3.3    225       0.424       51.6     131
    5.6    247.5     0.420       51.1      12
    6.0    270       0.436       53.1      16
    4.8    292.5     0.440       53.6      13
    -     315        -          -      <10
    -     337.5      -          -      <10      

    3.65   全風向    0.496       60.4    1444  


61.7 まとめ

静岡地方気象台の露場付近に超音波風速計を設置し、露場の風向・風速を観測し、 風速比と露場通風率の方位角依存性を求めた。

(1) 露場は東西方向が開けており(無次元の露場の広さが大きく)、風速比は東・西風で 大きいが、南・北風で小さい(図61.1、図61.8)。

(2) 露場通風率と露場の広さの相関関係は高く、従来の森林内開放空間で得た実験式と 矛盾していない(図61.2、図61.9)。

(3) 露場は南北に狭いために測風塔で南・北風のとき露場風向は東西となり、 風向変動は大きく渦を巻くようになる。

今後の他の露場における観測結果と合わせて問題点を整理し、観測所の環境管理の 指針づくりに生かしていきたい。

参考4:仰角の全方位の平均値の比較
露場周辺の地物の仰角について、セオドライトによる筆者の測量と気象台の測量 (魚眼レンズを用いた全天を撮影する方法も含む)では、各方位ごとの仰角の違いは 大きいが、全方位の仰角平均値では大きな違いはない。

それゆえ、既存の全観測所の仰角平均値の資料は、方位ごとでは誤差があっても、 有効に活用できると考えられる。 たとえば、仰角平均値と露場通風率の実験式(図61.3、図61.9の破線)を用いて、 未観測の露場における通風率の概算値を知ることができ、有効に利用 できる。

参考までに、表61.2には筆者の測量と気象台の測量による仰角平均値の比較を示した。

表61.2 露場から測った周辺地物(樹木や建物など)の仰角α1の平均値の比較
  今回の測量:セオドライトによる測量:高さ1.3mでの測量値、α
   ただし、北の丸露場では雨量計受水口レベル(高さ0.45m)での測量値
  カッコ内:標準偏差、方位10°間隔の測量値 36 個の標準偏差
   ただし、北の丸露場は方位 22.5°間隔の測量値 16 個の標準偏差
  気象台の測量:セオドライトによる測量(大手町、静岡など)、
   または魚眼レンズを用いて天空を撮影した写真から読み取った仰角

            今回の測量      気象台の測量 
    露 場      α1(°)       α1(°)

    大手町      24.5 (±17.1)      22.6
    北の丸       ―           16.7 (±3.9)
    館  野          8.5 (±3.2)          10    
    静  岡        14.0 (±7.4)          14.4

    仙 台         16.1(±9.6)           17.1
  盛 岡          5.7(±5.5)            4.1
  秋 田         10.2(±6.5)           10.6    


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