K200.気温・温湿度用通風筒の試作試験


著者:近藤純正
気象庁の観測所で用いられている気温・温湿度用の通風筒(95型)について 放射影響誤差を小さくするために構造を単純化した通風筒を試作した。晴天日中 における風速1~2m/sのときの放射影響誤差は気温センサでは0.01℃以下、 温湿度センサでは0.04℃以下にすることができた。

本論は気温・温湿度の2センサの通風筒の試作試験であるが、一般には気温と 水蒸気量を観測するとき、各センサを独立した2つの通風筒に入れるか、 同じ1つの通風筒に入れるかを決めなければならない。また、通風筒を縦型に するか傾斜型にするかについては製作費、精度、重量、電力消費量、分解掃除 の観点から決めることになる。 (完成:2020年6月10日)

本ホームページに掲載の内容は著作物である。 内容(新しい結果や方法、アイデアなど)の参考・利用 に際しては”近藤純正ホームページ”からの引用であることを明記のこと。

トップページへ 研究指針の目次


更新の記録
2020年6月2日:素案の作成

    目次
        200.1 はじめに    
        200.2 気温・温湿度の2センサ通風筒(手製の試験器)
        200.3  放射影響誤差の試験方法
        200.4 試験の結果
        200.5 通風筒形式の選定
        まとめ
        文献           


200.1 はじめに

気温観測に必要な精度
気温観測では温度センサに及ぼす放射影響を防ぐために1970年半ばから強制通風筒 が使われるようになった。気象庁その他で使われている強制通風筒では、晴天日中 の放射影響誤差は0.15~0.5℃程度である( 「K90.通風筒(ノースワン社製)に及ぼす放射影響」の表90.1; 「K99.通風筒の放射影響(気象庁95型、農環研09S型)」「K100.気温観測用の次世代通風筒」を参照)。

そのほか、気象庁95型などの通風筒では、排気が下向きになる構造のため、 微風時に排気が再び吸気口から吸引され循環し、気温が0.2~0.4℃ほど高温に 観測される。その例は「K90.通風筒(ノースワン社製) に及ぼす放射影響」の図90.4に示されている。

天気予報など通常の暮らしでは気温の観測精度(許容誤差)は0.5℃でよいが、 産業活動ではこれよりも高精度が必要な場合がある。地球温暖化量は100年に つき0.7℃程度である(近藤(2012); 「K173.日本の地球温暖化量、再評価2018」)。 また、最高気温や最低気温の新記録が観測されたとき、0.1℃の違いが世間では 話題になる。これらのことから、気温の観測精度は少なくとも0.1℃以内とし、 0.05℃以内であることが望ましい。

本論では、気温・温湿度用の気象庁95型の通風筒の青天日中における放射影響 誤差0.3~0.4℃を小さくするために構造を単純化した通風筒を試作・試験した。

通風筒の選定
①精度が高い、②価格が安価、③重量が軽い、④保守点検が容易、によって どの機種を選ぶかが決まる。そのほかに、防災業務に必要な気象庁の観測所では、 AC電源が停電になったとき、電源をバッテリーに自動切り替えて観測を続ける際に、 ⑤ファンモータの電力が小さいことが重要となる。

さらに、気温センサと水蒸気量を求める温湿度センサを独立した2つの通風筒に 入れるか、同じ1つの通風筒に入れるか。また、通風筒を縦型にするか傾斜型に するかについては上記5項目の観点から決めることになる。


200.2 気温・温湿度の2センサ通風筒(手製の試験器)

通風筒各部の呼び名
気温センサに及ぼす放射影響を防ぐために2重または3重の通風筒が用いられる。 直射光が直接当たる外側の円筒を「外筒」、センサにもっとも近い内側 の円筒を「内筒」と呼ぶ。3重構造の場合、外筒と内筒の中間に置く円筒 を「中間筒」とする。外筒、中間筒、内筒は通風筒の先端の約半分を占め 「吸気部」、ファンモータまでを「接続部」、ファンモータから 排気口までを「排気部」とする。

気温センサの受感部に直接当たる地面反射量と地面からの熱放射量(長波放射量) を微少にするために、内筒の奥にセンサ受感部を置けば、受感部から地面が 見える立体角は小さくなる。この場合、立体角を小さくするために吸気口先端 から受感部までの距離を長くし過ぎると、日中は気温に比べてやや高温と なっている内筒の内壁面上に形成されるやや高温の内部境界層の内部に受感部 が入ることになる。それゆえ、センサ先端の受感部が内部境界層内に入らぬよう 内筒の内径は小さすぎず、内筒先端から受感部までは適当な距離にしなければ ならない。通常、受感部の位置は内筒先端から距離0.1m~0.15mの奥が適当な 距離となる。

センサに及ぼす放射の直接的影響を防ぐことのほかに、吸気口の外壁・内壁面 で発生する加熱(日中)または冷却(夜間)された空気が内筒内へ吸引され にくい構造にしなければならない。

高精度の通風筒の工夫点
(工夫1)温度センサに及ぼす放射の直接的影響を軽減するため、吸気部は2重 または3重の水道管用の塩ビ管で作る。
(工夫2)内筒と外筒の先端はずらして、吸気口で発生する加熱空気の内筒への 流入を軽減する。
(工夫3)吸気部先端を流線形とし、吸気口で発生する乱流を軽減する。
(工夫4)通風筒内部の構造を単純化し、吸気から排気までの流れをなめらか にし、よどむことなく素早く排気させる。
(工夫5)排気が吸気口の方向に向かぬ構造にして、微風時の排気循環流を 防止する。
(工夫6) 吸気速度は5m/s以下とし、降雨時の微水滴を内筒に吸引し気温センサ 受感部が湿球にならぬようにする。

これら各工夫の詳細は「K197.地球温暖化用の高精度通風筒、 準備試験」に説明されている。

気象庁通風筒の欠点
気象庁で使用している通風筒(95型や04Bアメダス型)では、(工夫4)と (工夫5)が不十分で、構造が複雑になっている。

これらの通風筒では、いずれも、地面反射光が直接センサ受感部に当たるのを 防ぐために、内筒の吸気口の先端に遮蔽板が取り付けられている。しかし、 気温センサの受感部は内筒の奥深くにあり、受感部から地面が見える立体角は 微少で遮蔽板の遮光効果は無視できるほどに微少である( 「K100.気温観測用の次世代通風筒」の節100.3の(7)を参照)。

さらに、この遮蔽板と内筒先端に付けられた空気流を収斂させる漏斗構造体は、 地面反射光と加熱地面からの熱放射を受けて加熱される。この過程で放射 エネルギーが顕熱に変換され、加熱空気流となって内筒内部へ吸引される。 この加熱影響と、遮蔽板による遮光効果を比較すれば、遮光効果は小さい。 したがって、遮蔽板と漏斗構造体はナシとすれば、精度が上がる。

気温・温湿度の2センサ通風筒(試作品)
図200.1は気温センサと温湿度センサの入る気温用内筒と温湿度用内筒を含む 通風筒である。2センサの共通の外筒はVU管100番(肉薄管、灰色)(外径114mm、 内径101mm)の塩ビ管を用いた。気温用の中間筒と内筒はHI-VP管 (肉厚管、黒色)でそれぞれ40番(外径48mm、内径40mm)と20番 (外径26mm、内径20mm)を、温湿度用の内筒はHI-VP管(肉厚管、黒色) 40番を用いた。

各筒間は密着させず、4mm~7mmの隙間がある。また、各筒の先端部内壁は 半流線形に削り、同様に内筒と中間筒の後端も内壁面は半流線形に削ってある。

試作2センサ通風筒
図200.1 気温センサと温湿度センサを含む通風筒(45度の傾斜型)。吸気部の 先端の内側に気温用内筒・中間筒(右側)と温湿度用内筒(左側)の先端部が 見える。外筒、中間筒、内筒の各内壁面先端部の約20mm範囲は白色塗装、 その奥は塩ビ管の灰色または黒色のままか黒塗装とする。これは試験用の手製品 であるため接続部と排気部および支柱取り付け具の構造は最終的な製品と異なる。 外筒の塩ビ管の上に3重に巻いたポリエチレン・PET・アルミ蒸着の「アルミ フォーム」は最終的な製品ではステンレスとし、接続部との分離・結合が容易で、 分解掃除がしやすい構造とする。製品では、接続部先端の断面は円であるが、 その奥からファンモータと排気部までの断面は四角形とすれば製作費が安価に なるように思う。この部分の設計・製作はメーカに任せたい。


ファンモータはDC12V、0.3A(3.6ワット)を用いた。本シリーズ研究の1センサ用 の通風筒に用いているファンモータ(約1ワット)の約3倍のワット数としたのは、 共通の外筒の内径(101mm)が大きく、通風の全断面積が大きく無駄に見える 断面積があるからである。

注意:無駄とみえる外筒の断面積を小さくするために、この空間に 障害物を置く構造とすれば、空気流が素早く排気されず、気象庁95型や アメダス型のように放射影響誤差が大きくなる場合があるので注意のこと。

参考:この試作品では、外筒の塩ビ管100番(内径=101mm)を用いたが、 一回り太い塩ビ管125番(内径126mm)を用いれば、2センサを固定する周辺の 空間が広くなり保守点検作業が楽になる。しかし、通風断面積が大きくなるので ファンモータはDC12V、0.5A(6ワット)程度が必要となる。


200.3 放射影響誤差の試験の方法

上記の試験用通風筒について、「基準の高精度通風筒」と比較し放射影響誤差を 調べる。「基準の高精度通風筒」とは、近藤式精密通風気温計(縦形:プリード 社製)の原型となる手製の基準通風筒である(2重通風筒、KONDO-15S型、 ただしガイド無し、ファンモータはDC12V、0.26A)( 「K100.気温観測用の次世代通風筒」の図100.5~100.10)。 「基準の高精度通風筒」の放射影響誤差は0.01℃以下である( 「K198.近藤式高精度通風筒の放射影響誤差」)。

なお、基準の高精度通風筒は他の通風筒の放射影響誤差を調べるためのもので、 通常の研究用観測に用いるときは、電力節約のために例えばDC12V、0.08A (約1ワット)のファンモータに取り替える。

試験に用いる気温センサと記録計
気温センサは4線式Pt100(受感部の直径は2.3mm)、記録計は分解能・精度 0.01℃の高精度温度ロガー「プレシィK320」(立山科学製)を用いる。 温度センサは検定済みであり、さらに高精度の比較検定により相互の相対的 誤差は0.003℃である(「K145.高精度気温観測用の計器・Pt センサの検定」の145.3節の(4)校正付き高精度Pt温度計による方法)。

手製の通風筒試験器について試験した結果、放射影響誤差が0.05℃程度または それ以下になれば、メーカに完成品の製作を依頼する。その後、製品の完成品 について、試験によって誤差が目的の値になっているかを確認することになる。

試験地における風速などの条件
通風筒試験器の放射影響誤差は筆者の住宅の庭で行う。通風筒は地上に立てた 単管パイプに取り付け、吸気口の地上高度は2.5mである。基準の高精度通風筒 の吸気口と試験器の吸気口間の距離は0.2mである。

今回は直接観測していないが、以前に超音波風速計で測った地上2m高度の風速は 暴風時でなければ、日中はほとんどの場合1~2m/s、夜間は1m/s以下特に微風時 は0.1~0.2m/sである。

試験の期間
試験は2020年5月24日~30日に行った。

気温の記録の時間間隔
気温の記録の時間間隔は1分ごととし、図では15分間の移動平均値を示す。

放射影響誤差の定義
放射影響誤差の定義は次式による。

相対誤差=(通風筒試験器による気温)-(基準の高精度通風筒による気温)  ・・・(200.1)

放射影響誤差=相対誤差 +(0.01℃以下) ・・・・・(200.2)

ただし、(0.01℃以下)は「基準の高精度通風筒」の放射影響誤差である。

理論によれば、放射影響誤差は有効放射量に概略比例し、晴天日の正午前後に 最大になる。本論では、おもに晴天日の正午前後の10時~14時に注目して解析する。

図200.2は手製の通風筒試験器について放射影響誤差を調べているときの写真 である。

試験中の試作2センサ通風筒
図200.2 通風筒試験器(右側)と基準の高精度通風筒(左側)の比較試験中の 写真。吸気口の高度は地上2.5m、吸気口間の距離は約0.2mである。左右の通風筒 は、鉛直に立てた単管パイプを鉛直軸まわりに回せば、自由に向きが変えられる。


200.4 試験の結果

気温・温湿度の2センサを含む通風筒について、気温用の内筒に入ったPtセンサ (φ2.3mm)と温湿度用の内筒に入ったPtセンサ(φ2.3mm)のそれぞれに 及ぼす放射影響誤差を調べた。

図200.3(上)は気温用の内筒に入ったセンサと基準の高精度通風筒で記録された 気温差(式200.1に示す相対誤差)の時間変化である。気温差(相対誤差)に 見える細かな時間変動は、2つの通風筒の吸気口の位置が離れているために 生じたものである。大気は風速・温度の異なる大小さまざまな空気塊から成り、 2つの通風筒が離れていれば各瞬間の温度に差が生じる。それゆえ、ここでは 数時間平均の温度差を放射影響誤差とする。

気温差の時間変化
図200.3 通風筒試験器と基準の高精度通風筒の比較試験。横軸に月日が記入 された位置の時刻は当日の0時である。上図は放射影響を示す相対誤差、下図は 気温の時間変化である。下図では、2温度の差が微少で重なっている。毎日の 16時ころにデータが途切れているのは、パソコンへのデータ吸い上げ・データ 解析の作業によるものである。


放射影響誤差に含まれるデータ数不足による誤差の目安Δは、σを各瞬間の 気温差の標準偏差、Nをデータ数とすれば次式によって表される(近藤、2000, 式1.26)。

  Δ=σ/N1/2 ・・・・・・・・(200.3)

放射影響誤差は風速と放射量に依存する。本論では晴天日中の4時間または6時間 平均の気温差を放射影響の相対誤差としている。気温の記録は1分間隔であり 4~6時間のデータ数N=240~360(N1/2=15.5~19.0)となる。 表200.1~表200.2に示すようにσ=0.03~0.04℃、したがって上式から誤差の 目安Δは0.002℃程度となる。

表200.1に示すように、相対誤差の3日間の平均値は-0.002℃であり、センサ自体 の測定誤差±0.003℃と同程度である。したがって、式(200.1)より気温用の 内筒に入ったPtセンサに対する放射影響誤差は基準器の放射影響誤差(0.01℃以下) と同程度である。高精度となったのは、吸気部の円筒(外筒、中間筒、内筒) はすべて塩ビ管とし、各円筒の先端は10mmずつ順番に奥にずらした構造とし、 さらに外筒の外側に断熱のアルミ蒸着の「アルミフォーム」 を巻いてあり、吸気口は流線形または半流線形の構造としたからである。

表200.1 晴天日中(快晴または晴れ、強い日射時)における気温センサに 対する放射影響誤差の相対誤差
放射影響誤差、気温筒
 

同様に、表200.2に示すように温湿度用の内筒に入ったPtセンサに対する相対誤差 は0.028℃であるので、放射影響誤差は0.028+0.01以下≒0.04℃である。 これはφ2.3mmセンサに対する誤差であり、温湿度センサの大きさ(受感部を 包むプラスチック構造体)は製品によりφ10~20mm程度であり、放射影響誤差 は0.04℃よりも大きくなると考えられる。

表200.2 前表に同じ、ただし温湿度センサに対する放射影響誤差の相対誤差
放射影響誤差、湿度筒
 

金属のSAS保護管に包まれた気温観測用のPtセンサと違って、温湿度センサは 防水が不十分な構造にため、精密検定は難しく、通常、相対湿度の許容誤差は 1~2%であろう。したがって、実際に用いる温湿度センサに対する放射影響誤差 は0.1~0.3℃以下であれば十分と考える。

相対湿度の求め方
温湿度センサ(気温センサ+静電容量センサ)の出力(温度+相対湿度)から 水蒸気圧 e を求める。最終的に求める相対湿度(公表値)は水蒸気圧 e と気温筒 のPtセンサの出力(高精度の気温 T)を用いて求める。


200.5 通風筒形式の選定

本章では気温・温湿度の2センサの通風筒の試作試験を示したが、これまでの章 では1センサの通風筒および吸気部を並列した通風筒について放射影響誤差を示した。 いずれの場合も放射影響誤差は0.05℃以内とすることができた (「K197.地球温暖化観測用の高精度通風筒、準備試験」)。

気温と水蒸気量を観測するとき、各センサを独立した2つの通風筒に入れるか、 同じ1つの通風筒に入れるかを決めなければならない。また、通風筒を縦型に するか傾斜型にするかについては製作費、精度、重量、電力消費量、分解掃除 の観点から決めることになる。

筆者の考えでは、気温センサと温湿度センサは独立した2つの通風筒に分けて 入れる方式とし、通風筒の取り付け形式は傾斜型を選びたい。しかし、どの形式 を選ぶかは利用者の好みや考え方によって違ってくる。ここでは参考となる資料 の一部を示しておきたい。

通風筒の構造形式
(1) 独立した2つの通風筒(気温用通風筒と温湿度用通風筒)(図200.4上)
特徴:分解掃除のときに便利である。一方のファンモータが故障したとき、 気温データが他から推定できる。

(2) 2つの吸気部からなり、接続部とファンモータを含む排気部は1つの 通風筒(図200.4下)
特徴:消費電力が小さいファンモータでよい。

(3) 1つの外筒内に気温用内筒と温湿度用内筒を含む通風筒(図200.1)
特徴:見た目が1つで占める空間が狭い。消費電力の大きいファンモータが必要 である。

通風筒の形式、独立2通風筒
通風筒の形式、並列通風筒
図200.4 通風筒の構造形式
上:独立した2つの通風筒(気温用通風筒と温湿度用通風筒)( 「K89.通風筒に及ぼす放射影響-農研用」の図89.2より転載)
下:2つの吸気部、接続部とファンモータを含む排気部は1つの通風筒 (「K197.地球温暖化観測用の高精度通風筒、準備試験」 の図197.9の一部に同じ)
この写真は吸気部の外観的な形式を示すためのものであり、下の写真の接続部~ 排気部は製品と大きく異なる。



通風筒の設置形式
縦型の通風筒
微風時に排気が下方向にならぬよう、また大雪のとき排気口に着雪して排気が 不十分にならないよう構造を工夫するために製作費が高価になる可能性がある。 支柱への取り付け具を含む全体の重量が重くなる。

傾斜型の通風筒
図200.1に示したように、通風筒の重心近くの下側に取り付け具のある構造と することができ、しかも排気部の構造が簡単になり製作費が安価になる。 長期観測のほか、短時間の移動観測では軽量型三脚に取り付けることも可能である。


まとめ

長期にわたって気温と湿度を観測する高精度通風筒の製品化の準備として、 気象庁95型を簡単化した手製の試験用通風筒を試作した。晴天日中における風速 1~2m/sのときの放射影響誤差は気温センサでは0.01℃以下、温湿度センサでは 0.04℃以下にすることができた、ただしφ2.3mmのセンサの場合である。 95型の放射影響誤差0.3~0.4℃に比べて1桁以上も高精度になった。

新しい相対湿度の求め方として次を提案した。
温湿度センサ(気温センサ+静電容量センサ)の出力(温度+相対湿度)から 水蒸気圧 e を計算する。最終的に求める相対湿度(公表値)は水蒸気圧 e と 気温筒のPtセンサの出力(高精度の気温 T)を用いて求める。

本論は気温・温湿度の2センサの通風筒の試作試験であるが、一般には気温と 水蒸気量を観測するとき、各センサを独立した2つの通風筒に入れるか、同じ 1つの通風筒に入れるかを決めなければならない。また、通風筒を縦型にするか 傾斜型にするかについては製作費、精度、重量、電力消費量、分解掃除の観点 から決めることになる。

今後、メーカによる新製品について試験し、放射影響誤差を確認したい。

文献

近藤純正、2000;地表面に近い大気の科学―理解と応用.東京大学出版会、pp.324.



トップページへ 研究指針の目次