updated Sept. 11 2001  派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)
 質 問 と 回 答 例 (F A Q)

3075. 時間外労働をしても残業代を払ってもらえない

 派遣先で時間外労働の時間を毎月一方的に決められ、業務してきましたが、ここ数ヶ月、業務完了に要する時間を下回る時間枠しか与えられません。世間で言うサービス残業をしろと言うのです。
 実質の労働時間と派遣先への請求の労働時間にギャップが出来るわけです。派遣元に問い合わせたところ、時間内でやってくれと言われただけでした。この場合、派遣元に実質の労働時間で労働者は請求出来るのでしょうか?
 又は、時間枠を超えたら業務を放棄できるのでしょうか?
 派遣元の就業規則には残業時間の上限について明記していません。
 又、36協定もありません。


 まず、ご指摘の「残業」は、労働基準法第32条に定められた労働時間を超える時間外労働である、と推測します。
 1日8時間、1週40時間などの法定労働時間を超える「法外残業」と、それを下回る「法内残業」とを区別してください。


>>派遣元の就業規則には残業時間の上限について明記していません。
>>又、36協定もありません。


 ということですので、明らかに労働基準法第36条違反と考えられます。
 1999年4月から改正法が施行されましたが、いずれにしても、36協定がないのに、法外残業を命ずることはできません。罰則適用の対象となります。

(時間外及び休日の労働)
 第36条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他命令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、1日について2時間を超えてはならない。

 2  労働大臣は、労働時間の延長を適正なものとするため、前項の協定で定める労働時間の延長の限度その他の必要な事項について、労働者の福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して基準を定めることができる。

 3  第1項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の基準に適合したものとなるようにしなければならない。

 4  行政官庁は、第2項の基準に関し、第1項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。

>派遣先で時間外労働の時間を毎月一方的に決められ、業務してきましたが、
>ここ数ヶ月、業務完了に要する時間を下回る時間枠しか与えられません。
>世間で言うサービス残業をしろと言うのです。

 労働者派遣の場合、派遣元で36協定を締結しないと、派遣先は、法外残業を命ずることはできません。派遣先は、派遣元で36協定が締結されていないことを知らないまま、処罰される可能性がありますので、労働省は、次の指針のなかで、派遣元から派遣先に、時間外労働について通知することを求めています。


 派遣元事業主及び派遣先が講ずべき措置に関する指針(抄)
             (平成8年労働省告示第102号)

 第3 派遣先が講ずべき措置

 6 派遣元事業主との連絡体制の確立
 派遣先は、派遣元事業主の事業場で締結される労働基準法第36条の時間外及び休日の労働に関する協定の内容等派遣労働者の労働時間の枠組みについて派遣元事業主に情報提供を求める等により、派遣元事業主との連絡調整を的確に行うこと。

 7 派遣労働者に対する説明会等の実施
 派遣先は、派遣労働者の受入れに際し、説明会等を実施し、派遣労働者が利用できる派遣先の各種の福利厚生に関する措置の内容についての説明、派遣労働者が円滑かつ的確に就業するために必要な、派遣労働者を直接指揮命令する者以外の派遣先の労働者との業務上の関係についての説明及び職場生活上留意を要する事項についての助言等を行うこと。

 つまり、派遣元での労使協定(36協定)があれば、派遣先に知らせることが必要です。逆に、もし、派遣元で36協定がなければ、派遣先は、それを知らないことで、法的には免責されないことになります。

 派遣先は、実際に指示した労働時間について、労働基準法第36条などの時間外労働の規制を受けます。逆に、派遣元は、派遣先が実際に指示した労働時間については、賃金を支払う義務があります。

>実質の労働時間と派遣先への請求の労働時間にギャップが出来るわけです。
>派遣元に問い合わせたところ、時間内でやってくれと言われただけでした。

 両者が連帯して責任を負担するのが、労働者派遣制度の本来の制度の趣旨です。派遣元と派遣先が、使用者としての責任を逃れ合うということは、労働者派遣の建て前に違反します。

>この場合、派遣元に実質の労働時間で労働者は請求出来るのでしょうか?

 もちろんできます。
 実際に就労した労働時間について、派遣先が認めないということであっても、
派遣元に賃金支払いの責任が生じます。

>又は、時間枠を超えたら業務を放棄できるのでしょうか?

 これも当然です。
 法的には、36協定なしの時間外労働は命ずることができません。

 もし、法内残業であっても、労働者派遣契約、就業条件明示書に規定のない時間外労働は、契約上、指示をすることができません。
 労働者の側は、それを拒否しても法的な責任を問われることはありません。

 以上、あくまでも法的な視点からの回答です。

 実際には、派遣労働者の弱い立場を前提にしての、無法なサービス残業指示だと推測します。法的には、とくに厄介なことはありません。事実が示せれば、改善は可能です。

 ただ、現実の力関係では、問題の解決はなかなか難しいと思います。

 いずれにしても、実際に就労した記録を毎日、正確にメモしておくことが必要だと思います。時効は2年間ですので、万一、契約更新拒否などの仕打ちを受けたときに、遡って2年分を請求することが可能ですし、労働基準監督署に、派遣先、派遣元の刑事処罰を求めて告発することで、支払いを強制するなどの思い切った措置も可能です。

 できれば、地域労働組合などで実際に派遣労働者の力になってくれそうなところを見つけておいて、問題提起の準備をすることから始まると思います。

 もし、同様な不満を持っている労働者が多ければ、労働組合に相談して、団体交渉などでの問題解決も考えられます。雇用を継続しての労働条件改善を考えるときには、こうした集団的な力を行使することが必要になると思います。

〔通達〕派遣労働者と36協定
            (昭和61年6月6日 基発333号)

 「派遣元の使用者は、当該派遣元の事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合と協定し、過半数で組織する労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する者と協定をすることになる。この場合の労働者とは、当該派遣元の事業場のすべての労働者であり、派遣中の労働者とそれ以外の労働者との両者を含むものであること。
 なお、派遣中の労働者が異なる派遣先に派遣されているための投票に併せて時間外労働・休日労働の事由、限度等についての意見・希望等を提出させ、これを代表者が集約するなどにより派遣労働者の意思が反映されることが望ましいこと。」
 (昭和61年6月6日 基発333号)


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