あの幕張のビル群の中に、テクノガーデンというのがあるが、そこの一階と地下にルネサンス・テクノガーデンという名前のスポーツクラブがあった。今は廃止されてしまって存在しない。そこでは、スカッシュ会員になると、開館時間中いつでも4つあるコートのどれかでプレイできるということで、スカッシュ好きには天国のようなところだったと思われる。私もだいぶ以前にヘッドカップというゲームがそこで催されたときに何度か行ったことがある。
今は、ルネサンス稲毛という名前に変わってしまっているが、スポーツクラブ・トリム・千葉(こっちのほうがよほどいい名前だと今でも思っている)というのができたときに、真っ先に会員になった。最初まずプールで泳いでいたが、次に、エアロビクスのエクササイズにも出てみた。ダンベルもやってみたし、軽いバーベルもやってみた。そのうち、スカッシュの無料体験レッスンというのがあって、それに参加したことが、スカッシュというスポーツとつきあうきっかけとなった。レッスンは、谷地泉さんというスカッシュ界では有名なコーチにそのとき習ったのだが、レッスンのあと、隣接する東京ライオンというビアホール・食堂(これもつぶれてしまった)でみんなで昼食をとったことを覚えている。
その後、トリムのスカッシュ・スクールの初心者クラスに入り、週1回のレッスンをほかの人々と受けることになった。そこでめぐり合った女性の方たちとスクールがなくなった今でも週1回スカッシュをやっている。このスクールを組織していたのは、千葉直樹さんという、この方も少し有名なプレイヤーで、大学のスカッシュ・クラブに所属する学生たちをコーチに呼んで、いくつかのレベルのちがうスクールを運営し、われわれのクラスにもずいぶんと長いこと、来てくれた。
トリムでは、年に2回くらい、日曜日を使って会員のなかのスカッシュ好きを集めて、「大会」をやった。たいていは団体戦で、ランダムに作ったチームどうしで対戦して、優勝を争うものである。終わると近くの酒場でビールということになった。
残念なことに、私の腕はあまり上達しなかった。ただ、ダブルスになりやすいテニスとちがって、スカッシュは1対1なので(ルール上はダブルスがあるそうだが)、少なくともゲームをやるときは、完全な一人前でいられるのがいいところである。むろん、あまり格の違う人とやってもお互いにおもしろくないので、自分と同じくらいのプレイヤーを捜すことが必要である。それと、男女混合で遊べるのもスカッシュのいい点だと思う。ゲームをやる場合には、公式のゲームはすべて男女別だし、お楽しみの大会でも男女の場合には、男性にハンディを与えるようではある。
これも以前稲毛駅から海側に歩いて数分のところのビルに、スカッシュ・センターという名前の、会員にならなくてもスカッシュのできる3つコートを持ったビルがあった。これなどは、スポーツクラブがあちこちにできる前からあったのだから、先進的な施設であることに感動した。学生たちにスカッシュをおしえるときには、そこを利用した。年代物のラケットを貸し出し、それでも、ホストの男性が大きなペールに氷水を用意してくれた。現在ではこれもなくなったので、稲毛のルネサンスで一般の人が使えるチケットを売り出すときだけ、学生を連れ出している。
スカッシュで試合に出たいというとき、当然若い人のほうが有利なので、たとえば、日本でもマスターズ・カーニバルなどといって60歳代まで年齢区分のあるゲームが行われる。ところが、外国では90歳代がいちばん高齢だというマスターズがあるのだ。スカッシュと聞くと、だれでも激しいスポーツというイメージを描くようだが、試合中に走る距離はテニスほどではないし、コートは小さいがたいていエアコン完備で、テニスの屋外コートのように、炎天や雨、冬の寒さに悩まされることはない。1時間もコートにいれば、心地よい疲労で、その夜の快眠は請け合いである。
最近、長いことワシントン・D・Cにいた娘がスカッシュを始めた。一度も教えたことはない。その夫君は前からスカッシュをやっていたので、ということもあるのだろうが、彼らが東京に転勤したので、多少ゲームの機会が増えるかもしれないと楽しみである。
(平成18年12月12日)
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