Bon Voyage! HOMEMOVIE REPORT > 1998年6月

「ウワサの真相 ワグ・ザ・ドッグ」
バリー・レビンソン 監督、ダスティン・ホフマン、ロバート・デ・ニーロ、アン・ヘッチ、ウッディ・ハレルソン、デニス・レアリー、ウィリー・ネルソン、アンドレア・マーティン、キルステン・ダンスト、ウィリアム・H.メイシー、ジョン・マイケル・ヒギンズ、スージー・プラクソン、クレイグ・T.ネルソン、マール・ハガード、ジム・ベルーシ
★★★★

これも機内上映。例のクリントン大統領セクハラ疑惑の渦中に話題になったブラック・コメディです。

大統領のスキャンダルをもみ消すために、戦争をでっちあげる! 影の黒幕にデ・ニーロ、目立ちたがりの辣腕プロデューサーにダスティン・ホフマン、広報担当補佐官にアン・ヘッチ。この配役がおおまじめにやっているのがけっこう笑える。しかも、かなりブラック。もしかしたら、あのイラク危機は演出されていたのではないか? アメリカならやりそう、と思ってしまうところが怖い。

ディテールも含めてよくできています。望外の収穫でした。

しかし実は、日本でも公開されていたらしい。全然知らんかった。2週間で打ち切りだったそうで、残念です。それにしてもこの邦題、なんとかならんかったのか?

「レインメーカー」
フランシス・フォード・コッポラ監督、マット・デイモン、クレア・デーンズ、ジョン・ボイト、ダニー・グローバー、ダニー・デビート、マリー・ケイ・プレイス、ミッキー・ローク
★★★

飛行機の中だったので、吹き替え。それにしてもUA、行きと帰りで同じ映画を上映するのはひどいじゃないか。「大いなる遺産」も楽しみにしていたのに。

それはさておき、ジョン・グリシャムの原作(『原告側弁護人』)をきれいに整理してうまくまとめるコッポラの手腕はさすが。不満だった法廷シーンに入る前のネタバレは当然のごとく刈り込まれ、クライマックスを盛り上げます。役者も最高。とくにダニー・デビートとミッキー・ローク。

というわけで、楽しめるし、不満もないのですが、なんでわざわざコッポラがこれを作りたかったんだろう? という疑問がつきまとう、実に凡庸な映画。

「ブルース・ブラザース2000」
ジョン・ランディス監督、ダン・エイクロイド、ジョン・グッドマン、ジョー・モートン、J.エヴァン・ボニファント、アレサ・フランクリン、ジェームス・ブラウン、B.B.キング、ブルース・ブラザース・バンド
★★★☆

あの名作「ブルース・ブラザース」が帰ってきた! というわけで、大喜びでCDも買って予習し、フランスへ出発する前日に有楽町で観ちゃおう、ってプランをたてたまではよかったんですが。

あの「チケット騒動」で暗い気分のまま入った劇場は2割程度の入り。これではノリはよくないわなあ。中身も、あのハチャメチャなエネルギーというかオーラが感じられない。なんというか、どうもテンションが上がらない。

前作をあまりにも神格化し過ぎたのかもしれない。ぐすん。例によってストーリーも映像も理屈じゃなくて、とにかく前へ進め的なドライヴ感が命なわけですが、これがどうも胸にストンと落ちてこない。

個々についていえば、面白いんですがねえ。ダン・エイクロイドはやせたし、アレサ・フランクリンもジェームス・ブラウンもエリック・クラプトンも見せ場たっぷり。

結論。これは大勢で盛り上がりつつ観るべし。多少のキズなんか関係なく、笑ってしまえる精神状態にもっていけば勝ちです。

「スフィア」
バリー・レビンソン 監督、ダスティン・ホフマン、シャロン・ストーン、サミュエル・L.ジャクソン、ピーター・コヨーテ、クイーン・ラティファ、リーブ・シュライバー、マーガ・ゴーメース
★★★☆

全然評判になっていないですけど、けっこう面白いですよ。というか、もともとあんまり期待していなかった割には、ということですが。一応、マイクル・クライトンとスティーヴン・キングの映画化はつい観ちゃうんですよねえ。原作のクライトン『スフィア』は、たしか上下2巻の長い小説で、当然、シナリオでは焦点を絞るわけなんですが、なんとこれは全体の構造をそのままもってきたので、なんか骨格が巨大で中身がスカスカになってしまった。それでも面白いっていうのは、ひとえに原作を読んでるからなんですね。ごめんなさい。

300年前に不時着して海底にいた巨大な宇宙船へと向かう、異種知的生命体コンタクトチーム。その内部には金色に光る球体(スフィア)、それに英語表示のゴミ箱、殴り殺された宇宙飛行士の死体。エイリアンものと見せて、まずはミステリータッチの導入部。海底の居住空間とか、数学者や生物学者の共同チームなんていうクラシックなSF風のディテール。突然、コンピューターのスクリーンに現れるメッセージ。暗号解読。襲ってくる災厄。クラゲや巨大イカの襲撃。ここで、怪物スリラーの様相を見せる。海水の侵入、火災とパニックものになり、サヴァイヴァル路線を走っていく。しかし、そんな阿鼻叫喚の巷で寝ている奴がいたり、約束を守らずに勝手に船外に出てしまったり、チームはお互いに疑心暗鬼に陥る。そして、途中から白紙になっている大量の『海底2万マイル』。ここからがクライトンらしい心理ドラマにして「いったい誰が悪いの?」ゲームになる。緊張がマックスになるところでは、爆発直前の脱出劇が展開される。そして、最後には人間の未熟さへの哲学的反省が込められる。

ストーリーのキーになるところが言えないので辛いのですが、どれだけ盛りだくさんか、おわかりいただけましたか? 実にサービス精神旺盛に、エンタテインメントをこれでもかと入れ込んで、しかも、ちらりと現代文明批判も織り込んでいるクライトンらしいプロットなんですが、映画に全部を詰め込むのは無茶過ぎる。となると、消化不良にならないように、細部にこだわらずに実にあっさりと流してしまう。ほとんどが海底の閉ざされた空間で起きるドラマなので、登場人物が極端に少ないのを利してどんどんストーリーを進めちゃうわけです。原作を読んでいない人にとっては、科学的裏付けが乏しい、リアリティのない、謎ときをしてくれない、不親切な映画に見えるに違いない。

きっと、大物俳優を揃えたSF仕立ての心理スリラーみたいな分類をされちゃうんでしょうが、本当はもっと深いテーマを抱えた射程距離の長いお話なんですけどね。たしかに、演出は古くさい怖がらせ路線だし、映像も「2001年宇宙の旅」や「エイリアン」の影響から脱し切れていないというのでは、なんまり点数はあげられないよなあ。


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Text by (C) Takashi Kaneyama 1998