中華料理の系統分類
河蟹粉絲保など
−百粤楼(広州)−
中華料理の分類の仕方には日本で普通に行われている、
北京、上海、四川、広東の四大料理体系の他に、八大料理体系とか台湾で採用されている六大料理体系、
揚子江の北と南で江南、江北に分けるやり方等が有りますがここでは四大料理体系を基本に解説を行い、
他の物については簡単な説明を行うだけにします。
中国各地方料理は料理に必要な水が有るところ、即ち河の流域にそって発展したと言われています。
従って北方系の北京料理は黄河、東方系の上海料理は揚子江の東部、西方系の四川料理は揚子江の西部,
南方系の広東料理は珠江流域にそって発展してきたのです。
北京料理(北方系)
- 北京料理は日本では北京で出されている料理といったような意味で割と気楽に使われていると思いますが、
実際の所北京には地場の料理が余りなく、中国全土の料理が集まって出来上がったものが北京料理と言うことが出来ると思います。
その中でも一番のバックボーンになっているのが山東料理になります。
北京には実際豊沢園とか同和居と言った有名な山東料理の老舗が沢山有ります。
因みに、有名な北京ダックなども本来は南京の料理だったものが北京に伝えられてここで発展したものだと言われています。
- 北方系の料理には次のものが有ります。
- 北京料理(京菜)、山東料理(魯菜)、河北料理、河南料理(豫菜)、山西料理、東北料理(これは本来は分類外なのですが、
ここでは北方系に分類しておきます)
上海料理(東方系)
- 上海料理も北京料理と同じように、中国全土の料理が上海に集まって出来上がったものです。
しいて地場の料理と言うと、上海老飯店とか徳興館で出す料理で本地菜などと呼ばれています。
香港あたりで上海料理(滬菜)の看板を掲げている店では揚州料理から無錫、蘇州、杭州、寧波などかなり幅広い範囲の料理をとりあつかっています。
- 東方系の料理には次のものが有ります。
- 上海料理(滬菜)、南京料理、揚州料理(淮揚菜)(1,2)、鎮江料理、
無錫料理(錫菜)、蘇州料理(蘇菜)、杭州料理(杭菜)、
紹興料理、寧波料理(甬菜)、安徽料理(徽菜)、江西料理。
- なお、南京と蘇州の料理を一括して京蘇菜と呼ぶこともあります。
四川料理(西方系)
- 四川料理は四川省の非常に特殊な風土を背景にして成立した料理で、四川省以外では余り本格的なものは望めません。
と言うのは冬場の四川省では霧が立ちこめて、太陽が顔を出すことは殆ど有りません。
そのため、「蜀犬日に吠ゆ」などと言う諺まであり、太陽がでるとびっくりして犬が吠えだすそうです。
こう言った特殊な気候風土を背景として麻辣(マーラー)の味の四川独特の味付けが出てくるわけです。
麻は痺れるような山椒の味、辣は唐辛子の辛い味ですが辣の味の方は辛いものが好きな日本人からすればそれほどでは有りませんが、
麻の方はまるで口に麻酔をかけられたような状態になりこの体験は鮮烈です。
- なお、麻辣の味の料理の代表格は麻婆豆腐と水煮肉片です。
- 西方系の料理には次のものが有ります。
- 四川料理(川菜:外部との交流の多い重慶と外部との交流の少ない成都ではスタイルが異なります。)、
湖北料理、湖南料理(湘菜)、貴州料理、雲南料理、広西料理。
広東料理(南方系)
- 広東料理は昔から食在広州と言う諺が有るように、広州を中心に発展した広州菜、
客家(ハッカ)の料理である東江菜、潮州スワトウ地区で発展した潮州菜が有ります。
ここで、南方系に分類した福建料理([min]菜:[min]は門構えに虫を書きます)には、
福州あたりで発展した福州菜と厦門(アモイ)とか泉州、台湾あたりの「min]南菜が有りますが、
この二つは料理方などがかなり異なっています。
- 南方系の料理には次のものが有ります。
- 広東料理(広州菜(粤菜)、東江菜、潮州菜)、
福建料理(福州菜(1,2)、[min]南菜)、江西菜。
上記の分類とは別枠で、清真菜と素菜が有ります。
清真菜は回教の料理で豚肉を食べません。
また、素菜は精進料理のことです。
八大料理体系
- これは、四大料理体系をさらに細分化したもので、山東料理(魯菜)、四川料理(川菜)、
湖南料理(湘菜)、安徽料理(徽菜)、江蘇料理(江菜)、浙江料理(浙菜)、広東料理(粤菜)、
福建料理([門+虫]菜)からなっています。
何故八大料理が有名になったかと言うと、清朝の末期から中華民国初期にかけてこれらの地方から多くの才人が排出して、
腕のいいお抱えコックをつれて中国各地の役人になったため、
中国全土にこれらの料理が広まったと言われています。
台湾での六大料理体系
- 中華民国が台湾に遷都して以来、大陸から八大料理の名厨師が台湾へ渡って来て、
ここで熾烈な競争を展開したわけです。
その結果、淘汰吸収が起こり再編された結果が六大料理体系になります。
これには、北方菜、川菜、湘菜、江浙菜、台菜、粤菜が有ります。
台湾本来の料理である台菜を除くと優れたものは台北に集中していて、
その中でも湘菜(湖南料理)の水準の高さは特筆に値します。
多少値段が高いですけど台北に行く機会が有ったら試してしてみることをお勧めします。
これに対して余りお勧め出来ないないのが四川料理です。
台湾での四川料理没落の過程は川姉子豆花村の項を参照してください。
江南江北
- これは揚子江の北と南で分ける方法で、江北には北京、南京、揚州、湖南、湖北、安徽、河南、
山東、河北、天津、山西、四川などが含まれます。
- 江南には上海、蘇州、無錫、鎮江、杭州、寧波、紹興、江西、福建、広東、貴州、広西、雲南、
台湾などが含まれます。