■  ◆ なぜ赤ん坊は泣くのか?


産まれたばかりの子供は、数時間おきに母乳を欲しがるので寝不足に なる方も多いと思います。 子育て真っ最中の某Aさんは「子供が泣かないように進化しないものか」 とつぶやきました。

ちょっと考えてみましょう。 「子供が泣かないように進化させる方法」は、あります。 方法は、簡単です。

 ・泣くような子供は、育てない
 ・泣かない子供だったら、育てる

それを、多くの人がするようになれば、そして何世代も続いて行けば、 だんだん、そうなります。
あるいは、 遺伝子操作 / 治療技術が進めば、 受精卵を取り出して、 「泣く遺伝子」を書き換えてから、出産させることもできるでしょう。 いずれも、進化と言うよりは「品種改良」と呼ばれるものに 近いかもしれないですが。

何十人か子供を産めば、突然変異か何かの組合せの偶然で、泣かない 子供が産まれるかもしれません。
でもその確率は低いです。なぜなら、Aさんも、おそらくAさんの 奥さんも、またその親たちも、ビービー泣いて育ってきたからです。 ビービー泣いて、親に面倒を見てもらった子供の方が、元気に 育って来たからです。

体の不調を感じると泣くように、赤ん坊はプログラムされており、 親は赤ん坊の泣き声を聞くと 世話せずにいられないように、 プログラムされています。それは、ひとりの遺伝子の中に、 セットで両方入っています。
赤ん坊には、よく泣く子やあまり泣かない子が生まれるようになっていて、 親にはよく世話をする人と、あまり世話しない人がいます。 よく泣く子の育児の苦労が限度を越えて、 「こんなに辛いなら、育児なんてヤメタ。」と親に思わせるなら、 子育てはされずその子供も育ちませんから、 その子は進化的に排除されます。また、親の、世話しない遺伝子も 受け継がれません。
でもその手前の、「辛いけど、( かわいいから ) なんとかやれる。」 という程度の子供は育ちます。

子供側としてはなるべく手をかけてもらった方がうまく育つ、のに対して、 親側はあまり苦労したくない、という間のバランスがあって、 結局子供は、ギリギリのところまで親に苦労をかけるように、 進化しています。
つまり、子育てが辛いのは ( 進化的に ) 仕方がない。
その上現代では、子供が泣こうがわめこうが「子殺し」は犯罪であり、 社会ルールとしてやってはいけないことになっていますから、 子供がより苦労をかけても許容される方向に淘汰圧がかかっています。
つまり、これから子育てはもっと辛くなって行くでしょう。

でも、もしかすると、 「3時間おきに起きて子供に母乳を与えるのが快感だ」 という進化もあり得ます。( 残念ながら僕は独身男性なので、 それを実感することができません。 ^-^ )
男性はあまり育児に関わらないので、そういう感情が共進化しなかった のだと思いますが、女性は子供と密接に関わっているので、共進化して そんなに辛くないのかもしれません。
子供がある方は、ぜひ奥さんに訊いてみてください。


1997/10/15 T.Minewaki
1999/09/11 last modified T.Minewaki

文化と遺伝子の共進化
生命のよもやま話
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