◆ 生命のはなし (5) ◆

年老いた名ピアニストのドキュメンタリー番組を見ていたら、最後に インタビュアがピアニストの担当医に質問。
「年老いても健康でいる秘訣は、なんでしょう?」
「そりゃ簡単だよ。秘訣なんてない。『良い遺伝子を持つこと』それだけさ。」



遺伝子操作について


News1993> 体外受精技術を使う "究極の胎児診断法"
News1993> ◆ 受精卵で遺伝子検査
現在、ヒューマンゲノム計画というのが国際プロジェクトとして進行中で、 そのうち、人間の遺伝子コードの全ての「意味」が、わかるようになります。 それが現在でもある程度わかっているので、遺伝病の診断もできる訳です。

今は、診断するだけですが、そのうち、 遺伝子を操作した後の子供が生まれる ようになるでしょう。 成長した人間の遺伝子を改造することも可能となるでしょう。

いろんな目的のために、倫理感はあっても表で裏で、遺伝子操作は行われるように なるでしょう。これは、結構とんでもないことです。

簡単な例としては、「肌の色を変えられる」としたら、どうでしょう。 肌の色のために差別されることは、人種問題として深刻な悩みですから、 そういう場所で、「肌の色変えます、髪の色変えます」 というヤミ商売をしたならば、死んでもいいから、金はいくらでも出すから やってくれという人が沢山やってくるでしょう。
他にも、「100 年長生きするために」「いつまでもスベスベの肌に」 「知能を5倍に」などなど、いくらでも可能性は考えられます。

人間の欲望は抑え難く、そこに手の届く技術があれば、 使ってしまいたくなるのは人間の心理です。 特に、「このまま何もせずに死ぬくらいなら…」という極限状況においては 「使わない」ことを選択するのはとても難しい。

「俺、遺伝子 25 個も変えてるんだぜ。」
「ヘーっ、あたしはノーマルなの。いいなー、その緑の肌。」
なんてことになるかもしれない。
人類の未来は、 映画「ブレードランナー」のレプリカントではなく、 映画「トータルリコール」の(失敗した?)ミュータントで溢れているのかも しれません。

しかし、技術が成熟するまでには、時間もかかります。 発現に対応する遺伝子だけを変えれば、それでOKという訳ではなく、 受精卵からの発生の過程で、相互作用は複雑です。どんな副作用があるかは 未知数で、それを「実験」で知ることにも問題があります。
最初はうまくいかなくて、人間の子宮から、人間ではないもの、 動物でさえないものが生まれてくるという光景は想像しても怖い。
映画「フライ」にそういうシーンがあったな。 (*

自然界では、遺伝子のバリエーションをオス・メスの遺伝子交差によって つくり、そのうち出来の良いものは残し、悪いものは遠慮なく排除する。 というやり方ですから、 「欠陥のある遺伝子でも、なんとかして生かしてしまう。」 という人間の医療は、かなり「不自然」なものといえるでしょう。



* 農作物でもサラブレッドでも、品種改良や遺伝子操作の実験過程で、 どれだけの"失敗作"があっただろうかと想像してみるといい。 (1998/12/07)



1993/06/03 T.Minewaki
2001/08/06 last modified T.Minewaki

6: 残されたものたちの世界
生命のよもやま話
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