◆ 生命のはなし (9) ◆



遺伝病をなくす、ある方法

遺伝による要素を持つ病気、例としてガンを考えましょう。
たしか、最近の人間の死亡原因の1位はガンです。 ガンという病気をなくして健康に長生きしたい、 これは人類みんなの願いです。

ガンは、ある程度遺伝的な要素を持つ病気で、親がガンで死んだ場合、 その子どもがガンで死ぬ確率が高い、ということが経験的にわかっています。 そういう病気の場合、次のようなやり方でガンという病気による死亡率を 減らしてゆくことができます。

ある人がガンで死んだ場合、その人の血(遺伝子)を引く子孫は、
すべて「殺す」か「不妊にする」。
これは残酷で極端なやり方だ、と多くの人は思うでしょう。
でも、このやり方でガンという病気を絶やしていくことは確かにできます。 そして、「人類の健康な繁栄」に貢献できます。
逆に言うと、「ガンにかかっても長生きする」という治療法は、 もう一方で「ガンになりやすい遺伝子を残す」という効果をも 持っているのです。

個人の生命と、人類の将来と、どちらが大事か?
難しいですね。自分が死ぬ/子供が残せないのは辛いけど、自分の子供や孫が これから先何世代にも渡ってガンの死の苦しみを味わうのも辛い。

利他的行動というもの、他人のために自分を犠牲にする、というのは、 現在の人類の道徳では美徳とされているようだから、上記のやり方も それほどクレイジーでもないかもしれない。
実際、「人類、自分どちらを救うか?」そういうテーマの映画はいくつも 作られているし、(遊星からの物体X、デッドゾーン、エイリアン3、 ターミネーター2 などなど)結局、主人公は人類の未来を優先して 死んでゆく。
それを見て僕らは涙を流して「感動」する。


Life5: 遺伝子操作について
> 「年老いても健康でいる秘訣は、なんでしょう?」
> 「そりゃ簡単だよ。秘訣なんてない。『良い遺伝子を持つこと』
>  それだけさ。」

大事なのは「遺伝子」だ、という考えが進むと、 受精卵の遺伝子操作が正当化されるようになるのはもちろん、 病院で、「複製」や「ブレンド」された「良い受精卵」を買うという ところまで行くかも知れません。

販売員:どんなものがお望みで?
 妻 :健康で、頭のいい雄がいいわね。肌は白、目はブルーで髪は グレイ。
 夫 :それで、科学者の血が混じっているのはあるかな?
販売員:ちょっと値が張りますが、物理系ならニュートンブランド、 数学系ならノイマンブランドのが人気がありますが。 どうでしょう。
 夫 :じゃあ、ノイマンブランドの G-234 にしよう。これなら 僕らの子供にぴったりだ。
販売員:ではこちらの試験管をお持ちになって、着床室へどうぞ。 それから育児の際にはこちらのマニュアルをよく読むように。



1994/01/10 T.Minewaki
2000/02/27 last modified T.Minewaki

10: 宗教・思想と生物
生命のよもやま話
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