《 2000/09/22 読売新聞 夕刊より 》

クローン人間作り
信者使い米で開始

スイスの新興宗教団体が発表

欧米などで活動する新興宗教組織「ラエリアン」(本部・ジュネーブ)と、 関連のバイオ企業「クロネイド」は、二十一日(日本時間二十二日)、 カナダ・モントリオールで記者会見を開き、米国内に設けた施設で、 クローン人間作りを始めると発表した。 読売新聞の電話取材に対し、「ラエリアン」の責任者は 来年中の誕生を目指すと語った。

このグループのクローン技術がどの程度のレベルにあるのか未知数だが、 初のクローン人間が実際に誕生してしまう可能性もあり、 計画は波紋を広げそうだ。

クローン作りが試みられるのは、医療事故のため、 生後十か月で死亡したという米国人の赤ん坊。 グループによると、両親は二億円以上の資金提供を申し出ているという。 クロネイドでは、冷凍保存している赤ん坊の血液細胞から 遺伝子を含む核を取り出し、 代理母となる二十代女性の卵子に体外で移植して胚を作り、 女性の子宮に戻して育てるという。

米国をクローン作りの場所に選んだ理由について、 「クローン人間作りを罰する刑法規定がない」ことを挙げ、 施設の場所は公表できないとしている。

現在のクローン技術の水準では動物の場合でも出産までこぎつける確率は低い。 このため、クロネイドでは、代理母となる女性を、 世界各地の信者から五十人確保。 来月末から子宮への胚の移植を行い、経過観察しながら、 最も健康な胎児一人を出産させるという。


外部リンク:
 → ラエリアン・ムーブメント
 → プレスリリース:CLONAIDは、初のクローン人間の赤ちゃん作りを 開始します。

ここから MINEW のコメント:

先日の NHK スペシャル「いのち 生老病死の未来」 で、宗教団体がクローン人間づくりを計画し、ホームページで 申し込みを受付けている、というレポートがあったのはこれのこと だったようだ。
うわぁー、ついに、本当に始めちゃうんですか。という驚きと呆れがある。 その気がありさえすれば技術的には実行できてしまうことなんですよね。 成功するかどうかは怪しいけど。

そして、クローン希望者は、やはり 幼子を亡くした両親がその復活を願う、というケースだった。
医療ミスで殺された赤ちゃんの命を復活したいと願う この家族に反対する親たちは地球上に誰ひとりとしていない筈です。 (ラエリアン・プレスリリースより抜粋)
これは、同情を得やすい境遇ではある。 もしも、うまくいって可愛い赤ん坊が生まれ、両親に満面の笑みで ほおずりされている映像が世界に流れたりしたら、それを肯定する風潮が 起こってしまうかもしれない。そこだけを拡大して見せれば。 子供、涙、笑顔は強力に人を動かすから。
先駆者として成功し、ビジネスとして成立する(大儲けする)可能性も ないとはいえない。

気をつけなくてはいけないのは、見えない部分。 何かが起こってしまってから困らないように、いろいろ想像しておこう。
どうしても引っ掛かるのは「代理母を50人用意し、胚移植後、 経過が最も健康な胎児一人を出産させる」というところ。 最後の一人とはなれなかった胎児達はどうなるのか? おそらく「産まれてこない」ということなのだろう。 それはどの時点で、どうやって決められるのか?
その不運な子供たちはどうやって消されてゆくのか? (彼らの声を聴くことはできない。) (移植用臓器として転用されたりするのだろうか、 産まれた子のバックアップとしては理想的だ。)
代理母たちに健康上の負担はかからないのか?
なんらかの失敗が起こった場合に、それは公表されるだろうか?
産まれてきた子供がもしも完璧ではなかった場合、 または成長してから何かの不具合が起きた場合に、 両親はそれを自分の責任として受け入れられるか?

不安は疑問はいくらでも湧いてくる。 来年、何が起こるのか、起こらないのか、忘れずにおこう。

米科学者グループ、クローンの問題点を指摘 / Yahoo! News 2001/03/26
ヒトクローン、全面禁止法案を可決 米下院 / Yahoo! News 2001/08/01
遺伝子操作について
クローン人間?

2000/09/25 T.Minewaki
2004/12/27 last modified T.Minewaki

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