昔日のグルントヴィとともに 清水 満 |
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ヴァートフ(Vartov)の中庭にあるグルントヴィ像 | ||||||||
2002年2月22日 G君へ こちらは来てから一日だけ晴れた以外は雪の日が多く、寒い日が続きます。今日は特に積雪がすごかったので全土で交通がマヒしてしまったとか。午後には雨になり少し寒気もゆるんで交通も復活したようです。 Kirkeligt Samfundはいわゆるグルントヴィ・ファミリーと呼ばれる組織の一つで(他の仲間はホイスコーレ、フリースクール、エフタースクール、農学校、家政学校、グルントヴィ自由教会など)、グルントヴィが後半生牧師をつとめたヴァートウ (Vartov)教会の建物を管理し、グルントヴィ図書館やグルントヴィ・アカデミーを運営したり、各種のグルントヴィ・ファミリーの集会や会議の場を提供しています。エフタースクール協会の事務所はここにありますし、かつてはホイスコーレ協会の事務所もありました。もちろんヴァートウ教会もまだ存続しています。ほかにも出版活動やCD作成などもしており、一言では説明できないような組織であることは確かです。 事務局長のハンスによれば、いちおう会員制で会費もとってはいるが、財政的にはこの施設をいろいろな団体に賃借することでうるおっているとか。いい場所に建物を所有する強みですね。 目の前にはタウンホール(市役所)、すぐ近くは有名な繁華街ストロイエの入り口があるコペンハーゲンの中心地に位置しますが、大都会の孤独というものがありません。 みなさん心暖かく親切で、 グルントヴィ・ファミリー、ホイスコーレ・ピープルの優しさを感じます。私も国こそ違えど広い意味ではグルントヴィ・ファミリーに属する人間ということもあるのでしょうか。 それに何よりも、グルントヴィがいたその場所、多くの活動家たちが出入りし、今もその伝統が息づくところに住むことができるというのははなはだ感慨深いものがあります。日本だとこれほどの人物ならば神格化され、立派な顕彰館に資料館などができ、一般人には近寄りがたい雰囲気と権威主義がはびこるのですが(有名私立大学の創設者などを思い出してみて下さい)、こちらは図書館もアカデミーもみなこぢんまりとして権威主義のひとかけらもなく、誰でもが参加できるくだけた雰囲気をもっています。このヴァートフに幼稚園、保育所が三つもあるというのもグルントヴィの伝統らしいと思いませんか。Kirkeligt Samfundが政府、行政からの補助をいっさい受けていない(公立幼稚園の入居料は対等な賃借契約としてもらっている)で独立を維持しているというのもグルントヴィの「自由」の伝統の一つです。 今日の夕べにはグルントヴィ図書館で「グルントヴィの伝統とナショナリズム」というテーマの討論会があります。今からそれに出ますので、つづきはまた次回に。 タウンホール(右)とストロイエ入り口(左) |