霧積温泉と八ヶ岳高原での紅葉狩り

グリーンウッド夫妻は2005年11月7-9日にかけて霧積温泉に紅葉狩りに出かけた。グリーンウッド氏が11月2日に鼻曲山に登ったとき、霧積温泉に夫婦で訪れたことのあるK氏が明治期の建物を維持し完全な掛け流しの秘湯だと評価したため興味を持ったのがキッカケである。今年の紅葉が終わる前にと出かけることにした。

ついでにと、ロータリーハーレー会の隊長、石原氏が父祖伝来の母家を取り壊す前に夫婦で見学させてもらおうと群馬は境町の御宅に立ち寄ることにした。せっかく出かけるのだからと、茂田井宿 (もたいじゅく)を再訪することにした。ならばもう一泊をしてゆっくりしようと荻原夫妻が四国ツーリング後立ち寄った扉温泉か、1999年8月7日に昼食にレストランに立ち寄りそのグレードの高さを評価していた八ヶ岳高原ロッジかに一泊してゆっくり帰ろうと考えた。

扉温泉の明神館はあいにく空き部屋がなかった。おのずと八ヶ岳高原ロッジということになった 。

第一日

朝8:00鎌倉発→第三京浜→環状八号線→関越自動車道本庄児玉ICで境町石原宅に12:00着。嵐山SAでコブシの種を拾う。

石原家の家業は 現在は機能性繊維の開発・販売をしている石栄興業だが昔は「伊勢崎めいせん」の機屋で、母屋は養蚕用に150年前に建てられたものだ。鉄骨などで補強し、引き戸はアルミサッシに交換し、古い瓦は何度も積み替えて 今まで使ってきたが、付属する土蔵は残して来年の春にも取り壊して建て替えることにしたのだそうだ。土間へ通ずる玄関の両側には伝統の魔よけが律儀に飾ってある。

10月末に一緒に四国をツーリングしてきた斎藤氏と飯塚氏も顔をみせてくれて一緒に約600坪の敷地内にある石栄 興業の事務所で昼食をいただき、午後2:30にお暇する。

石原家の母屋と石原夫妻

関越自動車道本庄児玉ICにもどり、上信越自動車道松井田妙義ICで国道18号に入る。坂本宿から霧積川がつくった渓谷にそって霧積温泉に向かう。対向車との交差用にところどころ幅が広くなった、典型的な林道基準の道路だが舗装はされている。渓谷の紅葉は見事だった。長野新幹線が霧積渓谷を横断して一瞬トンネルを出て橋を渡りすぐトンネルに入る箇所を過ぎる。

霧積温泉には明治期に建てられた湯元の金湯館(きんとうかん)と新しい「きりずみ館」の2軒だけだが、「きりずみ館」は湯元から1キロ下流にあって温度が下がってしまうため沸かし循環式である。予約した金湯館(Hotel Serial No.333)は湯元だけあって40度の源泉掛け流しである。それでも晩秋になるとチトぬるい。湯元にたどりつくまでには「きりずみ館」から更にせまい林道を直線距離にして1km登 らねばならない。途中未舗装部分もあるがジープなら安心。ここから鼻曲山まで十六曲峠経由標準時2時間20分である。

週末には紅葉の季節とあって登山者でほぼ満員になるが、週日は静かなものである。明治期の建物は廊下に囲まれ、障子で仕切られた部屋が4部屋程ある。勝海舟、伊藤博文、与謝野鉄幹・晶子 はこのような部屋に泊まったのだろう。新館は壁で仕切られた部屋である。暖房は排煙が部屋に直接排出される方式のため、寝る時はスイッチを切らねばならないのと山小屋方式のシーツなしの毛布が玉にきずだった。部屋毎に配膳する旅館方式のため、部屋代は11,000円と山小屋よりはコスト高。

第二日

十六曲峠への散策はきついので「きりずみ館」(943m)までジープで下り、旧碓氷峠に至る散策路を楽しむことにする。標準時1時間の美ノ平(打越ノ平1,260m)まで標高差317mの登りであった。 紅葉したブナが混じるミズナラの林間の急勾配を登る。持ち帰っても1,100m以下では育たないはずであるが発芽したミズナラのどんぐりを拾う。途中ヒガラの一団が我々を歓迎してくれた。鼻曲山の大天狗の岩峰が木の間よりみえる。カラマツ林の美ノ平 より留夫山、一の字山を遠望して帰途につく。登り2時間、下り1.5時間かかった。

霧積温泉湯元 金湯館

美ノ平より留夫山と一の字山を望む

明治17年に開通し、昭和8年に拡幅されたカーブ数184の碓井新道(国道18号)にもどり、なつかしいつづら折を登る。まわりの木々も明治期以後伐採を免れて巨木となり、見事な紅葉を見せている。若き頃、スバル360で夜間登ったためこの道がこんなすばらしいところだとは今まで気がつかなかった。ポルシェが花吹雪のように舞う落ち葉の中をゆっくりと登ってゆく。途中、旧信越線の4連アーチの碓井第三橋梁橋(めがね橋)を見る。 鹿島建設の二代目鹿島岩蔵が碓井峠のアブト式鉄道工事を請け負って完成させたものだ。鉄筋コンクリート製だが景観を考慮して国道18号からみえる面だけレンガ張りにしてあるという。長野新幹線完成後は廃線となって今ではアプト道といってこの橋の上を散策できるようになっているらしい。

旧信越線の4連アーチの碓井第三橋梁橋(めがね橋)

軽井沢駅前のシェルで給油。以後追分宿から国道18号と別れ、旧中山道に入る。しなの鉄道の御代田駅を過ぎ、小田井宿(おたいじゅく)本陣跡の前を通るが小田井宿の面影を伝えるものはない。つぎに岩村田に向かうが、小海線の岩村田駅を中心に町が発展し 、昔の面影はない。ここで右折し塩名田宿に向かう。塚原というひらけた水田地帯を通過するが小さな塚が沢山点在する。古代にはここは豊かなところで豪族が多かったのであろう。千曲川にかかる中津橋に下るSカーブ周辺の家並みは塩名田宿の風情が残っている。ふとこの夏 ブルゴーニュのスミュール=アン=オーソワの町の西側の谷を渡るため下ったSカーブの風景が頭をよぎる。

茂田井宿では武重本家酒造としなの山林美術館を訪問した。武重本家酒造は若山牧水にちなんで「牧水」という酒を販売しているようだ。「善光寺秘蔵酒」などの醸造元の大澤酒造が経営するしなの山林美術館では「茂田井宿の酒」を1本買い求める。

茂田井宿の武重本家酒造としなの山林美術館

ナビに八ヶ岳高原ロッジの電話番号を入力してひたすら走る。夕日が八ヶ岳山麓に沈むころようやく海の口別荘地入口に到着。強い西風で砂塵が舞う広大な農地で沈みゆく夕日の後光を見る。 黄砂が飛んできているのかもしれない。赤岳の南のキレットに向けて林立する岩峰が険しい雰囲気を漂わせている。

夕日の沈む 八ヶ岳山麓

品格ある海ノ口別荘地の長いカラマツの並木を通って無事八ヶ岳高原ロッジ(Hotel Serial No.132)着。料金はオフシーズンということで 一人1.4万円であった。1999年8月の部屋代金2万円であったので30%は安くなっている。霧積温泉の1.1万円に比較しても割安感がある。夕食まで時間があったので「茂田井宿の酒」の栓を開ける。久しぶりに洋食のフルコースを楽しむ。

星とバードウォッチングの団体が一緒であった。満天の星で寒ささえ我慢できれば最高の時だろうがバードウォッチングはあいにくの強風で鳥は鳴いていないだろう。

第三日

八ヶ岳高原ロッジは開業30周年とのことであったが、国際水準のサービスに満足して残暑期の避暑として2006年9月の長期滞在を予約する。

八ヶ岳高原ロッジ

チェックアウト後、海ノ口別荘地最高地点(1,800m)から横岳に連なる杣添(そまぞえ)尾根登山口を訪問する。登山者用の駐車場も用意されている。ここから横岳(2,829m)まで標高差1,000mだ。ちょうど越後駒ケ岳の標高差だ。標準時間は登り3時間、下り2時間だ。これを1.5倍すれば登り4時間、下り3時間と なる。2004年10月7日のまえじま氏の単独行のようにいそがずとも、8:00登山口、12:00山頂、午後3:00登山口帰着と日帰り登山が可能。 殆ど樹林帯の地味なルートだそうだが、赤岳に連なる県界尾根や真教寺尾根は頂上付近が急坂で難所だが、杣添尾根は頂上まで一直線に登り、その分単調だが優しくみえる。単独行でも可、仲間が見つかればなお結構。

海ノ口別荘地から見た赤岳、横岳とその杣添尾根

皇居新宮殿の基本設計を担当した吉村順三設計の八ヶ岳高原音楽堂を再訪する。結婚式会場と時々演奏会に使われている。遠くに御座山が見えた。八ヶ岳高原ヒュッテは宿泊用には開方されていないという。

御座山を背景にした八ヶ岳高原音楽堂

帰路も海ノ口別荘地の長いカラマツの並木を通るが並木の向こうに金峰山が見えるように道路が付けられている。心憎いデザインだ。カラマツは半分葉を落としている。もうじき丸坊主になるだろう。カラマツの落ち葉を人手をかけて掃除している。この並木道に文明の雰囲気を与えている理由がそこにあるのだ。

金峰山に向かって下る海ノ口別荘地のカラマツ並木

野辺山で安い野菜と果物を仕入れる。清里を通過して川俣川を渡るとき八ヶ岳山麓を背景にかかる雄大な八ヶ岳高原大橋がみえる。折りからの日本晴れであったのでここで一時休止。

八ヶ岳山麓を背景に八ヶ岳高原大橋

いつものとおり御坂道を通って河口湖に出る。富士山が新雪に輝いている。これを愛でるために河口湖大橋を渡らず、湖畔周回道路に入る。

河口湖からみた晩秋の富士山

まだ日も高いので、いつもの国道246号線はけいゆせず箱根山越えで帰宅することにする。乙女峠を越え、箱根ハイランドホテルでコーヒータイム。(Restaurant Serial No.271)箱根ハイランドホテルの中庭には蔦がからまったミズナラの巨木があるが、標高660mのところで生育していることが驚きだ。

箱根ハイランドホテルロビー中庭のミズナラの巨木

箱根ハイランドホテルは近くなので宿泊したことはないが、巨木の茂る湿地帯など変化に富んだ散策コースを持っており、露天風呂もあり、乙女峠越えのときは休憩に気軽に利用できる 便利なホテルだ。箱根湯本に下り、西湘南バイパス経由、午後3:20に帰着。 箱根湯本あたりはまだ紅葉まで時間がありそうであった。

November 15, 2005

Rev. September 1, 2006


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