永続敗戦論について

白井聡著「永続敗戦論」は私が「原発敗戦」で書きつくせなかった本質をついているようだ。白井氏は私が靖国問題で 指摘したような国民を必敗の戦争に突っ込んだ指導者の責任を問わないでいることが正しい歴史認識を生まない理由だろうとしている。結果として自民党のなか には正しい歴史認識を持てないひ弱な精神の代表のようなものが大勢いるために隣国と正常な関係を結べず、好戦的な憲法改正に逃げ込もうとしている輩が存在 する。

それもこれもマッカーサーが米大統領になりたかったから天皇を免責したことに原因がありそうだ。そこらへんは2013年7月27日に初演の米映画「終戦の エンペラー」という映画で明らかにされてるようだ。なぜ「敗戦のエンペラー」にしないのかと疑問をもったがこれはハリウッド映画だから、敗 戦というはずはない。原題はどうかしらべたら。単にEmperorであった。

ハリウッド映画と言っても実はこの映画の「仕掛人」は日本人だ。奈良橋陽子氏という英語教育と映画のプロデュースを長年やって来られた方で、2年間をかけ た脚本の執筆段階から深くこの作品に関与している。「フェラーズ准将と、関屋貞三郎枢密顧問官のライン」で「昭和天皇とマッカーサーの信頼関係構築」が出 来て行ったというシナリオはプロデューサーの奈良橋氏が関屋貞三郎の孫であるという関係から、かなりフェラーズ家と、関屋家の関係者の思い入れが組み込ま れているという。というわけで、日本人の歴史認識はいまだマッカーサーすなわちフェラーズ准将と、関屋貞三郎枢密顧問官の利益誘導の影響でゆがめられたま まであるともいえる。

さて歴史認識がグレーのままだと、やることなすこと全て裏目にでる。尖閣、竹島、南京、従軍慰安婦は言うに及ばず、たとえば;

@2013/7/19の朝日の誌面はMHIは南カルフォルニア・エジソン社からサンオノフレ原発の蒸気発生器の契約金額138億円を上回る損害賠 償請求書 を送りつけられそうだという。不要になった核燃料、廃炉費など間接費用を含む一切の費用がふくまれているという。ならば数千億円になるかもしれない。その 理由は20年の稼働を保証したのに1年しかもたなかったという理由だ。いずれにせよMHIの技術力の不足以外のなにものでもないのはたしかだが、GEの チョンボエンジニアリングが原因の福島事故では米国への損害賠償請求出来ないという契約を締結させられていたわけで、米国側ははじめから事故を想定して完全防衛していたわけだ。原発持てると歓喜してこの条件を飲んだ日本の完敗。トルコ、インドに輸出しても多分 負ける。なぜなら原発売りたい日本政府の焦りがそのような条項を忘れさせるからだ。まー政府の担当役人が職に留まる間は事故などおこらないからこれでよしと考えるわけで、マッカーサーと同じ自己中な発想だ。

Aパナソニックと子会社の三洋電機は自動車向けスイッチとリチウムイオンバッテリーでカルテルを作って価格操作したとして57億円の罰金を司法省に支払う。 これは米国でカルテルをすることは自殺行為だという理解がトップにないのが理由。負けるべくして負けた。これも経営者の不勉強だから米国をせめてもはじまらない、完敗である。

B自動車のメッカのデトロイト市は2兆8000億円の負債をかかえて破産申告をした。これは多分相手、すなわち日本が強すぎたのだろう。これで日米間の1勝2 敗。

C先日、ドイツ在住の望月氏から日本のアニメはなぜ斜陽かときかれたが、私はジョッブズがはじめたピクサー社の3Dアニメを日本が開発できなかっ たためと認識している。数日前にもディズニー・ピクサー社のモンスターズ・インクを見たが、やはり負けている。「風立ちぬ」のような優れたアニメにするた めにジブリは作画を下請けに出すことをやめ、社員として雇用し作画することにしたそうだ。タイトルバックにでた作画担当者の数をかぞえたところ300名は いた。ほとんど女性。その彼女たちも5年たつと皆産休に入ったそうだ。 映画も劇もシナリオは大切だ。とはいえやはり画像表現だから画像そのものの品質が高くなければならない。人件費だけで300人 x 400万円 x 5年=60億円となる。元NHKの小笠原さんが「モンテクリスト伯」のアニメ化を企画したが25億円と聞いて断念したという。でも法外な数値ではない。時 代劇も衣装や建物にがかかる。先日1995年の「恋の闇 愛の光」の英国映画を見たが140億円かかり、収入は40億円だったそうだ。日本でこれを継続し てゆくのは大変だ。米国はそこでコンピュータ化したわけ。人間が演じて、そこにコンピュータで着物を着せるわけ。エンジニアリングもほとんど人件費だ。配 管設計など詳細設計は今ではCADを使うが、私が引退する直前にインドに子会社を作り、「いまではそれが育ってほとんどインドという状況のようだ。無論基 本設計は日本だが。7月19日にはジブリの「猫の恩返し」をみたが、これは2流作品。 7月20日辻堂の109シアターに出かかて「風立ちぬ」"THE  WIND  RISES"をみた。満席。宮崎駿の手練れのシナリオに引き回されて不覚にも泣かされた。というか感涙バケツ1杯であった「風立ちぬ」には主人公がドイツ に調査に 出かけるシーンもあった。そして軽井沢で反ナチのドイツ人と話しているところを特高にみつかって追い回される逸話も挿入されている。MHIの上司が好意的 に描かれていた。特高を描いた宮崎駿は当然のことながら憲法改訂反対声明をだしている。アニメは宮崎以降偉大なシナリオライターが続かないのであとは人件費競争しかのこらない。したがって機械化した米国の勝で日米は1勝3敗。

Dドイツ在住の望月氏の父君が、三菱名古屋航空機製作所で航空機設計試作部門 にまさにこの当時在職し、米軍の大空襲、松本への疎開という話をよく聞かさ れたことを思い出して、懐かしがった。父君が手掛けたのは「秋水」というドイツで開発され、設計図を潜水艦で日本に運んで海軍が開発した戦闘機だ。 これはロケット推進で、B29の巡航高度に直ぐに到達して、迎撃するための超小型機だ。ミュンヘンのドイツ博物館にはこれの原型機が今日もなお展示され ているという。これは当時のメッサーシュミット社が開発した。晩年に訪独した父君を望月氏がその展示に案内し、若かりし頃に日夜、取り組んだ同機に再会し たときの父君の感激は今も忘れないという。日本には戦争中開発した兵器は何も残っていない。これで日本はドイツに完敗。「秋水」開発に関してはwikiに詳しい。

まさに全方面永続敗戦である。

今後予想される敗戦は

E気がついてみると米国の原発はあっという間にほとんど廃炉になり、日本だけ、ぐずぐず運転継続してもう一度事故に見舞われるということ。

F中国製のPVとバッテリーで完全オフグリッド運用による自家発電力が電力料金より安くなり、電力会社が小さくなる

Gそして日本の製造業はさしもの自動車製造でも新しい魅力的な車をだせず。コスト的にも売れなくなる。

ということかな。まず敗けをみとめないと社会の自浄作用は生ぜず、永続敗戦が続くことになる。それがいやならそれまでよー。

なぜ負けるか?それは真に優れたリーダーを選ばない社会にある。新田次郎が青森の五聯隊と弘前の三十一聯隊のリーダーの力量の差を「八甲田山死の彷徨」で活写している。さしずめ今の日本は五聯隊だ。

July 21, 2013


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