グローバリゼーション下での国家の中核的産業の輪廻

〜太陽光/原子力発電に見 る日本産業の危機と活路〜

 

はじめに

交通と通信の手段が安くなって、世界は一つになりつつあり、この傾向は止まらない。こういう環境下ではそれぞれの国の産業も大きな影響を受ける。戦後、日 本の復興は米国から導入した技術をつかって、世界に製品を輸出することによってなされた。

米国から導入した技術には2つの流れがある。一つは設備規模を大きくすることによって、生産量当たりの設備投資額を下げる方法で化学プラント、発電プラン トなかんずく原子力発電がその代表である。もう一つの流れは多量生産によって製造単価を下げる電化製品や自動車などの多量生産である。米国の大規模プラン トの代表の原発エンジニアリング企業のウエェスティングハウスや、パブコックス・ウィルコックス社は身売りし、日本との価格競争に負けた米国の多量生産方 式の代表、家電産業と自動車産業は苦境に陥った。RCAビクターは消えてなくなり、GM、フォード、クライスラーは未だに傷が癒えていない。

ところが米国から日本への多量生産による製造業移動が一段落すると韓国や中国が日本の技術を導入して多量生産を始め、日本の製造業は苦境に陥った。自動車 製造業はなんとか持ちこたえているが、家電製造業は再起不能にまで追い込まれた。自動車も風前の灯である。原発エンジニアリング企業を買い取った東芝は受 注に苦しんでいる。規模のメリットにより成立する原発は事故により日本全部の原発がとまり、再稼働するための安全設備の追加投資を迫られ、事故補償の積立 金もしていない。廃炉するにしてもその費用はまだ積み立て不足。放射性廃棄物の処分場も確保できていない。

多量生産方式で製造される安価な太陽光発電(PV)とバッテリーを組み合わせる分散発電システムは今後も価格が下がる。そして原発という巨大設備による集 中発電を分散発電で代替できるようになると予想される。巨大発電装置ばかりでなく、配送電網も不要となるので、電力事業そのものが無用の長物と化す。万里 の長城のような歴史的遺産になるのであろう。

中国製のPVは日本、ドイツ、米国のPVメーカーをすでに駆逐した。しかしPVでは夜間発電は期待できない。だから配送電網につなぎこむことしかできな い。しかし九電力に分割された日本では送電網は貧弱である。北海道電力に至っては本州と送電網がつながっておらず、原発再稼働に備えて空きを持ちたいとい うことでPV電力の購入はしないそうである。だがもし、バッテリー価格が安くなったら配送電網の制約や原発優先思想に邪魔されず、PV+バッテリーによる 分散発電が送電網を駆逐するだろう。そのとき車も電動車(EV)もPVで充電するようになる。

リチウムイオン・バッテリーはまず、携帯電話やPC向けに開発され、これをEV向けに大型化することが目下進行中である。そしてボーイング787にまで搭 載されるようになった。しかし日本のメーカーは目的別摺合せと大型化にこだわり、多量生産方式に意識が向かない。そのためコストが下がらず、分散発電に結 びつかない。ところがテスラ・モーターズは市場に流通している汎用円筒型電池6千個を日本の複数のメーカーから競争ベースで多量購入し、EV車の電源にし ている。今のところ、これが一番安いという。多量生産と競争的市場がキーワードだ。

リチウムイオン電池市場は長らく日本企業がリードしてきたものの、近年は韓国・中国企業の躍進が目立つ。これから予想されることは、日本のメーカーがリチ ウムイオン電池の目的別特殊化・大型化に苦労している間に中国が安価な汎用品の多量生産に成功すれば、グローバルマーケットのおかげで日本に輸入され、 PV+バッテリーという分散発電システムが原発という巨大設備と配電網を駆逐するかもしれない。

パナソニックが子会社である三洋電機の「解体」をしたように日本の家電製造業の経営者がこのような見識をもっているとは思えない。いまだに死んでしまった 液晶テレビに追い銭を投入している。まして政府には原発がリチウムイオン・バッテリーによる分散発電によって駆逐されるかもしれないという危機感は皆無 で、原発再稼働にまっしぐらである。問題は仮に産業界や政府に見識があったとしても歴史の流には逆らえぬだろうということだ。こうして日本の原発は中国製 の多量生産のPVとバッテリーによって死にいたるのであろうか。

一方、中国の長い歴史をみれば、北京に政権の中心がある時は50年で、その政治体制は崩壊するそうだ。しかしこれも歴史的事実だが中国という物理 的な集団が消えてなくなることはない。今後どういう展開になるか興味あるところだ。しばらく中国が中心でうごくが、その後はアフリカが待っている。という ことは今後数十年は日本では製造業は希望がない。製造業に希望がなければ製品に命を吹き込むデザインに賭けるしかない。では日本はデザイン(ビジネス・デ ザインも含めて)で生き残れるか???

英国の製造業はサッチァーのビッグバンで壊滅状態になったが、英国病は直った。英国は製造業を失ってもそこそこ繁栄している。ハリーポッターの冒頭の雪の降る寒村のロケに使われたスノーズヒル村はコッツウォルドの丘の北西斜 面にきざまれた 北に開く谷底にあり、日陰で、いかにも寒そうな寒村である。しかし住人は家々の周りに花を植え、高級乗用車を庭に停めてあり、裕福な階級がここに移り住ん でいることをうかがわせた。IT技術はコッツウォルドの寒村と世界を結んでいるのだ。

国の態度はオープンで非常に寛容。英国の食べ物はまずいというが、グローバリゼーションのおかげか、あらゆる料理法とメニューがあり、おいしくなった。日本が今後米国や英 国のようにそこそこ堅実に生きてゆけるのかは、日本人がどう自らを変えることができるかにかかっていると感ずる。リスク・プロセッサで世界の中心となった アーム社は英国の強さの代表だろう。米国もデザインで生きている。アップル、グーグル、クワルコム、ツイッター、フェイスブック、テスラ・モーターみなそ う。日本のデザインはウォークマンで停まってしまった。

日本の社会は閉鎖的縦割り指向の強い集団でトップの命令にしたがって大規模製造業に投資し、成功したが、これをまねた韓国・中国に負けた。まずは投資額が 小さく人件費の大きい造船とか家電の組み立て産業が空洞化した、現時点では部品産業が空洞化しつつある。比較的人件費の比重の小さな素材産業が空洞化すれ ば、万事窮す。英国もこの流れには抗すことはできなかったが、戦いのルールを変えて社会の流動性を高め、個人の知的水準を上げ、水平展開し、彼らが生み出 す知的価値で社会を維持するという仕組を意識的に作って成功したとみてよい。日本の通産のように既存の製造業を保護することでは行き詰まることは必定。た だ英国は米国と同じ言語を使い、アーム社を操業した英国人もかってテキサスインスツリューメンツで働いていたのだ。アーム社の強みはOSと機械語を橋渡し するソフトを完備し、自らはチップ製造せず、台湾のファンドリーに任せているところにある。

日本のお家芸のマンガやアニメの世界もそろそろ危ない。最後のアニメーター宮崎駿の最後の作品?がゼロ戦の狂的で偏執的なデザイナー堀越二郎をモデルにし た「風立ちぬ」というのもなにか象徴的だ。デザインは個人の脳裏にうまれるもので集団主義はそれを殺すだけ。日本の宿痾は個人の運命が会議によってきめら れていく。だから、追いつめられるとネズミのような突撃死しか残っていない。

安倍政権にこのような歴史的流れを直視する視点はない。国土強靭化とはすなわち弱体化政策ではないか。いま日本で生じている現象は戦前の日本と同じ。書店 にゆくとWillが文春の何倍もの高さで平積されている。中身は韓国と中国を非難する論説であふれている。安っぽいナショナリズムに軽薄に乗る人々こそが 問題なのだと思う。以上は論告求刑、以下はエビデンスである。


1.原発建設単価の高騰

日本の現存の原発の過半数がBWR型で30年前の建設費の安かった時に完成している。電事連公表の日本の既設原発の建設単価は279yen/Wである。 1981年代の原子炉は地震動を過小評価した旧設置基準で建設された低コスト仕様だ。固定費+運転維持費は原発施設が更新されるまで低く固定されるわけで 一見原発は安いように見える。新耐震設計に基き、かつ高価なPWR型の高コスト仕様で原発を新設するとなれば発電単価がどうなるかは興味のあるところだ。 長い原子力不況期で淘汰され、圧力容器供給能力が限定されていること、長期間原発建設がなされなかったために技能者がおらず、新たな要請が必要となり学習 コストがかかること、安全のためにコアキャッチャーなどの追加費用と建設費が高騰する。

フィンランドの電力会社TVOのオルキルオト3号炉(欧州加圧水型原子炉 EPR)1,600MWの原発を受注したアレバは技師や作業員が未熟のため建設費が受注金額30億ユーロの約2倍となり、2010年現在58億ユーロ (399yen/W @110yen/ユーロ)に膨らんだ。これは既設の399/279=1.4倍である。

仏電力が建設中の1,630MWのフラマンビル原発3号機(EPR)は契約金額33億ユーロの1.5倍の50億ユーロ(337yen/W  @110yen/ユーロ)に膨らみ工期も遅れている。

東芝・ウェスチングハウスは改良型加圧水型炉AP1000を開発し、2011年2月NRCの認可を得た。これは崩壊熱を冷却する水を格納容器上部に常備 し、自然対流で冷却できる仕組みを持っている。 2008年3月にサザン・カンパニーのジョージア州ヴォーグル(Vogle)原発3,4号機とSCANAの子会社South Carolina Electric & Gas Companyのサマー原発2,3号機 (SCE&G)向けにそれぞれ同型原子炉2基計4基の契約をした。この4基の 1,100MW出力のPWR型原発は総額1兆4,000億円であった。建設単価は318yen/Wとなる。地震国日本の新基準で設計すれば耐震構造の PWRの建設単価はこの1.1倍の350yen/Wになる。SCANA公表のOwner cost含む建設単価は4.4$/W(352yen/W)となる。これは既設の352/279=1.26倍。

東京電力東通では2017年運転開始予定のABWR型1,385MW原発に当てる増資は4,500億円で建設単価は325円/Wとなる。これは既設の 325/279=1.16倍。

2008年4月、英ファンド「ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスターファンドTCI」のJパワーの株買い増しの中止を勧告した経済産業省はJパ ワーの大間原発にプルトニウム消費目的のMOX燃料100%で稼動する新耐震設計の改良BWR型1,383MWの原発の建設許可を出した。そしてその建設 費が4,690億円と発表された。建設単価は339yen/Wとなる。これは既設の339/279=1.21倍。

2009年には東芝・ウェスチングハウスは米国ショー・グループ(The Shaw Group Inc.)とともに、米国プログレス電力の子会社であるプログレス・エナジー・フロリダ(Progress Energy)と、レビィ発電所1号機、2号機の新規原子力プラントの建設に関する契約を締結した。1.1GWx2基を受注金額7,100億円で2016 年運転開始予定。建設単価が31yen/Wと小さいのはスコープが原子炉周辺設備の納入やエンジニアリング、建設工事と狭いためだろう。Progress Energyは2011年にDuke Energy に買収された。

東芝がNRGと共同出資して計画したSouth Texas Project1&2は外資による原子力禁止法に抵触するとしてNRCが許可しないと2013年4月30日明らかになった。

米国のコンステレーション社の原発新設は米政府が債務保証をするからということで始まったのだが保険金建設費の1割と高すぎるとしてキャンセルされた。原 発は長期にわたって資本回収するため、融資銀行はより短期の再生可能エネルギーへの投資を好むようで、原子力ルネッサンスには逆風となっている。 米国での増設は最大で10基以内と見られている。

2013年3月11日、米国では、欧州加圧水型炉(EPR)を採用したメリーランド州のカルバートクリフス(Calvert Cliff's)原発3号機について、米側オーナーのコンステ社 がエネルギー省からの融資保障が不透明として撤退。政府の原子力規制委員会(NRC)も、ユニスター社が外国人との理由で建設許可を出さないことを決定し た。

ということで福島事故も勘案し、全ての安全対策をする2030年以降の新設原発の建設単価は390yen/Wとして発電原価を計算する。他の発電法も含め て建設単価の今後のトレンドは図―1のように予測した。為替レートは1$=100yen、1Euro=110yen、インフレーションは含めない。一般に 建設費は技術革新で低下するものとした。
 


図-1 発電所の建設単価



2.分散発電の太陽電池(PV)の建設単価の低下


ドイツのFraunhofer研究所の2010年報告書「Energiekonzept 2050」ではPVモジュールの製造原価を製造量の関数として下図のように予測している。太陽電池はシリコン結晶製造から一貫生産のインリー・グリーンエ ネジー・ホールディング等の中国メーカーが首位に躍り出て価格が急落。収益が上がらない事業になってしまった。ドイツメーカーは倒産、米国でもファース ト・ソーラーなどのPVメーカーが不振となり。日本ではFIT制度で高値買取り枠を確保した企業がPV価格が下がるまで事業化せず、発電に至らない事態に なっている。
 


図-2 Fraunhofer研究所のPVモジュールの製造原価予測


大規模発電装置とPVのような発電装置の建設単価の推移を2090年まで図−1のように仮定した。


3.各種電源の発電単価の前提

発電単価は装置の建設単価に加え(1)稼働率、(2)燃料費の影響を受ける。これに加え原発は(3)フロントエンド燃料費、(4)バックエンド燃料費、 (5)廃炉費積立金などがある。

(1)    年間固定費/投資額比
原発、火力発電11.75%、水力9.75%

(2)    稼働率
原発の設備利用率80%。現実には原発の設備利用率は13ヶ月毎の定期検査、地震で60%まで下がり、福島事故で50%まで下がった(10%下がれば原価 0.6yen/kWh上昇)。PVは12.6%、風車は25%。

(3)    熱効率
原発34.5%、石炭41.8%、石油39.4%、LNG BTG48.4%、LNG conmined59%

(4)    内部消費
原発3.5%、石炭6.2%、石油BTG4.5%、LNG BTG2%、LNG conmined2%

(5)燃料費
為替レートは1$=100yen、インフレーションは含めていない。石油のピークアウトは2020年とし、天然ガスのピークアウトは 2050年、石炭のピークアウトは2080年ワンスルー利用のウラニウムのピークアウトは2050年とした。これは資源が枯渇するためではなく、価格が上 がって再生可能エネルギーに敗退するため。実際の燃料価格はこのように滑らかな曲線を描かずふらつく。
 


図-3 燃料費の予測



(6)フロントエンド燃料費
ウラン235価格は供給余力があり、安定していたが核兵器廃棄物の再利用燃料が終わって次第に上昇に転じる。また再処理によってできるプルトニウムはウラ ン235の価格の3倍となり、経済的に使えるものではなく、プルトニウムサイクルは破綻していえる。

(7)バックエンド燃料費
2006年から再処理にかかる0.5yen/kWは電気料金に上乗せして徴収される。月平均300kWの家庭で147円相当となる。これは家庭用の料金請 求書に明示はされていない。2004年10月22日原子力政策の基本となる原子力長期計画を改定する新計画策定会議で、原子力発電所から出る使用済み核燃 料をすべて再処理した場合の総事業費が42兆9,000億円に上るとの試算を公表した。これは通産省の公式数値よりも大きな値で、 役所によって見解は分かれるようだ。再利用せず地中へ直接埋設処分する場合は、30兆−38兆6,000億円と見込んでいるとのこと。日本の年間総発電量 1兆362億kWhとして59年間この30%が原発でまかなわれるとすると原発の総発電量は18.3兆kWhとなる。設備投資額の内訳がわからないので発 電量で割り算すると再処理・バックエンド費は2.67yen/kWhとなる。ちなみに2004年1月発表の電事連の報告書全操業期間で 0%の割引率で均等化した再処理・バックエンド費は1.23yen/kWhとなっているのは過少申告。

(8)廃炉積立金
廃炉費は40年後に発生する廃炉工事費S=30yen/Wとすれば、割引率r=4%で現在価に変換し、n=40年間の収入で積み立てるとすれば発電単価に 算入すべき廃炉積立金は0.098yen/kWhとなる。

2009年に浜岡1,2号炉の廃炉費S=61yen/Wと公表された。発電単価に算入すべき廃炉積み立て金は0.20yen/kWhとなる。

英国政府による原発のデコミッショニング費用に関する報告書では原発の解体には建設の約3倍の費用がかかる。発電単価に算入すべき廃炉積み立て金は 2.72yen/kWh。

毎日新聞、2011年7月16日の記事によればイタリアのカオルソ原発廃炉コストは4基7,280億円とのこと。1基 1,000MWとすれば廃炉工事費S=182yen/Wと新設よりは安いが浜岡の3倍となる。発電単価に算入すべき廃炉積立金は 0.59yen/kWhとなる。浜岡より更に0.39yen/kWh余計に必要。

もし再度原発事故が発生し、全て廃炉にすれば2013年の日本の全原発の帳簿上の遺産価値2.83兆円と廃炉費用の積立不足額1.2兆円が損失となる。

2013年6月、PWRを使うサン・オフレ原発はMHI製の蒸気発生器の漏れを理由に廃炉を決め、MHIに損害賠償を求めた。

事故により想定外の廃炉になると積立金不足が発生する。


4.各種電源の発電原価


以上の条件からそれぞれの電源と時期について発電単価は図-5のように計算される。事故補償金と廃炉積立金不足分返済金、事故補償積立金、政府支援費、負荷調整電源の稼働率低下や事故による原発の稼働率低下は発電原価に含めてない。
 


図-5 各種発電法の発電単価予測



5.発電原価に含めていない費用

(1)事故補償金と廃炉積立金不足分返済金
福島の放射能汚染の汚染マップをみれば今回幅20km、長さ40kmの地域が高い放射線汚染で長期間居住不能になる。この面積は800km2に相当する。 全期間土地損失補償費 または土壌反転費を1m2当たり5,000円とすれば、4兆円となる。または20kmサークル範囲内の住人78,000人が20年間疎開する慰謝料と費用 は1人200万円/年とすれば、3兆円。農業と漁業補償は月1,000億円とすれば2年で2兆円となる。原発の廃炉積立金不足分1.5兆円。事故補償金と 廃炉積立金不足分返済金の合計ざっと8兆円となる。(東電は10兆円と公表)この一時金を4%の金利で借り、10年間で均等払い返済には毎年借入金の 12.33%、25年間で均等払い返済には毎年借入金の6.4%となる。東電の年間発電量を280,000GWhとすると3.5-1.8yen/kWhの 値上げが必要。 家庭用は15-7.8%アップ、商用は23-12%アップとなる。

(2)事故補償積立金
原発事故を引き受ける保険会社はない。したがって電力会社は「原子力損害補償法」に従い民間保険会社と損害 賠償責任保険契約を、政府とは原発1基当たり1,200億円の損害賠償補償契約の締結をしているにすぎない。電力各社はこの政府保証のために国に 1,200億円の供託をしている。そして民間保険と政府保証がカバーできない部分に関し、電力会社が無限の賠償責任を負うという建前になっている。とはい え原子力事業者が自らの財力では全額を賠償できない等の事態が生じた場合は、国が原子力事業者に必要な援助を行い、被害者救済に遺漏がないよう措置すると 実質プライス・アンダーソン法と同じことになっている。要するに税金で補てんしようというご都合主義だ。

世界の原子炉の大規模放出事故は平均では1,450炉年に1回。実際にはべき分布になるため、福島級の事故は2,100炉年に1回程度となる。世界で今後 27年間に世界のどこかで1回となる勘定。日本のBWR33炉は世界の42%の33基だから今後64年に1回となる。原発事故がべき分布になるのはネット ワーク理論でスケールフリーだから。では原発事故のハブとはなにかとなるが電源システムだろう。だからここがやられるとアウト。規制委員会は非常電源を用 意せよとはいうが、電源を失っても問題ないようにプラントを直せとは要求していない。不可能だからだ。だからメルトダウン確率は変わらない。BWRに関し ては格納容器保護にフィルター付きベントの設置を義務付けているがフィルターは水冷却でベント設備は円筒形、直径5メートル、高さ11メートル、重さは 60トンほどというから備蓄水では水の供給なしには1日と持たない。電気なしでどう水を補給するというのか?仮に水が補給されたとしてもキセノン、ヨウ素、三重水素は大気中に放散される。



図-5 原発の事故確率

1基1GW、稼働率70%、33基、64年間の原発の総発電量=33x64x0.7x24x365=12,950,000GWhとなる。
福島級の廃炉費と事故補償総額が1基当たり3兆円となる。4%金利で40年の寿命とすれば年間積立率0.022となる。結果、発電原価にしめる事故に伴う 事故補償積立金は32.6yen/kWhとなる。

発電に占める原発シェアは30%だから電力料金に換算すれば11yen/kWh増となる。これもコストに参入するとすれば脱原発したほうがいいということ になる。

(3)政府支援費
日本政府は電力会社から1キロワット時当たり37.5銭の電源開発促進税を徴収し、それを原資にして電源三法交付金を原発、水力、火力の助成金として 迷惑施設を受け入れる地方自治体にばら蒔き、住民の心を買っている。まさにファウストの悪魔のような行為だ。かてて加えて若い世代を洗脳しようと 2002年からは同じ電源開発促進税を原資として総額3億円の原子力・エネルギー教育支援事業交付金制度が設けられた。それぞれの電源の過去10年間の財 政資金をそれぞれの電源の過去10年間の総発電量で割れば原発の政府支援費/発電量=1.1yen/kWhが得られる。しかし原発建設がストップしたた め、1,000億円が未使用となり、2007年に特別会計から外れた。ただ今後の原発新設の必要に応じ、特別会計に入れるようになっている。いわば埋蔵金 化しているわけ。

原発には特に厚く、無視できない支援がなされているわけ。電力の消費者は同時に納税者であるから、この支援コストを含めたものが本当の電力価格ということ になる。



6.電力料金計算の前提

電力料金=複合発電原価(負荷追従電源含む)+配送電費

(1)需要パターン

電力は貯蔵できないため、需要に応じて、各種発電法の組み合わせをかえて対応している。最大需要曲線は1996年夏の東京電力の最大電力需要日の需要曲線 と同じとすると図-6,7のようになる。


図-6 1996年夏の東京電力の最大電力需要日の需要曲線

図-7 最終需要日の需要曲線

休日は電力需要は極端にさがる。このとき、夜間余る原発の電力は揚水発電で蓄えられる。

(2)脱原発シナリオ

原子力発電は最早もっとも安い電源ではなく、事故補償費等を積み立てるとなれば最も高価な電源になる。そこで順次廃炉にするのが賢明となる。そのシナリオ を下図のように3通り想定した。
 


図-8 脱原発シナリオ



7.電力料金の今後の予想

最大と最少需要曲線および脱原発シナリオを想定しますと例えばシナリオ-2の2030年について各電源のピーク出力比、負荷率、年間平均出力比複 合発電単価が表-1のように計算できる。複合原価+配送電費=電気料金である。単相契約(一般家庭)の配電コストが大きく設定されていることが分かる。こ れは世界的傾向だ。一般家庭がオフグリッドに走ると電力事業は三相ユーザーに負担増を求めようとする。しかし自家発で自衛され、電力事業の前提が成り立た なくなる。



peak capacity
load factor annual average (revenue-fuel cost)/power fuel cost/power power cost single phase consumer three phase consumer
  % % % yen/kWh yen/kWh yen/kWh yen/kWh yen/kWh
flowing hydraulics 1.4 100.0 3.3 9.24 0 0.13 - -
nuclear 8.5 96.3 18.8 6.63 3.93
1.33 - -
coal BTG 21.4 57.3 27.9 4.79 4.84 3.14 - -
LNG combined cycle 27.2 42.7 26.6 3.37 14.87 6.10 - -
wind 14.2 27.9 9.1 2.66 0 1.36 - -
PV 8.7 12.9 2.6 1.29 0 0.87 - -
geothermal 6.4 42.6 6.2 12.89 0 1.94 - -
dam hydrailics 8.5 28.9 5.6 9.24 0 2.73 - -
storage turbine 3.6 3.9 0.3 3.21 0.00 2.92 - -
composit power cost 100 - 100.4 - - 20.51 20.51 20.51
grid cost + tax - - - - - - 9.78 
1.78 
grid price - - - - - - 30.28 22.28

表-1 複 合原価+配送電費=電気料金

脱原発3つのシナリオでの電気料金は図―7のようになる。ここには原発事故による原発の稼働率低下は考慮していない。また事故補償金と廃炉積立金不足分返済金、事故補償積立金、政府支援費は含めてないので、実際にはこれより増える。
 


図-9 脱原発3つのシナリオでの電気料金



8.リチウム・イオン二次電池の建設単価

テスラ・モーターのロードスターのバッテリーパックに使用されている円筒型汎用セルは、その寸法から「18650 フォームファクター (形状因子)」と呼ばれている。直径は 18mm で長さは 65mm 。このフォームファクターはラップトップコンピューターなどに使われる商品仕様。毎年 10 億個の 18650 セルが製造されている。このバッテリーは量産されているため、価格は驚くほど安価。現在、大雑把に言って1kWh当たり4万円くらいだという。コストダウ ンのベースは、およそ年8%。DOEも2030年までに90%のコストダウンは可能としている。1万円も夢ではない。ベンダーはパナソニックと三洋電機、 ソニーと、サムスン、LG。パナソニックは2013年6月で、テスラモーターズの高級EVセダン「モデルS」向けリチウムイオン電池の累計出荷1億個を達 成する。

ただ18650の大きな弱点が充放電回数。今のところ長寿命タイプでも千回に届かない。テスラも認識しており、だからこそ日産リーフの2倍以上のバッテ リーを搭載している。(重さ450kg!)。バッテリーをたくさん積み、充放電1回あたりの走行距離を300km分確保したら、600回の充放電寿命だっ たとしても18万kmの走行可能距離となる。一方、バッテリー搭載量を最小限にしなければならないプラグインハイブリッドだと、5千回程度の充放電寿命を 確保しないと成立しない。

日産リーフのような乗用車タイプの電気自動車でも、最低3千回の充放電寿命と(1回の充放電で100km走るとして寿命30万km)、10年を超える時間 的な耐久性が要求される。18650バッテリーも少しづつ寿命は延びているものの、当面千回のカベを超えるのに苦労するかも。
 


図-10 18650 フォームファクター wikiより


テスラー・モーターのシステムは常時水冷方式で冷却していてバッテリーの残量が少なくなっても、ポンプの電源は入りっぱなしになって常時作動する設計で あった。このため、長期間放置すると高価なバッテリーがダメになり、充電もできない状態に陥っていた。これは既に改良されている。
 


図-11 リチウム・イオン二次電池の建設単価


GSユアサ製のリチウムイオン電池は、産業用として量産できるようになったことで、車載用のみならず、いまや米ボーイングの「787」や、JR貨物のハイ ブリッド機関車や近畿車輛の自己充電バッテリー電車「Smart BEST」に採用されるなど、利用が広がっている。しかし米ボーイングの最新鋭機「787」や、三菱自動車のプラグインハイブリッド「アウトランダー PHEV」や電気自動車(EV)の「アイ・ミーブ」と、ジーエス・ユアサコーポレーション(GSユアサ)製のリチウムイオン電池をめぐるトラブルが相次い だ。いづれも過熱して発火したり、モジュールの一部を溶かしたりした。

三菱自動車のi-MiEVが使っているGSユアサ製のリチウムイオン・バッテリーは1kWhあたり15万円くらいすると思われる。30kWhで450万円 でコストダウンに成功していない。

トヨタが本格的な電気自動車を大量に生産すると目される2014年くらいには、圧倒的に優れた性能を持つ電気自動車用のリチウムイオンバッテリーは、 18650バッテリーより安くなっていると期待される。
トヨタ自動車などと並んで日本の多量生産の象徴だった家電大手のパナソニックとシャープが苦しんでいる。パナソニックは三洋電機を2011年に完全子会社 化。買収当時、三洋電機はリチウムイオン電池で世界シェアの4割を占め、太陽電池も発電効率の高い独自製品で先行。パナソニックはこうしたエネルギー関連 事業を本体に取り込む一方で、冷蔵庫や洗濯機、デジタルカメラなどの重複事業を中国のハイアールに売却することで成長戦略を描いたが、目算が大きく狂っ た。子会社である三洋電機の「解体」にまで追い込まれてしまった。2013年度中に本社の人員約1000人を配置転換や早期退職などで100人規模に減ら す。法務や知的財産の管理などを維持するうえで必要最低限の人員にするという。

リチウムイオン電池市場は長らく日本企業がリードしてきたものの、近年は韓国・中国企業の躍進が目立つ。調査会社のテクノ・システム・リサーチによると、 パソコンや携帯電話などに使う小型リチウムイオン電池(最小単位「セル」)のメーカー別出荷シェアは2012年、サムスンSDIが前年比1.9ポイント上 昇の25.1%と、初めてトップに立った。前年首位のパナソニックは2.8ポイント低下の20.7%で2位に転落。3位も韓国のLG化学(16.0%)が 続き、劣勢は否めない。


9.PV+バッテリーオフグリッド発電単価

日本の電力は貧弱な送電網しかもっていないので電力会社は再生可能エネルギーの大量導入は困難。政府は打開の方針をもっていない。中国がバッテリー生産で ブレークスルーすればPTTにより国境は開かれているため、日本メーカーがだらしなくとも、家電製品の輸入は可能だから屋根持ちの家庭はPV+バッテリー 導入に走り、集合住宅もまとまって原発依存の電力を見捨て、自立するであろう。これはニューヨークの馬車が1900年から 1913年の間に全て自動車に置き換わったようなランドスライドとなる。そういう意味でPV+batteryはトニー・セバがいうような disruptive technology(破壊的技術)といえる。

(1)オフグリッドハウス
オフグリッドハウスは図-9 のようにPVとバッテリーを組み合わせて電力網から完全独立した分散発電設備を持つ家である。プラグインハイブリッド車はオプションである。ハイブリッド 車は非常用発電機として使えるという点がメリットであるが必須ではない。
 


図-12 オフグリッドハウス


(2)PV発電の発電パターンとバテリーによる夜間電力の消費パターン
図-10の紺色が消費電力355kWh/month、赤色が発電量380.5kWh/month、黄色が充電量 161.6kWh/month、空色が夜間使える放電量131.6kWh/monthである。紫色は収支バランスゼロでグリッドとの取引はないことを示し ている。従ってPV電力のうち、充電に使わず昼間直接消費出来る量は355-161.6=193.4kWh/monthとなる。充電でロスする分を除いた 実消費できる全電力は325kWh/monthとなる。比率は昼間PV直結が59.5%、夜間バッテリーから40.5%。



図-13 PV発電の発電パターンとバテリーによる夜間電力の消費パターン


(3)PV+バッテリーの複合発電コスト
自家用バッテリーは電気事業税の対象とならないから投資額に対する年間固定費は16.35%となる。PV建設単価が図-8の各電源の建設単価のように下が るとするとPV+バッテリー複合電力コストは表-2のようになる。

PV charged battery for home use unit 2000 2030 2060 2090
power source - PV PV PV PV
PV module cost
yen/W
440
160
100
100
type of battery - lithium ion lithium ion lithium ion lithium ion
battery construction cost yen/kWh 100,000 28,000 14,000 14,000
life y 9 9 9 9
power recovery % 85 85 85 85
annual recovered power kWh/y 310 310 310 310
(revenue-fuel cost)/equity %/y 16.35 16.35 16.35 16.35
(revenue-fuel cost)/recovered power yen/kWh 52.70 26.35 21.08 21.08
PV power price yen/kWh 44.78 16.28 10.18 10.18
lost power yen/kWh 6.72 2.44 1.53 1.53
recovered power cost yen/kWh 104.20 45.08 32.78 32.78
average power cost(PV:59.5%,battery:40.5%) yen/kWh 68.84 23.25 13.78 13.78

表-2 PV+バッテリーの複合発電コスト

さてこの数値とグリッド市販価格と比較してみると図-11のようになる。小口消費者に配電費を多く負担させている現在の電力企業のビジネスモデルは 2025年以降破綻することを意味する。

長期天候不順にそなえてバッテリーを大きくするよりは小型の都市ガス発電機をもつことになるだろう。無論ガソリンハイブリッド車で発電機とバッテリーを代用することも可能である。
 


図-14 グリッド価格とオフグリッド自家発電



10.EV、ガソリンハイブリッド車、アンモニアハイブリッド車の動力コスト比較


図-9 オフグリッドハウスにあるようにガレージにEVまたはプラグイン・ハイブリッド車がある場合は、車載バッテリーをハウスと共有できる。プラグイン・ハイブ リッド車なら非常用発電機にも使える。動力費ベースでグリッド充電EV、PV充電EVをガソリンハイブリッド車、CSPアンモニア燃料・ハイブリッド車と 比較して図-15にまとめた。稼働率の低い家庭用EV車は2060年まではハイブリッド車にかなわないことがわかる。
 


図-15 ガソリンハイブリッド車、EV車、CSPアンモニア燃料の動力費比較




図-16 アンモニアエンジン搭載Toyota GT86=R marangoni Eco Explorer   worldcarfans.com



11.なぜオフグリッドなのか

ドイツでは中規模の比較的安価な電力を生む風力発電が普及しているため、これを負荷追従型に運用するために負荷追従制御で羽のピッ チを変えて出力を調整してグリッドを安定化する方向である。当然日本も風車を成り行きにさせず、ピッチ制御しなければならない。しかし屋根に載せるPVも 同様に負荷追従型にするのは高価なPVを部分負荷で使うわけで不経済。といって電力が全て買い取るのも負荷調整をグリッドにおしつけるわけで、電力側が バッテリーを持つか米国のように、各家庭のEV車をグリッドに繋ぐなどしなければならなくなる。ならばグリッドとバッテリーの両者を中途半端につかうよ り、グリッドを排しての完全分散発電のほうが有利となるだろ。こうして家庭向けの高価な送配電費10yen/kWhという高い負担をグリッドに支払う必要 はなくなる。これは大きい。家庭用非常発電機は都市ガス燃料の小型レシプロ発電機をもつだけでよい。日本では送電線が9電力に分断され、サイクルも西と東 では違い連結できない。かつ島国で島と島を結ぶ送電線はなく、ドイツのように網の目のようにはなっていない。グリッドに追加投資するより、バッテリーのほ うがやすくなるというのが私の予言。日本の社会のようなお上に乗っ取られた国家は大学教授を巻き込んで、グリッドを守ろうとするだろうが、これは亡国の政 策だと私はおもっている。バッテリーで電力の軛から開放しよう運動をしなければ。私はもう12年間もこのオフグリッド運用を自宅で実験していてバッテリー 寿命とコスト以外なんら問題はない。


12.なぜバッテリーなのか?

その理由はwiki commonの次の図をみれば腑に落ちるだろう。


図-17  エネルギー貯蔵技術の適用範囲  wiki commonより借用


13.FIT 制度との関連

FIT 制度があるかぎりPV+バッテリーのオフグリッド運用はありえない。FIT はPV の多量生産体制の呼び水で、一旦、PV 産業がテークオフすればFIT は廃止される。丁度この制度が廃止される頃、ようやくPV+バッテリーがグリッドパリティーを達成するのでタイミングはよい。


14.日中関係

中国の製造業が日本の電力の分散化におおきな影響を与える。しかし「従軍慰安婦問題、南京大虐殺」など日本人の自己中心的歴史認識のため日米安保が機能しなくなり、日本は窮地に陥る。一方上海株が暴落が起きているように、万一、中国の経済崩壊があれば産業に影響が出る。

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July 4, 2013
Rev. July 5, 2013


質疑応答


慶応大社会心理学者S教授:
本論の資料の出典の記載がない。

青木:
すべて私がおこなった試算をつかってます。この計算の詳細はグローバル・ヒーティングの黙示録にあります。

慶応S教授:

従軍慰安婦問題は米占領軍も要求した歴史 的事実があるのに之には言及せず、日本だけがしたという米国務省サキ報道官の言明や韓 国の行動は裏で国務省高官が振り付けていて、その目的は日本の力をそぐためという陰謀説がある。PTTすらこの米国の戦略に沿ったものだ。歴史認識という指摘は左翼の典型的な表現様式ではないか? 新聞を含め、左翼は日本を弱体化している。いずれ米国は安保を守る力もなくなるので、そのとき日本は核武装しなければならなくなると思うがどうか?ちなみ にドイツはNATO共有国(核シェアリング)で核抑止力を持っている。日本も東南アジア諸国と共同で核シェアすることも考えられる。ロシアと組むことすら 考えられる。あなたは憲法改正反対、核武装反対ですか?

青木:
憲法改正せずとも自衛のための自衛隊法改訂で防衛目的の攻撃を できるようにすれば自衛は可能。自衛のための改訂なら9条だけ修正すればよい。しかし現在の自民党の改正案をみると敵は本能寺にありという感じだ。彼らは 日本を中国から守ることより、日本人民の基本的人権を縛るところにあり、権力をふるいたいという危険な衝動を感ずる。とはいえ、自衛隊法を変えることがで きれば、憲法を変えないで独裁権を持つような法改正も可能かもしれず、用心しなければならない。米国の力がなくなれば核武装という道 もある。しかし核だけでは不十分でそれを目的地に送るシステムがなければ、抑止力にはならない。クルーズミサイルだってGPSが必用だし、無人機ですら通信システムを自前で 用意しなければならない。折角用意しても高空で核爆発させられればコンプトン効果で発生する電磁波がすべての通信施設は役立たずになる。まず電磁波兵器に強い電子素子や電力系統の開発から始め なければならない。これらが用意出来なければ抑止力など絵に書いた餅で無意味だ。仮に核がなくとも通常兵器を確実に相手に届けることができれば核なし抑止力も 可能だ。核武装は古典的な一国核武装、東南アジアとの核シェア、ロシアとの連携など何でもありというフレキシブル思考は反対ではない。しかし核さえ持てればという安易な考えはかえって危険である。既存の六ヶ所 村の再処理施設は技術的にはプルトニウムを生産できるが、それを転用することは国際条約をやぶることで世界を敵にまわすハメになる。

慶応S教授:
核兵器を目的地に運ぶシステムの重要性は分かる。日本は人工衛星をもっと打ち上げて独自のGPSを構築し、そこから鉛の玉を落とすようにし ておかねば中国になめられる。英国がイラク戦争でクルーズミサイルを発射させようとしたら米国がGPSを操作して打てないようにしたという話もあり、米国 は英国に対してすら牽制している。

核武装問題に関してその後の私の調査と考察:

ドイツの核武装について調べるとドイツのシーメンスがフランスの核兵器製造を行っている軍事産業を買収し、 子会社にした。このとき核兵器製造部門を切り離さず、EU内の権利を振りかざして核兵器部門ごと見事に乗っ取った。これで、ドイツは核兵器の詳細で正確な データから製造ノウハウまで、全て手に入れた。こうしてドイツは、名実共に核武装国になっている。日本もアメリカのウエスティングハウスを買収したが核兵 器部門や潜水艦用の原子炉製造部門は別にされてしまい、核武装の役には立たなかった。しかし、日本は既に核兵器製造のノウハウも技術もデータも持っている 可能性が高い。ソ連が崩壊した時に、ソ連の核兵器技術者が高給で世界中の国から引っ張りだこに成ったとき、日本も数人呼び込んでるから、データも入手して いると思われる。というあまり報道されない情報があった。

人工衛星から鉛の玉を落とせば武器になるというのはニュートン力学を全く理解していない。さすが文系の教授殿の思考だと感心した。人工衛星は固定されてい るわけでなく、軌道上を重力を打ち消すように地球の自転と逆方向に秒速8kmでとんでいるから落ちないのであって、そこから鉛の玉を落とそうとおもっても落ちない。一緒に回るだけだ。やはりロケットで逆 噴射し大気で燃え尽きないようにしても正確に目標物にあてるのは、操縦しないかぎり不可能。結局無人機操縦と同じ通信系の確保という問題に当面するから、米国が検討しているような無人偵察攻撃機X-37Bを実用化するためには膨大な予算と人材の投入が必要で、原発事故の後始末もできないような日本では無い物ねだり。

青木:

日本の閣僚が靖国に参拝すると中国や韓国がそれをてこに交渉を有利にしようとする。これは国益にならない。A級分祀をすべきではないのか?

S教授:靖国のA級合祀問題で妥協すれば中国にまけたことになり、中国をますます付け上がらせる。国際関係はそういう世界だ。

青木:

なるほど。中国はさしずめ映画「ライフオブ・パイ」のトラのようなものですね。国際関係は猛獣の世界と同じという認識。日本はパイ少年とおなじようにかな り頭脳明晰でないと乗りきれませんね。ところで、日本人として靖国のA級合祀は許せないという意見はどう処理するのですか?

企業経営者:
原発についてはどのようなお考えで

青木:
投資してしまった分は運転して回収というのが資本の論理だが、 そこに事故のリスクマネーが算入されていない。保険が適用されない世界で企業経営するといういうのは気が知れない。合理的判断ができないのが日本人の悪弊だ。脱原発が一番金がかからず賢い選択ということになる。日本の企業経営者はやめるという決断 ができず、墓穴を掘っている。なにも原発だけではない。すべてにおいて同じだ。

会員C:
再生可能エネルギーが安くなるまでのつなぎとしてどうすればいいのですか?

青木:
現時点ではLNG、しかしこれは世界的需要が高いので価格が下 がらない。そのためには石炭火力を導入すべきだ。人為的温暖化説というヨーロッパに陰謀に振り回される必要はない。これは自然現象で二酸化炭素犯人説は科 学的に厳密に証明されたものではないきわめて政治的なものだ。

July 29, 2013

Rev. August 10, 2013


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