第10回

自由人のエネルギー勉強会

エネルギーと戦争

2013年10月27日

神田学士会館 302号室

プログラム

13:00 あいさつ               森永晴彦元ミュンヘン工科大退任正教授

13:30 最近の重要話題         福島、中東、ノーベル賞他について

福島については語りつくした感がある。シリアのアレッポに日本政府が設置した太陽電池を視察したことがあるが、戦火でいまどうなっているのだろう か?ノーベル賞は最近は日本人やアジア人が多く受賞している。南部陽一郎、益川敏英はおおむね妥当だと思うのだが、なぜ宮本米二が受賞できなかったのか、 所属 部署が物理学でなかったため、十分な推薦がえられなかったのではないかという疑問が呈せられた。亀淵 迪、武田暁らはコメントせず南部先生の高弟藤川和男氏が全容の説明をした。

15:00 コーヒーブレーク

15:30 情報操作は進化する       西岡昌紀

西岡氏は医者と文筆家兼務の人だが、かって文芸春秋から出していた「マルコポーロ」という雑誌にユダヤ人を敵にしてしまう記事「アウシュウィッツ『ガス室』の真実」 を書いて廃刊にせざるを得ない記事を書いた張本人である。そのときの編集長花田紀凱とは戦友となり、Willに定期的に寄稿している。ガス室の神話はあや ふやな報道で自然発生的に作られた神話なのだが、記録がないのに、戦後真面目に検証されることなく生き残り、観光目的で神話にそう施設まで作られた。いわ ばテーマパーク化したわけである。ドイツではホロコーストを疑う言動まで法律まで規制されているので、改訂される可能性はない。

そして話はベトナム戦を振り返るシンポジウムでのディーン・ラスクの次の発言が紹介される。

「いままでいろいろ貴重な意見を承ったけれども、私はこの戦争は失 敗だったと思っている。そのことについては御異存はないでしょう。何故失敗だったかといえば、合衆国政府はベトナム戦争では一度も検閲しなかったからだ。 過ぐる第二次大戦においてはまことに過酷なる検閲を実施して戦争に勝ち抜いたのに、ベトナム戦では検閲をちゃんとやらなかった。したがって我々は銃後の国 民の支持を得ることはできなかった。考えてもみたまえ。自分の息子や恋人や夫がベトコンに惨殺されてゆく画面を毎日のように見ている国民が、この戦争を続 けましょうという政府のよびかけに積極的に応えるわけがない。ああした報道の下ではどんな政府でも、戦闘を続行しかつことなど不可能だ」

日本軍による真珠湾攻撃で戦端がひらかれると、ルーズベルト大統領は、まず上下両院から「大統領は戦時大権を行使できる」という決議をとりつけ、それに基 づき合衆国検閲局を設立し、その長官に当時AP通信社の専務取締役だったバイロン・プライスという現役のジャーナリストを任命した。

米国はベトナムの反省にたって、 湾岸戦争では完璧な情報統制をした。日本の敗戦直後でも、新憲法制定までGHQが厳しく情報統制した。この情報操作は成功してタカ派は集 団的自衛権行使容認の憲法解釈という平和ボケ、護憲派は9条至上主義となり国防は米国頼みになっている。

ではどうすべきか?西岡氏は同意しないが、私が考えるに法哲学者の井上達夫の提案するように九条の全文削除が案外ベストかもしれない。

日本が戦時中にきびしく報道を検閲したことは言わずもがな。BBCですらフォークランド戦争で表向きマーガレット・サッチャーを批判してみせて、 アルゼンチン側を油断させ、英艦隊の真実の移置情報を傳えず、油断したアルゼンチンの敗北につながったといういわくつきの話も紹介される。

最近では米国がメルケル首相の携帯を盗聴していた事実も暴露されている。脳天な日本の首相などは盗聴の必要なしとされていたようだ。

かように戦時には情報操作は当然であり、情報操作なくして戦争は負けるということになる。問題は戦時でなくとも情報操作は有効で、チェルノブイリ事故にも 関わらず日本に原発が多数建設されたのは1970年のオイルショック後の通産省の情報操作により、石油は無くなると早合点させられたことにある。西岡氏はブログに次の ように書いている。

今から頂度40年前の10月、第4次中東戦争に際してアラブ石油産出国が発動した「石油戦略」の影響によって、石油価格が高騰しました。そして、それに 伴って、「石油ショック」と呼ばれるパニックが、日本国内で起こりました。 トイレット・ペーパーを始めとする様々な物資が無く成るのではないかと言ふ不安から、今も語り草に成って居るパニックが日本国内で起きたのですが、この 時、日本の国民をそうしたパニックに追ひ込んだ物は、石油価格の高騰に加へて、石油その物が、日本に入って来なくなるのではないか?と言ふ不安でした。 石油価格の高騰が起きた事は、事実です。しかし、それと同時に、日本人を襲った不安は、価格の高騰だけではなく、石油その物が、日本が必要とするだけ日本 に入って来なくなるのではないか?と言ふ恐怖でした。 私は、当時、高校生でした。ですから、あの秋の騒然とした社会不安を今も良く記憶して居ますが、同時に、あの秋の「石油ショック」を機に、多くの日本人 が、「原子力は必要だ」と言ふ考えに傾いた事を非常によく覚えて居ます。私自身が、その一人だったからです。 実際、この1973年の「第一次石油ショック」を契機に、日本は、原子力発電の推進へと舵を切ります。高校生だった私自身を含めて、当時の日本人は、「石 油ショック」の様な「危機」が又いつ起こるか分からないのだから、原子力発電は必要だと言ふ考え方を持つ様に成ったのです。そして、そうした世論の変化を 追ひ風にして、通産省(当時)は、これ以降、原子力発電を協力に推進する事に成功します。 そうして、日本は、「原発大国」への道を進んだのです。 つまり、1973年の「石油ショック」は、通産省(当時)が、原子力発電を推進する上での大きな歴史的節目に成ったと言ふ事ですが、その1973年の「石 油ショック」について、多くの人が知らない驚くべき事実が有ります。 それは、あの時、日本国内に石油は十分有ったと言ふ事実です。そして、更に驚くべきは、当時の通産省(現在の経産省)が、その事を知って居たにも関はら ず、その事実を隠し、国民のエネルギー供給に対する不安を意図的に煽って、これ以後、原子力発電を推進したと言ふ事実なのです。

16:15  自由討論

参加していた元陸自調査学校長は情報操作に関してはノーコメント。

17:00  閉会          

参加費 3,000円 当日受付にて
閉会後コーヒールームにて二次会

メルケル首相の後輩でライプツィヒ大学で物理学の博士号を取得した長身・金髪の若い女性研究 者フランチェスカ嬢と話す機会を得た。ドイツ日本研究所の奨学生として日本に留学しているのである。彼女に人為的温暖化説はヨーロッパ産だが、この考えは化石燃料を我慢するという犠牲を捧げるから神様どうぞ温暖化はしな いようにお願いしますという多神教の呪術のように私には見える。温暖化は自然現象という神の設計図のとおりに発生しているもので人間が犠牲をささげたから 神がゆるしてくれるというものではない。そもそもヨーロッパが近代化する原動力となった一神教であるキリスト教の教えは神は人間と交渉しないという信仰で はなかったか?と目下読んでいる橋爪大三郎の説を応用して議論を吹っ掛けた。しかし私の説明が荒っぽいので彼女はにこにこするだけである。そこで「メルケルの後釜を狙っているね」というとにっこり。

私の持論である理系vs文系論も 展開したが、これはよく知っていた。英国が没落したのは文系優位社会だったから、米国も同様ビジネススクール優位で後を追っている。日本の文系は数学が苦 手だから文系を選んだという人間が多く、英国よりもっとひどいというとビックリしていた。フランスでは数学ができなければエリートにはなれないし、米国の 金融だってハンガリー移民のトーマス・ピーターフィーのような数学に強い人間が株の売買を自動化のパイオニアになって以降できる理数系はウォールストリートに吸い込まれた。日本の銀行は手も足もでない。ただ自動化にも問題があってファットテールに 引っ掛かってバブルが発生したりつぶれたりと愚かなことをしてはいるのだが。リーマンショックでこれらの人材が野に放たれた。彼らがゲーム理論準拠アルゴ リズムをつかったボット開発をすると、運輸、医療、スポーツ、芸術、人事管理、パートナー選び、政治、国防のあらゆる分野でボットが有効となり、失職する 人々が増えるであろう。

隣には日立GEの社長をしてBWRの燃料棒を製造していた荒井氏が盛んに彼女に歌舞伎観劇をすすめている。ところで荒井氏に「日立は英国で原子力発電をす る企業を買収したが、ファットテール事故を起こしたらどう対処するのか」と聞いたところ、考えたこともないらしく、しばらく無言で天を仰いでいた。MHI がトルコに原発輸出というが隣はシリアでテロにあったらひとたまりもない。これもファットテール事故を認識できない文系優位の社会故か?

開会前に元電総研所長の富山氏からツエルマットでの愉快な経験を聞いた。団体旅行でツェルマットにでかけた。中腹までケーブルでゆき、そこから歩いて 800m下ると聞 いてもピンとこず、気楽に坂をくだっていたところ、内股の筋肉が突っ張り、動けなくなった。救助要請したが、ツエルマットではバッテリー車しかなく、坂は のぼれ ないという。そこで有料覚悟でヘリを要請した。40万円程度の費用は保険でカバーされているので問題ない。ところが樹木が邪魔して動けなくなった地点には ヘリが着陸できない。医者が一人おりてきて診察し、少し先の空地まで歩けるだろうと診断され、そろそろと歩いてそこではじめてヘリに収容され、病院で 点滴を受けた。ヘリに40万円、病院で40万円請求された。観光レートだったようだ。海外の登山では保険は必須ということと、水をよく飲めという教訓を得 たというお話しでした。特に酒を飲みすぎると脱水症状になって血液の粘度が上がり、酸欠で筋肉が引きつってしまうのだ。

東芝ーWHが1.4兆円で受注したヴォーグル原発3,4号機は採算性がないため、アメリカの金融機関が全部降りたからといって12兆円近い資産をもってい る日本の政府系金融機関、国際協力銀行が融資すると受注当時は報道されていた。ところが最近の日経によるとコストダウンのために中国企業が米中間2国間協 力協定に基づいて圧力容器、蒸気発生器などの部品を供給する見通しとなったそうだ。設計と建設はWHの米国人の職場を確保し、機器製造は中国人の職場を確 保するが日本人の職場はゼロ。これ東芝という企業は国際協力銀行の金使って日本人の職場提供できていないいう非国民企業になっている。トルコではしゃいで いる安倍さんはどう考えているのだろうか?

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November 4, 2013


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