ピークオイル

グリーンウッド氏が学生時代の1960年代、徳久教授(故人)の「石油の寿命はあと19年、今全盛の石油産業で食を得る道を選んだら人生後半は悲惨になる」との予言を信じて、爾来、石油精製のエンジニアリングには進まず、天然ガス生産施設のエンジニアリングで生計を養ってきた。この先生の予言は間違ってはいなかったが、多少悲観的すぎて石油精製業に入った同期生も役員まで駆け上りめでたく引退できている。石油文明の最後の輝きのなかで逃げ切りセーフというのが偽らざる感想である。

徳久教授の言葉の根拠は覚えていないが1992年に国際応用システム解析研究所のナキシェノビッチが公表した図では石油産出量のピークは1980年となっているのでその当時はそうであったのだろう。この図では天然ガスのピークは2030年となっている。

オックスフォードで学び、テキサコ、アモコで探査部長として働いたコリン・キャンベルと トタールで探査を担当したジャン・H・ラエレールがスイスのペトロコンサルタンツ社のデータベースを基に石油生産は2005年頃にピークを迎えるという予測をサイエンティフィック・アメリカン誌1998年3月号に発表した。 二人は石油の究極可採埋蔵量(地殻内に包含されている全体量のうちで人類によて採掘可能な総量=累積生産量+確認可採埋蔵量+発見期待可採量)を1.8兆バーレルとして、 ハバート曲線を適用してピークを2005年と予測した。

ハバート曲線は1956年にシェル社の地質学者M・キング・ハバート博士が米国の油田の生産実績を解析して得られた ベル型曲線の曲線である。ハバート博士は1965-70年の間にアメリカの石油生産はピークになると予想したが、実際に1970年にピークになったのである。直後にOPECの生産協定発動により石油は一時的に40ドルまで高騰するが、米国以外での生産が増加して一息ついて10ドルまで下がったのである。この曲線の特徴は1859年生産開始後、1969年にピークに達するまで110年かかったが、最初の100年間は埋蔵量の25%、残る25%は1959-69年の10年間で生産された。埋蔵量の80%は58-64年間に生産されつくすことになる。

ヤマニ氏が主宰するCGESがまとめた世界の究極可採埋蔵量の推移は図-3の通りです。 米国の地質調査所がまとめた 究極可採埋蔵量はもっと多く3兆バーレルです。油田の埋蔵量の度数分布が両対数で右下さがりになるスケールフリーのフラクタル分布(べき乗分布)となります。 世界のあちこちに散在するマイナーな油田の開発で究極可採埋蔵量を4兆バーレル位までは増加させることができるだろうという説もあります。

ハバート曲線は式の型で示されていないのでグリーンウッド氏は下記のロジスティック モデルを使ってキャンベル氏の予測とUS Geological Surveyの予測の両方につき、ピーク時期を予測してみた。

dN/dt = r0 K f  (1 - f)

df/dt = r0 f  (1 - f)

ここでdN/dtは石油の年産量(billions of barrels)、Kは究極可採埋蔵量(billions of barrels)、f=N/K、r0とN0は初期値である。1950年と1990年の年産量NとキャンベルのK=1.800trillions of barrelsからr0とN0をもとめてロジスティック曲線を描くとピークは2005年となる。(ピンク色)

累積生産量=0.9 兆バーレル、発見期待可採量=0とし、CGESの究極可採埋蔵量確認の4割が可採埋蔵量とすればキャンベルの採掘可能な総量1.8兆バーレルが得られる。

エンハンスト・オイル・リカバリーなどの採用により米国の地質調査所の究極可採埋蔵量3兆バーレルの7割が回収できるとすれば採掘可能な総量は3兆バーレルとなる。この場合は紺色のように2020年にピークをむかえ、年産340億バーレルとなる。

年産量の推移

2020年でピークを迎えるというのは早い感じもするが、需要があればそれだけ生産されるというのがロジスティック式であり、事の本質上、多分そうなるのだろう。 中国などの新興国が残りを全て消費しつくすのだ。そして石油生産がピークを過ぎれば需給バランスから石油価格が高騰するのは自然である。

確認可採埋蔵量には無論、タールサンド、シェールオイルや液化二酸化炭素注入によるエンハンスト・オイル・リカバリーによる増量分などは含めていない。油田の埋蔵量と数がスケールフリーのフラクタル分布(べき乗分布)とすれば究極可採埋蔵量が4兆バーレルはあるのではないかという説もあるが、沢山の小さな油田開発となり、採油費の高騰は避けられないであろう。

キャンベル予測は一般には注目されなかったが、石油価格は2005年にはバーレル当たり70ドル、2008年には100ドルまで高騰した。米国の統計によれば2005年5月に世界の生産量はピークに達したという。74x365=27billion bbls/y

September 18, 2005

Rev. February 15, 2009


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