メモ

シリアル番号 表題 日付

975

べき乗則

2005/08/25

正規分布(Gaussian distribution):平均値の周りに分布し、左右対称にベル型の分散をする度数分布。

P(X)=1/SQRT(2ps)*EXP(-(X-m)2/2s2)

Excel関数としてNORMDIST(X, m, s, FALS)が用意されている。

べき乗分布(power law distribution フラクタル分布):度数分布を両対数にプロットすると右下下がりの直線となるべき乗分布になるときべき乗則(power law)が成立するという 。

P(X)=K*X-a

べき乗分布においては正規分布のように特徴的な値がないというスケール不変性(スケールフリー)がある。べき乗分布のスケール不変性は、大きな出来事が何か特別な理由によるものではない、ということも意味している。それは、大きな出来事も小さな出来事も、同じメカニズムで生成されるからだ。

平均値m=0、標準偏差s=1のガウス分布の右側は下図の点線のようになる。一方べき乗分布は下図の右下下がりの直線のようになる。

stretched-exponentialの分布、対数正規分布も類似の分布。

べき乗分布が見られる現象として、言語に関する「ジップの法則」、地震のマグニチュード(リヒター・スケール)とその起きる頻度の関係、 河川の氾濫、宇宙における物質の集まる性質(膨張する宇宙とビッグクランチとの釣り合いのとれた状態にあるため)、生命の絶滅の規模と頻度、進化、ユール分布、マタイ効果(自己強化的累積現象)技術革新、金融危機、バブル現象、学習曲線、雪崩の規模と頻度の関係、相転移、破壊現象における破片の重さと破片の数の関係、石油の埋蔵量、タンパク質が関与する生命現象にかかわる化学反応の数の分布、インターネット上の次数分布、侵食が生み出した河川のネットワーク(フラクタル)、高額所得者の収入の金額とそれを得る人数の関係を示す「パレートの法則」、相転移のクラスターのサイズ、 パーコレーション(浸透 percolation)、拡散律速凝集(DLA; diffusion-limited aggregation)、空港のハブ、食物連鎖、エイズの伝染、吸着電位の分布がポアソン分布をする場合に、吸着時間の分布、臨界的な状態、「2対8の法則」、「ユール分布」などがある。 べき乗則をファットテールとよぶこともある。

インターネット上の次数分布とはノード毎のリンク数(ノードの次数)の分布のこと。古典的ランダムグラフ理論ではポアッソン分布(lが大きいと正規分布になる)になるとされていたが、最近ではべき乗則に従うとされる。次数分布の縦軸はノードの個数に比率、横軸はノードの次数である。両方とも対数スケールにすると分布は直線になる。この意味するところはランダムではなく自己組織化原理に従うということになり、スケールフリーとなるということ。

秩序と無秩序へ移行するときのべき乗則、スケール不変性、繰り込み群、パー・バク、チャオ・タン、クルト・ヴィーゼンフェルドが発見した自己組織化臨界現象はべき乗則に従う。

大ヒットをした商品が売れた理由は、何か特別な理由があるからではない、ということ示唆している。このことは、大地震がスケールに依存しない普遍的なメカニズムによって、地震の連鎖の雪崩によって結果として生まれたというのと同じように、商品の大ヒットも市場の普遍的なメカニズムによって、「売れるものがますます売れる」という連鎖の雪崩によって、生まれる。

心理物理学ではS・S・スティーブンズが物理的な強度と主観的な知覚との関係はべき乗曲線に乗るということを発見した。(ウイリアム・パウンドストーン「プライスレス」)

R=KSn

ここで感覚係数nは音の大きさ0.7、香り0.6、甘さ0.8、暖かさ1.5、電気ショック3.7。

これもべき乗法則という。

ナシーム・ニコラス・タレブは「ブラック・スワン」において米国の技術革新もリーマンショックなどの金融危機(バブル)はすべてべき乗法則に従うという。人間社会は『マンデルブロ的ランダム性』=拡張可能=スケールフリー(スケール不変)=スケール則=ベキ乗則(power law)=パレートの法則=ジップの法則=ユール分布=安定パレート分布(stable pareto distribution)=レヴィ過程(レヴィ分布Levy distribution)=フラクタル分布にしたがうという。

著者はタレブにならい原子力発電の大規模汚染もべき乗則に従うと主張している。詳しくは原発の大規模放出事故のリスク参照。

Rev. July 22, 2011


トップ ページヘ