ノースウエスト・アース・フォーラム

最高裁判所見学

2008年3月25日、NEWフォー ラムの第5回目の企画として西沢重篤さんの企画・手配で、長野高校同期の「才口千晴」最高裁判所判事にお願いし、最高裁見学が実現した。判事付き 秘書官のご案内で法廷等見学後、才口裁判官室訪問。

最高裁判所玄関で 西沢氏撮影

見学会終了後、才口判事も加わって氏が懇意にしている「満平 平かわ」で懇親。(Restaurant Serial No.323) グリーンウッド氏は2004 年に最高裁見学をしているので懇親会だけ出席した。

事前にインターネットで「満平 平かわ」を調べると政界・官界の大物がおしのびで訪れると書いてある。才口判事にそれは誰かと聞くと、「それは俺のこと だ」という。

最高裁判所判事は15名だが、出身者は(1)裁判官、(2)弁護士、(3)検察官、行政官、学者の3つのグループから選ぶという暗黙のルールがあるとい う。才口判事は弁護士出身で、小泉元首相に任命されたが、2008年9月に5年の任期は終わる。任期中または引退後の判事の死亡率は弁護士出身が一番高い そうだ。それだけストレスにさらされているからだろう。彼の任期中、溜まった案件の審議をスピードアップすることができたという。

行政官出身者は責任感が欠如しているから死亡率が高くなるようなことはないようだ。政府のもっともあきれた人事が厚生省年金局企画課長や社会保険庁長官を 歴任した年金官僚で「年金記録焚書事件」の当事者である横尾和子判事だろう。国際キリスト教大卒で国家公務員一種はともかく、司法試験に合格しているわけ でもないが、慣行にしたがって最高裁長官の推薦を鵜呑みにした自民党の森喜朗首相によって判事に任命された。安倍首相が歴代の社会保険庁長官は退職金を返 納すべきといったが、彼女が返したということは聞かない。

本件に関しては2008/9/4横尾判事はようやく辞任する意向を固めたと報道された。彼女は定年まで判事を続けたいと思っていたようだが、総務省の年金 記録問題検証委員会をはじめ社会の批判が厳しく、最高裁判所内部からの批判もあって決意したという。厚生事務次官とその家族襲われた事件がその後2件発生 した。3件目の標的は警察の警備があったため断念して犯人は自首したという報道があった。もしや横尾氏がその標的ではなかったのかと思って確認するとそう だという。

長野高校卒業生の進路は法曹界、官吏、医師が多い。技術分野に進んだ幹事の土屋氏やグリーンウッド氏などは少数派である。今回の見学会にも官吏と医師が当 然入っている。

懇親会の自己紹介でもっとも面白かったのは国土交通省の役人だったO氏だ。東北大の土木をでてから建設省に入り、課長の時に四国3橋の一つを手がけ、天下 りを繰り返しているらしい。道路特定財源が如何に大切かという考えを縷々披露するので、皆であきれ顔で聞いた。

人口も物流密度も等密度で分布はしておらず、かつ人口の集中はますます進行して田舎は過疎化しているというのに誰も使わない道路を田舎に作り続ける一方、 首都圏の道路は渋滞が解消されていない。全国の道路を走り回ればこれは事実であると分かる。誰も使わない道路を田舎に幾ら作っても物も人もそこを素通りす るだけで地方の振興にはならないのだ。 というより「ストロー効 果」でますます地方の衰退をまねく。税金はもっと好ましい使い方があるはずである。本人にそう指摘してもキョトンとしている。

エルンスト・マッハが 「マッハ力学」で「思考の経済」とよんだ考え方を披露している。それは「事実を思考の中に模写するとき、私達は決して事実をそのまま模写するようなことは なく、私達にとって重要な側面だけを模写する」であると言っているのはそのとおりだと思う。

参加した医師である田島 知郎氏は米国で教育をうけたから 「エトランゼ(異邦人)」の視線で日本の医療の仕組みの矛盾を的確に指摘できる。

 国土交通省の道路特定財源維持方針の自己正当化のよりどころは地方の首長1800人が6名を除き、道路特定財源維持に賛成と署名していること だ。しかしこの署名は踏み絵のようなもので、もししなかったら意地悪されると地方の首長達は恐れている。引退した首長の半分は道路特定財源維持の必要はな いと考えているとのこと。国土交通省のお代官のすることは江戸時代のやり方のように汚いのだ。昔軍部、今国土交通省であろうか? 官僚の権力の自己肥大の40 年サイクル説がある。官僚の権力の自己肥大期は失敗に向かってまっしぐらに坂を下るフェーズで破局が来るまでとまらない。 役人OBやその周辺の人たちは一般人のいるところでは仲うちで「会社では・・・」という。おかしいと思って質すと「役所では・・・」と言うと一般人が注目 するからごまかしているのだという。やはりやましいところがあるのだ。

この会では参加者の一人である朝日新聞社で中東アフリカ総局長、ニューヨーク支局長を勤めたK氏が東大法学部出なのに、なぜ法曹界に入らずジャーナリスト になったかの自己弁明があって興味深かった。そして彼の著書「クルド人 もうひとつの中東問題」 が話題となった。同期の劇作家別役実氏は参加していなかったが、彼の随筆「日々の暮し方」が話題に上がった。

裁判員制度に及んだとき、私は歓迎すると発言。心は死刑制度なんて野蛮で暴力の連鎖を呼ぶので廃止すべきと思っているからである。遺族の憤懣も分かるが裁 判員となって少しでも死刑判決を減らすことにに貢献できるのではと思うのでと発言したところ、才口判事はこの見解には驚いたようであった。

才口判事はその後70才の定年で9月に退任となり、一介の弁護士に戻った。わたしにとって残念なのは第一小法廷に所属し、もんじゅ控訴審の原判決を破棄に 関与したことである。福島事故の遠因を作ったことと国家の壮大な無駄使いに加担したことは否めない。

March 19, 2008

Rev. May 12, 2012

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“一票の格差”に対し違憲判決を出すのは弁護士出身の判事だけで、判事、検察、行政出身の判事のほとんどが合憲の判定を ダスとの新聞報道に接していたのだが、友人のS.K.から元外交官から判事に任命された福田博氏は違憲判定を出した立派な人であったと指摘された。氏は『世襲政治家がなぜ生まれるの か?』を上梓している。

Rev. June 6, 2009


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