読書録

シリアル番号 1018

書名

世襲政治家がなぜ生まれるのか? −元最高裁判事は考える

著者

福田博

出版社

日経BP

ジャンル

政治学・地政学・行政学

発行日

2009/3/23第1刷

購入日

2009/6/05

評価

同期のS.K.から中曽根総理大臣秘書官を歴任した元外交官で最高裁判事に任命された福田博氏は違憲判定を出した立派な人であったと指摘された。S.K.の連れ合いも中曽根総理大臣秘書官をした人だから、いわば同志である。

S.K.に強くこの本を読めといわれてやむを得ずインターネットで調べると氏は「私は最高裁の所謂“一票の格差”合憲判決で5回も反対意見を書いてきました。民主主義国家の公務員は憲法と法律に基づく仕事をしなければなりません。法の番人たる裁判官なら、憲法が求める国家像を念頭に法秩序を守る責務を負っています。違憲判断を述べても少数意見にしかならず、『損をしますよ』とも言われましたが、公務員ですから、よい国であり続けさせるために持ち場での義務と考えました」という。これを知って少し救われる気持ちになった。まさに公務員の鑑となる人だ。氏は判事退任後、弁護士として活躍されている。敬意を表するために本を買った。

さて民主党が地すべり的勝利をおさめた総選挙でも国民審査は無意味な結果に終わった時、ひょんなことで2000年に自分の書いたページ 「最高裁判所判事の評価」を見つけて最近読み直 した。なんとこの本の著者である福田博氏こそ1999年まで違憲判断をしていたその人だったのである。

本書の付属資料によれば

1996年に反対意見を書いた判事は大野正男(弁)、高橋久子(政)、尾崎行信(弁)、河合伸一(弁)、遠藤光男(弁)、福田博(政)。

1998年に反対意見を書いた判事は尾崎行信(弁、河合伸一(弁)、遠藤光男(弁)、福田博(政)。

1999年に反対意見を書いた判事は河合伸一(弁)、遠藤光男(弁)、福田博(政)、元原利文(弁)、梶谷玄(弁)。

2000年に反対意見を書いた判事は河合伸一(弁)、遠藤光男(弁)、元原利文(弁)、梶谷玄(弁)。

話はそれるがパナソニック、日立、宇宙開発事業団、三井化学、千代田化工の技術系OBがメンバーとなって総合知学会なるものをつくってお互いに勉強して論文集など作り地方自治などの提言してゆこうとしている。そこの会合で「皆様は官僚の劣化ばかり言い募るが、政治家の劣化の方がもっとひどく、それは選挙区の区割りも一因だ」と福井さんの持論を紹介したところ、「一票の格差」に関し問題意識を持っている人は誰も居なかった。マスコミが鳴り物入りで報道しないからだろう。

めげず縷々説明すると結局わかってくれた。「現在の地方行政のサイズが奈良時代からの伝統的行政区分を踏襲していることも格差是正の抵抗となっているので早く道州制に切り替え、そのとき選挙区もそれに合わせて抜本改定するのがよいのでは」と提案すると皆そうだということになった。宇宙開発事業団OB氏は民主党の鳩山氏に直接提言しているそうであるがはたしてどうなるか?

Rev. June 22, 2009

Rev. October 1, 2009


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