越後山脈

会津駒ヶ岳

wakwak山歩会は2004年9月8日から3日がかりで会津駒ヶ岳(標高2,133m)に登った。空前の台風18号が過ぎ去った翌々日のことである。登山基地となる桧枝岐村(ひのえまたむら)へのアクセスには自家用車は使わず、私鉄とバス利用とした。

第1日

東武電鉄浅草駅に集合。東武鬼怒川線で新藤原駅にむかう。東武伊勢崎線は乗ったことがあるが、東武日光線は初体験である。利根川を渡ったところから高い土手の下を走るようになる。利根川が北流するのもおかしいがと思っていたが、帰って地図をみて利根川の支流、渡良瀬川、渡良瀬遊水地、渡良瀬貯水池の土手とわかる。

栃木市もはじめてみた。県庁は宇都宮にあるのに、名前だけは県と同じ。結構大きい。東武線は市街地を大きく迂回している。栃木市の北西の丘陵地帯にはカントリークラブ のクラブハウスが見える。地図で数えると30もあり、ビックリ。いまとなってはさぞかし経営が苦しいだろうと察せられる。丘陵地帯から利根川の流れる完全な平地の間は緩やかなアンジュレーションのある農地で畑作と水田が半々である。どのように灌漑用水を引いているのかわからない ような高いところに水田があり、意外に低地が畑になっていたりする。 あとで栃木県出身の久保野氏にうかがうと、かの有名な二宮尊徳が請われてこの下野国(しもつけ)の丘陵地帯の開墾を指導したのだそうである。水田は彼の指導により四角とし、高地には水車をつかって水を揚げたそうである。いまは無論電動ポンプを使っているらしい。

今市に入ると日光の杉並木が見える。2001年11月にバイクでこの並木を通過したのを思い出す。ここから列車は東武鬼怒川線に入る。東武が客寄せのために造ったウエスタン村、江戸村、野猿公園がちらちらと垣間見える。あらためて鬼怒川温泉郷の大きさに驚く。 地元の足利銀行倒産の原因となった不良債権はこの巨大な温泉ホテル群のものと推察した。新藤原駅で19年前に完工した第三セクタの野岩線(やがんせん)に乗り換える。栃木県(下野国)と福島県(岩代国)を結ぶ線という意味で野岩線と呼ばれたらしい。川治温泉から会津高原駅まではもうほとんどトンネルの連続である。客も1両に数人という稼働率である。これで浅草から2,500円は安い。

会津駒ヶ岳へのアクセスルート (橙色)

尾瀬沼山行きの会津バスで桧枝岐村に向かう。1,700円は高いと感ずる。途中舘岩村(たていわむら)を通過する。黄金の稲穂をつけた田んぼと白い花をつけたソバ畑がまことに美しい。湯の花温泉にも立ち寄る。木賊温泉(とくさおんせん)入口も通過する。角生(すみお)、貝原向(かいばらむかい)、松戸原(まっどがはら)、穴原(あなばら)、耻風(はじかぜ)などという地名がめずらしい。

1998年、ジープで 奥只見湖方向から通過したことがある桧枝岐村に1時間半かかって到着。駒ケ岳登山口近くにある民宿 駒口泊 (Hotel Serial No.293)。若き美人の女将に無料チケットをもらって近くの村営駒の湯に出かける。夕食のソバ、地元のヒノキで作ったワッパに入ったソバガキを堪能。

第2日

登山口から取付きまで林道を40分歩かねばならないが、宿の主人が親切にも車で送ってくれる。我々3人をのせた軽自動車はエンジン全開である。滝沢口の取付きは急階段だ。入口に太陽電池付のカウンターが装備されていて登山者数をカウントしている。登山者名簿に名前を書いてポストする。

ブナの巨木が散在する気持ちのよい林間コースをジグザグに登る。ヘリポートは遭難者を搬出するために臨時に作られたとかで着陸する平地はなく、ただ木が伐採されただけのところであった。水場を過ぎれば勾配もゆるやかになり、ブナ林からオオシラビソに変りやがて笹原から草原に変ると山頂や駒ノ小屋が見えてくる。草原には池塘がある。草原には木道が敷き詰められている。

駒ノ小屋を望む

駒ノ小屋前には巨大な池塘、駒大池が駒ヶ岳山頂を映している。駒ノ小屋は予約してあるが管理人はまだ来ていない。 サブザックに雨合羽とおにぎり、飲料水をつめて山頂に向かう。

団体の女性登山者の一団と会う。山頂でまだ早いが腹がへったので昼食とする。晴れていても全体にモヤがかかっていて近くの燧ヶ岳(ひうちがたけ)すら南方にボヤっとみえる程度である。北側には浅草岳が見えるはずであるがシラビソが邪魔して眺望は悪い。 かわりに塩崎慎治氏が国土地理院の デジタル地図から作成した3Dグラフィックを駒ケ岳山頂から俯瞰する360度パノラマで仮想眺望を楽しんでください。 中門岳に行く途中見えた浅草岳、那須岳など遠くてどれかわからなかったが、この仮想現実なら明確に視認できる。飛龍山の向うに霞んでいるのが富士山である。

駒ヶ岳山頂にて (青木聖侑氏撮影)

昼食後、中門岳(ちゅうもんだけ、2,060m)に向けての縦走に入る。稜線は池塘が適度に散在する草原になっており、気持ちの良い散策路である。

花の時期は過ぎてもまだいくつか残っていた。そのうち3種を紹介する。このほかにオヤマリンドウが濃い紫の花をつけていた。ニッコウキスゲもなぜか1輪だけ遅咲きの花をつけている。

中門岳手前の窪地には池塘が大きくなった中門池、中門岳の山頂にも大きな池塘がある。池塘に流れ込む水はなく、天水と霧だけが水の供給源にもかかわらず、夏が過ぎても水は枯れない。ふしぎである。

池塘にはえるイワショウブ

ハクサンフウロ

ミヤマリンドウ

駒ノ小屋にもどってもまだ管理人は登ってこない。心配になって携帯で確認するとすでに出発しているので心配しないで待てという。我々の他にも3名予約ありという。そうこうするうちに管理人が到着。台風の倒木を処理するのに時間がかかったとのこと。最近日帰り登山者が多くなり、宿泊客が減って、採算が悪化、飲料水の荷揚げのためのヘリ代金、発電燃料すらまかなえないという。来年からは飲料水の供給もやめるかもしれないという。それでも5月からの登山者総数は7,000人はあるという。(Hotel Serial No.294)

夕食は缶ビールと2リッター飲料水を2本買い、携帯ストーブで湯を沸かし、アルファ米、レトルトカレー、インスタントスープの夕食とした。あとは夕暮れまで持参の日本酒とウィスキーで時間をつぶす。夜間3回トイレのため起きたが熊が出るのではと心配になる。熊よけの鈴も同宿者の迷惑になるので使えず、困った。霧が深く、シラビソは夜露を集めて下の木道をジットリと濡らし、雨とみまちがうばかりである。このトイレはヘリ搬出方式をとっており、二階で用をたすと1階に置いたヘリ搬出用容器に全てが収まるように設計されている。桧枝岐村がこのヘリ費用を負担している。応分のドネーションをした。

第3日

朝5時起床。携帯ストーブに水をかけてしまい火がつかず。暖かいインスタントラーメンはあきらめる。レーズン入りビスケット、ヨーグルトドリンク300ccで朝食とする。 管理人に聞くと、尾瀬を除き、駒ヶ岳では熊の被害は聞いたことがないという。それでも管理人はクマ除けの鈴を着けているのを前日見ている。

20分遅れで大津岐峠(おつまたとうげ)に向かい出発。途中やさしい岩場があったが、後はほぼ草原の道がつづく。ガスが盛んにながれてくるが、時々晴れ上がって見通しがよくなる。大津岐峠には予定より早く到着。ふりかえると駒ケ岳、その左の中門岳、右の大戸沢岳(2,089m)が見える。

大津岐峠より駒ヶ岳を振り返る

大津岐峠からは緩やかな勾配の下山路をキリンテに向かい950mを一挙に下る。

予定より1時間も早く下山できたので、火をおこし、朝食べ損なったインスタントラーメンを食す。 キリンテのキャンプ場は有料の民営のため、アスファルト舗装の国道上でジベタリアンとなっての間食であった。車はほとんどこない。バスにはまだ間があるため、キリンテから桧枝岐村の「燧の湯」まで歩く。ここで汗をながし、バス停前のそば処、「開山」でつなぎなしの「裁ちそば」を食す。ここでは毎日主人がそばを打つのを見学できる。(Restaurant Serial No.247)

裁ちそば屋で (コンちゃん撮影)

スケジュールとパーフォーマンス

日付

場所 予定時刻 実時刻 歩数 毎時高度差(m/h) 毎時歩数

第1日目

東武浅草駅 改札口 (東武)

11:20発

11:20発 - - -

9月 8日

会津高原駅(新藤原乗換え野岩鉄道)

14:47着、14:55発

14:47着、14:55発

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- 桧枝岐村駒ケ岳登山口(会津バス)

16:13着

16:13着

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第2日目

民宿 駒口(民宿の送迎車) 6:00発 6:10発 0 - -

9月 9日

登山口取付点(1,105m) 6:40発 6:20発 0 - -
- 水場(1,625m) 8:40着 8:15着 2,690

271

1,401
- 駒ノ小屋(2,055m) 10:50着 10:00着(荷物整理) 7,049

246

2,491
- 会津駒ケ岳(2,133m) 12:00着 10:40着(昼食) 8,393 - -
- 中門岳(2,060m) 13:20着 12:00着 11,297 - 2,904
- 駒ノ小屋(2,055m) 15:00着 13:30着 15,800 - 3,002
第3日目 駒ノ小屋(2,055m) 6:00着 6:20発 15,800 - 0
9月 10日 大津岐峠(1,950m) 8:00着 7:40着 21,643 - -

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キリンテ(1,000m) 10:50着 9:50着 32,500

336

5,003

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桧枝岐村(会津バス) 13:10発 13:10発

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会津高原駅(野岩鉄道) 14:40着、14:55発 14:40着、14:55

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東武浅草(東武直通) 18:04着 18:04着

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装備・食糧

山行装備:ゴアテックス上下、ブルゾン、3日分着替え肌着、サングラス、ストック2、スパッツ、軍手、山岳保険証、ザックカバー、ヘッドライト、コンパス、地図、万歩計、カメラ、携帯電話機、洗面セット 、腰痛防止用腹巻。

食糧:

September 14, 2004

Rev. June 21, 2008


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