千代田化工OB会

かっての上司の西尾氏から勧められた黒木亮の小説「エネルギー 上下」 は事実満載で迫力があった。我がサイト掲載の読書録を読んだ元サハリン石油ガス(株)(SODECO)の地質技術者だったH氏から「貴方のHPでは、バイ ク、旅行、川柳、高校のOB会など多くの記録が掲載されているのにもかかわらず、当然掲載されてしかるべき会社のOB会への参加記録が無いことをやや疑問 に思っていた」とのメールをいただいたのでここに釈明のページを設けることにした。

回顧録の どこかに書いたと思うが、千代田化工は理系の人間が中心となって設立された会社であるにもかかわらず 歴史をさかのぼると三菱合資会社から派生した企業のため1/3と文系の採用数が多かった。文系の採用数が多いのではと指摘しても人事の採用方針は変わるこ とはなかった。文系は入社しても建設現場のアドミをする位しか職場がなく、営業になっても役にはたたず、何も生まず、基本的には扶養家族である。不況期に 入ると人件費となって重荷になるだけならまだしも権力を握りたがるため、害あって一理なしである。 欧米の同業者とは全く価値観の異なる企業であった。会社トップが創業者の理系から陸士主計学校出のジュニアに代わり、権力掌握の方法としての紅衛兵として 文系を使い始めるとと彼らは団結して多角化と称して技術で優位性を持たないゼネコン分野に無手勝流で進出しようとして失敗した。そして顧客第一主義と似て 非なる「営業第一主義」のカンバンをかかげ採算度外視の受注戦を本業のプラント分野で繰り広げた。結果として会社を食い物にしたところがある。技術者はそ れぞれの専門に閉じこもっているため無力で、団結した彼らは敵なしであった。石油公団解体後のSODECOの天下り官僚による理系職員の虐殺と同じことが 生じたのだ。

一般的に日本では明治時代から官庁で文系優先主義の体制をとっているためか民間でも欧米と異なり、文系はゼネラリスト、理系はスペシャリストと考える風土 がある。千代田も国家とともに成長した三菱系のため、文系優位の人事制度が採用された。このため、理系はスペシャリストとされて、権力の中枢に入りにく い。エ ンジニアも経験をつめばまずプロジェクト・マネジメントをする。そして営業も、購買も、人事、経理もさせれば有効なパワーをふるう。しかし古びたエンジニ アは技師長などという専門職に閉じ込めてなにもさせず人材を潰すのだ。その目的は文系が競争相手を排除して権力を振るうためであったのだ。このような経営 が上手く行くはずはない。

千代田はプロジェクト中心の企業で恒久組織と有期組織がマトリックス・オペレーションする企業にもかかわらず人事部が構築した人事評価は自分達の会社がど のようなものかも理解せずに他社のコピーの旧態然としたオペレーション型の恒久組織が一律に採用する評価方式であった。このため、 前述の専門職制という本質的には窓際人事制度を持っていた。また恒久組織の人事評価はドングリの背比べになりがちなのに比較し、プロジェクト担当の有期組 織と営業は評価者が短期間で変わるため、受注したか出来なかったで評価されがちになる。3年後に判明するプロジェクトが利益を上げたかでは評価されにく い。このようにして間違った情報に基づく評価が長期間蓄積すると給与に2倍の差がでてしまうのである。結果としてプロジェクトと営業にいる人間は赤字でも 受注して評価を上げてもらおうという方向に流れる。

理系の初代社長は赤字を出した人は組織から取り除いたが、その他 は放任であった。社員の自由闊達なる自主性を重んずる姿勢で社員は必死になって働き、会社は大きく伸びた。陸士主計育ちのジュニアは自分と異なる意見を表 明した役員を取り除くことでコミュニケーションを阻害し、理系出身といっても技術やプロジェクトが分かっているのかと疑問視される三代目社長は国際的過当 競争で価格が暴落してゆくビジネス環境で受注できなかった営業トップの首を切ることで、受注さえすればよいという気を作った。給与体系と社長の姿勢が相乗 効果を生み彼等をして4割り8掛けという無茶苦茶な赤字受注に走らせたのだと当時感じたものである。一般に衰退に向かう企業は文系支配となっている。衰退 に向かったから文系が出てきたのか、文系がトップになったから衰退に向かったかは興味ある。千代田の場合は後者であろう。というわけで文系がまだOB会で 大きな顔をしているのは我慢できないというのが、近寄らない理由だ。購買部門にいた文系の同期の見方は文系に責任がるというようなものでは なく、全てはジュニア個人の権力維持の策謀に帰せられる問題に過ぎないという。彼の意見は暑気払い会にまとめた。

会社は資本家たる商社と銀行が千代田の技術を必要としたため生き延び、経営陣も営業も理系主体となった。同業2社も最近すべて理系(それも東北大卒)に なった。海外顧客といえばメジャーオイルや国営企業は全て理系で固めているから、文系営業は顧客とコミュニケーションできないのだ。文系新卒を多数採用す ることの弊害をようやく悟ったのかようやく数人というレベルまで是正された。しかし千代田化工OB会は旧弊を残し、いまだに 文系の人間が牛耳って創業家の権威を維持しようと腐心している。アナクロニズムここに極まれりだ。

この文系経営者の弊害は世界中に見られる。本文と その拡大版文 系官僚と文系マネジメントが日本を滅ぼすは千代田化工の現役世代には好評のようで密かに回し読みされているらしい。しかし一番喜んでくれたのは夏 はミュン ヘンとクロアチアに避暑で滞在中の森永晴彦先生である。先生は「かって茅誠司は 文系大学不要論を説いた。それなのにその息子の茅陽一は文系の走狗となりさがってしまった」となげかれた。

February 1, 2009

Rev. May 15, 2012


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