燃料電池自動車 対 電気自動車

1995年頃ダイムラー・ベンツ社が燃料電池自動車開発のノロシを上げてから自動車各社は燃料電池自動車の開発に積極的に取り組んできた。たしかに有機膜を使う燃料電池はブレークスルーではあるが燃料供給産業に従事して居るものにとっては燃料電池が必要とする水素燃料供給は技術的に可能ではあるが、有限の資源枯渇速度の加速、地球温暖化の促進、コストの増加という面から否定的な考えをもっていた。それから10年経過するがその危惧は増しこそすれ、減じはしなかった。トヨタ自動車の張社長が燃料電池自動車の開発に取り組むと公式したときにはあれだけソロバン高い会社も張社長の世代でついにヤキがまわったかと驚いたものだ。

ハイブリッド車」にまとめたように燃料電池の発電効率は38%と高い。しかし燃料の水素は自然には存在しない。石炭、石油、天然ガスから製造しなければならない。この転換過程で42%というエネルギーが失われる。したがって 燃料電池車のウェル・ツー・ホイール効率は22%となり、燃料電池ハイブリッド車でも29%である。通常のガソリン車の14%よりは良いが、ガソリン・ハイブリッド車や電気自動車の32%やより劣る。

車種

ウエル・ツー・タンク効率

タンク・ツー・ホイール効率

ウエル・ツー・ホイール効率

燃料電池車(FCV)(市街地・高速道路) 58 38 22
燃料電池ハイブリッド車(FCHV)(市街地・高速道路) 58 50 29
電気自動車(市街地・高速道路) 40 80 32

水を電気分解すればよいのではというが、その電気は石炭、石油、天然ガスからつくるのだ。水素を液化して輸送ということになれば、NASAの宇宙計画のように高価なものとなる。太陽電池発電するくらいなら太陽電池自動車を作ればよいわけである。でも太陽電池はまだ高価だ。

石炭はともかく、石油や天然ガスから改質反応で水素を製造しても副産する一酸化炭素を完全に除去しなければ、燃料電池の膜につけたプラチナ触媒が劣化してしまう。それに多量の炭酸ガスがこの工程で排出される。まわりくどいことをせず、石油や天然ガスをエンジンで直接燃焼すればよいのだ。

メタノールを燃料とするDMFCという燃料電池もある。しかし、まだ性能は低く、メタノールを天然ガスから製造するにもDME合成とおなじようにエネルギーロスがあるため、CNGハイブリッド車DMEデーゼル・ハイブリッド車のほうがましだということになる。

充電可能な二次電池はNi-Cd電池,ニッケル水素電池,リチウムイオン電池と進化し、容量が倍増してきた。Ni-Cd電池は正極にニッケル,負極にカドミウムを用いる。ニッケル水素電池は正極にオキシ水酸化ニッケル,負極に水素吸蔵合金を用いる。リチウムイオン電池は負極に炭素系の黒鉛やカーボンを,正極にリチウム含有物質(グラファイト系の炭素材料)を採用している。

トヨタのハイブリッド車は安価なニッケル水素電池を使っているが、リチウムイオン電池は高価ではあるが軽量で多量の蓄電が可能だ。充電には40%の発電効率が得られる大型の発電所で発電した電力を利用できるのでエネルギー効率がよい。夜間電力を利用 して充電すれば電力会社にとって原子力発電所をフル稼働させるために揚水発電をするなどとい う無駄も省け、余剰発電能力、余剰送電能力の有効利用ができて料金も魅力的に設定できる。意外に電気自動車が普及するのではないかという予感がする。

三菱自動車や三菱自動車をOEMメーカーとしてニッサンが四輪独立駆動の電気自動車に積極的に取り組むそうで今後が期待される。

October 9, 2005

Rev. October 22, 2005


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