国際連合大学

ゼロエミッションシンポジウム

2007

 

先輩のK氏に誘われて一緒に国連大学のゼロエミッションシンポに出席した。(財)日中経済協会環境委員を勤めていたころ、委員長をしていた藤村宏幸氏がゼロエミッションフォーラム会長をしていることを知り、かなりの御歳なのに、よく頑張っているなと感じた。

 

英国の政策

グリーンウッド氏のお目当ては駐日英国大使のグレアム・フライ氏の「スターン・レビューと英国の気候変動政策」であった。現英国首相のブラウン氏が蔵相の頃、世銀の経済学者だったスターン博士に依頼して作ってもらった政策提言である。

2006年の暮れ、娘の家族を訪ねて、英国を訪問したとき、永年尊敬してきたジェームズ・ラブロックの「ガイアの復讐」をブリュッセルで買って読み、「グローバルヒーティング防止のためには原発が一番いい」という彼の考えに危惧の念を持ったのがウェブ上でスターン・レビューを見つける契機となった。そしてすこし遅れて出たIPCC報告をあわせ読み、グローバル・ヒーティングの黙示録を書き下ろすことになったのだ。

グ レアム・フライ氏は日本で学び、奥さんも日本人とのことだが、日本語ぺらぺらで大変わかりやすく、明快な説明であった。外交官起用に日本も参考にしたら良いと思わせる人物であった。貴方がやれば私もという相対思考の日本と違って、英国やヨーロッパの人々は理論的に納得すれば、他人がどうあれ、やらねばならぬことはやるという文化を持つ。その気迫に圧倒される思いであった。

 

日本の政策

続いて日本の中央環境審議会会長をしている鈴木基之教授の「低酸素社会に向けたパラダイムシフトと日本の環境戦略」を聞いた。かって彼とは六本木で飲み明かした間柄である。鈴木教授は直前の英国大使の後で大変話しずらいとこぼしながら、日本の実情をはずかしそうに説明した。英国のスターン報告の毅然さに比べ大分見劣りし、2012年の京都プロトコルの対1990年比で6%削減の国際公約も守れないどころか2005年には7.8%も増加して暴走しかかっているからである。そして日本政府の取り組みも小粒なものだと鈴木先生は分かっているからである。それを弁解しながら苦しそうに説明していた。その後、鈴木基之教授のかっての東大の同僚で現在の総長をしている小宮山宏氏の著書「課題先進国」日本 キャッチアップからフロントランナーへ」を読んだが、鈴木基之教授の恥ずかしさがよく理解できた。

元、日経新聞記者の三橋規宏氏の「日本の温暖化対策戦略 短期悲観、長期楽観」企業、国民の自主的な取り組みだけに頼っている政府の方針は間違いで、規制、環境税、税制、排出権取引、補助金などが必要と主張していた。ただ日本の人口減は究極の温暖化対策というアイロニカルな結論であった。

 

スエーデンの環境政策とストックホルムのバイオガス戦略

日本では一般廃棄物は地方自治体が全て焼却処理して二酸化炭素を排出している。わざわざスエーデンからやってきたラーシュ・ラーム氏はこれをメタン発酵してメタンガスを発生させ既存の都市ガス網に送り込むというまことに結構な構想を聞かせてくれた。これこそ、政府がやらねばならない政策であろう。

 

水素社会に向けたBMWの取り組み

水素を液化して自動車燃料とする構想のプロトタイプ車開発の紹介だ。技術的には面白いが液化行程でのエネルギー損失が大きく、グローバル・ヒーティングの黙示録でも言及したようにこれが実用化されることはないであろう。日本政府が2002年からはじめた水素燃料電池実証プロジェクトに関連していたのかもしれないが、日本政府も随分無駄なことをするものだ。

 

トヨタのハイブリッド車への取り組み

担当部長の大野氏のお話はさすがトヨタと思わせるものであった。車バカとはならず、資源から途中のエネルギー変換行程をも視野にいれたバランス感覚のよいお話であった。燃料電池は資源から途中のエネルギー変換行程をも視野にいれてホットにならず静観しているようだ。グリーンウッド氏の見方と一致している。ハイブリッド車をだしたとき、最も複雑だが、最も総合効率のいいものを市場にだしてしまって赤字に苦しんだが、今は黒字化でき、これから、プラグインハイブリッド、新型ディーゼルエンジンの商品化の紹介があった。
 

ジョンソン・エンド・ジョンソンの気候変動へのとりくみ

まあ頑張ってよい企業イメージを作ってくださいという感想。

 

松下電器の家庭用燃料電池実用化にむけて

マジかね、トップマネジメントの判断力は大丈夫?と他人事ながら心配になる。

December 17, 2007


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