ヨーロッパ滞在顛末 3


4月13日、一番長い日 29/04/01

荷造りは出発の前の晩までかかった。
段ボール箱5〜6個に詰めた荷物は住所が決まってから航空便で送ってもらうことにした。

今回乗る便はブリティッシュ・エアウェイズ(BA)のロンドン経由で、チェックインは午前11時だった。無事チェックインできるよう祈りつつカウンターに向かう。

BAの職員はぼくの差し出した片道の航空券を見てやはり手を止めた。「これ、片道になってますけど」はい。「失礼ですが、ビザはお持ちですか?」いいえ。「ドイツでは、どういうご予定での滞在になりますか?」かくかくしかじかで一年間語学研修を。「少々お待ち下さい」向こうへ行ってしまった。ああ、始まった……

「こちらへお願いします」と別の窓口に呼ばれる。説明が始まる前に一応ドイツの制度が変わったことを伝え、空しい抵抗を試みた。「しかしまだそういう例がございませんので、ひょっとするとビザ無しのお客様が片道で入国しようとした場合、ペナルティが課された上帰国させられることも考えられますので、ちょっとこれでは」そこで告げられたペナルティの額は忘れてしまったが、まぁ円で6桁であることは確かだ。

更に話を聞くと、とにかくここで復路の航空券を発行してもらい、それを入国した後に当地のBAでrefund(払い戻し)すればいいらしい。もっとも、その発行のためには正規料金を一旦納めなければならない。釈然とはしないものの、まぁお金が返ってくるのだったらOKなので、了承した。

成田まで帰ってくる便の正規料金は40万近くするらしい。返ってくると解っている金でも、あんまりいい気はしない。ぼくがちょっと怯んだのが伝わったのか、職員は親切に、あるアイデアを教えてくれた。「ですが、もし第三国に、例えばパリに抜ける航空券をお持ちなら、とにかくドイツは出国されるわけなので、おそらく入国審査でそれ以上追及されることはないと思います」じゃあ例えばパリまではいくらですか?「4万○(忘れた)千円ですね」

というわけで、パリ行きのダミー航空券を発行してもらって、ようやくめでたくチェックインできた。

手間取ったおかげで、せっかく見送りに来てくれた友人とゆっくり昼食でも取りながら話している時間もなく、慌ただしく出国審査を通り、免税店で、吸いつけている日本タバコを1カートン引ったくるように買って、飛行機に乗り込んだ。

離陸後に時計を向こうの時間に合わせる。ドイツと日本の時差は7時間(夏時間)。まだ朝の6時過ぎだ。

住所も学校も決まっていない。ビザもない。フランクフルトで無事入国させてもらえるかも、まだ分かったものではない。。。その時のぼくは、「なるようになるさ」という、いつもだったら得意なはずの余裕からは、最も遠かったと思う。意外と肝が小さいな。

 

着いてみたら、ヒースローでのトランジットも、フランクフルトでの入国審査も、まるで何も問題なく通過した。フランクフルトではパスポートにスタンプを押されて通過する間、審査官は一言も口をきかなかった。やれやれ。
一体あの騒ぎは何だったのだろう。格安航空券を買った旅行社では、ヒースローでのことすら心配して売り渋っていたのだ。まぁ親切心からなのだろうけど。

もう夜も遅かったので、予約していた、フランクフルト中央駅前のホテルまではタクシーで行った。無事着いたという電話を自宅に入れて、シャワーを浴びて寝た。31時間の1日が終わった。

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