ヨーロッパ滞在顛末 11


私をドイツに住まわせて(4月26日-1) 24/05/01

26日、木曜日。もうこのケルン駅構内のホテルにも一週間の逗留になる。朝食を毎朝取る食堂や1階の受付カウンターでは、もう顔馴染みになってしまった。ぼくの顔を見ただけで部屋の鍵を渡してくれたりする。少し複雑。
今日は朝からしとしとと陰鬱な雨が降っている。外はえらく寒そうに見える。

K寮に住むことに決まったぼくは、先日市庁舎で聞いた Innenstadt ではなくて、エーレンフェルト Ehrenfeld という地区の区役所に住居申請を出さねばならない。
朝のうちにK寮を再び訪れ、管理人のサインをもらう。次に申請書やパスポートのコピーを取らねばならない。

コピー屋は地下鉄の駅のある通りに、すぐ見つかった。一本煙草を吸ってしばらくうろついてから漸く店に入ってコピーを取らせてもらう。
パスポート、住居申請書、外国人登録申請書、財務責任者の証明書、C語学学校の入学証明書、損害保険の証書、念のためにこれら全てを2部ずつコピーした。
終わってから店員に区役所の場所を、練習のために、試しにドイツ語で訊いてみる。答は半分判った。とにかく通りをまっすぐ行って、電車の鉄橋をくぐったら左に曲がればいいんだな。

少し探したが、それほど苦労せずに区役所を見つけることができた。さぁ、無事ビザに辿り着けるでしょうか。

まず最初は住居申請。役所の1階の大部屋に入る。
順番待ちの番号札を発行するボタンが4つ並んでいる。どうも用事別に押すべきボタンが違うらしい。自分の用事はどれにあたるんだろう…辞書で調べてみても、どうもはっきりしない。どの説明書きにも、難しげな長〜い単語がずらずら並んでいる。なんでドイツ語ってこうなの…勝手に単語作るなよ。ぶつぶつ……

誰かに訊いてみよう。近くをおばさんが一人通りかかった。エクスキューズ・ミー。………無視しないでよぉ。頼むよぉ。感じわりぃ〜。
めげずにもう1人のおばさんに訊いてみる。早くしないと正午になってしまう。多分正午にはきっかり昼休みになって、少なくとも1時間は何もできなくなってしまうに決まっているのだ。

今度の人は反対に、ものすごく親切だった。日本から来て、今度ここに新しく住むことになったのだがと云うと、カウンタの一つに行って訊いてきてくれた。Cのボタンを押せばいいらしい。

順番が来た。係のおばさんは、問答無用でドイツ語で話してくる。書類の記入はC語学学校で済ませてきたし、問題はないはずなので、必死で Ja, ja, と応対していたら、何とか手続きは済んだ。横で見ていたら多分あっという間の出来事だったに違いない。

次は2階でビザ申請だ。ぐったりして時計を見ると、12時5分前。午後にしちゃおうかな……
いや、だめだ。早く済ませなきゃ。決心して階段を上った。

係官は坊主頭の若いお兄ちゃんだった。ジーパン姿で、ピアスなんかしている。全然役人さんという感じではない。
でも彼は英語で話してくれた。外国人課だから、まぁ当然と云えば当然か。
云われる書類を次々に見せる。いつまで滞在する予定かを訊かれる。1年間いたいんですがと答える。ぼくは緊張している。

ぼくの出した、語学学校の証明書は2ヶ月間の在学しか証明していない。ビザがこの期間に対してしか出ないかもしれないということを、ぼくは気にしていたのだ。
あと、もう一つ気になっていたのは、健康保険についてのことだ。申請には健康保険への加入が必要なのだが、ぼくが日本で加入した損害保険がこの条件を満たすものであるかどうかに、自信がなかったのだ。もし駄目だと云われたら、ドイツの保険会社で手続を踏まねばならない。そうしたら保証人の問題など、もう一悶着は必ずあるだろう。

ピアスの係官は、奥の机にあるコンピュータに席を移し、キーボードからぼくの情報を入力し始めた。

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