御遊戯結社
トップ
⇒
むーどす島戦記リプレイ ⇒ 「とんでも防御力で異種族共生生活」
←[ 1話前の話へ] [このページ]
[次の話へ]→
書き下ろしショートストーリー
「とんでも防御力で異種族共生生活」
●目次
・
「とんでも防御力で異種族共生生活」 ライトネス (作者 むーむー)
※この話はシナリオ11以降で、シャーロットがまだ補佐官になっていない間のどこかの話です。
ブラス村の代表となっているライトネスは、日常的な執務をしながら、
ちょくちょくとブラスの周辺の妖魔の集落の様子がどうなっているかなどを調べていた。
どのような種族や部族が周辺に暮らしているか、まずは把握をしたかったのだ。
可能なら彼らと共存共栄の道を歩みたい。
一緒に住むのが無理でも、取引に応じる事が出来るなら、
物々交換などの交渉が出来ないかと考えていた。
知らない事は自分の目で直接見た方が納得出来ると思っていたので、様子見は自分が赴く事にしていた。
最悪の場合は戦う事になるかもしれないので、最低限の備えをして様子見を行う必要があった。
神官戦士や暗黒騎士やリスモア兵が護衛に付きたがっていたが、
あまり大人数でいくと戦を仕掛けに来たと勘違いされ、
余計に争いが激しくなると思ったため、少人数で行動する事にしたのだった。
今日は歩いて2、3時間はかかるオークの集落に向かう。
森の中なので馬が使えない。歩いていくしかない。
グレイグやチキータが以前にそこを発見し、交渉をしようと試みたようなのだが、
まるで相手にしてもらえなかったそうだ。
下手をするとブラスに襲撃をしてくるかもしれないと警戒をしている集落だった。
ライトネスに同行しているのは、以前そこに行った事があり現在は大荷物を背負っているグレイグと、
空を飛んで警戒するチキータと、そして早歩きのライトネスに必死に付いてくるシャーロットだった。
戦いがあるかもしれない事を考えると、回復役は欲しかった。
本来ならルーシアに頼みたかったのだが、
彼女はブラス村防衛戦の際に魔法を使うこと自体が危険な身だと分かってしまったので、
現在はちょくちょくリスモアに戻って神聖魔法の修行をし直している。
彼女に頼るのはちょっと難しい状況だった。
アンスリュームに頼もうと思っていたら、シャーロットがしゃしゃり出てきて、
回復役をやると言ってきたのだ。
彼女はデーモンスクリームを含む全系統の魔法が使用可能というとんでもない魔術師だった。
神聖魔法も使えてしまうのだ。
宗派はファラリスらしいが、簡単な回復ならいつでも掛けられるらしい。
ルーシアのいない今の状況としてはこういう任務に連れていくには実に最適な人員ではあった。
が、ライトネスはシャーロットの同行を3度断っている。
この魔術師は何かにつけてライトネスに文句を言ってくる。
正しい事を言われているのは分かってはいたが、腹が立つような言い方にしか聞こえないので、大っ嫌いだった。
さらに彼女がファラリスの魔法など使えば、また天の声がうるさく邪悪邪悪と言うに決まっている。うんざりだ。
「3度断ってると思うのだが?」
「それでも付いていきます、と申し上げたはずですわね?」
「いや、迷惑だから止めて欲しい」
「私たちの未来に関わる事です。勝手をされては困りますので、付いて行きますわよ?」
「あのな…」
「それとも、カミラ様やセラフィム様に知られては困る事が有るのかしら?」
ライトネスは拳を握りしめる。
こいつほんとにぶっ飛ばしたい…。ごめんなさいというまで殴り倒したい…。
ここのところ、ずっと我慢をしている。
だが、シャーロットはそんなライトネスの握りしめた拳をちゃんと見ていて、
ライトネスがそう思っている事にとうに気付いている。
それでもこれを言う女なのだ。
自分がここまで我慢しなくてはならないのか、とライトネスは歯を食いしばりながらなんとか耐えてみせた。
「…分かった。付いてくるのは、良い。認める…。その代わり、私のやる事に口を出すな」
「…それは」
「それ以上言うなら、お前の言う事は、二度と聞かない。…決めろ」
「…承知しました…」
さすがにシャーロットはこれ以上言わなかった。
はい、いいえ以外の答えを言えば、ライトネスが殺し合いになるのを覚悟で殴ってくる予感がしたのだ。
それはシャーロットの本意では無い。もちろん怯んだ訳でも無い。
元より彼女は、ブラスの村の仲間たちの不利益を防ぎたいと思っているだけだった。
言い方は厳しかったり、嫌な言い方をする事も多かったが、純粋に仲間を思っての事だったのだ。
殺し合いをしたい訳では無いのだ。
ライトネスはだいぶ我慢しているようだ。
これ以上は、自分が不利益を起こす当事者になってしまう。
さすがに自重しようと、思っただけだった。
グレイグとチキータに導かれて、だいぶ歩いた末、オークの集落に到着する。
集落に着くとすぐに、屈強なオークの男たち10名ほどに囲まれる。
どうやらこの集落でそれなりに力を示している者たちのようだった。
その中でもひと際屈強そうなオークの大男がライトネス達を威圧するように声を掛けてくる。
「おい、ハーピーとグレイグ?だったか?
人間など引き連れて来てどういうつもりだ。
そんなガチガチに鎧を着た女など連れてきて戦でもするつもりか?
ぶっ殺すぞ?」
ライトネスは出来るだけ穏やかな口調で笑顔を見せながら、敵意が無い事を示しつつ話をする。
「今日は話し合いに来たんだ。まずは酒やつまみなど食べながら、軽く話さないか?」
グレイグは担いでいた大荷物を一旦降ろす。大荷物の正体は食べ物だったのだ。
中にはそれなりの量の酒とつまみの類が入っている。かなり上等なものを持ってきている。
グレイグやチキータが食べても美味いと思う品質らしいので、この集落のオークたちの口にも合うはずだ。
オークの大男はイラつきながらライトネスへの敵意を隠さない。
「あ?なんで人間の女なんぞと話さなきゃならねぇ。
くだらねぇ。ふざけたこと抜かしてるとひん剥くぞ?」
「ほほう。女では不都合があるのか?」
ライトネスの顔から笑顔が消える。
「へ、不都合とかそういう問題じゃねぇ。同族のそいつと話すのも無駄だと思ってるくらいだ。
人間など俺たちの家畜だし、女のお前など襲ってヤるだけだ。
…ただな。俺様たちは忙しい。今日はお前らに構う暇などない。
運が良かったな? こっちが優しく言ってやってるうちにしっぽ巻いて帰れ」
ライトネスはぐっと堪えて、引き吊った笑顔をしながら粘る。
「何か有るのか? 何なら手伝ってやるぞ?」
「しつけぇな、てめぇ。そんなに俺たちにヤられてぇのか?
すぐに大人しくさせて言うなりにしてやってもいいんだぞ、くそが」
ライトネスの中の何かがプチっと切れたようだ。顔が能面のようになる。
「ほう…。先ほどは我慢したが…聞き捨てならんな?
私はそういう事を言われるのが、本当に好かないのだが…」
「ちっ…。おい、お前ら、ここは4、5人残ってれば充分だ。準備続けとけ!
このくそ生意気な女をいたぶって黙らせてからそっちに行くわ」
オークの男たちの半分は集落の方に戻っていった。
残っているのはとりわけ屈強そうな男たち5人だ。
「…さて。お前の運命は決まっちまったようだな。
これから女奴隷としてせいぜい毎晩可愛がってやる。
ありがたく思え」
一番体格の良いオークの大男が前に出てきた。
どうやらライトネスと殴り合いでもする気らしい。一人でやる気のようだ。
他のオークたちも、そのオーク1人で充分だと思っているのか、
にやにやしながら成り行きを見守って楽しむつもりのようだ。
「…今なら、ごめんなさい、って言えば許してやるぞ…?」
「あ!?」
ライトネスの物言いに激高したオークの大男が殴りかかってくる。
ライトネスは立ち位置を変えず、上体を反らしてひらりと躱し、
オークの背中を押して距離を空けさせる。
オークは勢い余って前につんのめってしまう。
「話し合いに来たつもりなんだ。出来れば殴りたくない…」
「へ!寝言は寝屋で言え!たっぷり啼かせてやるよっ!」
オークはライトネスに掴みかかろうとして襲い掛かってくる。
が、彼女はそのオークの力を上手く利用し、軽く足をかけて投げ飛ばす。
オークの大男は数メートル離れた所に投げ飛ばされて、もんどり打って地面に叩きつけられる。
何が起こったか分からず、息が少し出来なくなるほどの痛みがオークの大男に走る。
ライトネスの立ち位置は一切変わっていない。
「ああ、そうだ…。私は下卑た言葉を言われたり、
そういう目で見られるのは、正直好きではない…。
そういう事をするたびに、1発殴る事になるので、気を付けておくと良い…」
それを聞いていた周りの4人のオークが下卑た笑いをしながらはやし立てる。
「へへへへ。1発だってよ。どんだけ好き者なんだ? へへへへw」
「ひひ。楽しみだなw」
ライトネスの顔色が変わった。
「ほう…。言い方を変えた方が良さそうだ。“2回”殴る事にしよう…」
言い方を変えると同時に、殴る回数がさっそく増えている。
「生意気な事、言ってんじゃねぇよ! 押し倒してひーひー言わせてやるよ!」
投げられたオークが起き上がり、勢いよくタックルしてくる。
物凄い勢いがあったはずだが、ライトネスはがっつりとそれを受け、ぴたっと止める。
その後、いとも簡単に腕力で大男を引き剥がし、今度はオークの顔に手を添えて力任せに押し飛ばす。
巨体のオークが簡単に数mの距離を吹っ飛ばされていく。
ライトネスの立ち位置が一切変わっていないのが不気味ですらある。
「3回だな?」
「…うるせぇ!回数なんて何度でもヤってやる!ありがたく思えや!」
ふっ飛ばされたオークが起き上がると、今度は助走をつけて殴りかかってくる。
ライトネスはオークの拳を見切ってそれを掴み、勢いを利用してその場で投げる。
オークの体はそこで見事に一回転して、地面に強く叩きつけられる。
相当なダメージのはずだ。
この段階でも、結局ライトネスの立ち位置は変わっていなかった。
周りで見てるオークたちの笑顔が消えていた。
この女は強い。
みなそれが分かったようだ。
「4回だぞ? 大丈夫か…? 私の拳はかなり痛いぞ…?」
オークの大男はよろめきながら起き上がる。
まだ戦う意思はあるようだが、舐めてはいけない相手だという事は分かったらしい。
「やってくれるじゃねぇか。この野郎」
「野郎じゃない。一応女だ…」
「は、どうでもいい。殴り飛ばしてやる」
「…なるほど。手を出さないつもりだったが、どうやら、殴らないと分からないようだ。
そろそろこちらからも行くぞ?」
「舐めた事、言ってんじゃ」
その刹那、オークの大男の体が数mほど吹き飛ぶ。
周りで見ていた者は何が起きたか分からない速さだった。
「1回目だ」
そう言った後、倒れてる大男の前につかつかと歩いていき、
片手で首根っこを引っ掴み、軽々と持ち上げて起き上がらせると、
また目にも見えない速度で思い切り殴る。
「2回目だ」
既にオークの大男は顔がひしゃげており、意識が無い。
3回目を殴ろうと拳を固めたライトネスに、シャーロットの厳しい声が飛ぶ。
「手加減なさい!」
ライトネスは、じろっとシャーロットを見た後、再びオークの大男を見やる。
あれだけいやらしい言葉を投げて舐め腐っていたくせに、2回殴っただけで伸びてしまった。
確かに、これ以上本気でやると殺しかねない。屈強ぶるならせめて2回くらい殴るのには耐えて欲しいのだが…。
「私は、約束は守る女だからな? 多少手加減はしてやるが、回数はまけてやらないからな?」
しょうがなく、デコピンを2回するだけで勘弁してやる。
そのデコピンですら、大男の頭がのけ反る威力だった。
大男があっさり2発でのされてしまったのを、他のオークの男たちは唖然とした表情で見ていた。
その男たちにライトネスはにっこり笑って言う。
「お前たちへの“約束”がまだだったな?w」
その数秒後、オークの男たちの悲鳴が数回聞こえた後、辺りは静かになった。
グレイグやチキータは他の集落でも見ている光景だったのでさほど驚いていなかった。
シャーロットは頭を抱えていた。
小一時間後。
意識を取り戻したオークの男たちに命じて、集落のものを一堂に集めさせた。
先ほどの男たちはみな顔がひしゃげたままだ。
シャーロットが先々の交渉の事を考えてせめて回復をしようと近寄ったのだが、
交渉が終わるまで待て、とライトネスに命令されたので回復出来なかったのだ。
オークの集落の者は事態が呑み込めていなかったが、
村で力自慢の男たちがここまでボコボコにやられているのだ。
言う事を聞かない訳にはいかなかった。
本当は話し合いに来たのだが、こうなってしまっては口で納得してもらうよりは
力を示して話を聞かせるしかないな、とライトネスは諦めていた。
よくよく話を聞いてみると、この集落から少し行った所に超大型のマンティコアが棲みついてしまったらしく、
集落に被害が出ているらしい。
それを討伐するため、戦いの準備を皆でしていたようだった。
オークたちは、力は強いが魔法に長けていない。
相手は暗黒魔法や毒をまき散らす存在であり、大型で凶暴な魔獣だ。
残念ながら魔法の使えない彼らでは分の悪い相手だった。
死人が出るかもしれないが、このままでは皆やられてしまう、
と危機感を募らせている矢先の事だったのだ。
彼らが自分たちの話をあまり聞きたがらなかったのには、
それなりに事情があったのだとライトネスは納得していた。
「なんだ。そういう事なら早く言ってくれたら良かったのに。 そいつを倒してやろうw」
「しかし…あんな凶悪な敵など簡単に倒せる訳が…」
「俺たちから死人が出てしまう…」
オークの面々が渋い顔をする。当たり前の話だ。
戦力の中心となる屈強な男どもがのされてしまっていて、戦意を著しく喪失している。
戦いの前に余計な事をしてくれたものだと、集落の者は思ってはいたが口には出せなかった。
だが、そこで、ライトネスが意外な事を言い出した。
「大丈夫だ。私達4人だけでやってやるw な?w」
「え?!」
グレイグとチキータは絶句し、シャーロットは片眉を吊り上げる。
「えっ、て、なんだ…?」
「いや、ライトネス姐さんよぅ…。さすがに、この4人だけってのは…」
「ちなみに、あたしは飛べるだけで…正直、役に立たないよ…?」
「…聞いてませんわよ? 協力いたしかねますけども」
「今、言った。じゃぁ行こうか」
「………」
3人とも黙り込んでしまった。
シャーロットに至っては不機嫌さをあからさまに出してる状態だった。
1時間後…。
結局、巨大なマンティコアは、ほぼほぼライトネス1人の手によってあっさり倒された。
移動時間が往復で40分ちょっとかかったので、実質10分かからない程度で倒した事になる。
それを知ったオークたちはライトネスにすっかり恭順の意を示したのだった。
マンティコアの居場所を伝えるために同行した数人のオークの言葉を借りれば、
悪い夢を見てるかのような戦いだったそうだ。
オークもハーピーも同行したオークたちを守れる位置に居ただけで特に何もせず、
眼鏡の魔法使いが嫌そうな顔でいくつか魔法を掛けてはいたようだが、
白い鎧の女が自分自身に魔法を掛け、結局1人で戦っていたそうだ。
凶悪なマンティコアの暗黒魔法や毒は白い鎧の女に全く効かず、
強烈な爪や牙の攻撃を何度も食らってもびくともせず、
その全てを真正面から受け続けているのに掠り傷一つも付かず、
鼻歌を歌いながらひたすらハルバードを振るい続け、
何だかんだで勝ってしまったらしい。
聞けば得意の獲物は馬上の槍だそうで
「何だか時間がかかり過ぎて待たせて悪かったな?」
と言われたそうだ。
そのオークたちの話を聞いた他のオークたちは、とんでもない化け物が自分たちを従えに来たのだと、
恐れおののいて、なんでも言う事を聞く気になってしまったらしい…。
命だけは助けてください、と言われるようになってしまった。
ライトネスとしては恭順して欲しいのでなく、一緒に暮らしていくと言って欲しかったのだが、
一度そうなってしまうとすぐに変えていくのは難しい。
一旦はそれを仕方なく受け入れて、オークの長と取り決めをいくつかする。
1つ、ブラスの村民や財産に危害を加えないこと。
2つ、畑や家畜を略奪しないこと。
3つ、定期的に様子を見に来るので、その時にお互いに有益な物々交換などをすること。
いずれは取引などをしていくこと。
4つ、村の中で力のある者をブラスに同行させ、ブラスが安全で住みやすい村であることを分かってもらうこと。
5つ、将来を見据えて交流を深めて、移り住むことなどを真剣に考えること。
3つ目辺りは定期的に貢物を差し出すことと勘違いされ、
4つ目に至っては長の娘を人質に取るのだと思われてしまったが、
一旦はその勘違いも受け入れることにした。
話し合ってすぐに全てを理解してもらうなど出来ないのだ。
長い時間をかけて勘違いだったよね?と理解していってもらうしかない。
急な話なので、長の娘には悪いとは思うが、こうなった以上同行してもらうしかない。
長の娘はガルガという名前らしい。
オークらしく、引き締まった筋肉と豊かな胸を持ち、緑色の肌が艶やかな野性味のある美女だった。
普段なら威圧的な態度で人間に接している姿がよく似合うという風貌だが、
今は悲壮感を漂わせ怯えた顔をしている。
このあと凌辱されるのだ、くらいに思っている顔だった。
「あー…。あのな? そんな顔しなくても大丈夫だぞ…?
すぐには信じてもらえないのを承知で言うが、決してやましいことはしないし、させない。
お前に危害を加える者があったら、私がぶっ殺す気で殴り付けるから、安心してくれ。な?」
「…従いますので、命だけは…」
「うん。まずはそうしてくれ。ほんとに、安全だと分かってもらうだけだからな?
泣きそうな顔するな。こっちも泣きたくなってくる…」
ある程度の取り決めをした後、ガルガを伴ってブラス村までの道を歩いて帰る。
大荷物を持って帰るのはグレイグが嫌がったので集落に全部あげてきていた。
早歩きで歩いているライトネスにシャーロットは何とか付いていって歩いている。
チキータは空を飛んで辺りを警戒してくれている。
後ろの方では身軽になったグレイグとガルガが2人で何か話しながら歩いているようだ。
多分、グレイグが心配無いからな?とか安心させようと頑張っているのだろう。
乗り気でないガルガの歩みはさほど早くないので、
ライトネスたちとオーク2人との間に距離が出来てしまっていた。
シャーロットはライトネスの後ろから、ライトネスだけに聞こえる声で話しかける。
「このやり方は正直賛同致しかねますわね? 問題が起こったら彼らとて黙ってはおりませんわよ?
あの娘に何か有ったら集落総出で死ぬ気で襲って来ますわよ?それに」
「うるさい。黙れ」
「な…!?」
ライトネスは歩きながらそう言った。シャーロットを見向きもしない。
この頃は2人の仲は最低と言っていい時期だった。
ライトネスとしてはシャーロットに文句を言われるのがとにかく嫌だったのだ。
「…お前は約束を破っている」
「…」
「私は約束を破る奴が大嫌いだ。本当ならこの場で殴り倒したい。
…だいぶ我慢しているんだぞ?」
「…約束を破ったことについては、謝罪いたします。
…本当に、申し訳ありませんでした…」
シャーロットは本気で謝っていた。確かに、口を出さないということで付いて来たのだった。
先ほど自分がライトネスに言ったことは間違ってはいないとは思ったが、これは確かに約束違反だ。
当面はライトネスの機嫌を損ねないよう、発言は気を付けようと決めた。
長い帰り道をなんとか歩いて帰りブラス村に戻ってきたのは夜となってしまっていた。
その後、ガルガはライトネスの家にしばらく住んでいた。
最初の頃はいつ殺されるか、いつ酷いことをされるか不安がっていたが、
ライトネス邸に雇われているメイドたちが優しくお世話してくれたこともあり、
次第に落ち着きを取り戻していった。
数か月もすると、この村の生活が実に安定していて住みやすいことや、
同じオークや他の妖魔なども一緒に暮らしていて問題が起こっていないということが次第に分かってきた。
人間と共存など、考えたことも無かったが、敵対しないで安定した生活が得られるのは大分魅力的だった。
一部の好戦的な男どもは納得しないだろうが、食料もない冬に飢え死にする者が出ることや、
略奪の戦いで死者が出ることを経験している集落の者は、この生活が気に入るに違いなかった。
ガルガはブラスで半年ほど暮らしたのち、ライトネスと一緒に集落に戻り、
長と集落の者にブラスで経験したことなどを話した。
みな半信半疑で聞いてはいたが、一部の者はブラスで暮らすことを決めた。
集落に残っている者は好戦的な一部の男たちや、
どうしても住み慣れたこの集落を離れたくないとする者たちだった。
ライトネスは、それはそれで致し方ないと思っていたので、
お互い平和にやっていけるよう、交流をしたり取引を増やしていこうと持ち掛けるのみだった。
ガルガはこの集落とブラスとの間を行ったり来たりし、
またライトネスが他の集落と交渉をする時にも積極的に付いてきてくれるようになった。
ライトネスはこうして、周囲の妖魔の集落に赴いては、
話し合いの場を設け、交渉を続けていった。
時には争いになることもあったが、ライトネスはその全ての拳や剣を自分の体でにこやかに受け止めて、
相手に分かってもらえるまで辛抱強く話を続けた。
ライトネスのその努力は、次第にブラス周辺の安定を築くようになっていった。
仲間になっていく妖魔たちが増えていき、ブラスには実に多種多様な種族が集まるようになった。
とんでもない防御力を誇る、頭のおかしいリーダーが治めるこの村は、
さらなる共生を求めて、発展を続けていくのだった。
←[
1話前の話へ] [このページ] [次の話へ]→
●本コンテンツについて
・本コンテンツは同好者の間で楽しむために作られた非公式リプレイです。
・2021年にオフラインセッションでプレイしたものをまとめたものとなります。
・動画制作とリプレイテキスト公開を同時進行しております。
・個人の趣味で行っておりますので、のんびり製作しております。気長にお待ちいただきながらお楽しみください。
・原作の設定とは無関係の設定が出て来たりしております。あくまでこちらのコンテンツは別次元のお話と思ってください。
・本コンテンツの制作にあたり、原作者様、出版社様とは一切関係がございません。
・TRPGを行うにあたり、皆が一様に分かる世界観、共通認識を生んでくださった原作者様と、
楽しいゲームシステムを販売してくださった関係者の方々に、深く感謝申し上げます。
●本コンテンツの著作権等について
・本コンテンツのリプレイ・ショートストーリーの著作権はむーむー/むーどす島戦記TRPG会にあります。
・本コンテンツのキャラクターイラスト、一部のモンスターイラスト、サイトイメージイラスト等の著作権は、
むーむー/マーコットPさん/アールグレイさんにあります。
・その他、原作、世界観、製作用素材については以下の権利者のものとなります。
●使用素材について
・本コンテンツは以下の製作者、原作者、製作素材等の著作物を使用して製作されています。
【プレイヤー】
・トゥナ・P
・マーコットP
・ヤトリシノP
・むーむー(GM)
【挿絵・イラスト】
・マーコットP
・むーむー
【キャラクター(エモーション・表情差分)】
・マーコットP
・むーむー
【使用ルール・世界観】
・ロードス島戦記
(C)KADOKAWA CORPORATION
(C)水野良・グループSNE
・ロードス島戦記コンパニオン①~③
原案:安田均、水野良、著者:高山浩とグループSNE
出版社:角川書店
【Web製作ツール】
・ホームページデザイナー22
(ジャストシステム)
【シナリオ・脚本】
【リプレイ製作】
・むーむー
【ショートストーリー・小説製作】
・トゥナ・P
・マーコットP
・ヤトリシノP
・むーむー
(むーどす島戦記TRPG会)
【製作】
・むーむー/むーどす島戦記TRPG会