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リプレイ第5話後:ショートストーリー  

●目次

ヤトリシノ&ルーシアSS(作者:ヤトリシノP)
ヤトリシノ&トゥ・ナSS(作者:ヤトリシノP)
アンスリューム&ポムSS①(作者:むーむー)
アンスリューム&ポムSS②(作者:むーむー)
アンスリューム&ポムSS③(作者:むーむー)
アンスリューム&ポムSS④(作者:むーむー)
トゥ・ナ&マーコットSS(作者:トゥ・ナP)

●ヤトリシノ&ルーシアSS(作者:ヤトリシノP)

依頼もトラブルも無い平和な昼下がりに、ヤトリシノはリスモアの露天商が居並ぶ通りをブラブラと歩きながら、
昨日、仲間のプリーストから言われた事を思い出しながら歩いていた…。

「暇だからと毎日お昼からお酒ばかり呑んでいては身体に障りますよ!」
「偶には街中でも散策してみてはどうですか?露天商が出てて珍しい物が売ってたりしますから出掛けてみては如何ですか」

と真面目な彼女に真剣な眼差しで、堕落気味の生活を注意されてしまっては反論の余地もなく、
「はい」と言うしかなかったのであった…。

心の中で苦笑いを浮かべながらヤトリシノが歩いていると、ふっと露天に陳列されている小さな布袋に眼が止まった。

「この小さな布袋はなんだ?」
「これは大陸で作られた物で、願いを込めて作られる物だそうです。」
「ほぅ、大陸品とは珍しい…表面に描かれているのは大陸文字か?解るか?」
「大陸文字は読めませんが、なんでも戦いに勝つ願いが込められているとかいないとか…」
「戦いに勝つ願いか…もう少し詳しく聞こう…」

ヤトリシノは小さな布袋の謂れを露天商の主人から聞き終える頃にはリスモアに夜の帳が下り始めていた…。

ヤトリシノ&トゥ・ナSS(作者:ヤトリシノP)

ヤトリシノは仲間達と旧カノン領内を南へ向かっていた…。

仲間達と街道を移動している最中、魔物の襲撃を難なく退けた時、
不意にヤトリシノは思い出した事がありトゥ・ナに声を掛けた。

「あ、そうだ。トゥ・ナに渡したい物があるんだ」
「ん?なんだ?」
「先日、良い物を手に入れたんだ」
「金目のものか?」
「違う違う」
「先日買ったんだが、なんでも戦いの加護があるらしい」
「あるらしい?」
「なんでも大陸で作られた物で、戦いで加護があるよう願いが込められていると、リスモアの露天商が言ってた」

と言いながらヤトリシノは小さな布袋をトゥ・ナに向かって「ほら」と放物線を描くように投げた。
受け取ったトゥ・ナは、小さな布袋に描かれている文字らしきものを見て、ヤトリシノに問い掛けた。

「これはなんて書いてあるんだ?」
「私も露天商に聞いたが、大陸文字で解らないそうだ。無論、私も読めないし、解らん」
「おい!」
「まぁ、信仰している神様が居ない事だし、戦いの加護はないよりあった方が良いだろう?」
「そりゃそうだが…」
「それに私も同じのを持ってるから問題ないだろう」
「……」

トゥ・ナは呆れた表情を浮かべながら、小さな布袋とヤトリシノを交互に見ながら、
小さな布袋を懐にしまったのであった…。

…小さな布袋に描かれている大陸文字は「クリティカル祈願」と書かれているのであった…。

アンスリューム&ポムSS①(作者:むーむー)

アンスリュームと出会ったのは、27、8くらいの時だったか。
世間では魔神を倒した勇者がどうとか、そんな噂が聞こえていた。
俺はというと、漁船の親分の船で見習いをして稼いだ金で、ようやく一人用の帆かけ船を買い、
一人で躍起になって沖合離れた場所まで魚を追いかけ回してる、そんな若造だった。
少しでも良い漁場がないかと、マーモ近辺の方まで繰り出しては、魔物に追いかけ回される様な日々を送っていた。

ある日、いつものようにマーモ近海まで船を繰り出していると、木に捕まって流されてる遭難者を見つけた。
真っ赤な長い髪をしてる色黒の女だった。慌てて引き上げてみて耳の長さに気が付いた。
やばい。こいつはダークエルフだ。
うっかりしたら怪しい魔法をかけられて殺されるか、呪いをかけられるかもしれん。
このまま海に投げ捨てた方が良いか?
いや、最後の気力を振り絞って呪われるかもしれん…。
厄介なものを助けちまったな。それが最初の感想だった。

よくよく見てみると、体中傷だらけで、今にも死にそうな風体でうつろな目をしていた。
傷口に海水が染み入ってるためか、腫れ上がり方が酷い。とはいえ、手当てしてやることも出来ない。
とりあえず自分の着ている服を脱いでかけてやる。陽が直接当たるよりはマシだろう。
家に連れて帰る訳にもいかないが、かと言って、マーモの港まで連れて行ったところで、
今度はこっちがお陀仏になるかもしれない。
参ったな。これが2番目の感想だ。

「腹は空いてないか?」

物を食える元気があるかは分からないが、一応聞いてみる。
聞いた後で、言葉が通じるかどうか分からないな、と思った。

「…のど、乾いた…」

どうやら通じたらしい。かすれるような小さな声ではあったが、思いのほか可愛らしい声だった。
樽に入れてある水を飲ませるか。
普段コップなんぞ使わずに飲むのだが、樽まで移動させるのも可哀想に思えたので、樽ごと持って口の近くに近づけてやる。

「ほれ、飲め」

ダークエルフは戸惑った様な表情をした後、なんとか頑張って流れる水に口を近づけて飲んでいた。

「豪快だね…」

飲み終わった後、静かに笑うダークエルフの女の笑顔に面食らう。笑顔がやけに可愛い女だった。

しばらくしないうちにダークエルフの女は静かに寝息を立て始めた。
とりあえず起きるまでの時間、仕掛けを回収するため船を移動させる。
残念なくらいの不漁だった。今日の釣果はダークエルフ1匹か…。

夕方近くになり、さて、そろそろどうしたものかと思っているとダークエルフの女が目覚めた。
起き抜けに何やら呪文めいたものを唱える。
ぎょっとしてる俺の目の前で、女の体の傷がみるみる治っていく。

「ダークエルフは癒しの力も使えるのか。凄いな」
「アンスリューム」
「…あ?」
「あーしの名前。アンスリューム。アンスって呼んでね」

呼ぶ機会などそうそうも訪れないだろうが、一応覚えておく。

「俺はポムだ。よろしくな」

いきなり笑われた。

「なんか、ポムって響き、かぁいーよね!」
「やかましい。…とりあえず、船をどこに寄せればいい。家族も心配してる頃じゃないのか?」

周りを見回し適当な陸を指さすアンス。

「あそこにつけてくれたら、後は1人で何とかするよ」

言われた通りにつける。

「ありがとね。帰りはちゃんと帰れるように風の加護を付けとくよ」
「おお、そりゃ助かる」

言うが早いか、風が不意に強くなり、船がみるみる進む。

「じゃぁね。ポムお兄さん!」

見える距離にいる間、ずっと手を振って見送っているアンス。
これが奴との出会いだった。

アンスリューム&ポムSS②(作者:むーむー)

ポムに初めて助けてもらったのは、30年ちょっと前のことだったかな。
その頃、マーモ軍の沿岸警備の仕事をしていたあーしは、隊のメンバーの一員として、
海岸線から不法に侵入してくるカノンの人間を取り締まる仕事をしてた。
たいていは冒険者とか、荒くれ者が相手で、取り締まる、というよりは殺し合いになることがほとんどだった。

その日も、冒険者風の一団が魔法の薬の原料になるって言われている薬草を密漁してるのを見つけて、
戦いになってたところだった。
はたと気が付くと、あーし以外のメンバーは殺されたか、逃げたかしていて大ピンチ。
舌なめずりしながらあーしのことを見ているのが分かっていたので、このままだと嬲りものにされる。
逃げるしかないけど、このまま走っていった先は海に面している切り立った崖だけ。
とはいえ、もたもたしてたら魔法とかかけられて身動きも出来なくされるかもしれない。

――崖から飛び降りるとか、無理なんですけど!

そう思いながら走り続ける。崖の風景を想像したら多分足がすくんで動けなくなる。

――考えたらダメ!考えたらダメ!

そう念じながら走ってたら、もう崖が目前に迫ってた。

――下って海だよね!?

とか、なんとか思ってるうちに、空へダイブしてしまってた。
とりあえず海が見えたが、ホッとなんてする訳ない。
怖い!と叫んだか、何か声を出したような気がするけど、そこから先の記憶がごちゃごちゃっとなってる。
ドボンと海に落ちたような、家族の姿がちらついたような、すごく痛かったような、
おいしいご飯が食べたいなとか思っていたような、何かを必死に掴もうとしたような、そんな感じ。

どれだけ時間が経ったか分からなかったけど、気が付いた時には、必死に木にしがみ付いて、
溺れかけながらあっぷあっぷしている状態だった。
体中の傷口に塩水がしみ込んで半端なく痛い。
必死に木にしがみ付こうとしてるけど、波が立つたびに口の中に水が入り込んできて、もがけばもがくほど痛みが増えてく。
相当長い時間、そうしてもがいてた気がする。

――これ、何時間も持たないな…。たぶん、死んじゃうんだな。

そう思ってた時、いきなり船に引きずりあげられた。
傷口が船に当たって痛みで声にならない。痛みが少し治まるまでうずくまってたと思う。
それからしばらくして、痛みが少し引いてきたので、引き上げてくれた相手を見上げる。

オーガかな?と思ったくらい筋肉質で背の大きい人間だった。
じっと見られてる。…いきなり大男が服を脱ぎ始めた。

正直なところ、体力も精神力も残ってないし、抵抗する元気もない。
特に好きな相手も今までいなかったから未経験なんだけど…。
命を助けて貰えるなら、まだマシかな…と諦めかけてた。

大きめの服を体の上からかけられた。その後、お腹は空いてないかと聞かれた。
見た目オーガだけど…マジ紳士じゃん。
喉が渇いたと伝えると、突然樽を持ち上げだした! なんか怒らせること言っちゃった??

「飲め」

大男が担いでる樽から突然、水がじょぼじょぼー、とこぼれてくる。
その見た目がなんか可笑しくて、笑いながら水を飲んだ。
これは多分、良い人間だな、と思った。
途端に眠気が襲ってきて…気が付くと夕方になってた。

少し休んだので癒しの魔法が使えそうなくらいには魔力が回復してた。
目の前で回復魔法を唱えたら、回復魔法を使えることに驚かれた。
普通の人間には回復魔法は使えないもんね。

その時に、ダークエルフ、と呼ばれたことに、ちょっとだけ寂しさを覚えた。
何故か自分の名前を名乗ってた。

相手はポムと名乗った。
…ポム!?
やばい!響きがやばい!
人の名前を聞いて笑うのは失礼だよね、って分かってはいるけど、
大きな体に似合わないあまりの可愛い響きに調子に乗ってからかってしまった。
凄く嫌そうな顔をされた。
言った後、あ、またやっちゃった、と反省した。
仲良くなろうとすると、つい余計な一言を言って、相手を怒らせてしまう。

ちょっと気まずい雰囲気になりながらも、ポムは船を最寄りの岸までつけて送ってくれた。
ここら辺はバリバリにマーモ軍のテリトリーだから、早く逃げられるように
なけなしの魔力を振り絞って風の加護を船につける。
唱えた後は立ってるだけで精一杯だった。
でも、船が見えなくなるまで、気力を振り絞って手を振り続けた。

「また会えるといいなぁ」

その後、その場で座り込んで気を失ってしまい、翌日目覚めたときには
めちゃくちゃ虫にさされて、風邪をひいたのは懐かしい思い出。

これがポムとの初めての出会いだった。

アンスリューム&ポムSS③(作者:むーむー)

アンスリュームと再会したのはそれから10年後のことだった。
すっかりカノンーマーモ近海の地形は頭に入り、波も風も読めるようになっていた頃だったが、
マーモ軍に拿捕された。
魔法の加護で船足を狂わされ、してやられた。
相当離れた位置だから大丈夫と舐めていたのがいけなかった。
そのままマーモまでえい航され、屋外にある粗末な牢に監禁された。
密漁者は死刑、ということらしい。
牢に捕らわれているのは自分1人だけだ。明日にはもう命も無いだろう。
やれやれ、短い人生だったな、と牢の中で大の字になって寝ようとしていた。

「随分、おじさんになっちゃったね?ポムおじさん?」

何やら可愛い女の声が聞こえる。
見るととんでもない美女がこっちに向かって微笑んでいた。

「よぅ。…アンスか。」

10年ほど前に見た可愛い笑顔のまま、時が止まってるようだ。

「ふふふ。名前教えといてよかったね」

アンスは名前を憶えていたことが嬉しかったのか上機嫌だ。

「カノンの密漁船を拿捕したって話が耳に入ってきてさ。
 聞けばオーガかと思うくらいの大男っていうから、
 もしかしてポムじゃないかなと思ってさ」
「魔法があんなにも遠くからかかるとは知らんかった…してやられた」

どうやら目に見える距離なら届くらしい。
海であれば下手すれば10km、20km当たり前に届くと言うことか。そりゃとんでもないな。

「今、ちょうど人がいないから逃がしたげる。
 船は港の西の端に拿捕されたままになってるから、あーしが気を引いてる隙に船を出して。
 風の加護はつけとくから、後はうまい事逃げてね」

夜の暗闇の中、アンスに導かれるまま、人気のないところを選んで走り船を見つける。
辺りに人がいないのが不気味だ。

「人がいなくなるように、うまい事やっといたから、安心して船を出すといいよ」

船を出す準備を始めていると、もうアンスの姿は無かった。
礼くらい言いたかったのだが、しょうがない。すぐに船を出す。
船足が急に早くなる。風の加護が付いたようだ。恐ろしい速度で船が港から出る。
気づいた船が追いかけてきたようだが、途中から姿が見えなくなった。沈んだ?まさかな。
岬を通り過ぎる。これを超えれば外海だ。後は自力でなんとか逃げ切るしかない。

「うまく逃げれて良かったね。もう捕まんないでよ!」

唐突に耳に声が聞こえる。振り向くが誰もいない。
数100メートル離れた岬の先端に何やら人影が見える。アンスリュームかもしれない。

「ありがとなー!」
「おっきな声出さなくても聞こえてるって!w」

笑いながら言われる。
再び風の加護が付いたようだ。船はみるみる速度を上げる。外海の風を捉えた。
これならカノン方面にすぐに帰れるだろう。

「元気でね、ポムおじさん!」
「お前もなー!」

こうして、なんとかカノンに逃げることができた。
これがアンスと会った2回目のことだった。

アンスリューム&ポムSS④(作者:むーむー)

「なんやらオーガかと思うくらいの人間の大男を海で拿捕したらしいぞ」

食事をしてる時にそんな声が聞こえてきた。ポムじゃないか、ってピンときた。
密漁という名目で捕えたんだろうけど、多分明日には絞首刑になる。
助けなくちゃって、思った。

ご飯を食べてる衛兵風の男に近寄り、魅了の呪文をしれっとかけて、警備の内容や交代の時間、
拿捕してる船の位置などをそれとなく聞き出す。
警備の様子が聞いた通りであることを確認してから、警備が交代になってしばらくして、
気が緩む時間帯を狙って牢のある所まで行く。
見張りはいるけど、うっつらうっつらしてるので、そのままスリープの呪文をかけてぐっすり眠ってもらう。

近寄ってみたら案の定ポムだった。なんかすっかりおじさんになっちゃってる。
人間って、年取るのほんと早いなぁ…。
声をかけてみたら、ちゃんと覚えてくれてた。よしよし。

見張りから鍵を盗んで牢を開け、拿捕してある船のところまで案内する。
警備を手薄にするために、ウインドボイスを使って、数100m離れた別の場所で悲鳴をあげて、
こちら側に気を取られないようにしておく。

ポムが船を出す準備をしている間に、私は岬まで移動して船を逃がしやすくする準備をしなくちゃ。
岬に向かう海沿いの森から、ポムの船が出たのが見えた。風の加護を付与する。
どうやら追手がかかったみたい。弓を射ようとするだろうから、ポムに弓矢避けの呪文をかける。
追っ手の船も風の加護を付与したように船足が早くなった。このままだと追いつかれちゃう。
仕方ないので、浮力を無くす呪文で船ごと沈んでもらう。

「ふふ。あーしを相手にしたのが運の尽きってことで」

追手がいなくなったようなので安心して岬まで移動する。
数100m先の海の上をポムの船が滑るように移動している。
別れの言葉くらいは言っておかないとかなと思ったので、ウィンドボイスを使って話しかける。
きっと、どこから声が飛んできてるか、分かってないだろうから、きょろきょろしてるだろうな、
と思うと可笑しくて笑ってしまう。

「ありがとなー!」

わっ、びっくりした!どんだけ大きな声出してるのよ!
なんかこっちに向かって手を振ってるように見える。見えてるかもしれないので一応手を振ってこたえる。
もうじき声も届かない距離になる。
別れの挨拶をしつつ、風の加護をおまけにつけてあげる。
もう会うことも無いだろうな、とちょっと寂しい思いを、この時はしていた。
まさかまた助けてもらうことになるとは夢にも思ってなかった。

トゥ・ナ&マーコットSS(作者:トゥ・ナP)

リスモアの町、ヴァリス国内でも有数の大きなその町は、迫り来るマーモの影を感じさせないほどに賑わっている。
大きな通りには出店が並び、客引きの声も途絶えない。
そんな通りから少し入った所にそれはあった。

決して大きくない店構え、しかし、それは客なのか、人々が出ては入ってとしている。
余程、信頼が置かれている店なのだろう。事実としてこの店はリスモアで知らぬ人はいない名店なのだ。
小さな店構えの前、更に小さなフードの少女が、あっちにいっては戻り、そっちにいっては戻りとしていた。

マーコット、その少女の名前だ。小さな身長に不釣り合いな、大きなフードをかぶっている。
悩み考えている時の癖なのだろう、大きな耳が微かにフードの中で存在を主張する。

(失敗しました……ヒトが、多いです……!)

彼女の種族には偏見が多い。
ヒトが多いこの場所、その中でバレてしまったら……。
その恐怖は小さな体に前を向かせなかった。

(けど……ここにはアレが!ライトネスさんに教えて頂いたアレがぁぁぁああー)

店の看板には、異国の文字だろう、ソーサラーのマーコットにも読めない文字が踊っている。
逆にそれが目当ての店だとマーコットに教えていた。

(ライトネスさんに一緒に来て頂けていればっ……けど折角おうちに帰ったのですからゆっくりしたいでしょうし…)

考えながらウロウロ。

(ルーシアさんやヤトリシノさんならお暇でしょうかっ……!)

更にウロウロ……最早、不審者だ。
通行人もマーコットに目を向け始めている。

(いえ、お2人も今頃はお仕事していーーーわぶっ」

遂には通行人にぶつかってしまった。

「すみません、ごめんなさい、申し訳ありません!考え事をしてまして!!でわ私はここでしつれーします!」

高速でペコペコしながら秒速3謝罪、そこから迅速な そして華麗な180度ターンを決めて離脱を試みるマーコット。
しかし、脱出叶わず、目深にかぶったフードごと、後ろから頭を鷲掴みにされる。

「おぅ、おじょーちゃん」

頭と共に心の臓を鷲掴みにされた心地を感じたマーコットに降ってきた声は知ったものだった。

「!ト、トゥ・ナさん!」

そこにそびえ立っていたのは、つい先日まで共に旅をしていたトゥ・ナだった。

「トゥ・ナさんっ!?いつからここに…っ!?」
「あー…失敗しました、辺りから?」

ほぼ最初!なんなら心の声もダダ漏れ出てた模様っ!

「なんだぁ?この店に入りたいんか?」

視線の先にはあのお店。
そこには父から聞いた幻の魔術(を使った幸せ)を見れるはず…っ!

「このお店は……」

観念しよう、トゥ・ナさんは大丈夫!魔術には疎いですし、簡素に説明しましょう!

「このお店には魔術の粋を凝らした”すいーつ”なる美味がありまして魔術を探求する身としては何としても
 体感せねばならない案件でございます故(息つぎ)訪れねば今後の見聞も広がらないので物は試しと訪れましたが
 (ジュるり)雑多な人種が訪れる場所取りなら、わざわざ訪れるまでもなかったかもしれませんね!………」

口早に並び立てます。我ながら完璧です!トゥ・ナさんも納得して立ち去ることでしょう!
「あー……何話してるか解んねーんだけど、ここのメシが食いたいけど1人じゃこぇーんだろ?」

グリグリしてる手を離して、
「おら、行くぞー」
言うが早いか、トゥ・ナさんは店の門戸を開けようとしていました。
「えっ!えっ!?」
「食いたいもんを食う、金は払う。なんかあるか?」

そうでした、トゥ・ナさんに限らず、みんなは気にしないのです。けど……
「…わぷっ!」
また唐突に頭を掴まれました。
「お前が考えてるとこよー、あの脳筋の前で言ってみな」
初めて見たかも知れない、トゥ・ナさんの、心の底からの笑顔を見た気がしました。

「あー、俺はレデイにしか奢らないからな」
「立派なレデイを捕まえて何をっ……!」

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●本コンテンツについて

・本コンテンツは同好者の間で楽しむために作られた非公式リプレイです。
・2021年にオフラインセッションでプレイしたものをまとめたものとなります。
・動画制作とリプレイテキスト公開を同時進行しております。
・個人の趣味で行っておりますので、のんびり製作しております。気長にお待ちいただきながらお楽しみください。

・原作の設定とは無関係の設定が出て来たりしております。あくまでこちらのコンテンツは別次元のお話と思ってください。
・本コンテンツの制作にあたり、原作者様、出版社様とは一切関係がございません。
・TRPGを行うにあたり、皆が一様に分かる世界観、共通認識を生んでくださった原作者様と、
楽しいゲームシステムを販売してくださった関係者の方々に、深く感謝申し上げます。

●本コンテンツの著作権等について

・本コンテンツのリプレイ・ショートストーリーの著作権はむーむー/むーどす島戦記TRPG会にあります。
・本コンテンツのキャラクターイラスト、一部のモンスターイラスト、サイトイメージイラスト等の著作権は、
むーむー/マーコットPさん/アールグレイさんにあります。
・その他、原作、世界観、製作用素材については以下の権利者のものとなります。

●使用素材について

・本コンテンツは以下の製作者、原作者、製作素材等の著作物を使用して製作されています。

【プレイヤー】

・トゥナ・P
・マーコットP
・ヤトリシノP
・むーむー(GM)

【挿絵・イラスト】

・マーコットP
・むーむー

【キャラクター(エモーション・表情差分)】

・マーコットP
・むーむー

【使用ルール・世界観】

・ロードス島戦記
 (C)KADOKAWA CORPORATION
 (C)水野良・グループSNE
・ロードス島戦記コンパニオン①~③
 原案:安田均、水野良、著者:高山浩とグループSNE
 出版社:角川書店

【ウィンドウ枠デザイン素材】

・ウィンドウ&UIパーツ素材セット3
 (Krachware:クラハウェア)

【マップアイコン素材】

・Fantasyマップアイコン素材集
 (智之ソフト:tomono soft)

【Web製作ツール】

・ホームページデザイナー22
 (ジャストシステム)

【シナリオ・脚本】
【リプレイ製作】

・むーむー

【ショートストーリー・小説製作】

・トゥナ・P
・マーコットP
・ヤトリシノP
・むーむー
 (むーどす島戦記TRPG会)

【製作】

・むーむー/むーどす島戦記TRPG会

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