御遊戯結社

トップ  ⇒ むーどす島戦記リプレイ  ⇒ リプレイ第4話後:ショートストーリー

←[ 1話前の話へ] [このページ] [次の話へ]→


リプレイ第4話後:ショートストーリー  

●目次

酒場の風景SS(作者:トゥ・ナP)
トゥ・ナSS②(作者:むーむー)
トゥ・ナSS③(作者:むーむー)
アンスリューム①(作者:むーむー)

●【酒場の風景SS】(作者 トゥ・ナP)

リスモアの街、ヴァリス領内においても有数な大きな町だ。
先の戦争、後に“ 英雄戦争”と呼ばれる戦いから間もない頃、この街は少しの慌ただしさを孕んでいた。

「あ、おかわりを」

ヤトリシノは女給を捕まえて言った。
いつもの酒場、いつもの奥まった席だ。

(……随分と知れたものだな)

いま彼が使うこの席は、気づけば誰もが避ける席になっていた。
丸い円卓、詰めれば8人は座れるだろう席は、どれだけ店が混んでいてもこの席は空いていた。
そこにヤトリシノは1人座ってグラスを傾けている。
グリフィンを狩ったのが契機だろう、この席を愛用する一団は目下売り出し中の冒険者パーティなのだ。

(あれからどれくらいが経ったかな……)

ヤトリシノは故郷を追われていた。ベルド率いるマーモの軍勢に。
ヤトリシノはカノンの出身だった。
かつての、カノンにいた頃に想いを馳せる……。

「しかし、今も悪くない」

つい、声に出てしまった。

抱えたものの大きさに目を白黒させるハーフエルフの女の子。
心根は見せないが、決して悪人ではないだろうスカウト。
慈愛に満ちながらも、その生は悲哀に満ちていたプリーステス。
気づいたら居た、部下に悩んでたダークエルフ。
そして―――

「おぉー!ヤトリシノじゃないかっ!!!」

この声は最後の一人、ライトネスだ。

「一人か?水臭いな!声を掛けてくれればいいのに!」

この本来は“お嬢様”のはずの彼女の声は通るしデカい。

「あぁ…隠れてこっそりなんでな、先日ルーシアに呑みすぎだとお小言を貰ったばかりなんだ」

「アッハッハッハッハッー。じゃあ店を変えないとダメじゃないか!」

大笑いする。店内中の視線が集まった気もするが、気のせいだろう。

「それにしてもアレだな!ヤトリシノはアレだ!」

あのスカウトに言わせるところの脳筋語が始まったようだ。
あのスカウトは私なら理解出来ていると思っているようだが。

「強い!すごくだ!ヴァリスの騎士たちにも引けを取らない!すごいぞ!」

理解した。どうやら褒めてくれているようだ。

「そうするとアレだな!やっぱり気になるよな!」

また解らなくなった……。

「どうする?明日にするか!?わたしは今からでもいいぞ!」

やはり解らない……どうしたものか、誰か来てくれないものか――

――――――

「抜けるような青い空!素晴らしい!」

リスモアのメインストリートを歩くその男は、着こなしている鎧下までもが青かった。
彼は”青の冒険者(自称)”、”青の剣士(自称)”とは呼ばれていない、だが実力は知られている冒険者だった。
彼は少し前のクエストで、予想外の臨時収入を得ていて懐は温かい。
少し長く街に逗留していたせいか、行きつけではない、根城の反対側の名店を尋ねてみようと思っていた。

「さぁ!来た!私が来た!」

店の扉を押し開くとそこには、彼の常識とは違う風景が広がっていた。

――――――

広くはない、しかし狭くもない店内。
本来なら雑多に並べられていたであろうテーブルや椅子は壁際に追いやられ、店の中央と思しき所には人垣が出来ていた。

「はて?これはなにごとかな……?」

突然の事態を把握出来ないままに、何とか人垣の中を覗こうとアッチで伸びてコッチで伸びて。
そんな最中に聴こえる声は声援。

「押せーー!」「今だ!畳かけろ!」「どーいたしまして!」

どうやらこの中心では賭けの対象があるのだろう、観客の声は熱を帯びている。

「「あぁああぁぁーー!!」」

どうやら一区切りついたようだ。

「ぐほっーーー」

輪の中から出てきた少女にはね飛ばされる。
少女はそのままカウンターまでズンズン進み「ラムっ!!」と店主に怒鳴りつけた。
その少女には見覚えがありすぎた。

「おぉ、そこに見えるは我が戦神の巫女ではないかっ!」

パーティの仲間である少女を確認すると、大仰に言いながら声をかけ近寄る。

「ぷっはぁぁーーーー!」

少女は出されたラムを一気、隣に座っていた男に声をかける。

「次こそはお前だからなっ!お前たちなんて絶対に我が勇者と認めないんだからっ!」

そう声を荒らげると、またズンズンと輪の中に戻っていく。

「いよぅ…」

少女が声を掛けた男に、今度はこちらが声をかけられる。
(赤い髪、知った顔だな…)
少し前に仕事で顔を合わせた男だ。

「久しぶりだな。ところで事態が飲み込めないんだが、何故うちの巫女殿は荒れ狂っているのかね?」

率直に聞いてみる。

「あぁ、うちの仲間がいい具合に煽ってしまったみたいでね…。
なんでか酒場を全部巻き込んだ腕相撲大会になったんだ。
おたくの巫女さんは連敗してるよ」

苦笑混じりに教えてくれた。

「あぁ、なるほど」

我が巫女殿は生粋の負けず嫌いだ。それで突っかかってるのだろう。

「次にアンタと言ってたのは、先日のアレかな?」
「そーだろうねぇ」

赤髪は笑いながら答えた。
仕事で相対したときに、この赤髪の一撃を、うちの巫女殿は受けてしまった、それがプライドに触っていたのだろう。

「どれ、私が勇者たるものだと示してやろう!」

肩をならし、戦場に赴こう。恐らく彼処に待ち受けるは我が鼻の仇。……少し疼く。

「おぉそうだ、赤髪の、名はなんと?」

有力な同業になるだろう、名を知って損は無い。

「あぁ、私はヤトリシノだ」

覚えておこう、彼は私と肩を並べる冒険者になるはずだ。

「ヤトリシノか、私はオーーーーー」

何故か、何でなのか、輪の中心から飛んできたモヒカンに突撃されて私のこの日の記憶は途切れた。
後日、我が巫女殿が云うには、かの狂戦士は69人抜きをしたそうな……。

トゥ・ナSS②(作者 むーむー)

「ねぇねぇ。将来、私がトゥ・ナのお嫁さんになってあげるよ、嬉しい?」

そばかすだらけのクエリッサがおもむろにこちらに向かって何やら寝言を言っている。

「お子ちゃまは、ねんねの時間だぞ? 寝言は寝てる間に言えよ?」

とりあえず否定の言葉を言っておく。伝わるかどうかは分からない。

「起きてるわよ!私がお嫁さんになるの不服な訳?!」

とりあえず、一考にも値しない提案なので、速やかに排除したい。
これに思考を割くこと自体が時間の無駄。どうにかして適当にあしらいたい。

「出るとこ出てから言ってもらおうか?さぁうるさいから、はよ寝ろ」

ここは盗賊団のねぐら。その中でも比較的若い連中のためのねぐらとなっている。
とりあえず仕事をこなせるようになったくらいの、10歳から15歳くらいまでの餓鬼どもが放り込まれている。
まぁ、そう言う自分も餓鬼のうちだ。

「何よ、出るとこ出て言えばいいの?表に出なさいよ!」

すでに伝わってねぇ。話にならねぇな。
こういうときは擦り付けるのに限る。

「ああ、なんだ。ノーラッド君が君に話があるそうだ。表に出て話してきなさい」

生贄にされたノーラッドが慌ててクエリッサに向き合う。

「うぇ?えっと、じゃ、じゃぁ、僕が代わりにお嫁さんにもら」
「えー……ノーラッドー? 趣味じゃないんですけどぉ」

言い終わらないうちに撃沈したようだ。ノーラッド、可哀そうにな。
常日頃からモーションをかけているものの、全く意に介されてない。
がんばれノーラッド。お前が頑張らないと貧乳そばかす女のターゲットが俺から移らない。
今こそお前の努力を見せる時だ。
正直、どうでもいいと思っていることなので、心からの応援にもならないが、とりあえず頑張って欲しいところだ。
クエリッサとノーラッドがぐだぐだな会話を始めたようだ。しめしめ。これで自分は寝れる。
今日もお努めご苦労さん!

トゥ・ナSS③(作者:むーむー)

物心ついた時には、盗みを覚えていた。それは、このねぐらにいる餓鬼どもみんな同じだ。
戦争やら捨て子などで孤児となった俺たちは、運よく盗賊の首領である親方に拾われ、ここで生活をしている。

遊び道具はダガーやロープ。戦うためというよりはいかに逃げ延びるかを重視した使い方を覚えた。
手先の器用さを上げるため、豆粒のようなお手玉を何個も放り投げながら正確な指さばきで隠すなど、お手の物だった。
街中で走り回っての鬼ごっこは、大人になって実際に街中を逃げ延びるための予行演習のようなものだった。

自分で言うのもなんだが、盗みの技、逃げ足、という点で自分よりも上の者はそうそういない。
ねぐらで過ごしている孤児の中で兄貴分と言われるのは、まぁ、当然と言えた。
ノーラッドは盗みや罠解除など等しく優れているが、一歩俺に届かない。あと、決定的に戦いに弱かった。
スリや手先の器用さはクエリッサの方がやや上か。逃げ足はそんなに早くないが、つなぎ役に獲物を速やかに渡す速度などは一流だ。
孤児の中では自分も含めて3人が、能力的には頭いっこ抜きんでている、といったところだ。

親方には可愛がってもらってるものの、その息子のウィシャスからは煙たがられていた。
跡目争いなど、腹の足しにならないことは正直遠慮したいところだが、親方の息子には何かと目の敵にされている。
なんなら、クエリッサを差し出して、これで勘弁してもらえませんかね?と言いたいところだ。
意外とあのバカ息子、クエリッサのこと気に入ってるっぽいから、いいかな、とか思ったんだが、無理かな。

できるなら、人様の物をちょっと拝借して、その日を生きてるくらいの、そんな生活を続けていけりゃ、こちとら十分なんだけどな。
まぁ、一攫千金で大金を手にして、濡れ手に粟で暮らすってのも悪くはないが、次第に飽きが来るんじゃないかなとも思う。

はぁ、やめやめ。めんどくせぇことは考えたくねぇな。
いっちょ稼いでくるか!

アンスリューム①(作者:むーむー)

きっかけはちょっとしたことからだった。
上からの命令で探している書物について、部下の一人にこの後どうするのかと聞かれたことから始まった。
どうもこうもない、必死に探すだけだ。上からの命令なんだ。やるしかないんだ。
そう答えてやったのに、しつこく何か言われ続けた。
頭に来たので、文句が言えなくなるまで殴って教育してやった。
いつもしていることだったし、魔法で瞬殺しないだけマシな話だ。マーモでは割と普通の対応だと思う。
そうしたら、部下の全員がいきなり襲い掛かってきた。殺し合いになってしまった。
このままでは殺される。せめて数人、道連れにしてやると思っていた矢先、助けが入った。
あーしたちが付きまとっていた冒険者たちだった。

前回は命乞いをして見逃してもらった。
今回は殺されかけているところを助けてもらった。
礼は言わないからな、なんて、恩知らずなことはもう言いたくなかったんだ。
前回の分も合わせて、ちゃんとお礼が言えて良かったと思った。

たまたま、こちらに用事があるって話だった。このご時世にマーモまで来るんだ。
何か大変な用事なんだろうなと思った。恩は返さないとなんない。協力を買って出た。

話してみたら、話しやすい人間たちだった。
中に植物の名前を持つ子がいた。気になってフードを剥がしてみたら、ハーフエルフだった。
頭におかしな角が生えていたので、さぞかし忌み嫌われたのだろうな、とは思ったけど、
よくよく考えたら祝福された名前なんだから、あんまり変に気を回さない方がいいよね、って思い直した。
ついつい角を持って遊んでしまった。ヤバい、また、嫌われたかもしれない…。

白い鎧を着た娘を見た時、ピンときた。この娘は仲良くなれる、って思ったんだ。
なんだろう…。あーしと同じ、ちょっと馬鹿っぽさというか、真面目にやってるのに報われてなさそうな、
そんな雰囲気を感じたんだ。ついつい、余計な一言を言ってしまった。
言った瞬間、目から星が出るくらいの勢いで殴られた。それもグーでだ。
凄く痛かったけど、「次に言ったら…」って言われて、やり返そうかと思った手を止めた。
「次に言う機会があるんだ?」って思ったら、ちょっと嬉しくなって、やり返す気になれなかったんだ。
彼らは「仲間」らしい。それがものすごくうらやましく見えていた。

2日間、一緒に行動を共にした。
道案内どころか一緒になって戦いもした。
楽しくて、めちゃくちゃ協力的になってる自分に自分で驚いてた。
夜、毛布が無くて寒かったりもしたけど、「仲間」と一緒にいるのが久しぶりな感じがして寒さも我慢できた。

彼らは、用事が終わればそのままヴァリスに帰ると言う。
なんかちょっとでも引き延ばせないかなと思って、見せてもらった地図の場所にアテがあることを言ってみる。
でも急いで戻らないといけないらしい。そうだよね。しょうがないよね…。
付いてきたいな、なんて一瞬思ったけど、無理な話だ。
相手はヴァリスの人間たちだ。ダークエルフや妖魔を目の敵にしている国だ。そんなこと言っても迷惑になるだけだった。

そんな風に思ってた別れ際、角の子があーしを連れてみんなで一緒に島に行けそうな方法を考えてくれていた。
すぐにその話に飛びついた。
フードを深く被ってバレないようにして行動することになった。
そのためにあーし1人でリボーの街に行って買い物をしてくる必要がある。
フクロウを連絡手段にするということで、一緒に連れて行くことになった。

買い物へ行く道を、あーしはひたすら走った。

――「仲間」だ! あーしに、「仲間」ができた!!

泣きながら走った。
フクロウに見られたら、みんなに知られてしまう。見られないようにするのに苦労したんだよ?

島に行くにはポムの助けがいる。ポムに「仲間」が出来たことを自慢できる。

――見てなよ、ポム! 絶対に驚かしてやるからね!w

そうして、あーしは大急ぎでリボーまで向かったのだった。

←[ 1話前の話へ] [このページ] [次の話へ]→


●本コンテンツについて

・本コンテンツは同好者の間で楽しむために作られた非公式リプレイです。
・2021年にオフラインセッションでプレイしたものをまとめたものとなります。
・動画制作とリプレイテキスト公開を同時進行しております。
・個人の趣味で行っておりますので、のんびり製作しております。気長にお待ちいただきながらお楽しみください。

・原作の設定とは無関係の設定が出て来たりしております。あくまでこちらのコンテンツは別次元のお話と思ってください。
・本コンテンツの制作にあたり、原作者様、出版社様とは一切関係がございません。
・TRPGを行うにあたり、皆が一様に分かる世界観、共通認識を生んでくださった原作者様と、
楽しいゲームシステムを販売してくださった関係者の方々に、深く感謝申し上げます。

●本コンテンツの著作権等について

・本コンテンツのリプレイ・ショートストーリーの著作権はむーむー/むーどす島戦記TRPG会にあります。
・本コンテンツのキャラクターイラスト、一部のモンスターイラスト、サイトイメージイラスト等の著作権は、
むーむー/マーコットPさん/アールグレイさんにあります。
・その他、原作、世界観、製作用素材については以下の権利者のものとなります。

●使用素材について

・本コンテンツは以下の製作者、原作者、製作素材等の著作物を使用して製作されています。

【プレイヤー】

・トゥナ・P
・マーコットP
・ヤトリシノP
・むーむー(GM)

【挿絵・イラスト】

・マーコットP
・むーむー

【キャラクター(エモーション・表情差分)】

・マーコットP
・むーむー

【使用ルール・世界観】

・ロードス島戦記
 (C)KADOKAWA CORPORATION
 (C)水野良・グループSNE
・ロードス島戦記コンパニオン①~③
 原案:安田均、水野良、著者:高山浩とグループSNE
 出版社:角川書店

【ウィンドウ枠デザイン素材】

・ウィンドウ&UIパーツ素材セット3
 (Krachware:クラハウェア)

【マップアイコン素材】

・Fantasyマップアイコン素材集
 (智之ソフト:tomono soft)

【Web製作ツール】

・ホームページデザイナー22
 (ジャストシステム)

【シナリオ・脚本】
【リプレイ製作】

・むーむー

【ショートストーリー・小説製作】

・トゥナ・P
・マーコットP
・ヤトリシノP
・むーむー
 (むーどす島戦記TRPG会)

【製作】

・むーむー/むーどす島戦記TRPG会

←[ 1話前の話へ] [このページ] [次の話へ]→