'98年5月


「ブルース・ブラザース2000」 - Blues Brothers 2000 -

 1980年の「ブルース・ブラザース」の続編。しかしジョン・ベルーシが亡くなり映画上のジェイクも世を去った設定。それに代わるのが、ジョン・グッドマン、ジョー・モートン、さらに子役も加わる。監督のジョン・ランディスと、エルウッド役のダン・エクロイドは前作同様。

 ストーリ的には前作の方がずっと上。今回は展開が場当たり的だし、前作の孤児院を助けるというような一つのモチベーションが無いのが残念。そんな感じで観ていると出だしはちょっと不安。でも、音楽シーンはすべてよくてそれなりにノレる。後半ななかなかいい。前作が好きなら楽しめる。

 ネオナチがロシアン・マフィアに代わり、ウエスタンがブルーグラスに代わり、それぞれ前作との対比を見つけるのが楽しい。
 ジェームズ・ブラウンも健在。謎の魔女、エリカ・バドゥも魅力的。

「Blues Brothers 2000」 Official Site


「プライド 運命の瞬間(とき)」

 伊藤峻也監督脚本、津川雅彦、大鶴義丹。
 東篠英機をメインにした極東国際軍事裁判(東京裁判)。

 東篠英機賛美という批判があるようだけど、確かにその印象は強い。東篠英機を軸にドラマにしているのもいいし、戦勝国側がいかに有利に東京裁判を進めたかという史実もうまく出ている。しかし、津川雅彦演ずる東篠英機がいい人間すぎて、人間味がでていないし、当然、苦悩みたいなものも表現されていない。もうちょっと客観的に観た方が物語的にもよかったと思うが。 あと、内容の割には2時間41分というのは長すぎる

 監督の伊藤俊也と言えば、女囚シリーズ、「花いちもんめ」「花園の迷宮」「風の又三郎 ガラスのマント」…。なんか、スタイルが掴めない監督(^^;)。

 小林正樹監督の「東京裁判」も合わせて観れば公平かもしれないけど。(なにせ5時間近い映画だから合計すると…(^^;))

「プライド/運命の瞬間(とき)」Official Site


「ウワサの真相〜ワグ・ザ・ドッグ」 - Wag The Dog -

 バリー・レビンソン監督、ロバート・デ・ニーロ、ダスティン・ホフマン、アン・ヘッチ。

 選挙戦間近の米国大統領、ホワイト・ハウスで少女にイタズラしたのがバレて再選が危うくなる。そこで、デ・ニーロ演ずるもみ消し屋が、ホフマン演ずる映画プロデューサーと組み架空の戦争をでっち上げる。

 設定的に面白いし、俳優陣もよいので期待出来たのだけど、それほどはよくなかった。結局、ドタバタに終始してしまって、設定を活かせていない。もっと金をかけて、派手にすればよかったのかもしれないけど。音楽を仕掛ける手腕とか、戦地の英雄の正体とかは、結構面白かったけど。

「Wag The Dog」 Official Site


「プープーの物語」

 渡辺謙作監督脚本。上原さくら、松尾れい子、國村準、原田芳雄、山中零、鈴木清順。
 破天荒なスズ、それにに盲目的に尽すフウ。

 AXEL上でしか知らないけど、上原さくらのキャラクタが銀幕でどうなるかという興味だけで観に行く。
 上原さくらは映画初出演。当人そのままの、どっか飛んだキャラクタはうまいと思ったけど、全体にストーリはうまくない。テンポも悪いし、興味を引きつけるほど内容もないので、中盤はかなり退屈。それでも、最後はうまくまとめている気もするんだけど。

  同時上映、ホンマタカシの10minutesショートムービー「HOW TO Jiu-Jitsu柔術」。まあ、なんというか、POPな感じはいいんだけど。


「友情/Friendship」

 和泉聖治監督、三船美佳、柳葉敏郎、田中好子、平田満、麻生祐未。

 和泉聖治はまったく、どんなジャンルでも節操なくよく撮るなあという印象が強い。でも、これほど甘ったるい話は、「この胸のときめきを」以来かもしれない。ヤクザものよりも、こういった分野の方がうまいと思うんだけど(^^;)。

 「友情/Friendship」は、ほとんど中学生日記のノリ。それに白血病の不治の病を入れた2時間モノという感じ。 テンポの切れの悪さや、冗長度が高い所もあるけれど、まあうまくまとまっていて、感動的な話になっている。でも、映像も展開もすべてセオリー通りという感じはする。
 ドナー登録や、母親のドナー体験の部分などをもっと書き込んだ方が、社会的な貢献があったと思うのだけど、残念。

 しかし、「絶体X絶命」では息子に適合するドナーのために破壊の限りを尽す主人公があるというのに(^^;)、これが日本と米国の差か(^^;)。


「アサインメント」 - The Assignment -

 「クリスチャン・デュゲイ監督、アイダン・クイン、ドナルド・サザーランド、ベン・キングスレー。
 テロリスト、ジャッカルことカルロス逮捕のために、彼そっくりの海軍少佐が厳しい訓練を受け、秘密作戦を行う。カルロスは実在らしいけど、ストーリ自体はほとんどフィクションでしょう。

 敵と同じ顔というのはジョン・ウーの「フェイス/オフ」を連想するけど、うりふたつというのはそれほど生かされていない。訓練が厳しい割には、それが作戦と密接な関係もないし、心理面からカルロスに近づいていくサイコ・サスペンス的な味付けは「刑事グラハム」(原作トマス・ハリス「レッド・ドラゴン」)みたいでよかったのだけど、中途半端。

 ラストは作戦の意味もよく判らずに、盛り上がりのないままに終わってしまうし。
 まあ、そういう映画。

「The Assignment」Official Site


「絶体X絶命」 - Desperate Measures -

 バーベット・シュローダー監督、マイケル・キートン、アンディ・ガルシア。

 巨大病院を舞台に、息子の骨髄移植のドナーである知能犯が手術直前で逃げ出す。
 設定だけ聞くと、期待十分な映画なんだけど、実際は大雑把。

 アクションのノリはいいんだけど、アンディ・ガルシア演ずる主人公があまりにも身勝手。マイケル・キートン演ずる犯人も行動が中途半端。犯人にも主人公にも感情移入出来ない中途半端な観客は、何を軸にして観ていいのか視点を失ってしまう。設定が面白いだけに、残念。

 しかし、子供のためなら大量破壊も辞さないエゴの父親がヒーローになる映画を作れるというのは、なんとも米国は能天気な国である。


「スフィア - Sphere - 」

 バリー・レビンソン監督制作、ダスティン・ホフマン、シャロン・ストーン、サミュエル・L・ジャクソン、P・コヨーテ。

 マイケル・クライトンの原作は結構、面白く読んだのだけど…こんなストーリだったかなあ(^^;)。映画と原作では印象がまるで違う。

 海底に眠る地球外生命体の宇宙船を調査する科学者チーム。まるで、「惑星ソラリス」と「アビス」が一緒になったようなストーリだけど、謎は中途半端なままで釈然としないままにラストになってしまう。


「シューティング・フィッシュ」- Shooting Fish -

 とにかく、今、英国映画は目が離せない。「フル・モンティ」「ブラス!」「トレイン・スポッティング」「GO NOW」「バタフライ・キス」などヒットを次々と飛ばしている。

 孤児院育ちのディラン(ダン・フッターマン)とジェズ(スチュアート・タウンゼンド)の詐欺師コンビにジョージー(ケイト・ベッキンセイル)が絡み、犯罪と三角関係。予告編がバツグンに面白かったから期待していたけど、犯罪の部分がネタ不足で中盤からちょっとダレ気味。

 でも、ラストの方はそこそこまとめて、ちょっとジェフリー・アーチャの小説を読んでいる様な英国的ウィットな味わいと、現代的なポップな音楽と映像でそこそこ楽しめた。

 コン・ゲームあたりをもっとテンポよく展開させれば、もうちょっと面白くなったと思うんだけど。

「Shooting Fish」Official Site

 ちなみに、人間を使ってAIコンピュータの詐欺をやるというのは新鮮なアイデアではないけど、これを見破る簡単な方法があります。複雑な計算をさせる、例えば65816かける6502はいくつか、と聞けば相手がコンピュータか人間かは簡単に判ります。これは逆チューリングテストによく出てくるので、コンピュータ関係者なら知っていると思うんだけど(^^)。


「てなもんや商社」☆

 本木克英監督、小林聡美、渡辺謙。
単館で二週間のみという、まったくビデオ化に向けてのハク付けでしかないという、情けない公開ながら、これは結構面白かった。

 腰かけのつもりで満福商事に集直したヒロインの小林聡美。体力と根性で、中国相手のビジネスに取り組み、成長していく。非常にポジティブな姿勢がよくて、仕事に疲れた人も、就職活動に苦労している人も、腰かけで勤めている人にも、多くの人に観て欲しい映画。
 渡辺謙演じる、王課長のキャラクタが凄くかっこよかった。

「中国てなもんや商社」原作感想


「バタフライ・キス」- Butterfly Kiss -

 マイケル・ウィンターポトム監督、アマンダ・プラマー、サスキア・リーヴス。

 「GO NOW」のウィンターポトム監督のデビュー作。残酷なシーンが多く、タッチは随分と違う感じ。
 前評判が高かったので期待していたのだけど、個人的にはあんまり好きじゃなかった。ラストシーンは美しいし、非常に叙情的にまとめているとは思ったけど。


「卓球温泉」

 山川元監督、脚本。松坂慶子、牧瀬里穂、大杉漣、桜井センリ、蟹江敬三。

 「Shall We ダンス?」のプロデュース・チームというだけあって、素材の視点の作り方や、ハート・ウォーミングな雰囲気は好感が持てる。ただ、細かい部分でのクサさはちょっと鼻につくけど

 でも、全体には面白かった。手だしの松坂慶子の日常の描き方なんか上手い。旅館に泊まった朝の掃除のシーケンスとか、とにかく松坂慶子が非常に魅力的でよかった。昔とはまるで違う魅力を感じる。それに対する牧瀬里穂は、ちょっとオーバー・アクションで演出がヘンだと思った。


「アサシンズ」 - Assasin(s) -

 監督・脚本・主演は「憎しみ」のマチュー・カソヴィッツ。

 「憎しみ」がフランスでも大評判だったのに対して、今回の「アサシンズ」はその暴力性について物議を醸し出したとか。

 舞台は「憎しみ」と同じフランスの郊外の街。主人公も、同じような職にあぶれた男。この男が偶然から殺し屋の後継者となるべく修行を始める。ほぼ予想通りのストーリながらも、多分一カ所は誰しも驚く意外性をもった展開をします。なかなか大胆です。

 スタイルとしては「憎しみ」とは確かに違うけど、観終わった後の脱力感は似た所がある。結構好きな映画。


「ナッシング・トゥ・ルーズ」- Nothing To Lose -

 ティム・ロビンス、マーティン・ロレンス主演。

 広告会社の重役、ティム・ロビンス演じるニックが妻の浮気から、ヤケクソになり次々と事件を起こしていく。そこに絡むのがマーティン・ロレンスで、この凸凹コンビのスラップスティックなコメディが主体。ストーリ自体はたわいも無いけど、時間内はある程度笑って楽しめる映画。あんまり深みはないけど。

 ティム・ロビンスみたいな芸達者には役不足、ちょっともったいないと思った。


「D坂の殺人事件」☆

 実相寺昭雄監督、真田広之、嶋田久作、三輪ひとみ、岸辺一徳。
 '94年の「江戸川乱歩劇場 屋根の裏の散歩者」に続いて、実相寺が監督、嶋田久作が明智小五郎探偵の二作目。

 贋作者の真田広之、古本屋の女将、古本屋の従業員、誰も彼も団子坂の住民はアヤシイのばかり。それを上回って、明智小五郎探偵もアヤシイ雰囲気。その登場のシーンの部屋の描写など印象的。
 これらの役者をまとめる実相寺の映像が素晴らしい。一灯ライティングを多用する印象的な陰影で、日本家屋のイメージを作り上げている。
 ストーリ自体は、原作のイメージからは随分と飛躍しているが、実相寺の映画としては満足。

 ちなみに、「江戸川乱歩劇場」はバンダイビジュアルにより、「屋根裏の散歩者」、「押繪と旅する男」(川島透監督)と作られた。今回の「D坂の殺人事件」は東京テアトルの制作となり、実相寺、嶋田コンビであるが正確には同じシリーズでは無いらしい。

 「帝都物語」で加藤を演ずる嶋田久作を観ると、随分と人間離れしていたなあと思う(^^;)。


「マッド・シティ」- Mad City - ☆

 コスタ・ガブラス監督、ダスティン・ホフマン、ジョン・トラボルタ。
 社会派監督らしい重厚なテーマではあるけど、エンターテイメントとしても面白い。

 人質を取って博物館に立てこもったジョン・トラボルタ。偶然に居合わせたTVレポータのダスティン・ホフマン。偶然から事件は大きくなる。

 レポータとして復活したいダスティン・ホフマンと、トラボルタを助けたいダスティン・ホフマンの葛藤が演出的に見えにくいけど、素直に観ていいのでしょう。非常に考えさせるポイントをうまく作っている。社会派と呼ばれるだけあります。
 こういう部分では、助手の存在の使い方など、巧みで面白いと思った。

 演技的には朴訥な雰囲気を出すトラボルタの演技の方が、印象的。

「Mad City」Officeal Site


「ポネット」- Ponette -

 今さらながらやっと観ました。

 澁谷文化村での初日と2日目の2日間興行収入新記録を達成。急遽ロングラン体制に入りながらも、当初はあまりの混雑にまるで観られなかった。

 で、内容的にはこんなもんかという感じ。確かに主人公のポネットの演技は素晴らしいけど、あまりにストレート。ストーリに変化が無い分、中盤でだれてきてしまう。それでも、ラストの方が結構ジーンとしてくるものがありました。


「シーズ・ソー・ラヴリー」 - She's So Lovely -

 故ジョン・カサベテスの脚本を、実の息子のニック・カサベテスが監督。監督2作目。
 実際の夫婦である、ショーン・ペンとロビン・ライト・ペンが主演、あとジョン・トラボルタ。

 単純に純愛物語として捉えていいのか、観ている時はよく理解出来ないで、ラストの方で、「え、終わりなの?」って感想を持った。でも、後から思い返してみると純愛物語でよかったのでしょう。この混乱は、ちょっとした演出の不備から来ている気もするけど、全体としては面白かった。


「新宿少年探偵団」

 ジャニーズJrの相葉雅紀、松本潤、横山裕に加えて、深田恭子、加藤あい、酒井彩名が主演。男のキャラクタには魅力がなかった。女の子の方がいい感じ。

 そもそも、語るトコが無い映画で、ストーリとしてはめちゃくちゃ。全然、練られた感じがしない。どんなキャラだとしても、この映画では生きないでしょう。


「スターシップ・トゥルーパーズ」 - Starship Troopers -

 原作はロバート・A・ハインラインの「宇宙の戦士」。ポール・バーホーベン監督、キャスパー・ヴァン・ディーン、ティナ・メイヤー。

 ハインラインの「宇宙の戦士」とは、まったく別物として捉えるべきでしょう。設定だけ使ってはいますが。
「宇宙の戦士」も好戦的だと批判されてましたが、ハインラインの視点はそんな所は超越した部分を見ていたと思う。

 「スターシップ・トゥルーパーズ」も好戦的映画だとする、間抜けな評論もあるけど、これはまったく逆。全体主義、戦意高揚プロパガンダをパロディにして皮肉って、「ビバリーヒルズ高校白書/青春白書」のエッセンスを振りかけた映画。

 それにしても、CGは迫力あった。何というか、多量のうごめく虫という生理的に嫌悪するキャラクタをうまく使っている。

「Starship Troopers」 Official Site


「恋愛小説家」- As Good As It Gets - ☆

 監督、脚本、制作ジェームズ・L・ブルックス。「愛と追憶の日々」ブルックスとニコルソンのコンビ。

 独身、人間嫌い、潔癖症、毒舌家、人気恋愛小説家メルビンを演ずるジャック・ニコルソン。ヒロインは、病気がちな息子を持つウェイトレスのヒロイン、キャロルを演ずるのはヘレン・ハント。
 単純に言えば、NYを舞台にした奇妙なこの二人の恋物語。映画的な面白さはメルビルのキャラクタの特異さにある。しかし、そこに深みを与えているのは、犬の使い方とか、ゲイの画家を絡ませた所。この脇役の使い方がバツグンに上手い。

 ジャック・ニコルソンはあんまり好きじゃないし、相変わらず狼男みたいだけど、この映画は結構気に入った。


「上海グランド」- 新上海灘 -

 ブーン・マンキッ監督、脚本、アンディ・ラウ、レスリー・チャン、制作ツイ・ハーク。

 二大スター、アンディ・ラウ、レスリー・チャンの共演という面白さがあるが、個人的にはツイ・ハーク的なテンポの良さや映像の作り方、アクションの派手さに興味があった。その辺は満足。

 ただ、長い長い時間のストーリを圧縮しているので、その辺の説明不足をちょっと感じたけど。


「ティディエ」 - Didier -

 アラン・ジャバ監督、脚本、主演。

 サッカー・チームのマネージャが預かった犬が、突然人間になって、サッカー選手として大活躍。
 フランスでは大ヒットになったそうだけど、確かにエンターテイメント性はあって面白い。この映画で監督、脚本、主演というアラン・ジャバの才能は凄いと思う。

 ちょっと大雑把な面もあるけど、面白かった。フランス的な能天気さで。何故、犬が人間になったかなんて、細かい説明をしない所は逆に凄いと思った(^^;)。


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