2002年9月


「海は見ていた」

 熊井啓監督、黒澤明脚本、山本周五郎原作、清水美砂、遠野凪子、永瀬正敏、吉岡秀隆、つみきみほ、河合美智子、石橋蓮司、奥田瑛二、北村有起哉、野川由美子。

 江戸、大川(隅田川)の"川向こう"の深川の岡場所、葦の屋で働くお新(遠野凪子)は、刃傷沙汰で逃げてきた若侍の房之助(吉岡秀隆)をかくまう。実直な房之助にお新は惚れ込み、姐さん衆の菊乃(清水美砂)たちは二人のために一肌脱ぐが…。

 前半はお新、後半は菊乃と全体に二つのエピソードに分断されていて、流れが途切れていてヘンな印象。イマイチ展開が単調。それでも洪水のエピソードは最期はすっきりしていて、いい感じで終わってくれたので良かった。
 黒沢映画の様に小道具など細かい所がなかなか気が効いている。

「海は見ていた」Official Website


「ウィンドトーカーズ」 - Windtalkers -

ン・ヴァン・ホルト、フランシス・オコーナー、クリスチャン・スレーター。

 第二次世界大戦中の1942年、ガダルカナル。日本軍の猛攻によりエンダーズ伍長(ニコラス・ケイジ)の部下すべては倒れ、自身は唯一生き残るが耳に障害が残る。責任の埋め合わせにエンダーズは復隊、新しい任務は新しい暗号の要となるナバホ族の通信兵ヤージ(アダム・ビーチ)の身を守り、また暗号を守るという秘密指令だった…。

 「暗号解読」にも出てくるナバホ族の有名な暗号のエピソードをベースにした物語。史実かもしれないが、なんか面白く無い。特に戦闘シーンのチャさには驚きで、ジョン・ウーの美しさは微塵も感じられない。鳩もロングコートもサングラスもいらないが、やはりジョン・ウーのスタイルってのは欲しい。
 男同士の友情という部分も、なんか上っ面っぽい印象。そもそも、やっぱりニコラス・ケイジってのが好きになれないかも。

「ウインドトーカーズ」Official Website


「命」

 篠原哲雄監督、柳美里原作、江角マキコ、豊川悦司、筧利夫、麻生久美子、寺脇康文、平田満、根岸季衣、江守徹、岸谷五朗、斎藤由貴、樹木希林。

 1999年夏、作家の柳美里(江角マキコ)は不倫相手との子供を妊娠し困惑、かつての恋人で劇団主宰者の東由多加(豊川悦司)を訪ねるが、東の体はすでに癌に侵されていた。東の闘病生活に力を貸す美里は、自分もまた新しい命を育てる力を得ていく…。

 基本的には感動的な話で、強く押し付きもせず、素直にそれに入り込む事は出来る。原作の力の方が強く、篠原哲雄の「月とキャベツ」、「はつ恋」、「洗濯機は俺にまかせろ」などのノホホンとした味わいが無いのは寂しい。柳美里の話はどれも、ナマナマしすぎて好きになれない部分がある。
 江角マキコはいいとしても、豊川悦司の演技過剰なわざとらしさはちょっと気になったけど、後半ではあのキザっぽさというか、作りっぽさが東京キッドブラザースの本物の東由多加のスタイルを上手く出しているのかとちょっと思った。

「命」Official Websie


「インソムニア」 - Insomnia -

 クリストファー・ノーラン監督、アル・パチーノ、ロビン・ウィリアムズ、ヒラリー・スワンク、モーラ・ティアニー、マーティン・ドノバン、ニッキー・カット、ポール・ドゥーリー、ジョナサン・ジャクソン。

 アラスカのナイトミュート、白夜の世界。髪を洗われ、爪を切られ、全裸のままゴミ袋に入れられてい17歳の少女の遺体が発見される。多くの猟奇殺人を解決したL.A.のベテラン警部ウィル・ドーマー、相棒ハップは不正捜査の内偵を受けているせいでこの事件に派遣される。ドーマーは、霧深い海岸の小屋に容疑者をおびき寄せようと罠をしかけるが…。

「メメント」の監督という事で期待大だった。予告編からは猟奇連続殺人というサイコ・ミステリーを想像していたが全く違っていた。これは配給会社の策略か。白夜による不眠症に悩ませられるのは刑事の方だったとは。事件は筋の本質では無く、ドーマーの苦悩が中心というのがなんとも面白く、不思議な感覚の映画。対する ロビン・ウィリアムズの演技は今一つ、というか、映画にあっているように思えなかった。

「インソムニア」 Official Website


「バイオハザード」- Biohazard -

 ポール・アンダーソン監督、ミラ・ジョヴォヴィッチ、ミシェル・ロドリゲス、エリック・メビウス、ジェイムズ・ピュアフォイ。

 洋館の中、記憶を失ったまま意識を取り戻したアリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)、突入してきた特殊部隊は、アリスと屋敷に潜んでいたマットという男(エリック・メビウス)と共に地下に隠された列車で研究所ハイブへ向かう。研究所を封鎖、殺人鬼と化したハイブのメインコンピュータ"レッドクィーン"を停止しようとするのだが…。

 PG-12で、お色気+スプラッタ満載な映画なのに90%は小中学生の観客だった。ストーリ的には大雑把、細部は雑で、アクションはつなぎでスピード感を出しているだけ。後半は雑なドンパチのみ。
ビデオゲームを題材として、ヒロイン・アクションものという事で「トゥームレイダー」と比較したくなるけど、「トゥームレイダー」の方が映画としては遥かによく出来ていた。
ミラ・ジョヴォヴィッチは出だしからサービスカット。ラストのA4コピー用紙×4枚は歴史に残るサービスカットかもしれない(「フィフィス・エレメント」の服のパロディ?)。「ガールファイト」のミシェル・ロドリゲスはちょっといい味が出てるけど、活躍は少なかった。

「バイオハザード」 Official Website


「スパイキッズ2 失われた夢の島(日本語吹き替え版)」- Spy Kids 2:The Island of Lost Dreams -

 ロバート・ロドリゲス監督脚本製作、アントニオ・バンデラス、カーラ・グギノ、アレクサ・ヴェガ、ダリル・サバラ、スティーヴ・ブシェミ、ダニー・トレホ。

「スパイキッズ」の活躍でOSS(戦略事務局)のスパイキッズとして活躍しているカルメン(アレクサ・ヴェガ)とジュニ(ダリル・サバラ)はライバルのゲイリーとガーティにトップの座を奪われる。名誉回復のためカルメンとジュニは、テクノロジーを無効化する秘密兵器トランスムッカーを取り戻すべく謎の島に向かう…。

それなりに笑いとスリルと、しんみりさせる所はあるし、さまざまなスパイツールのガジェットは楽しめるが、ストーリ的にはちょっと雑な感じ。ちょっと子供向き過ぎるか。コメディアンとしてのアントニオ・バンデラスはちょっと意外で面白いけど。
"スパイの差は持っているツールの差"と断言するゲイリーの言葉を、もうちょっとうまく逆手に取れたらよかったのにと思う。結局ツールに頼っていたりするし。

「スパイキッズ2 失われた夢の島」Official Website


「リターナー」

 山崎貴監督脚本VFX、金城武、鈴木杏、岸谷五朗、樹木希林。

裏社会で一匹狼で働くミヤモト(金城武)は、闇取引の現場で、子供の頃の親友の命を奪った溝口(岸谷五朗)と出会うが、一息の所で取り逃がす。その現場で助けた少女ミリ(鈴木杏)、未来から来たと話す彼女は人類の運命のためにミヤモトに協力を求める…。

基本的には嫌いじゃないのだけど、どっかの映画で観たような設定や映像ばかり。それも「E.T」、「ターミネーター」と超メジャー級の映画をパクっている。このオリジナリティの無さは何なのだろうか。
ラストの味付けは、前作「ジュブナイル」も同じでちょっといい感じなんで完全には見捨てられない監督、とりあえずまたまた次回に期待。今回はそれなりに予算もあったと思うけど、次回はあるのか…。

「リターナー」Official Website


「オースティン・パワーズ ゴールドメンバー」- Austion Powers in Goldmember -

 ジェイ・ローチ監督、マイク・マイヤーズ製作脚本主演、ビヨンセ、マイケル・ケイン、セス・グリーン、マイケル・ヨーク、ロバート・ワグナー、ミンディ・スターリング、ヴァーン・トロイアー。

 Dr.イーブルの世界征服計画、隕石落下による「プレパレーションH」を阻止したオースティン・パワーズ。父親のナイジェル・パワーズ(マイケル・ケイン)が誘拐され1975年にタイムスリップ、同僚のフォクシー・クレオパトラ(ビヨンセ)とともに救出に向かい、さらに鍵を握る2002年の日本「ロボット社」へ…。

 まあ、ノリは相変わらず1、2と同じ。オランダ差別ネタとか、ほくろネタとかヘンなのも相変わらず多い。今回のカメオ出演は物凄い、感動的ですらあるし、こんな映画にカメオ出演してしまうハリウッドのノリのよさはうらやましい。笑いとしては品がいいとは言えない、まあある程度は楽しめるか。

「オースティン・パワーズ ゴールドメンバー」 Official Website


「ドニー・ダーコ」

 リチャード・ケリー監督脚本、ドリュー・バリモア製作総指揮出演、ジェイク・ギレンホール、ジェナ・マローン、メアリー・マクドネル 

 1988年、ブッシュVSデュカキス大統領選の頃、マサチューセッツ州ミドルセックスの高校生ドニー・ダーコ(ジェイク・ギレンホール)は銀色のウサギの声で夢遊病の様に外へ、"世界の終わりまで28日6時間42分12秒"と告げられる。そのおかげでジェット・エンジン落下の事故を免れたドニー、やがて転校生グレッチェン(ジェナ・マローン)と付き合うようになる…。

 サンダンスでも人気だったとちょっと期待の映画。現実と非現実の混在、現実か主人公の妄想か、あるいは…という全体の構成がなんとも上手い。ラストに意外性は無くちょっと単純だったのが残念だけど、なかなか面白かった。
基本的なストーリとは別に、さまざまな細部に寓話として楽しめる面がある。

「ドニー・ダーコ」Official Website


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