天体写真の写し方・固定撮影

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固定撮影ってどんなの

●普通の写真
カラス座  固定撮影は普通の三脚を使った写真で特別なものではありません。 風景を入れた「星景写真」と星を中心にした「星夜写真」のことです。

 左の写真は不気味な風景な(^^;昇るカラス座です。

 別にからす座でなくても不気味なら良かったのですが、たまたまカラス座があったんでナッス。 木に本物のカラスがとまっていれば申し分なかったのですが(^^;


必要なもの

●必要なもの
固定カメラ 固定撮影に必要なものはカメラ・三脚・レンズ・フイルム・時計です。

春先、冬、晩秋には十分な防寒をして下さいね。風が吹くと体感温度が下がりますし、 じっとして動かないので、もっと寒く感じられます。

ま!最初は寒いときはやめときましょう(^^;

●カメラ
★ピントを無限大にできるもの
 天体は無限の彼方にあるのでピントは無限大(∞)にします。

★バルブ(B)でシャッターを解放できるもの

 シャッターを開放し続けている時間は数分から数時間にもなりますので、 バルブ(B)が付いているものが良いです。 カメラによってはバルブ(B)ではなく開放時間を99分ぐらいまで指定できる リモートのものがありますがそれでも良いでしょう。

カメラ拡大

★できればマニュアル(手動)カメラ

 オートフォーカスでも撮影できますが、シャッターを解放し続けるのにとても電池を使いますので、 知らない間に電池が消耗し、カメラが全く動かなくなってしまう事があります。
 できればシャッターを機械的に解放できる「Nikon New FM2」や「Vixen VX-1」などが良いでしょう。 電池に気を付ければオートフォーカスでもかまいません。予備の電池は忘れずに。

●三脚
 三脚は重くて頑丈なものに越した事はないですが、 ある程度地面からの高さのあるものが使いやすいと思います。 持っていくのは重いですが、三脚に付けたカメラから空を覗くのですから、 三脚が低いと体勢が非常にクルチイです(^^;

どうせ低いなら長い時間シャッターを開くのですから、カメラの重さに耐えられるぐらいの チビ三脚を使い、う〜んと広角レンズで大体の方向を狙うのも・・・ま!簡単ですが。 取り敢えず三脚を持っている方はそれを使ってみましょう。

●レンズ
 使うレンズは広角(20mmぐらい)から標準(50又は55mmぐらい) ぐらいのものが良いでしょう。 ピントは無限大(∞)にします。無限大の先にRと付いているものがありますが、 赤外線フィルムやR64フィルターをかけたときにしか必要ありません。

 絞りは周辺減光というものを避けるために、1段か2段しぼりましょう。分からない方は F4とかF5.6あたりに合わせて下さい。

 できれば単焦点レンズが良いのですが、なければズームレンズでもかまいません。 ズームレンズですと上を向けて撮るので、レンズ自身の重さで勝手にズーミングしてしまうので、 ガムテープなどで固定して下さいね。取り終わったあとガムテープを貼ったままレンズを 引っ込めてテープが食い込んでしまうようなドジはさけましょう(^^;)/

●レリーズ
 手でカメラに触れながらシャッターを切りますと酷くぶれてしまいますので、 レリーズ又はリモートコードを使います。無ければタイマーなどが使えますが、 やはりレリーズが一番でしょう。
●フイルム
 最初はどうせ失敗写真なので、写し易く・安価で・何処でも現像できる ISO400のネガ・フイルムが良いでしょう。

 また最初のうちだけ超高感度のISO3200やISO1600など、 又ISO800などのフイルムを使うと時間短縮が出来て写し易いです。 正確な値ではないのですが、ISO400に比べて800は半分の時間・1600は1/4の時間・ 3200は1/8の時間で写せますが、粒子が粗くなりガサガサの写真になります。

●時計
 バルブ(解放)でレリーズを使い何分も露出を行ないますので、 時間を計るために必要になります。暗闇でも見える時計にして下さい。

 のちのちには記録となりますので、正確な時間を控えておくことにも使います。 折角偶然に新彗星が写っていでも資料にならないですし(^^;

●その他
 その他に必要なものは、

星座早見版

 何時頃どこにどの星座が見えるかが分かります。 文房具屋・天文ショップなどで売っています。 また、星座早見版を使って事前に計画を立てることなども出来ますしね。 ほしいけど手に入らない場合は、天文ガイドなどに「xx月の星図」などが載っていますので ひっぺがして使うと良いでしょう。また天文雑誌の通販などを利用すると良いでしょう。

減光した懐中電灯

 懐中電灯の先に赤いセロファンを張り付け減光した懐中電灯があると便利です。 通常の明かりでは点灯したとたん瞳孔が閉まり星が見えにくくなってしまうため、 眼が反応しにくい赤色にします。

 赤セロファンが無いときは、スーパーの袋の赤い部分ですとか、 紙を赤いマジックで塗りつぶすなど工夫して見てください。

 また赤セロファン1枚でも未だ明ると感じる時は、赤セロファンなどを2枚3枚と重ねて下さい。


写し方

●日周運動を撮る
 星空はほぼ北極星を中心に周ります。カメラを固定して撮影しますと、 その星の回転の軌跡が写し取れます。

 まず三脚を立てるときは上から体重をかけておきますと、 写しているうちに三脚が沈み込んでしまうことはないでしょう。 又、脚先に夜光テープなどを貼っておくと、三脚を蹴飛ばしてしまうことが少なくなります。

 三脚やカメラをガタやゆるみの無い様にセットします。フイルムを入れ、レリーズをつけて、 カメラのISO・絞り・シャッター速度をバルブなどに合わせます。

 星座早見版を見て目標を決め、次は実際にファインダーを覗いて方角を定めシャッターを切ります。 レリーズはシャッターを解放にする方に合わせて下さい。

 これで時間を計り解放時間を2分・5分・10分・20分と分けて同じ目標を撮って見て下さい。 この時、記録をとっておきますと、自分の機材での写りの良い時間が分かり、次回以降試写回数 や失敗を減らす事が出来ます。

●北向き
北側  北側に向いて北極星が入るように写しますと、図のように星が円を描く様子が写し撮れます。 一回転すれば1日ですが朝と昼は明るくて撮れないので、ま!、最長で8時間でしょう。

 この図はシュミレーションですが実際に写してこんなにギザギザなのは、 風が強くて三脚が揺れた・三脚の周りを歩き回る振動・何度もカメラを手で触れたりしたなどの 原因がありますので次回からは対策を立てましょう。

●南向き
南側  南側を向いて撮りますと、図のように真南が星の位置が一番高く写ります。 日本では光害が酷いですし、低い高度では大気差という問題が出てきますので、 なるべく星の位置が高い所で写すと良いでしょう。

星が写っていたけれど「す〜と」消えてしまっている写真は、カメラレンズに露が付いてしまって いることが原因です。レンズに灰カイロなどを付けて露を防ぐ工夫が必要です。

 記憶に無い(^^;青空が写っている場合は、そんなに明るい所でとってはいけませんです(^^;
そのような写真を「カブる」と言います。

●東・西向き
 東側に向いて撮りますと星が昇ってくる所が撮れ、西側に向いて撮りますと星が沈んで行く所が とれます。但し地平線近くは地上の明かりがボヤ〜っと写ってしまうので注意しましょう。

水平線でもイカ釣り舟の大軍にはかないません(^^;

●天頂
 天の赤道付近が星が動くのがもっとも早いので、同じ露出時間でも星の光跡は一番長くなります。 光跡が短いのは円が小さい北側になります。
●限界等級
 眼で見える星の明るさは6等星までですが、写真は解放して光をため込むことができますので、 もっと暗い星まで写し込めます。固定撮影ではあと2等級暗い星まで写せます。 どこまで暗い星が写るかはカメラレンズの口径と焦点距離で決まります。

 下の図はISO100での値です。フイルム感度が2倍になりますと更に0.8等暗い星まで写せます。 ISO400では1.6等暗い星まで写せます。

天文年鑑より抜粋引用
焦点距離\口径10mm15mm20mm25mm 30mm35mm40mm50mm60mm
35mm6.27.17.78.2 9.0----
50mm5.96.87.47.8 8.28.69.0--

 北極星に近いほど星の動きが遅くなりますので、それだけ暗い星が写ることになります。 天の赤道から北極星の方向に向かって下の図のように最終等級が伸びることになります。

天文年鑑より引用(赤緯による補正)
赤緯最終等級の伸び
0度(天の赤道)0.0
20度0.1等
50度0.4等
70度1.0等
80度1.6等
85度2.2等
89度(北極星)3.7等


星を点に写す方法

●10ミクロン(μ)
 固定撮影でも日周運動で動いてしまう星を、撮影時間をある短い一定時間以内にする ことで星を点に写すことができます。 広角のレンズは広い範囲を撮っているので星の動きが小さく、 標準レンズになると星の動きが広角レンズよりも大きくなります。

また上記の通り北側は余り動かず天の赤道付近が最も多く動きます。

 フイルムの粒子は大体10μなので、フイルム上での星の動きをそれ以内に納めておけば 星を点に写すことができます。・・・・・・・・・・ね〜ね〜!寝てませんか(^^;

●数値表
レンズ天の赤道(A)(A)+-40度(A)+-60度
28mm44秒60秒88秒
35mm20秒30秒40秒
50mm14秒20秒28秒

この時間で何も写らない場合は「絞り(F)をもっと開く」か「フイルムの感度(ISO)を上げて下さい」 但しカブりが多く出ますので空の明るさ具合によりますね。

 最近ではフイルムの感度が上がったので、 シャッターの開放時間を短く出来、ガイド撮影でなくとも星が点に写し易くなりました。


まめ知識

●絞りとISO値
 レンズの絞りの値を「F4.0でISO400のフイルム」を使った感度と「F2.0でISO200」で使った 感度はほぼ同じです。フイルムは感度の低いものを使った方が粒子が細かので、 では「F2.0でISO200」の方が良いのではと思いますが下記の周辺減光の問題が有ります。

 つまりF値が二倍になれば1/2のISOのフイルムで良いのです。 逆にF値が半分になれば二倍の感度のフイルムを使えば良いのです。

 ではF値を固定してISOを二倍にしますと解放時間が約半分で済みます。 おおむねですが、ISO400の時10分必要なものがISO800では5分・ISO1600では2分30秒で済み、 ISO200に感度を下げると20分必要になります。

●周辺減光
 カメラレンズは中心付近は良く写るのですが、四隅が上手く写らないのですね。 そうしますと星が中心だけに密集した写真になってしまいます。

これはレンズを絞る(F値を増やす)ことで解決します。しかし上記の様にF値を増やすと 解放時間も増えてしまいます。ではフイルムの感度を上げれば良いのですが、 粒子の粗さが目立ちます。また空の明るさによっても変化しますので・・・・・・ このようなところが難しいのですね(--;

●単焦点レンズとズーム・レンズ
レンズはあるもので良いと思います。レンズはなにを主に撮るかで決めるのが良いでしょう。 旅行でしたら35-105ぐらいのズームレンズが使いやすいですしね。

ただ天文屋さんは単焦点レンズ(35mmとかですね)でなければだめと言う方が殆どです。 単焦点レンズにしましても、 カメラ屋さんに相談に行きますと「天体ってきくだけでギクッ」とするほど良いレンズはないのですね。 結局現在はソフトフォーカスが主流ですから、シャープなだけのレンズは殆ど無いのですね。

ま!取り敢えずは、今現在、持っているレンズで撮りましょう。 別に買うときは、試写した写真などが天体雑誌などで紹介されたり、 天文雑誌のコンテストに乗っている撮影データーなどを参考にして買うのが良いでしょうね。

●天の赤道
 天を見上げた天辺は「天頂」と言います。星は北極星を中心に周りますから、 そこから90度の地点が天の赤道になります。
●現像
 現像は専門の写真店などに頼みましょう。「星の写真」であることを言っておかないと、 真っ黒で何も写っていませんでしたと帰ってきてしまったり、 変な色に現像されてしまうことがあります。 「星の写真です」と言っておきましょう。


コーヒー・ブレイク

●暗い場所を求めて
 星の写真を撮るには見晴らしが良く、星の良く見える場所に行かないと、 良いものは撮れないのですね。でも夜ですし気を付けて下さいね。

 暴走族にあってバランスウエイト投げて撃退した(^^;とかとか聞きますし、 田舎の暗い道にいたので気が付かない車にひかれたとか良く聞きます。 行く場所はヨクヨク気を付けましょう。 それからガケから落ちないで下さいね(^^;


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