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(文責:岩本公夫)

私が門暾に”一目惚れ”したのは二年前の春節。北京の胡同(路地)をぶらぶら歩いていると一軒の四合院の門先で、西日を受けてキラキラと光る一対の石に目が釘付けになった。 「何やろか。えらいきれいやな。」近づいて触れてみると、まあるい太鼓の形をしていた。それが門暾と呼ばれるものだと知ったのは、半年後のことだった。以来、すっかり門暾に惚れ込んでしまい、私の留学生活は一変してしまった。もともとは、退職後の第二の人生をゆっくりと楽しもうと思い立った留学だった。北京語言文化大学で妻と一緒に書道や中国語を習いながら、外国暮らしを体験するつもりだった。ところが、気が付いてみると、朝から晩まで、うだるような夏の日も、零下の冬の日も、来る日も来る日も自転車で胡同をこぎ回る忙しさとなってしまった。”北京胡同詳図”を片手に、四合院を一軒一軒訪れ、そこに残る門暾の形や図案、保存状態を記録し、珍しいものや美しいものを写真に収めた。約二年がかりで、北京の旧市街の胡同をめぐり終えた。出会った門暾の数は六千組あまり、撮影した写真は四千枚にものぼった。



目次
  
  注:「門暾」の”暾”は、中国語では石片に敦と書くのが
    正しい漢字です。しかし、日本語にはない漢字です
    ので、このウェブページでは、便宜上”暾”と表記さ
    せていただきます。