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門暾の保存について(文責:岩本公夫)


ここ数年、北京では再開発や路面の拡張が急ピッチで進んでおり、四合院や胡同があちこちで取り壊されています。西単商場に近い胡同を訪れた時も、前日に目をつけておいた可憐な梅の花をあしらった門暾が瓦礫の下に埋もれていました。直ぐ横ではブルトーザーが大音響をたてて四合院を解体中で、歳月を刻んだ民族文化があっけなく消えてゆく寂しさに胸が痛みました。

そして「こりゃ、時間との戦いや。保存を急がな」とも。もちろん、開発の必要性や環境の整った近代的な高層住宅へ一刻も早く移り住みたい住民の気持ちも分かります。それでも残念な思いがします。このまま、消えてゆくに任せれば、北京の人々は後世に悔いを残しはしないだろうか?
それから私は毎朝六時に起きて胡同に通い詰めました。瓦礫の中から門暾を”救出”して持ち帰ったり、再開発予定地で住民に交渉して貴重な門暾を譲ってもらったり。留学先の大学も熱意に打たれ、運搬用のトラックを出してくれ、キャンパスの一角に”枕石園”として門暾の展示スペースを設けてくれました。コレクションは今では六十個を超えました。

還暦を過ぎた”日本老人”が北京の門暾を愛してやまない姿は少しばかり話題になり、中国のメディアでも何度か取り上げられ、胡同で中国の人々に声を掛けられることもたびたびありました。私のこの活動により少しでも多くの人が中国民族文化継承に興味をもってもらえることを希望するものです。

北京語言文化大学”枕石園” ”枕石園” 門暾 展示風景