門暾ってどんなもの?(文責:岩本公夫)
門暾は、四合院と呼ばれる北京の伝統的な住宅の正門の前に置かれた石材で、観音開きの門の扉を留め支えるものです。現在北京に残るのは、ほとんどが明や清の時代のものですが、古くははるか漢(紀元前206年〜西暦220年)にまで遡るといわれてます。刻まれた図案には人々の願いが託されており、例えばコウモリと銭をあしらった図案は”福在眼前”と呼ばれ、同じ諧音とかけた吉祥のデザインとして中国人に親しまれています。また、「文化大革命」中に傷つけられた門暾も少なくなく、現在に激動の時代の痕跡を残しています。
門暾の機能について
●建築部材としての機能●

門暾の基本的な構造は、中程に溝が切り込まれた長方形の石で門の外側に出る部分の上に鼓型・箱型またはその他の型の飾りが彫出されています。
柱と敷居が門枕石の溝にしっかりとはめ込まれることによって、門を構成する柱・鴨居・敷居が相互に噛み合い、壊さない限り外部からは離れ離れにならない様になっています。
門扉の回転軸は門枕石の内側になる部分にあけられた穴にはめられ、上部の軸は鴨居の内側に固定されます。こうした構造で重厚な門扉がスムースに開閉できる訳です。
●装飾品としての機能●

門暾のもう一つの機能として、装飾品としての機能があります。
門の上部に施される煉瓦の彫刻や絵と同じ様に家の主人の家柄や社会的地位を誇示するために、門の外側に出る部分には、表面全体に余す所なく、多種多様の吉祥模様が技巧の限り彫出されています。
彫出された図案には、長寿・富貴・邪気払い・招福・夫婦円満・子孫繁栄・家運隆盛・万事平安・などなど、当時の住人に願いが現されています。
代表的な門暾
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