5月20日

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サッカー
FIFAコンフェデレーションズカップ2001
日本代表発表
(東京・日本サッカー協会)

■コンフェデレーション杯
 日本代表メンバー
Pos.
 選手(所属)
GK
川口能活(横浜)
楢崎正剛(名古屋)
都築龍太(G大阪)*
DF
服部年宏(磐田)
上村健一(広島)
森岡隆三(清水)
波戸康広(横浜)
松田直樹(横浜)
中澤佑二(東京V)
中田浩二(鹿島)
MF
森島寛晃(C大阪)*
三浦淳宏(東京V)*
伊東輝悦(清水)
奥 大介(磐田)
中田英寿(ASローマ)
戸田和幸(清水)
明神智和(柏)
稲本潤一(G大阪)
小野伸二(浦和)*
FW
中山雅史(磐田)
西澤明訓(エスパニョール)
柳沢 敦(鹿島)*
高原直泰(磐田)
*印は代表に復帰した選手。
 サッカー日本代表トルシエ監督は、31日に始まるFIFAコンフェデレーションズカップ2001のメンバー23人を日本サッカー協会(東京都渋谷区)で発表した。
 4月25日のスペイン戦のメンバーに、新たに、都築龍太(G大阪)、森島寛晃(C大阪)、三浦淳宏(東京V)、小野伸二(浦和)、柳沢敦(鹿島)を加えた布陣で、右ひざを手術した名波浩(磐田)、故障で治療中の中村俊輔(横浜)はメンバーから外れた。またセリエAの終盤、優勝をかけた争いを展開しているASローマの中田英寿については「あくまでも日本代表の利益を優先させる」と、ローマの優勝争いに関わらず、中田を日程中は拘束する方針を示した。
 代表は22日からトーレーニングキャンプを行い、27日に再集合。31日のカナダ戦(新潟)に備える。また服部年宏ら磐田のメンバー4人は、アジアクラブ選手権のために22日からソウルに遠征し、新潟から合流することになっている。

会見前のトルシエ代表監督のコメント
「すでにお伝えしている通り、我々は今、アジアを出ていくという新しい段階に入っている。スペイン戦では、チームとしても戦術としても、どれだけ世界に順応できるかという答えが出たと思う。それだけに、ちょうどいいときにこの大会を迎えることができる。攻撃へのアクションに入る時期が来たということだ。
 どの国の監督も、この大会を大きなラボとして考えていることがわかる。W杯に向けては、これが最後のチャンスになる選手もいる。激しい戦いになるだろう」


    一問一答(要旨抜粋):

──今回の代表選考のポイントはどこにあるか。スペインの際にはディフェンシブに、ということだったが

監督 ディフェンシブに戦う、ということに混乱があった。わかってほしいのは、対戦相手がいて、その対戦相手に対してどういった戦術を組むのかということである。みなさんだって、台風が来る、となれば雨戸を閉めるでしょう。私だって本当は雨戸を閉めたくなんかなかった(雨戸を閉める=DFを固める、か)。ただ、ボールが足元にない、自分たちの主張にない場合は、やらざるを得ない。誰だって攻撃的なサッカーをしたいでしょうが。問題は、選手の経験にある。どうか、稲本をミュンヘンに、どうか伊東をバルセロナに、どうか高原をアーセナルに、そして松田をマンチェスター、森岡をモナコに行かせてやってほしい。つまり経験が不足している。サッカーは、きょうは守備的、あすは攻撃的、という話で済むものではない、記者だって、みな試合を見ながら、誰が誰より優れているといったことをメモするだろう。監督の務めも同じで、12−0の試合をするわけにはいかない。と同時に、私が魔法の杖を持っているわけではないということもわかってほしい。

──選手選考について伺っているんですが

監督 特にびっくり仰天することはないだろう。柳沢が入っているといっても、彼も何度もこれまでやっている選手だ。監督はたった2日の練習でハーモニーを生まなければならないのだ。

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──西野監督、岡田監督も守備を重視した形で戦ってきた。監督のそれはどう違うのか

監督 なぜコーチングの問題だとばかり言うのか。ベンゲルでもアルディレスでもいい、なぜ責任や問題が常に監督のコーチングだけにあり、選手の問題だとは考えないのか。例えば、カナダのリストを見ると、90%がイングランド、スコットランドの強豪でプレーしている選手ばかり、あの国にはピッチなどないにもかかわらず、だ(環境がないのに、海外で経験を積んでいるということ)。選手の経験が足りないのだ。日本がクロアチアと、アルゼンチンと戦ったとき、日本はボール占有率でもシュートも上回っていた。これは、明らかに岡田監督のお陰であり、問題は個人の成熟度、決定力が足りない点なのだ。たとえ3部でもいい、2年間でもスコットランドやイングランドのリーグで経験をしてほしい。

──質問の答えになっていませんが

監督 これから答えを言おう。要するに、こうしたレベルに達していない、経験のない選手をコーチするには、すばらしい監督が必要なのだ、ぼくみたいにね。
 スペイン戦は、私にとっては超ポジティブな戦いで、みなさんにとってはネガティブなものだったのかもしれない。しかし、私たちには再び建て直しができるきっかけをつかむために非常にいい戦いだったし、じゃあ攻撃はどうするのだということを考えるためにも、このコンフェデレーションズカップは本当にいい機会になる。本当に強くなるための代償を今支払っているということだ。

    会見は、質問に答えるというものではなく、監督が自分の言いたいことだけを話すという恰好になった。
    ここから監督が記者たちに、「スペイン戦は誰の責任で敗れたと思うか」という逆質問で展開。「教えてほしい?」「皆さんが誰、と言わないならば教えてあげない」「だいたい頭に名前が浮かんでいますか」などといったどうでもいいやり取りになり、その結果、監督が話し始めた。

監督 スペイン戦の責任すべてがその人にあるわけではないが、選手の態度にある。まるで8歳の子供みたいに振る舞い、英雄気取りをした。自己満足をした結果だ。誰か名前はわかりますか?そう、上村なんです。彼は両足をケガしたみたいな恰好で、5分と(ロスタイム表示が)出たあとにピッチを去った。男として歯を食いしばるということ、最後まで責任を果たすということができなかった。彼は(帰国して)2日後にはJリーグに出ていて、スペイン戦を満足だったと話している。こうした選手は日本代表を務める資質がないし、選手にもそう話した。こういう態度の結果が、日本の敗戦になったわけで、スペインには、最後までがんばれない選手がいるということを教えてくれたのだから感謝したい。この話、(みなさん)書きますか?書かないでね。

──中田選手の処遇はどうするのか

監督 それは岡野会長と話をしなければ。岡野会長が、もし私をローマのクラブ利益を守るために雇ったというのなら、中田を決勝トーナメントに入ったら(ローマの最終ゲーム6月10日にかかる)セリエに戻さねばならない。でも日本サッカー界の利益を守るために雇ったというのなら、日本最高のチームを作らねばならない。


「8歳の子供とは誰のことか」

 上村がスペイン戦敗戦の要因だった、と監督自らが批判をした、あるいは責任をなすりつけた、と、文字だけならばそうセンセーショナルに伝えることができる。
 しかし現場にいただけに、その雰囲気やニュアンス、記者たちの様子などを総合して文字にしなければならない。何よりも、「こういう選手には代表を務める資質がない」とまで言ったその上村を代表に選んだ以上、上村の話自体が、いつものように昂揚した結果の不思議なたとえであったり、支離滅裂な会話を、さらに日本語に「正確に」訳そうとする努力ゆえに混乱を招いているのだと考えるほうがいい。まだトルシエ代表においては「新人」の上村がこの重要な大会の代表に選ばれているのだから、すでに終わった話であり、監督がスペイン戦でのテストをいかに高く評価したかの裏返しだとも取れる。「男として歯を食いしばらなかった」との話も「トルシエ流激辛の励まし」であることは明白だ。
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 今年2月、今年最初の代表合宿で、「男に必要なのはガッツと脳みそ」と明かした選手像とも重なる延長にある話だろう。

 この日の会見は、スペイン戦後、さまざまな報道から非常に気分を害しているといわれる監督には、最初からあまり居心地のいいものではなかったのだろう。名波、中村を欠くことも察することはできる。
記者から何度か「質問の内容とは違うのでは」とただされても、コンフェデレーションズカップの戦い方や、W杯への準備として、といった質問はすべて反古にし、持論を展開した恰好である。
「会見」自体の収穫も目玉もない。
 新たな発見があるとすれば、監督が決勝トーナメントに進出してもセリエ最終節(6月10日)に中田を帰すつもりはないということと、監督が、Jリーグでプレーすることよりも、スコットランドの3部でプレーすることのほうが「経験を積むために価値がある」と明らかにしたことだった。



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