懐古趣味音源ガイド    其拾七

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257 jyake01 1969

Magic brother/Gong

一般にゴング(Mother Gongですかね)の最も古いものといわれているが真偽は定かではない。あまり見かけないけれどCDはリマスターされていて随分音が良いらしい。サイケ・ポップにジャズっぽい要素が大幅に導入された初期は何でもありのユーモラスな素人っぽさが売りですが、全盛期の要素は既に見え隠れしています。ウィスパーボイス(ジリ・スミスのあは~ん声)も聞こえるし、デヴィッド・アレンのアイディア自体はあまり変っていなくて廻りを固める人間がハイテク、プロ化していった帰結が電波妖精三部作という頂点だったのかもしれない。スーパー馬鹿テク・スペイシー・疾走サウンドではないけれど、既にこの時点でやっぱりゴングとしかいえない音楽にはなっている。

258 jyake02 1973

Utopia/Amon düül II

正確にはユートピア(Utopia)というAD2にエンブリョやアシュラ等のゲストをたくさん加えたユニットによるものか、或いはその逆らしい。AD2のプロデューサであるオラフ・キュプラー(Olaf Kübler)とローター・マイト(Lothar Meid)が音頭をとったスタジオ・プロジェクトともいわれているらしいが、詳しいことはよくわからん。これは再発リマスターCDですが当時のLPはUtopia名義で出ていた気がする(Amon Düül IIのクレジットはまったく無かった)。オリジナルは『Wolfcity』とほぼ同時期の録音のようで同じ曲の別テイクバージョンもある。盆踊りみたいのもあるしなぁ。「ナシ・ゴレン」は焼飯、「ミー・ゴレン」ちゅうのは東南アジアのヤキソバじゃん。ちなみに焼鳥はサティだな。もしかしたらリマスターの時にいじってるのか? うーん、1970年代とは思えない音も混じっている。一応この後(前?)『Vive la trance』を出してUAレーベルから移籍するので国内盤は途絶えた記憶がある。

259 jyake03 1990

Manscape/Wire

すっかりマシンと化したワイアですが、上手いところはかえってとろんとしたかったるさが前面に押し出されてきたところ。言ってることとやってることが逆だろというのが相変わらずインテリの証し。構造主義ポストパンクの一つの帰結ではあろう。何故ワイアが面白いと思ったのか自分でも不思議であるが、壊れていく感覚が快感なのかもしれない。馬鹿みたい(じゃなくて正確には真性馬鹿)に浮かれていた時代のなかで、いろんなものがガタガタと壊れていく(正確には後先考えずに壊していく)のを目の当たりにして、そんな状況に酷似している。そのあはれさ。

260 jyake04
Elektra/Rhino
R2 73792
1974

Relayer/Yes

ウェイクマン(Rick Wakeman)が抜けてモラーツ(Patrick Moraz)に代わった。最近どこかのWebで知ったのだけれど、ブラック・サバスの5作目『Sabbath Bloody Sabbath』でキーボード弾いているのはこのウェイクマンだそうで、なんともびっくり。で、モラーツも巧いのだけれど、さっさと辞めちゃったところをみてもイエスは性に合わなかったのだろう、南国人だから、と勘違いしたのはヴァンゲリスのことで、モラーツさんはスイス人だそうです。う~む、ドイツ系にもフランス系にも見えないのですが、ロマンシュ系なのかな。

この『Relayer』、世評は知らないが、個人的には『Close to the edge』と同じくらい好きです。音が分厚くてダイナミックレンジの狭いアナログ録音のLPでは聴きがたい部分もありますが、特にA面「The gate of derilium(錯乱の門)」、ものすごい緊張感と硬質美と透明度に満ちあふれた音が繰り広げられています。最後の「Soon ~」もリリカルで好みであるか。おかげ? で次作をまったく憶えていなくて、私にとってのイエスはここで終わりました。チーン、合掌。

バナナの叩き売りのような値段でライノ(Rhino records)のリマスターが売っておったので、おまけが魅力的だった『Close to the edge』、『Going for the one』と合わせて購入してみました。アナログも決して悪いわけではないけれど、確かにクリアで分解能が上がってます。ボーナスは「Soon」と「Sound chaser」のシングル・バージョンにメインの「Gate~」のスタジオ・デモテイク。なかなか興味深い。

261 jyake05
日本コロムビア
COCY-4561
1991

Blood/This Mortal Coil

3作目ですが出す度に地味になっていくという不思議なプロジェクトです。これでお終いという話はどこかで聞いた事があるけれど、その後本当に終わったのかどうかは確認してません。前2作とはかなり間が空いていて、耽美の極致は相変わらずですがタイトルとは裏腹にすごく冷やっこい。かつての夢心地は痛々しいまでの切れの良さで被われて冷たく冴えた光を放っています。社長Ivo+エンジニアFryerという基本線は変わっていないのだけれど時間が流れたということか。

262 jyake06
A&M
CD-3647
1974

Crime of the century/Supertramp

スーパートランプの名を一部に知らしめた出世作にして最高作の三作目。重くもなくて軽くもなくて、なかなか好感度が高くて素直に受け入れられる端正な楽曲の数々。子供の頃はけっこう人気があって、レコードを貸すとあちこち巡ってなかなか戻ってこなかった。ちょっと真面目な女の子たちにも受けていた。しっかりとしたリズムの上を端正で清々しいグランドピアノが駆けていくところとか、ワウの掛ったフェンダーローズの刻むリフがめちゃくちゃ格好良かったんだよなぁ。変化に富んだ展開とリリカルなメロディ、しつこくないブルーズ基調のリズムと売れなかったけれども売れ線の条件もクリアしていただろう。暗くて重いのが先端の時代だったから、ズッポリと嵌っていた因習から開放されたような底抜けの解放感が爽快だ。明るくて綺麗でちょっと懐かしい。

263 jyake07 1994

Blessing in disguise/Annie Haslam's Renaissance

ルネサンス(Renaissance)自体は実質的に80年代前半で終わっているからこれはやはりハズラムのソロだろう。第2期ルネサンスは結局のところダンフォードとタウトだったと思うので、これらの楽曲にかつてのイメージはない。過去の名前を拠り所に無駄な足掻きをしているともとれる。いろいろな人をかき集めてやってるようで散漫な印象が否めないのですが、あのソプラノボイスの方はあまり変わりません。それなりに年齢も重なってしまって、昔のようなちょっと乗り乗りの威勢の良いところは影を顰めて、ひたすら穏やかに味わいで攻めて来るようです。

264 jyake08 1968

A saucerful of secrets/Pink Floyd

シド・バレット(Syd Barrett)が病院行きになってサイケ色の薄れた2枚目。ビートルズの『マジカル・ミステリ』『サージェント・ペパーズ』あたりからの影響は否定できないが、個人的にこの時期のものは先見性という意味でもっと評価されても良いように思う。ライトの小品も独特のほの暗さにセンスが凝縮されているし、タイトル曲でもある「神秘(邦題)」はいろいろな意味で後(といっても75年くらいまで)のクラシックでもショウビジネスでもない音楽のデファクト・スタンダードを作ったと思う。上手くはないし、はっきり言って稚拙だけれど混沌を通り抜けて微かに始まる第三楽章の教会オルガンにはやっぱり人間なら感動してしまう“何か”が込められているのだろう。実はポンペイ・ライブのギルモアの無骨なコーラスにはもっと感激したけれども。

265 jyake09 1980

Vu d'un chien/Ange

70年代後半くらいに一旦分解したような気もするが、その後、再編されたばかりの、これが多分オリジナル・アンジュとしてはおそらく最後のアンジュらしいアンジュだろう。シニカルで演劇的な緊張感と不思議な音色のキーボードは健在です。都会的なセンスと華麗さで聞かせるというよりは、もともと無骨で保守的なフランス田舎農民風の力強さが特質でもありアンジュのアンジュたる所以でもある。トータルな“物語もの”じゃないようだし、ねちっこさが少し薄れたかなという気もするけれど、聴き込めば聴き込むほどに味が出る円熟味はさすがです。一時、ガタガタだったけれど、90年代以降はデカン(Christian Decamps)を中心にまた復活してコンスタントに新作も出ているようです。

266 jyake10 1973

Future days/Can

喩えは悪いかもしれないが正に“幽玄”。そっち方面(伝統芸能)の人が聞いたら怒るかもしれないが、間違いなくカンの到達点であり頂点でしょう。特に冒頭「Future days」におけるダモ鈴木のボーカル?(呟き)は絶品。いや、巧いというわけではなくて、頼りないというか物悲しいというか。絶妙な浮遊感とノイズの狭間に未来がほんの一瞬垣間見えるような気がする。(した。) いわゆるメロディだのリズムじゃないんだが、こう、音そのものがリズムなのだろう。ノイズの塊が幽かにリズムに変容していく様は恍惚的に美しい。かつてない音です。

267 jyake11 1978

Cuentos de Ayer y de Hoy/Ñu

エスパーニャものは総じて土臭いのだがÑuもなかなか。Nの上には“~”が付きますです。だから「ぬ」じゃなくて「にゅ」ですね。ヴァイオリンと笛が特徴ですが、もちろんクラシック趣味ではなくてどさ回りの旅芸人といった趣が濃厚です。カスティーリャ風というの? まぁ、闘牛風正統派エスパーニャというか村のお祭り風ハードロックです。もっともこそっとメロトロンが聞こえたり民族派プログという気もしないではないが、お国柄か、哀愁だけれどとても乾いた曲調。中ジャケの写真は皆さんドン・キホーテみたいな衣装でめかしこんで田舎道で馬車に乗っているのですが、いやはや絵は体を表すといった雰囲気で良いぞ。

268 jyake12 1982

Back to front/Caravan

80年代ものということで期待しないで買った記憶がある。ところがどっこい、ほとんど同窓会のノリで、これ1枚を作るためだけに関係者は全員集合といったところでしょうか、10年越しの集大成のような素晴らしい出来です。まぁ、彼等にしてみれば楽団の名前などというものはレコードを出すための方便みたいなものだから、結局のところクレジットされてる名前こそが大事なのだろう。Caravanとしては不遇の時代の1枚ですが、忘れた頃に今でもぽつぽつと過去の焼き直しがリリースされています。カンタベリィ系というのは結局レコードではなくてライブなのだろう。それも大会場のコンサートではなくて小さなパブやクラブでのギグ。聴きに来ている客は飲みに来てもいる(ミドルクラスの)大人なのだろう。最近ようやくわかったというか、もっぱらそんな感じがしてます。

269 jyake13 1970

Paranoid/Black Sabbath

サバスの2枚目。延々と続くずるずるっとしたサイケ・ブルーズ色が薄れてカチッとしたアレンジ重視のコンパクトな曲調にまとまった。アルバムタイトル曲の「Paranoid」はけっこうヒットしたらしい。黒魔術風のかなりダークな外面というか演出はあまり変っていないけれど、非常に明解かつメロディアス、バランスの取れた構成にちょっとびっくりした憶えがあります。「Planet caravan」のような風変わりで音響的な方向性にも興味を引かれた。サバスに関してはあちこちで書いているけど、如何にもといった雰囲気の隠しても隠し切れないドン臭さが昔から大好きで、このあたりからB級日陰者の燻し銀の道が始る。

270 jyake14 1982

Andalucia/Medina Azahara

メディナ・アサアラ三作目。エスパーニャ特有の哀愁と叙情に満ち溢れたプログ・ハード。同郷のトリアナ(Triana)に比べるとねちっこさは薄く、演歌調の節回しは比較的乾いてサラッとはしているけれど、やっぱり紛れもない南部アンダルシアの音。トリアナほど土俗的ではないというべきか、リズムがドタドタしていなくて、ジャズ・フュージョンの軽快さを狙っているのだろうが、甲高くて細めのボーカルと泣きのギターがあくまで風土を表す。でろでろ演歌でありながらスピード感あふれる軽妙さみたいな部分が南欧ラテンものの中でもかなり気に入っています。アナログ・ミニムーグの音が今となってはなかなか印象的か。最近は少し重めになって、今でも新作レコードが出てるらしいのですが、安価に入手するのがなかなか難しくて各所を捜索中。

ジャケットは穴明きでインナーの色が見える仕掛け。表は赤一色で写真は裏。少しずらしてスキャンしたもの。

271 jyake15 1974

Intorno alla mia cattiva educazione/Alusa Fallax

詳細不明。アルーザ・ファラクスの唯一作。フルートと少し土臭いどら声が印象的。かなり細部まで手の入った丁寧な作りですが、当時のイタリアもののレベルを考えるとあまり目立たない。小奇麗にまとまり過ぎてインパクトに欠けると取るか、精緻で正統的、ノーブルなアレンジとアンサンブルを称賛するかで評価は分かれそう。繊細で端正な音使いと極めてリリカルな展開は実にイタリア的でそれ以外の何者でもない。特にLP A面のシンセ・アンサンブルやフルートが奏でるメロディは絶品。ボーカルがあまり前に出てこないで全体的にバランス良くまとまっているという意味では、情熱カントになってしまうその他幾百とは違うといえば違うだろう。トータルアルバムですが構成力に優れたクラシックといった雰囲気で品良く、さりげなく、かわいらしく聴かせます。

272 jyake16 2000

the construKction of light/King Crimson

すっかりアメリカン・ヘビメタ楽団になってしまったクリムゾン。変われば変わるもの。個人的には買わないから(これは弟の)どうでもよいのだが、もう止めた方がいいんじゃないのかな、と出るたびに思う。中身については既に言及する意欲が持てないが、今回の内容で一番不満なのはパーカッションがダサいこと。こういう如何にもロック風のリズム隊が恰好良いんですかねぇ、最近は。売れ線音楽の予定調和的、お約束の形骸リズムには心底がっくりきたわ。変なアメリカ人? なぞ使わないでいっそのこと機械でやった方がいいんじゃないの? 特に(人気、すなわち集金能力を維持するために)昔の曲のニュー・バージョン(xxx part4とか)をやるならば。新に信者になった人は別としても、昔を知っている人しかCD買わないような気もするしなぁ。ビル・ブルフォードはギャラが高い? から使えないのか、合わないから使わないのかどうだか知らないが、フリップ御大はすっかりビジネスに走っております。もちろんそれはそれでかまわないので収益増に邁進してください。歴史を作ってしまうと何をしても叩かれてしまうのは気の毒ですが。

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最終更新日 2003/12/01