懐古趣味音源ガイド    其拾四

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209 jyake01 1992

Anime pigre/Matia bazar

おねえさんが駆け落ちしちゃって、しょげていた残りの4人は商売にならないんで美人の歌えるおねえさんを探し出しました。今度のおねえさんは前のおねえさんのようなコケティッシュなキャピキャピ感はありませんが、結構渋めの声が決まっている美人さんです。本当は残りのおじさん4人も実は渋々なんで視覚的にも聴覚的にもセンスばっちしです。こんなカッコイイおじさん達もマカロニ食ってるんだと思うとちょっとおかしいです。おしまい。ちなみにMatia Bazar(マティア・バザール)とは「朝市」という意味らしいですが、息長く今でもやっております。一人死亡で、おねえさんはまた別人とのこと。

210 jyake02 1977

Garden shed/England

国内の再発盤ですがLPをCD化しているようでノイズには閉口(2005年にマスターから再リマスターされたまともなものがリリースされたようです)。うちでリマスターした方がもうちっとましだ。70年代前半のジェネシスのドラムをビル・ブラにしたような感じ、などといっては怒られてしまいますね。これしかない(発掘2ndがあるらしい)ようだからよくわからんけれど、シンフォ・プログとしては思いの他世評が高くて自分の感性を疑ってしまう。最初からノスタルジィ狙いというわけではないとは思うが線の細さが全盛パンク時代の日陰者という感触で形骸化した残骸の印象は否めないと思うのだが。こういったものが何故名盤として奉り上げられるのか不思議でしょうがない。経緯は知らないが、ジャケは“ラベル”すなわち“これ”のパロディと思われます。

211 jyake03 1986

Black celebration/Depeche Mode

ちょっとドイツゴシックっぽい雰囲気。特に後半暗いです。エレ・ポップ路線もすっかり行き詰まりかなり自家中毒気味ですが、このあたりが変曲点で以前と以後では雰囲気が変わります。たぶん繊細さが取柄だと思うから、路線で悩んでるこの辺は実は結構好みですね。このちょっと湿っぽくて夜っぽい密やかな雰囲気とかったるそうな頽廃感がゆるゆると忍び寄って来るところが真骨頂。ちょうどこの頃、プロモ・ビデオの全盛期でMTVなんぞでは常連だった気がするが、あまり売れはしなかったようだ。

212 jyake04 1969

Electronic meditation/Tangerine Dream

おや、クラウス・シュルツェがドラム叩いてるよ。コニー・シュニッツラーってコンラート・シュニッツラーとは別人?(じゃないそうです、やっぱり)。後に一つの時代の中でそれなりの領域を作ることになるタンジェリン・ドリームのデビュー盤です。前述の二人に加え、エドガー・フローゼ(Edgar Froese)なる元ギター奏者によるトリオ。まだまだエレクトロニクスの時代ではないからいろいろと苦労の跡が散見される。次作『アルファ・ケンタウリ』の片鱗は既に見えていると言ってよいとは思うが、もう少しシンセサイザの類いが進歩しないと苦しい。どれもピンク・フロイドの『神秘』みたいに聴こえてしまうというわけでした。

213 jyake05 1971

Tanz der Lemminge/Amon Düül II

きゃぁきゃぁ。いやはや、自分なりにデジタルリマスタしてCDにして聴いたりすると、なかなか感慨深いものがあります。IIとしては三作目ですが一気に完成度上がってます。前作に続き二枚組ですが、1枚目の2曲の混沌とした崩壊感覚にはもの悲しさすら感じさせる。一方、2枚目はお約束のインプロで、決して巧くはないけれど、この妙ちきりんで無国籍なオリジナリティは今でもまったく色褪せてないと思うのです。現代ほど価値観が画一化(=グローバリズム)されてなかったということなんだろうけどね。作る人がいたとしても受け入れる素地がないんだよな、もはや。

214 jyake06 1991

Spilit seconds/Phil Miller

カンタベリィのジャズ・ギター奏者フィル・ミラーのソロ・アルバム。自ら主宰するイン・カフーツ(IN CAHOOTS)ものに加え、Stewart+Gaskinものも含まれているよう。もともとカンタベリ系ではキーボードか管楽器があればギターなくてもいいんじゃない? みたいなところがあるから、この人はそれなりに貴重な人なのでしょう。ハットフィールズ(Hatfields & the North(Healthだったか?))の頃から、なかなか類型的でない弾き方をする人ですが、やっぱりディーン(Elton Dean)の木管楽器の方が目立って前に出てくるのだなぁ。

215 jyake07
CHAPA HS-35021
1979

Si todo hiciera Crack/Crack

ロック・エスパニョルを3連発。北西部アストゥリアスの港湾都市ヒホン(Gijón)出身のクラック、唯一のアルバム。微妙に薄い(けれどもやはり抜き難い程度の)スペイン風土色はやはり土地柄ということなのだろう。アストゥリアスは8世紀にベネディクト派修道院が建立され、レコンキスタの砦として機能し、ガリシアの聖地サンティアゴ・デ・コンポステラへの巡礼路でもあった根っからのキリスト教国であるが、大航海時代は海外植民地との交易、後には英仏との交易で発展した地域であるが故、典型的なカステーリャ色は薄いように感じる。正規構成員は男5人組、ほぼ全編、かなり壷に嵌る蕩けそうな女声はCani(カニと呼ぶのだろうな)というゲストのようだ。

スペイン語ゆえ意図不明な部分が多いが、一応トータル・アルバム風の作りにはなっているよう。

A1:Descenso en el Mahëllstrong マヒェルストロンクへの降下
A2:Amantes de la irrealidad 虚構を愛して(非現実の愛人)
A3:Cobarde o desertor 臆病者と遁走者
A4:Buenos deseos 善意
B1,2:Marchando una del Cid(Parte 1,2) シドの行進
B3:Si todo hiciera Crack もしすべてが砕けたならば…
B4:Epílogo 終章

歌唱法はロック音楽というよりはラテン土着民謡らしい朗々とした響き、言語は標準的なエスパニョル。フルートとピアノの魔力、アコギとメロトロンの呪術。滴るほどにリリカルで多彩な展開と男女ボスの豊かな表現力、かちっとした構成力、テクニカルな演奏力で最後まで一気に聴かせるみたいなところはスペインものにしてはかなり珍しい。“Crack”はスペイン語だとコカインの一種、あるいは優れたサッカー選手を意味するようだが、複数の海外サイトでは英語として解釈しているようなのでそれに倣いました。

216 jyake08
CHAPA
HS-35105
1979

Exprime la naranja/Borne

スペインのジャズ・フュージョン楽団、ボルネ唯一のアルバムと思われる。全曲インスト、一部スキャット入り。詳細はほぼ不明ですが、おそらくバルセロナ出身のギター、ベース、鍵盤、ドラムのオーソドックスな四人組。楽団名はバルセロナの地区名をそのまま流用したものと思われる。軽快で洒脱、民俗色は薄めながらも要所ではきちんと主張するハイテク南国フュージョン。疾走するリズム隊の上を超絶だが控え目なトーンの鍵盤とギターが交互に駆け抜ける。エレピ、ストリングズ・シンセを主体にした鍵盤と弾きまくるギターのメロディの交錯が聴きどころ。それなりに神秘的で叙情的なメロディもカタルーニャの哀歓をさらりと表現していて気持ち良い。タイトルは『オレンジを絞れ』。スリーブもオレンジとオレンジジュースがモチーフになっているようだ。根っこの部分にゴティック(Gotic)と同じ気質が感じられる。

217 jyake09 1978

Valle del pas/Granada

グラナダというからにはグラナダなのだろうか? スペイン南部アンダルシアの小都市グラナダといえばアルハンブラ宮殿ですか。イスラム王朝時代の名建築で中庭の水路と噴水は絶品を越えたもの。

のはずなのだが、ちっともアンダルシアの匂いがしないカルロス・カルカモ(Carlos Carcamo)なるオジサンのワンマン・プロジェクトであるグラナダの三作目にしてラスト。全曲インスト、あまり風土色の強くないリズムの輪郭がはっきりした楽曲が特徴。仰々しさはないが突然生オケが入ったりしてコストと意欲は掛かっていそうだ。ジャズ・ロック基調の軽やかな展開が主調ですが、ギター、鍵盤、オケ、バグパイプが入れ替り立ち代りアンサンブルの粋を尽くすが如く目まぐるしく展開しております。微妙な民族色はカステーリャというよりは北部スペインからバスクの匂いが濃厚でケルト色すら感じられるもの。全編を通して流れるバグパイプの音が妙に醒めていて印象的です。タイトルはカタルーニャ語か北部方言か? pas→pazで標準スペイン語にすれば『安息(平和)の谷』という意だが。

218 jyake10
EG/Polydor
28MM0430
1985

Boys and girls/Bryan Ferry

う~ん、夏ですね。深い青ですね。音の良さはロクシー時代に更に磨きが掛かってます。非常に粒立ちが良い音。まったく知らんぷりしてさりげないけれど、スタジオテクニックというか録音技術に徹底的にこだわった職人芸を堪能できます。冒頭「Sensation」のイントロの格好良さは『Avalon』と甲乙つけ難い。タイトで先鋭的に切れ込んでくるリズムと夜の香気を漂わせたメロディが紡ぎだした一つの時代を表象するポップスであった。標高2000mの狂いそうな満天の星空の下で、ゾクゾクするほどの刺激に満ちあふれた越えてはならぬギリギリの感覚みたいなもの。個人的には最近のものより好みだな、まさに夢幻。

219 jyake11 1972

Ege Bamyasi/Can

まずそうな缶詰だな。オクラのようです。次の『Future days』と合わせてほぼ絶頂期といってよいと思うのだが、後世に与えた影響は計り知れなかったりするのである。Amon Düül IIのその場限り的な一発勝負の煌めきに対し、カンは無造作を装うが非常に理知的に考え抜かれたリズムと構成で攻めてくる。歌わないボーカリスト、ダモ鈴木を起用したこともきちんと計算されている。

220 jyake12 1998

Sonic boom killers/Hawkwind

ベスト・シングル集+アルバム未収録のB面集のようだ。徹頭徹尾、B級を貫き通したのは見事であるぜよ。5分の曲でも平気で50分ぐらい延々とやりかねないとこがおもしろいんだが、これは短い曲の集まりなんだな。フェーズのかかった単調なリフを延々繰り返すことで、あの絶妙な無為感を創り出すわけだから、短い曲だと結構いろいろ大変だったりして。

221 jyake13 1985

Steve McQueen/Prefab Sprout

「Appetite」のようなちょっと霧がかかったようなセンス溢れる曲もとても素晴らしいのだけど、やはり地味なフォーク・ソングも良い。いろいろな意味でとてもくせのあるユニットですが、最近はすっかり隠遁してるようです。実に非凡な曲作りの才能を持ちながら、レコードを出すより家で本読んでる方が良いらしい。

222 jyake14
東芝音楽工業
OP 80165
1969

Soundtrack from the film "MORE"/Pink Floyd

三作目はサウンド・トラック。バーベット・シュローダーのルクセンブルク映画『モア』の音楽に全面的に抜擢されたもの。映画はエステルという小悪魔のような女にのめり込んでゆく真面目なドイツ青年の悲劇をスペイン、バレアレス諸島(正確にはピチウセス諸島だな)のイビサ島の溢れんばかりの陽光と阿片の香気の下に描いたもの。白光の下に惜しげもなく肢体を晒しまくるエステルは子供心に刺激が極めて強かった。今考えるとこの映画は自分の深層心理にけっこうな影響を及ぼしているのではないかなどと思ってみたりもする。

前作『神秘』には色濃く感じられた奇態なシド・バレット色をほぼ払拭し、トラッド・フォークとミュージック・コンクレートを中心に再構成したもの。製作時間やサウンド・トラックとしての制約もあろうが音密度の最も薄いアルバムでもある。エキセントリックながらもセンスある作曲家を失ったせいか楽曲は一気に単調かつ保守的なものになったが、叙情的で耳に残る聴き易いメロディに変化している。SEと深いリバーブが掛かっていくオルガンの音色が空疎な虚無感を演出する「Cirrus Minor」、牧歌的でほのぼのとした「Green is the colour」、切ない心情と恍惚の高みに登りつめる「Cymbaline」などボーカル・ナンバーは特に印象的です。

223 jyake15 1995

The mirror pool/Lisa Gerrard

90年代に入って既にデュオとしては存在意義のなくなったデッド・カン・ダンスのコンポーザ兼ボーカルのソロ一作目。オーストラリアの開拓農民丸出しのペリーに比して、リザ・ジェラルドがDCDの中世趣味を担っていたらしいことがよくわかる内容。まぁ、綺麗っちゅうか暗いっちゅうか。暗鬱とは無縁な明晰な澄み切った暗さが溢れんばかりの楽曲の数々。いや、例えば敬虔な穏やかさと言い換えることもできようが、読経のようなフラットな歌い方と既成の楽曲の構成にとらわれない曲作りがどうしようもなく異端にして異様です。その醸し出すなんともいえない重みと儚き空気感は周囲を闇の帳に包み込み、あらゆる英知を奪い去る蒙昧とした死そのもののイメージに他ならない。

224 jyake16
Virgin
7243 8 49383 2 1
1987

Islands/Mike Oldfield

10作目のスタジオ録音ソロ・アルバム。これは再発HDCD仕様のリマスター。昔のCDもどこかにあるはずなのだが聴き比べたわけではないので、どのくらい音質向上しているかは不詳である。前半は時節柄打ち込みが導入された20分越えの大作。残念ながら長曲の構成力に欠けるところは相変わらず。後半が女性歌手を起用した歌物小品。白砂に囲まれた緑の小島は枯枝のように漂白され、切断された手首が堆積する海に浮かぶ呪いの島か? この人のコンセプトはどうも感覚的過ぎて理解し難い。

おや、この「Flying start」のかったるそうな声はかつての師匠ケヴィン・エヤーズ(Kevin Ayers)おじさんですね。曲調までがすっかり地中海風になっておりまする。PVでは86年の「Latour」を飲みながらデュエットしておりました。エヤーズおじさんが歌ってるのは一曲だけのようですが、他の曲も結構リラックスしていない? 内側に向けて崩壊していくような緊張感に代わってゆったりと外に向かって拡散してしていく清々しさですか。季節的にはぴったり。

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最終更新日 2005/08/22