懐古趣味音源ガイド    其拾弐

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177 jyake01 1983

Script of the bridge/The Chameleons

フェルト(Felt)と並ぶ代表的な80年代ネオ・サイケの一つにしてギター・ポップの雄、カメレオンズの1stアルバム。音像すべてにちょっと霞がかかっているような柔らかでちょっと華やかな奥ゆかしさ。アンサンブルはシンプルでリズムも時代なりにタイトですが、リバーブとエコーのかかったツイン・ギターが粗削りながらも不思議な郷愁を誘う。前に出てこないで常に奥の方から漂うように聞こえてくる。1stアルバムだと思われますが、既に独特な世界ができあがっているのはなかなか。

178 jyake02 1975

Free hand/Gentle Giant

最近流行ってるのか70年代風の音楽をよく聞きますが、ジェントル・ジャイアント風というのには何故かお目にかかれない。当時先進的と思っていたものは今、古色蒼然たることが多いが、ジェントル・ジャイアントは古臭く聞こえないのが不思議だ。複雑怪奇なメロディとリズム、捻くり回した構成と展開で既存の常識を完膚なまでに叩き壊した驚異的に人工的な音が特徴で、多分メロディやリズムを越えたとこで成り立っている音楽なのでしょう。敢えて抒情性とグルーブ感を拒否したような理性的過ぎるところが災いして当時も今もまったく受けなかったですが、中身はほとんど神技的。今でも心底「斬新」と云える奇跡の一つ。

179 jyake03
Virgin
CDV 2751
1994

Mamouna/Bryan Ferry

現代の洗練と優雅と繊細。というのは表向き、実は凄い苦労性というか完全主義者と思われる。この隅々まで完璧にコントロールされた音。足すことも引くこともできない(大山崎みたい)。何作目のソロかは忘れたがすべてオリジナル曲によるもの。ほとんどすべての曲にイーノ(Brian Eno)が関わっているのが目を引く。確執は解消したんでしょうか。そういえばマンザネラやマッケイの名前も見えるなぁ。プロデュースはフェリィ自身と名前ぐらいは知っているギター奏者のロビン・トロワー(Robin Trower)。相変わらず趣味が良いのか悪いのか、今回はキャバレーのお姉さんが赤いぼんぼりとサランラップの衣装で登場。ジャケ絵はイングランド人の画家ジェイムズ・ワード(James Ward;1769-1859)の「Adonis(1826年)」

180 jyake04 1999

Whisper to the wild water/Maire Brennan

どこかで聞いた声だと思ったら、クラナド(Clannad)の人か。ベテラン・ケルトポップ、クラナドの創設期からの歌手モイア・ブレナンのソロ・アルバムです。ちなみにエンヤ(Enya)の実のお姉さんだそうですが、人間関係にはどうにも興味が持てないのでどうでもいいことですね。ケルト、ケルトと騒ぐけれど反英転じて親米と為すヨーロッパのなかでは比較的アメリカナイズされた普通の国ですよ。大地が土じゃなくて石だってぐらいで、硬めのものが好きならば居心地はいいかも。

181 jyake05 1969

Monster movie/CAN

クラウトの一つの金字塔として現代音楽の歴史に名前を残すことになろうカンの自主制作1stアルバム。ドイツ風のポコポコミニマリズムにやたらとエモーショナルな黒人ボーカルというアンバランスさがオツな1stアルバム。出してくれるレコード会社が無くて当初はカセット版自主製作だったらしい。実際、エモーショナル過ぎたボーカルのマルコム・ムーニィさんはその後病院行きになったらしいが、80年代になってから復帰してるようで尚更びっくり。

182 jyake06 1993

The Cross of chages/Enigma

ドイツで活動するアンビエント・ハウス、エニグマの二作目。基本的にはヒットした前作の路線を継承したもの。ヨーロッパ人の骨の髄にまで染み込んでいそうな古典宗教曲をモチーフに、モンゴルの羊飼いの唄等を巧みにサンプリングしてハウスビートに乗せたもの。主宰者のミヒャエル・クルトゥ(Michael Cretu)はノイエ・ドイッチェ・ヴェッレ時代から長年に渡って、テクノ・ポップやアンビエント・テクノの黒子としてプロデュースやらエンジニア稼業を担ってきた人。業界人らしいツボを心得た、非常にプロフェッショナルな産業音楽を仕上ております。緻密な現状分析と嗜好調査を基盤に、楽曲構造の解析、メロディ、リズムの選択、アレンジ、アンサンブルまで極めて精緻に設計された最大公約数音楽と云えなくもない。そこに内包される予定調和は商魂の裏返しでしかないというところが限界でもあるだろう。

183 jyake07 1975

On your feet or on your knees/Blue Öyster Cult

85年以降の業界基準でみればヘビメタの元祖なのかもしれないが、この当時はどちらかというとニューヨーク・アンダーグラウンド直系のパンクな趣です。震幅のぶれた、微妙な得体の知れないおぞましさ、異教的な邪悪さのような取って付けた部分が売りではあった。「Me 262」や「五月の最後の日」等の微妙にアメリカ受けしなさそうな文学趣味に惹かれたものだ。もっともその裏には、当初から業界玄人受けを狙ったマネージメントが光っていたともいう。これはLP二枚組ライブですが、かなり力の入った内容で当時のパフォーマンスを伝える貴重な資料でもある。途中でタイトルにもなっている台詞を叫ぶ飛び入りパティ・スミスの声も入っております。

184 jyake08 1985

Flags/Patrick Moraz, Bill Bruford

モラーツはスイス人の元イエス鍵盤奏者。ブルフォードはイエス→クリムゾンと渡り歩いた特異な太鼓奏者。この写真、男同士で舞踏しているわけではなくて柔道の取り組みしてんだわ、今気がついた。二人共それなりに経歴のある人達だから腕の方は心配いらないけれど、内容の方はすっかりモラーツに引き摺られていますね。作曲の才もあるのはよくわかりますが、いかんせん達者過ぎというかプロっぽ過ぎてつかみ所が無い。

185 jyake09 1983

Fetisch/Xmal Deutschland

それなりに暗い良い味は出ているが、一本調子なのが玉に傷。ハンブルク出身のサイケ・パンク、1stアルバム。リリースはイギリスのインディ、4ADから。ポップ・ロック畑では、この手(女4人+男1人)の楽団はいかにもキワモノ的に扱われて長続きした例はない。名前の通りドイツ人の女性が四人。派手さはまったくなくて、全編を通してなんだか薄ら寒くなるような声とビート。ドヨドヨ感で一杯です。内スリーブのちょっと時代がかった手術風景はなんでしょう? ヨーゼフ・メンゲレ博士(Dr. Josef Mengele)でも髣髴とさせようというのでしょうか。

186 jyake10 1975

Crac!/Area

自ら国際的人気集団(International Popular Group)と名乗るアレア三作目。自信なのか冗談なのか、はたまた標語なのかはよくわからん。ライブでコントラバスを弾くのも凄いが、やはり人間楽器であるデメトリオ・ストラトス(Demetrio Stratos)の前代未聞の驚異的な発声でしょう。元々バルカン系(エジプト系ギリシャ人)の人みたいですが、必ずと言っていいほど妙な民族楽器を持出して来て弾くのもオツです。ユニテ直系の左翼系のアジテイタとしても圧倒的な動員力と絶大な影響力を誇ったそうですが、結果的には潰されていくわけですね。

187 jyake11
BMG
74321 403752
1996

Shiva feat Magdalena/Shiva's Dance

シヴァズ・ダンスの唯一作と思われるアルバム。ディープ・フォレスト張りのエスニックで、テクノ風のディジタル打ち込みにサンプリング・ヴォイスとマグダレーナの歌がのるというありがちなパターン。歌詞はヒンズー語のようですが、正直云って不詳です。シタールやタブラなどエスニック楽器を多用した音造りで、適度にトラッド・アレンジなども含まれているようですが、製作・作曲はフォルカー・バーベル(Volker Barber)というドイツ人で録音もフランクフルトのようです。アプローチとしてはエンブリョ(Embryo)等とは正反対で、雰囲気以外にインド音楽に対する憧憬は感じられない所詮は西洋人のワールド・ミュージックというレベル。おかげで大変聞き易く、普通の基準からみれば宗教がかってるかもしれませんが、なんのなんの、結構乗れます。(あたりまえか、宗教なんだから歌って踊れなきゃな)。タイトルは破壊を司る女神『シヴァ』。マグダレーナ・ブレスツカ(Magdalena Breszka)という女性歌手をフィーチュアしたものなのだろう。

188 jyake12 1973

Zarathustra/Museo Rosenbach

どっかで引用してるからちゃんと書いとかなくちゃな。ニーチェの『超人』をテーマにした70年代プログ・イタリアーノの影の雄、ムゼオ・ローゼンバッハの唯一の正規盤。バテリアのあんちゃんが後のマティア・バザールのおっちゃんである。旧LP、A面が組曲でB面は3曲に分かれているが、デビュー作にして実質トータル・アルバムである。イタリアもの特有の濃いブリブリ哀愁メロディと非常に緊張感の高い、密度の濃い音が全編に渡って繰り広げられているが、もちろん白眉は仰け反りそうな怒涛のメロトロンである。うひゃ~、かっちょえ~。文句なし! もっとも構成も展開もそれほど凝りまくっているわけではなく、一音一音は意外なほどシンプルなのだが、男節を叩きつけるヴォーチェと静と動、密と疎、陰と陽のアンサンブルの対比が恐ろしいほど見事な躍動感を産み出している歴史的逸品。

189 jyake13 1990

Aion/Dead Can Dance

中世カタルー二ャ歌謡の現代的解釈とでも言いましょうか。突き抜けた妙な明るさが感じられますが、根底をうろうろと流れる暗黒の影が余計目立つような気もします。売れる音じゃまったくないですが、ほとんど宗教歌に近い至福の余韻すら感じ取れるのはなんかいろんな意味でまずいよなぁ。現代音楽がベースですが、民俗性と中世神秘主義が仄かに匂う。スリーブはゴシック後期の画家、ボッシュ(Hironymus Bosch 1450-1516)の「快楽の園」の一部分。

190 jyake14 1973

Palepoli/Osanna

仮面と混沌。南イタリアの矛盾と二面性を一身に背負ったかのような怨念が炸裂するオザンナの三作目にして代表作。エロティックなまでの妖艶と裏を返せばグロテスクなまでの因習にずっぽりとはまれます。元々、都市国家の集合体で統一されてからまだたいして時間の経っていないイタリア南部のギリシャの植民都市ナポリ(Napoli=Nea-Polis=新しい都市)と対をなす、今もって所在不明の伝説の都市パレポリ(Palepoli=Palea-Polis=古い都市)の栄枯必衰を描いたテーマのようです。もともとひどく暗い人間の情動みたいなものをうまく表現してましたが、ほぼ彼らの最高傑作としてよいでしょう。重くて暗くて圧倒的に美しい。

191 jyake15 1981

Faith/Cure

飛躍を遂げたキュアの三作目。ポストパンクとして後にデュラン・デュランあたりと比較されてたような気がしますが、けっこうエキセントリック(Robert Smithがね)なのだが印象は地味だ。Joy Divisionの方が近いかな。比較的スローテンポなポップなノリなんですが、微妙に寒くて暗い。声がちょっと遠いような、一枚薄皮がかかったような不明瞭さがモノクロームな柔らかさを感じさせる。

192 jyake16 1986

Moon and the melodies/Harold Budd & Cocteau Twins

70年代末期にイーノのオブスキュア関連でアルバムを出した現代音楽の人、ハロルド・バッド(Harold Budd)と、コクトー・ツインズによる4ADお得意のコラボレーション。それぞれの持ち味を殺さない程度に半分づつ曲を作って、全体を通してみれば、それなりにまとまったものに聞こえるよう繋ぎ合せた感はあります。だからCTはCTとしか聞こえないし、HBはHBでしかないという、だったら別々に作ればよかったのに? 等といってはいけないか。コクトー・ツインズはあくまでもきらびやかに万華鏡の変幻を、バッドは弛まなくうねる静謐なアンビエントというところでしょうか。

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作成日 2004/06/22--最終更新日 2007/05/04