懐古趣味音源ガイド    其参

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33 jyake01 1997

Further/Geneva

イングランドのネオ・サイケの波に乗って現れたジュネーヴァ(ジェネヴァかな)の1stアルバムの模様。トーンの高いギターと“か細く、甲高い”ヴォーカルで向こう側が透けて見えそう。所謂、典型的なギターポップというのかもしれないが、別のを探してるのだけど新しいのが出てないからもうないのかも。(後注;2003年? 新作が出た)音も似てるが、ヴォーカルの声が実はトム・ヨークにそっくりで散々誰だろう? どっかで聞いた声だなと悩んでいたのだけど漸く思い出した。もっともジュネーヴァの方がオーケストラ等使ったりして、ずっと古典的というか耽美に走っている気はします。スリーブのセンスに惚れて手が出たのがみえみえですね。

34 jyake02 1976

Mandalaband/Mandalaband

どこかの誰か(いわゆる評論家)がこれを指して病的なプログレ楽団と評していた遠い昔の記憶がありますが、当時ですら中身はそれほど進歩的というわけではなかった。むしろ形骸化したプログの形式を利用して、 まぁ、能書きはどうでもよくて、主題曲「Om Mani Padme Hum」のスケールには圧倒される。テーマ、構成、展開、テクニック、どれをとっても文句のつけようがない、と思う。デビッド・ロールなるオーケストラ・アレンジが専業だった人が旗振り役で、この曲ただ一曲を演奏するために人をかき集めて作られたそうですが、さすがに本職、びしっと格好良いアレンジが決まっています。非常にプロっぽいセンスと密度、チベット語のボーカルもポピュラー畑の人を感じさせないテノール。漢民族によるチベット侵略がテーマだとこれまた遠い記憶ですが、しかしまあ、アングロ・サクソンなんぞにそんなこと言われたくねぇよなぁ。

35 jyake03
BMG BVCA-693
1996

Breathe/Midge Ure

すっかり頭の薄いオジサンになってしまったソロになって4作目のアルバム。個人的にはダンディを気取っていたウルトラヴォクス時代よりも、あくまでも自然体を売りにしたソロも別の意味で気に入っている。前作『Pure』にて、既に民俗音楽への傾倒は見て取れるが、今作はスコットランド人としてのアイデンティティが前面に押出されていながらも、ちっとも気張らない余裕すら感ずるものに仕上がっている。

楽器を入れている曲でユールが弾くのはEギターでも鍵盤でもなく、アコギやマンドリン。プロデュースを依頼したアメリカ人ブルーズ・ギター奏者リチャード・フェルドマンによって、以前の曲作りやアレンジとの決別を迫られたらしいが、バックを固めるのもアイルランド系のトラッド色が強いアンサンブルで構成されている。何故か2曲だけ、ロバート・フリップがサウンドスケイプ・ギターで参加しているのが面白くもはまり役。濃厚なケルト色ということで、親しみやすく哀切で、凛々しくも孤高のメロディは日本人の琴線に直に触れてくる。

36 jyake04
Elkar
ELK 51(LP)
1982

Alkolea/Itoiz

バスクとはスペインの北西部と一部フランス南西部にまたがったビスケー湾岸地域を指し、主としてバスク人と云われる民族が居住している。バスク語ではエウスカディ(Euskadi)と呼び、出自が今もって謎である孤立言語を話す独自文化を誇っている。そのスペイン領内では、帝政、王政にかかわらず、歴史的に中央集権国家であるカスティーリャ政府の圧政と搾取、バスク語の使用禁止といったカスティーリャ同化政策に伴う文化破壊に苦しんできた。結果的に北アイルランドのIRAに匹敵するETA(バスク祖国と解放)という組織を生み出して、現在でもスペインからの分離独立を掲げて、テロの応酬が繰り返されている。

フランコ帝政の終焉と共に息を吹き返したバスク音楽の中でも最も評価が高いイトイス中期の作(3作目)。1作目のフォーク、2作目の民俗色を消化した上で、仄かに感じられた政治色も薄れ、内容はアンサンブルが重視された聞き応えのあるフォーク・ロックになってきた。繊細ながらも斬新で気持の良いメロディは健在。夢見るような歌い方なのに芯が一本通ったような凛々しさも感ずる。風土に根付いた湿度ある演歌にも非常に近しいものを感ずるし、素朴なりにゆったりとした流れのような、良い味が出ている。タイトル『アルコレア』はバスク海岸のほぼ中央、Deba近郊の岬の名で景勝リゾート地だと思われる。

37 jyake05
Atlantic
P-8503A(LP)
1975

Yesterdays/Yes

冒頭「America」とラスト「Dear Father」を除いて初期2作のアルバムの寄せ集めベスト盤。ではあるが、そのポール・サイモン原曲の似てもにつかぬカバー曲、10分超えの「America」1曲のためだけにでも聴く価値はある。元は72年リリースのアトランティックの販促用オムニバスに一部が収録されたもので、フル・ヴァージョンは本作が初リリース。あるいはこれを最後に一時期イエスのデザインから離れるロジャー・ディーンの、珍しく人間をリアルに描いたイラストに目を見張った人も多かったことでしょう。当時は飛躍的にこの種の音楽情報が国内に知らしめられて、中学生から評論家まで目の色が変わっていたような気がするな。はは。そんな世情に煽られて、怒涛のように興味の対象が拡大かつ変遷していった時期でもあった。イエスの面々は皆とても巧い人達だが、それに加え、この時期は瑞々しいまでの新鮮さが感じられたものだ。中期以降(75年以降と勝手に決めつける)のしゃちほこばった仰々しさはピンと来ないので尚更。「America」以外は短めの、プログというよりはポップ・ソングであるが、どれもメロディはこなれているし、アレンジも面白い。そのなかでも、結晶のようにコンパクトに凝縮された「Time and a word」が初期の焦眉だろう。懐かしい。

38 jyake06 2000

The screen behind the mirror/Enigma

4枚目なのかな? 最近買いました。3枚目から随分間が空いたような気もする。3,4年に一枚という感じで忘れた頃に出てくるのは良いかな。総じてリズムが随分と前に出てくるようになりました。流れるように続いていくというよりも一曲一曲がポップに際立つような派手さが加わって来たという印象があります。相変わらずの歴史参照(今回はオペラ)とサンプリングで手法的な面白味は絶えて久しいが、まぁ、構築的にかつ高品質に良くまとまっているんじゃないでしょうか。今回は前回までの宗教シリーズとは趣が違うけれど、元々「本気」でやっているわけじゃないだろうし、プロフェッショナルで商業的な計算も透けて見えて次は難しいだろうなぁ、と思わせる一枚。

39 jyake07 1994

Stone age/Stone Age

フランスのブルターニュも実はケルト文化圏だそうですが、その附近の出らしい。一見、静かで綺麗な音楽はすぐに何でもかんでもヒーリングにしてしまうご時勢でしたが、中身の方はなかなか希望がなくてよろしい。湿った海風で風化した巨石文明への哀悼? なのか。打ち込みも多用したかなり今風の音作りですが、根っこに横たわる冷たい湿気に足を捕られそうになる。もっとも歌詞が英語だったり、ダンサブルなリズムを多用するところなどはよくあるパターンで刺激には乏しい。結局民族風の色合いは差別化のためのお化粧ってとこのようです。ラストのピッチが上がっていくアコーディオンの小品は『Tublar Bells』のラストみたい。これが1stで97年頃に二作目が出ています。

40 jyake08 1990

Vision thing/Sisters of Mercy

これを最後にぽしゃったような気がする。あくまでも根暗にパワフルにやってきたせいか押しつぶされてしまったかのよう。井戸の底から聞こえてきそうな声だな。前作の女ベーシストは既におらず4、5人かき集めてるようですが、曲調は前作に比べちょっと明るくなったか。うねるようなドライブ感が増した分単調になったかもしれない。実はマギー・ライリィ(Maggie Reilly)がバックで歌ってたりして思わずびっくりですが、相変らずドラムが良い。人間ではないのだけれど。

スリーブの不思議な形状は何だっけ。いちばん上の横棒があったりなかったり、ときどき見かけますが原典がどこなのか探しあぐねています。と……ようやく探し当てたぞ。古代エジプトの神“ホルス”の左目で、「Eye of Horus」というらしい。ヒエログリフと一緒に刻まれていたそうな。元は医療を意味していたらしいので、今はそのアルファベット体「Rx」で処方箋を示すそうだ。ちなみにタイトルの『Vision thing』は、1988年の最初の選挙で今をときめく“じょうじ・ぶっしゅ帝”が語った言葉だそうです。まぁ、なんというか「見識」という意味らしいわ。シスターズ本体はもうとっくにぽしゃったかと思えばしぶとく生きているようですね。本家Webがありました。かなり細かいことから政治信条まで、イザベル・アジャーニからラムちゃんコキオロシまでなかなか傑作です。

41 jyake09 1974

Au-delà du délire/Ange

『譫妄の果て』というタイトルも凄いけれど、毒と皮肉に満ち溢れた歌をドラマチックにメロディアスに切々と歌い上げてます。メシアになろうとした男、農夫ドノヴァンの野望と失墜を描くトータル・アルバムですが、内容と美しいメロディの途方もない落差が非常に気持よい。この主役が農夫ってところが如何にも農業国フランスの頑迷なまでの保守性と“どんくささ”を象徴しているようでおもしろい。ねちっこいギターもいいけれど、アンジュ特有のキーボードの作り出す空気感みたいなものが郷愁を誘います。これはアンジュの三作目で80年代、90年代にそれぞれ再編されて今でもやってる(結構良いのだけど)はずですが、最近はほとんど入手困難で見かけなくなってしまいましたね。

42 jyake10 1993

The PIANO/Michael Nyman

とうとうハリウッド映画にも進出したナイマンの映画音楽。映画『ピアノレッスン』のサウンド・トラック。映画は見ていないのでわかりませんが、良い意味であまりサウンド・トラックらしくはないです。現代音楽は売れないからサウンド・トラックというアプローチは仕方ない部分もあるのでしょうが、この人はサウンド・トラックも素晴らしい。何年か前にライブでこの「ピアノレッスン」も演じていましたが、ナイマン自身が弾くピアノを聴いて感無量の憶えがあります。始めて聴い(観たか)たのは『zoo』ですが、それ以来、適度に後追いしながら気に入っています。

43 jyake11 1972

Macbeth/Third Ear Band

ロマン・ポランスキ(Roman Polanski)の映画『マクベス』のサウンド・トラック。映画も見たなぁ。かなり好き勝手やってるので真面目な人が見たら怒りそうなシェイクスピア映画。切られた首が見たシーンとかが挿入されていて、非常にシュールなわけ。ラストの異様に抽象的で未来派風な騎兵の集団が現れたところで、映画スタッフがカーーットォなんぞと叫んでがちんこして(うろ覚え)なんじゃ? これは? と呆気に取られたりする。音楽の方は相変わらずトントコ、ギーゴーという感じでこれも真面目? な人が聴いたら憤飯ものかもしれません。アコースティック・ミニマル・アヴァンギャルドってとこですか。とても美しい唯一の歌曲「Fleance」は映画の中ではなかったように記憶しているが、TV映像ではカットされていたものと思われる。ジャケットは冒頭、三人の魔女が砂浜?に手首を埋めているシーン。

44 jyake12
Virgin
YX-7015-VR(LP)
1974

Aqua/Edgar Froese

タンジェリン・ドリームの首領エドガー・フローゼの1stソロ。全4曲、すべてインストにして恐ろしく怜悧なエレクトロニクス・アンビエント。淡々と冷たいメロトロンが冴え渡る。基本的には74年ごろのタンジェリン・ドリームから抒情性を薄めて、元同僚シュニッツラー(Conrad Schnitzler:1937-)ばりのエグいエレクトロニクス風味を加味したもの、といった趣か。B-1曲「ngc 891」のみクリス・フランケ(Chris Franke)がムーグで参加している。タイトル曲「Aqua(水)」は、潜熱をやり取りしつつ今まさに固体と液体の狭間を漂う“水”の表情。流れというよりは、半分凍った水への物質的アプローチ。我々、東アジア人にとっては、「行く川の流れは絶えずしてしかももとの水にあらず」に象徴される通り、“水”と“流れ”は切っても切り離せない観念ではあるが、西洋人にとってはマッシヴな物質的流体あるいは固体としての“水”なのだろう。旧LPのB面はグンター・ブリュンシェン(Gunther Brunschen)なるエンジニアによって音響加工が施され、ヘッドフォンで聴くことが奨励されている。

45 jyake13 1995

Cascade/Peter Murphy

元バウハウス(BAUHAUS)のボーカリスト。ソロになって5作目にして辿りついた円熟の極み。暗も鬱も超えた潔いまでの諦観と黒の背景に滲み出るような情念が美しい。決して派手ではなく気がつかなければ通り過ぎてしまうような、さり気なさと裏返しの圧倒的なまでの表現力に惚れてしまいます。淡々と何の衒いもなく気負いもなくやるべき事をやってるという様は無機的なほどそつがない。オルタナ風ポップ路線は諦めたよう。おまけに売れなかったせいか楽団は分解してしまったようですが、曲は今までよりも凝ったものが多いわりには、さらっと聞かせます。これまでのソロ5作の中では最高の部類に入るとしてよいでしょう。

46 jyake14 1983

Fade to grey/Visage

シングルや未収録曲の寄集めらしいコンピ盤。名曲といって差し支えない「Fade to grey」も長い12吋シングルバージョン。ウルトラヴォクスの影で全然パッとしなかったけれど、フロントマンであるスティーブ・ストレンジが一所懸命ビジュアルしていたのが印象に残ってます。メイクしてると本当にゼンマイ仕掛の人形みたいなのだけど、曲も格好良いし、とても細やかで、ちょっと密やかな丁寧な音作りが好感です。グレイ一色の中で彼女がそこに来るだけで空気が薄紅色にほのかに染まるような、そこはかとない柔らかさが醸し出されておりまする。

「Fade to grey」
 
人里離れた停車場に男が一人
傍らには旅行鞄が一つ
双の眸は冷たく沈黙して輝き
男がこのまま消えてしまいそうな恐れにおののく
 
あぁ、灰色に褪せていく
あぁ、灰色に朽ちてゆく
 
イングランドの夏のような通り雨
遥かな歌の調べが聞こえる
ポスターの陰から一歩を踏み出す
長生きなどしたくないのだ
 
あぁ、僕らは色褪せていく
このまま、朽ちてしまおう

47 jyake15 1977

Escenes/Gotic

あまりスペインっぽくない(つまりドン臭くない)というか、逆にとても洗練されているカタルーニャのゴティック唯一のアルバム。スペインはイスラム教に制圧されて文化的にも洗礼を受けたカスティーリャ以南と地中海カトリック文化圏であるカタルーニャ、出自がわからん北西部バスクでは言葉も文化も異なるので、まとめてスペインといってしまうと大きな誤解を招きかねないので注意が必要です。重くもなく、軽くもなくとてもシンプルな音の組合せが心地良い。フルートの柔らかい音色とエレピの音が絡み合って、明るい地中海の陽光のもとで跳ね回っているような素晴らしいアンサンブル。すべてインストですが音の粒がきらきらと輝いているような……珠玉の名品って言うのだろうなぁ。曲名は7曲書かれているけれど、途切れることなく流れていくんで実質的にはトータル・アルバム。構成力もテクもなかなかなもんで最後まで一気に聴かせる見事な出来栄えです。ラストなんか本当ほれぼれしちゃいます。

48 jyake16 1995

A means to an end/The music of Joy Division

ジョイ・ディヴィジョン(以下JD)への捧げ物? JDの著名曲のカバー集、トリビュート盤というらしい。いろんな人が演じています。そんなに影響力があったのかしらん。なぜか一曲「Warszawa/Eno・Bowie」が紛れてますが、確かにそういう文脈で捉えることもできるかもしれないし、JDの前身をワルシャワと称していたような気がする。この“End”が目的なのか終焉なのかはよくわかりませんが、個人的には好きなのであまり入れ込まないようにしてます。“いまはもうない”ってこともあるし。

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最終更新日 2009/01/29