懐古趣味音源ガイド    其弐拾四

top > index > (0-9,a-g : h-o : p-z,あ-ん

369 jyake01 1972

Paese dei Balocchi, Il/Paese dei Balocchi, Il

うろうろとほのかに淡い色彩が垣間見えるようなあまり例のない端正さが見事な、パエーゼ・デイ・バロッキの唯一作。クラシカルで繊細なアレンジとダイナミックで躍動感溢れるキーボードの対比も美しい。耽美の極致をいく空気感と儚いボーカル、鋭く切れ込む生ストリングズと間の取り方が絶妙にして余韻に満ちた深い情感を湛えている。。トータル一曲ですが最初のテーマが少づつ展開されて、ラストのチャーチ・オルガンによるエンディングまで一気に聴かせます。派手さも華やかさもないけれど、今ではできない音だと思う。

370 jyake02 1976

Ship of memories/Focus

フォーカス自体は既に実質的にポシャった後に出た一応ボツ曲、未発表曲集ですが、当時は編集盤かシングル集だと思っていた。ライブ盤を除くと全部で6枚ほどのアルバムがありますが、最初から最後まで基本的には何も変わっていないのがフォーカスの特徴でもあります。コミック楽団すれすれの「Hocus Pocus=ラリロリラリロリ、ロンパッパ」のヨーデルの印象が強過ぎるのかもしれないが、あの曲はフォーカスの中でも特異な部類であろう。基本的には歌無しだから、どんなに格好良くても(ライブを見た人ならわかると思うが)メジャーに成れる(女子供に受ける)要素は無いのだろうが、歌無しでここまでできるのも実は結構凄いことだと思う。オリジナリティも非常に強烈で聴けばすぐわかる音と曲調、個性が完璧に確立されてます。

371 jyake03 1970

Lizard/King crimson

確か日本では最初に発売されたクリムゾンのレコード。73年頃か、買おうかどうか、迷った憶えがある。もっとも何故か最初には聴かないほうがいいとあちこちで云われているようですが、何故だろう? 前二作が構造的に比較的似た形をとっていたのに対し、今作はメンバーが流動化してフリップ御大とシンフィールド先生の比重が高まっています。お助け組のメンバーがもっぱらジャズ畑の人達のせいか、ちょっと引っ張られているところもありますが、ボルテージも緊張感も驚異的に高い。加えて音の扱いがそれまでのアンサンブルで聴かせるというより、ボーカルも含めて個々の音の磨かれた美しさを聴けと言わんばかりの精度と耽美。ほとんど、粉々に砕いた水晶の破片を耳に吹付けられているような痛々しさ。音の組立てが完全に常軌を逸しています。もう25年以上前になりますか、最初聴いた時、正直言って恐かった。なにか見てはいけないものを見てしまったような感覚。そして30年も前にこんなものができていたという現実には、いろいろ考えさせられてしまうものがあるのも事実。ジャケットの絵がそのまま曲の説明になっているのだが、シンフィールドの歌詞もまぁ、なんちゅうか、私にゃまったく理解不能です。これじゃあ native だってわからんと思うのだが。

372 jyake04 1975

Grimaces/Mona Lisa

粗削りながらも、こそっとかわいいモナ・リザの二作目。はちゃめちゃなところはありますが、意表をつく展開とファニーで少女趣味でかわいらしい曲調が実に面白く愉しい。A-B-A-B-A などという展開ではなくて A-B-C-D-E なもんで最初と最後は違う曲になってしまうのであった。ベースがかなり固めな上にドミニク・ル・グネのボーカルが素っ頓狂に跳ね回って、収拾がつかなくなるかろうじて一歩手前で踏み留まっている緊張感と刹那感が素晴らしい。音の処理とかバランスとかまだまだ稚拙だし強引な部分は多いのだけど、溢れんばかりのアイディアとセンスがごろごろと原石のまま転がって目が眩みそうだ。絶賛しておきます。

373 jyake05 1978

Incantations/Mike Oldfield

『Ommadawn』以降4年、鳴りを潜めていた(精神病?だったらしい)オールドフィールドの初期集大成でしょう。「Incantations」全一曲、LP2枚組80分の大作でしたが最後まで中弛みなく聴かせてしまうところは凄い。全体のトーンはこれまでのいろいろ盛沢山というよりも、とても抑制されたむしろおとなしいといってよいほどなんだけど、丁寧によく練られた構成です。楽器のアンサンブルは前作の延長線上かもしれないが、通層低音のような木琴、鉄琴がとても印象的。トラッド色が濃いのかポップなのか聴けば聴くほどわからなくなるような循環構造。華やかさには著しく欠けるけど、灰色一色の北海のような地味だけど野趣に富んだ趣き。part2でマディ・プライア(Maddy Prior)が歌ってるのはワズワース(Henry Wadsworth Longfellow ;1807-1882) の詩、part4で姉のサリー・オールドフィールド(Sally Oldfireld)が歌ってるのは17世紀のベン・ジョンソン(Ben Johnson)の詩だそう。

374 jyake06 1987

Rome remains Rome/Der Osten ist Rot/Holger Czukay

カンのベース兼エンジニアである変なおじさん、ホルガー・チュカイの2枚のソロのカップリングCD。当時妙な売り方をしていて、こりゃ第2のフィル・コリンズ狙いかと思ったけれど思惑通りにはいかなかったらしい。どうにも名前が読めなかったからに違いない。タイトルの後半は「The East is red」という意味でレコードが出たのは1984年ぐらいでしょう。まだ壁のある時代だし、現ポーランドのグダニスク(ドイツ時代はダンツィヒ)生れだそうだから、どこまで本気なのかはかなり疑問だけれど政治的な意味が込められているのでしょう。音楽的にはエレクトロニック・ミニマルという趣でふらふらと浮遊しておりますが、特有の妙なユーモア感覚があって、おちゃらけているというか、遊んじゃっています。

375 jyake07 1977

Rain dance/Camel

抜けたベースの補充に、なにをとち狂ったか浪人中のカンタベリの重鎮リチャード・シンクレア(Richard Sinclair)を加えた中期のキャメル。誰もが嘘だろうと思うような組合わせでびっくりしたというか、なんというか先行きの危うさを感じた憶えがある。もっともシンクレアは勝手が違うせいか(日の当たり具合が違ったのだろう)借りてきた猫のようにおとなしくしています。それでも前作『Moon madness』のゆるりとした品の良い冷ややかな叙情性に、ジャズと得意のテノールが加わって明らかにリズムが変ってしまっています。そりゃそうだ、あらゆる意味で格が違い過ぎるものなぁ。花が開いて一つの頂点に達するのは、次作『Breathless』とどちらをとるか甲乙つけ難い。定型ポップ・ロックとしては次作、エレガントな新鮮味なら当作か。異なる個性がぶつかってなかなか質の高いスリリングなものが出来上っています。

376 jyake08 1988

It seems/Colin Newman

青みがかったグレーと薄暮にたなびく霧のような湿度と気温。ワイアのおっさんとは思えない(いや、そのものって気もするが)時間の流れ。冷徹なセンスとヨーロッパ大陸的な郷愁が混ざりあって、なんとも不思議な情態を醸し出しています。ソロとしては5作目ぐらいですが前作よりも柔らかくて、ほわんとしたアンビエント色が特徴か。第2期ワイアのかったるさと同じ頽廃感はありますが、先鋭的な辛辣さじゃなくて、もっとゆったりした懐の深さ、欧州大陸風の別の文脈みたいなものが感じられておもしろい。

377 jyake09 1972

Grobschnitt/Grobschnitt

シュールなジャケが美しい1stアルバムです。音のほうは意外にシュールというよりは軽快で当時のクラウトものとしては珍しく、重くはないしむしろ明るい。ベースが固くて軽めなのに加え、特徴的なのは全編弾きまくるツイン・ギターとツイン・ドラムで手数の多い、少し軽くてラテン風のタッチのリズム。荒っぽくてパワフルだが曲の展開や転調が非凡というか無国籍というか無理矢理というか変化に富んでいます。妙に田舎臭いというか、野暮ったい雰囲気も微笑ましいもの。この編成はこれ一作のみで次作以降は、いわゆるサーカス芸人演劇歌劇としての王道グロープシュニットの時代が始まる。

378 jyake10 1982

Quartet/Ultravox

これが第2期ウルトラヴォクス(ミッジ・ユール在籍時)の最高作でしょうか、次作『Lament』とともに甲乙つけ難い内容といえるだろう。ほとんど優雅と云えるまでの気品と情感。個々の曲も最高に油がのっているというか完成度高いです。エレ・ポップですが小節の効いたスコットランド演歌とでもいうべきか。そういう決りかたなんだよなぁ。エレクトロニクスとアコースティックのバランスも然ることながら、ミッジ・ユールのボーカルも情感豊かでとても旨い。マイナー調の曲が非常に多いので、明るく楽しいって感じはないですが、ぐっと来るものがありますねぇ。

379 jyake11 1970

Emerson,Lake&Palmer/Emerson,Lake&Palmer

実は一番好きなのがこの1stだったりする。次作以降と比べると生ピアノの音が比較的多くてすっきり、あっさりしていることで、本質的に包含されている本来のセンスが上手く際立っているように思う。次作以降のEL & Pの音楽はどうも洗練に欠けるというか抑制が効かないというか暑苦しいというか、目立ちたがりの3人が少しづつ、おれがおれがとやり過ぎなのだと思うのです。ここではとても固めの響かないスタンウェイ・ピアノの音がとても美しい。グレッグ・レイクの声は人が言うほど琴線に触れないのだが、悪くはないです、はい。

380 jyake12 1997

Ok Computer/Radiohead

絶望的な閉塞感。アンドロイドはパラノイア?
雨が降る雨が降る 雨よオレに降りかかれ
遥かな 高みから 遥かな…から
雨が降る 雨が降る 雨よオレに降りかかれ
遥かな高 みから 遥かな…
雨が降る雨が 降る 雨よオレに降りかかれ
遥かな 高みから遥かな…

381 jyake13 1973

All things must pass/George Harrison

3枚組のBOXでしたが少し前にデジタル・リマスターが出ているみたいですね。ビートルズ時代からあまり目立たず線の細い柔らかい感じの曲を書いてましたが、これもその発展系といったところ。アレンジに凝るわけでもなく勢いで押し捲るでもなく、少し宗教的な自然回帰風のほわんとした音が特徴です。とてもやさしくて暖かい曲がこの人の長所でしょう、聴いてる方までふわっと、ほのぼのした気になるものねぇ。3枚目はジャム・セッションですが、かつての呪縛を解かれたようにすっかり解放されて、とても楽しそうに弾いていますが、決めるとこははずしちゃうんだよなぁ。

382 jyake14 1994

Pure/Golden Palominos

最近、あまり見かけないようですが止めちゃったのかな。やたらリミックス盤が出てるようでどれ買えばいいのかよくわからんのですが、これはオリジナルの再発CDのようです。最初の版とはスリーブ・デザインが違うようです。かなり凝ったデジタルなアプローチと透き通った柔らかくて色っぽいお姉さん(ロリ・カーソン)の歌の対比が明晰で陰鬱で心地よい。最近のものよりも清廉でどよんとしてないし、歌っぽくて聴き易いかもしれない。

383 jyake15 2001

Get ready/New Order

復活しました。いつまで続くのかどうかは知りませんが。8月の終わり頃にリリースされたようですが、だいぶ安くなったからやっとこ買ってみました。まぁ、紛れもないニュー・オーダーですかね。良い意味でも悪い意味でも変ったところは無いなぁ。強いていえば音が比較出来ないほど良くなって、綺麗になって、少し丸く柔らかい雰囲気になったかも。素っ気ないとこは相変らずですが分厚く攻めて来るというよりは、油分が抜けて随分とサラッとしてきた感がありますね。いやはや、もう無いはずのものがこういうかたちで提示されると、傾倒していただけに、なかなか感情的には困ったものです。

384 jyake16
SME SRCS 9823
1974

The Hoople/Mott the Hoople

今考えると結構渋いものを聴いていたのだな。今や知る人ぞ知る? でもないか。モット・ザ・フープルとしてのラストアルバムだそうですが、もちろん目当ては「The Golden Age of Rock'n'Roll」ですか。安っぽいイントロのピアノとブラスの音が最高ですがな。今、聴き返すと他にもなかなか良い曲があるのだけど、上手いのかヘタなのかさっぱりわからないイアン・ハンターの癖だらけの独特な歌い方もめちゃくちゃ懐かしい。アレンジも展開も、サイケっぽいというか凝ったことをしていて最近認識を新たにしています。

index
最終更新日 2003/10/30