懐古趣味音源ガイド    其弐拾参

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353 jyake01 2001

Amnesiac/Radiohead

う~む、思ったより良いですね。一皮剥けたか。鬱屈してた部分は突き抜けたか。おそらく、新しい“かたち”なのだろう。『Ok Computer』の路線に戻った? ような気もする。『Kid A』とは性格の違う双子だそうですが、こっちの方が一般受けはしそう。この一切の感情を越えたところにあるような微妙な明るさはいったいなんだろう? 人がヒトであることをやめたもの? 形式を越えたところでのみ成立し得た情動みたいなものだろうか。同時代的な閉塞した精神性と絶望的な諦観に囚われてしまう。当然のことながらけっこう暗いけど、それは仕方のないこと。個人的には打ち込み路線は歓迎です。懷メロならかまわないけど、この方向性で、未だに古典楽器(つまり電気ギターだの電子キーボードだの電気ドラムだの)を使うことには形式以外に最早何の意味も無いだろうから。

354 jyake02 1978

Never say die/Black Sabbath

実は最近買ったのでこれだけCDだったりする。前作『Technical ecstasy』でオズボーンが抜けたと聞いたことと直接関係はないのだが、その時点で私のサバス歴は終わっていたのでした。ところがこれだけ抜けたオズボーンを呼び戻して録音したとかで、気にはなっていたんですが安いのが入手できたので聴いてみた。水で薄めた上にぬるまってしまったコーヒーのような部分はあるにせよ、個人的には最後のサバスということで哀悼の意を表しておきましょう。しかし、前々からHR/HMって何だろうと気になっていたんだが、「Hard Rock/Heavy Metal」だったのね。たった今わかりました。いやぁ、おぢさんには横文字は難しい。

355 jyake03 1974

The lamb lies down on Broadway/Genesis

ゲイブリエル(Peter Gabriel)在籍最後のLP2枚組大作。以前か以後かはどっちが好みかで実は結構、人としても分れ目。内容の優劣をつける意味はないが、質的には別物と捉えるべきだろう。元々、器楽が中心で“かぶりもの”でもしてない限りあまりボーカリストが目立つ存在にはなり得なかったジェネシス初のボーカル主導アルバム。結果的にそのごり押しが自ら身を引かざるを得ない結果を生んだのだろう。

プエルトリカン“レエル”の自分探しをテーマにしたトータル・アルバム。個人的に思うには、曲は洗練されてるし、構成も拡がりも突っ込みも申し分ないのだが、ちっとも興味の持てないコンセプチュアルな物語の優先度が高いところと、それがたぶん宗教と切り離せない内容であることに冗長な印象が否めない。やっぱり“lamb”などと言われてしまうとそれだけで、「そかそか、食えない肉ならいらないって。あとは勝手にやってくれや」というのが異教徒としての正しい対処法だと思うわけです。

356 jyake04 1971

Islands/King Crimson

4作目ということで、メンバーの流動化とともに少し印象が変って来ました。硬質な緊張感が薄れて妙に艶めかしい肌触り。舞台は地中海のスペイン領バレアレス諸島。マジョルカはショパンがジョルジュ・サンド(George Sand:1804-1861 作家)と駆落ちしたところでもあるか。そのショパンはマジョルカで「雨だれ」を作ったがピート・シンフィールドは『Islands』を書いたわけだ。全体を通した妙な生暖かさ、湿っぽさとタイトル曲の「Islands」のほとんど悲しいまでの美しさも良いけれど、やはり「The Letters」か。

「The Letters」
 
羽根軸を銀のナイフで
毒のペンを削り出し
女は愛する人の妻に対して書き出した
「私のからだにあなたの夫の種が宿りました」
 
その言葉は癩病者の顔のように
しとやかな手紙を穢した
妻は喉を詰まらせ
涙で曇った眼でたださまようばかり
 
氷の釘で刺し貫かれ
エメラルドの炎が舐める
妻は白く冷え冷えとした心で
しっかりとした手つきで書き始める
 
「私はいたって平静です。
もう男に仕えて生きていくことはありません。
あなたに捧げたはずの私もお終い。
死すべき肉体に告別するときがきたようです」

最後の一節は妻が誰宛てに書いたのかが実はよくわかっていなかった(子供には難しくて)。最近、和訳集のwebで夫宛てに書いたという解釈を見てなるほどと思ったのだった。つまり、手紙は2通あるわけで、だからLettersと複数なわけなのか。シンフィールドの歌詞は象徴的な上に衒学的で非常にわかりにくくて難渋してしまいますが、これは意味深だけど意外にシンプルですね。微弱から極大まで極度にダイナミックレンジの広い音と、あまりにも美しいボズ・バレルの声と相まって前代未聞の憎悪と絶望が垣間見えます。これにて初期クリムゾンは崩壊。このジャケは蟹座? の超新星? Super Nova は星の死。

357 jyake05 1983

Script for a Jester's tear/Marillion

一応、デビュー盤ですが最初の3枚で3部作なわけだから、いきなり完成度高いです。まだ、変幻自在のリズムとメロディでぐいぐいとたたみかけて来るという雰囲気ではないですが、とても良く練られた丁寧な展開とアレンジです。曲の構成やSound Effectの使い方も二作目の方がストレートなぐらい凝りまくってます。とは云うものの、不自然ということもなく淡々と流れていく感じですね。変に古臭くドラマチックに盛上がらなくて良いのではないでしょうか。

358 jyake06 1969

Amon Düül/Amon Düül

曲名から類推するに多分『Psychedelic Underground』といわれる1stアルバムのようですが、ジャケ違いなのでしょう。再発なのかな。買ったのは25年以上前の話なので既に曖昧模糊、忘却の地平。中身はおそらく既知の音楽という概念にはあてはまらないノイズとビート。数日のセッションを元に切り貼りされて加工された楽曲のようなもの。太鼓がどんどこ。ひたすらどんどこ。これでもか、これでもか、と執拗にどんどこどん。歌ってるのか、叫んでるのか、喚いているのか、呟いているのかもっぱら著しく不明ですね。でも根源的な部分を揺さぶられてしまうと、同化してきます。いっそのこと海馬で聴くと心地良い。

359 jyake07 1977

Rumours/Freetwood Mac

おやァ? などと眉を顰めるむきもあるかもですが、たぶん自分なりに世間的な標準との乖離に悩んでたのでしょう。詳細はもう忘れた。最近じゃ、国是のグローバル・スタンダードと乖離してますが、こっちはもう諦めて山に篭ってます。個人的には少し前の『Bare Tree』とか『Penguine』あたりの軽妙で洒落たブルーズ路線が好みですが、このあたりから地味なブルーズからポップへ変身を遂げると共に、あれよあれよという間にとてつもなくメジャーに成って行くのを目の当たりにしたものだ。どこかでライブなんぞも見た記憶が微かに残ってるんですが、「Dreams」のサビの部分をオクターブ下げて歌ったりして“おいおい”とか思いましたっけか。

360 jyake08 1986

Spleen and ideal/Dead Can Dance

かなりコンテンポラリ寄りの内容ですが、何も書いてないので何もわかりません。前半は弦楽器とティンパニが加わって結構アコースティックで壮厳な味い。後半はループ風のリズムとキーボードをバックにブレダン・ペリーとリザ・ジェラルドが交互に歌う小曲といった趣。特異なコード進行の上を這いまわるようなビブラートのかかったボーカルというかボイスは健在ですが、トーンが一定して沈みきったような美しさでいっぱいです。視界の効かない冷たい水底でそろりそろりと聞こえてきそうな音です。タイトルはボードレール(Charles Baudelaire;1821-1867)の『悪の華』の第一部85節「spleen et ideal」のようです。

361 jyake09 1974

Il Volo/Il Volo

二作目の完璧なまでの隙のなさの方が有名ですが、個人的にはこちらの微妙に土臭い方が好みには合う。もともと完成度というレベルは端からクリアしているし、あらゆる点で文句のつけようがない質を誇る。アレンジはかちっとまとまって静と動が見事に表現されてますが、ボーカルも実に淡々として謳い上げるというよりもちょっと引っ込んだ感じ。おかげで統一感のある極めて繊細でかつダイナミックな音になっています。一応、フォルムラ・トレ(Formula 3)の発展型というか完璧な後継としてその名に恥じないスーパーグループの初作。まったく売れなかったようですが。

362 jyake10 1976

Principe di un giorno/Celeste

新興グロッグ・レーベルからデビューしたチェレステの初作。斬新さとか面白みという点では評価されてないようですが、まぁ、それなりでしょ。線が細いというか、実に淡々と繰り広げられるピアノとフルートとメロトロンの夕べ。とてもアコースティックな感じでサラっとしてますが、真ん中へん(いい加減ですまぬのう)のメロトロンの合間のピアノソロがいいなぁ。パーカッションはあったりなかったりという調子なので、ピシッと決まらないのだが、まぁ、これはこれでいいと思わせる雰囲気というか空間表現を持っている。意外にジャズっぽい展開がクールで清楚、あるいはアヴァン・ガルド。チェレステといえば日本では楽器の名前だけれど、イタリア語だと“澄みきった青空”という意味なんでしょう。

363 jyake11 1992

Some girls wander by mistake/The Sisters of Mercy

アルバム以前のシングルとかミニアルバムの寄せ集めコンピ盤。1stアルバムが出た瞬間に終ってしまった楽団だから、遠い東洋の島国で聴きたいなと思っている人間にとってはこういうCDは有難い。しかし、もともと暗いけれど昔のものはもっと暗いじゃないか。うむむ、暗いというよりは陰惨って表現が合っているかもしれない。この辺がゴシックと云われる所以なのかどうかは不詳ですが、シスターズの本質はこのあたりにあるのでしょう。ドクター・アバランチェ(=リズムマシン)の執拗なループの上を這いずりまわる音と声。物凄いテンションとパワー、暗い情念のオンパレード。

364 jyake12 1999

Beaucoup fish/Underworld

冷やっこくて美しいアンビエントでダンサブルなテクノ。たまたま借り物の日本盤なのでどんなことが書かれてるものか試しに解説を読んでみたがダメだ。日本語なのにわからない単語だらけでさっぱり意味が不明で大意すらとれない。斜め60度くらいで読んでいるわけではないが、やっぱり場違いってことなのだろう。いや、ただ単に「Beaucoup Fish」の意味が知りたかっただけなのですが、書いてないっす。しょうがない、英辞郎によればたぶん「うんこたれ」とか「おんなくさい」といった意味なのでしょうか。美しいスリーブにマッチしたなかなか良いタイトルですね。

365 jyake13-1

jyake13-2
1971
1976

Concerto grosso per1,2/New Trolls

per1とper2、元々は別のレコードだったけどこれはカップリングCDです。まぁ、内容的にはPFの『Atom Heart Mother』あたり、古くはムーディーズの『Days of future passed』の延長線上でしょうが、この手のものとしては非常によくできてます。イタものという意味合いからも難しいことははなから考えてないというか、アプローチの仕方にまったく衒いことが特徴でもある。その辺が職人オペラ的というかバロックの後継なのかよくわからんですが、綺麗に、華麗に組み上げられた楼閣です。なぜかドイツで凄い人気だったそうですが、ネオ・クラシック的な要素は確かに濃厚だ。時代背景を考えればper1は確かに先端的であったと言って間違いないでしょう。もっとも、うだうだ考えて聴くような音楽ではないですね。単純に、あるいは純粋に乗れることは請け合い。

366 jyake14 1973

For girls who grow plump in the night/Caravan

いやぁ、大人の音ですね。『夜ごと太る女のために』という邦題も言い得て妙ってとこですか。中身はキャラヴァンのベストと言っていいかも。昔はちょっとピンと来ない部分があったみたいで、印象薄かったんですが最近は180度変わってます。ほとんど優雅なまでの洗練と繊細さは次作に及ばないとしても、疾走感とこれでもかと言わんばかりの緊張感には恐れ入る。ビオラ弾きの加入は当時えらく不評だったそうですが、なんのなんの、とっても新鮮です。というか第ニ期キャラヴァンを特徴づける最大の要素だな。ビオラによってカンタベリ系特有の技巧に突っ込んでいく部分が緩和されて、とても優雅で華やかな色合いが醸し出されている。バイオリンじゃないとこが味噌だよなぁ。

367 jyake15 1986

Notorious/Duran Duran

『7tiger』の次だと思いましたが、確か二つに分裂しちゃって先行きが危ぶまれていた四作目あたり。以前とたいして変らない気もするけど少しボルテージが下がった気がする。キャピキャピしたキラキラ感が薄れてなんだかゆったりと余裕の雰囲気で、かったるそうな頽廃感もでてきた。ラッパが入って少しファンキーな女性ボーカルが聞こえたりしてるけど、そういう時代の方向性だったかもしれん。相変わらず曲の出来はとても良くて地味だけどいい味がでています。

368 jyake16 1976

Softs/Soft Machine

スタジオテイクとしては最後のアルバム。既に最後まで残っていたオリジナル・メンバーのラトリッジ(Mike Ratledge)もゲスト扱いで名前だけ一人歩き状態なわけです。音楽的にはしばらく前からカール・ジェンキンズ(Karl Jenkins)が仕切ってるわけであまり影響無いですね。前作『Bundles』で加わったギターが、ホルズワース(Allan Holdsworth)からエサリッジ(John Etheridge)に変わって、かなりど派手な超絶技巧速弾きフュージョン大会って雰囲気が濃厚。ギターの音色はエサリッジの方が乾燥して固めでジェンキンスの曲には合っているだろう。総じて楽曲の出来がとても良いので耳に入る音を聴いている分にはとても良質で心地良い。少しドラマチックな部分まで出てきたりして、実はけっこう聴き易いし好みだったりもする。

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最終更新日 2003/07/27