懐古趣味音源ガイド    其参拾八

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593 jyake01 1970

Paradieswärts Düül/Amon Düül

IIの付かないDüülといえば太鼓、もうひたすらドンドコと相場が決まっておるのだが、一応オリジナルのラストのこれのみは、不思議なことに何故だかアコースティック・浪曲とでも言おうか。おまけに結構恍惚と美しくて良い曲だったりしてたまげます。メロディとかリズムとかっていう概念をまた思い出してくれたみたいだし、歌詞のある歌を英語だとわかる程度の言語で歌っているという点でも画期的です。崩し方というか崩れ方は相変らずであったりもするのですが、突抜けちゃってのほほんとした「もう、どうでもいいや」感が天上の楽園を思わせます。アコースティックなフォークみたいですが、ボンゴのポコポコしたリズムや妙に奥行のあるエコーが日だまりの白昼夢を体現するようだ。最近のCDには誰が買ったのかまったく想像もできない唯一のシングル2曲がボーナストラックとして付いていてお得です。

594 jyake02 1984

The spell/The Enid

たまには浪漫派現代音楽でも聴くなり。一瞬、マーラーとかに近いのかなとも思うけど違いますねぇ。90年代に再編されてますがこれはオリジナルの後期のアルバムです。二作ほどポップ寄りのものが続いた(けど売れた覚えはないし)後だけにもう多分ヤケクソだったんでしょう。やりたいことをやっている気がします。大曲「Spell」はオケもバンドアンサンブルも凄い緊張感。中盤で一般的な意味ではかなり異質な、シェイクスピア劇場か? みたいなボーカルも入ったりするのだが、構成が革新的過ぎて浸るには2作目ぐらいの方がいいかもしれない。オケの使い方がかなり変って、薄めの音でとろんとした耽美的な美しさまで出てきて、所謂シンフォニックでは全然ないのだなぁ。ポップやロックであることも完全に止めちゃってるんで潔いぞ。借金ばかりが嵩みそうな密度と心意気です。

595 jyake03 1979

Exposure/Robert Fripp

短い曲の寄せ集めであまりまとまりは無い個人名義の1stソロ。当時、ニュウ・ウェイブ一辺倒な時代でもあったのだが驚くほどピーター・ゲイブリエルに似てると思ったわい。フリップ&イーノの成果に加え、トニー・レヴィンの声も聞こえたりして、翌年再編される80年代クリムゾンを思わせる部分もあるか。ピーター・ハミルが2曲歌っているし、目玉は(私だけだろうけど)ゲイブリエルの「Flood」だ。もちろんゲイブリエルが歌っているわけだが「Boy here comes the flood」というフレーズを「Lord here comes the flood」と歌っているところに感銘を受けたりしたものだ。聴けばすぐわかる独特な効果をもたらすギター・デバイス? にフリッパートロニクスなる命名がなされたのもこのころ。勿論、最初から最後まで存分にフリッパートロニクスに浸れます。

596 jyake04 1975

Fish out of water/Chris Squire

この頃、よってたかってソロを出していたイエスのメンバー。ビル・ブラフォード以外には出せないパーカッションの音と組合わさったスクワイアのベースはやはり最強だ。アレンジが力み過ぎで少し大仰だけど、固めのリードを弾きまくるファズ・ベースと変拍子が気持良いし格好良い。きちんと組上げられたこの構築力こそが初期イエスのスリリングなまでのダイナミックさの原動力だと思う。目立たないけれど。イエス自体が岐路に立っていたのだろうが、これはスクワイアなりの、あるべきイエスの姿なわけだろう。いや、まぁ、個人的にはこっちの路線が良かったなと思っていたのだ。最近また元の鞘に納まったらしいですが、74年の「Relayer」が私にとってのイエスのラストアルバムになってしまったのは結局こういうことなのだろう。

597 jyake05 1983

Touch/Eurythmics

血迷ってませんか? と言われそうですが、まぁまぁ。不毛の80年代初頭にスタートしたデイブ・スチュワート(カンタベリの人とはまったくの別人)とアン・レノックス(Ann lennox)という男+女の二人ユニット。スリーブのダサさ加減を見てもわかる通り、ありがちなエレ・ポップですが、低めの少しねちっこい歌い方が特徴かな。前作ぐらいからソウルフルな雰囲気が出てきて、昔の浮遊感というか透明感は薄れてしまった。1stは確かプロデュースがコニー・プランクだったりしたし、Canのおっさんがドラム叩いてたりしてたのね。そのおかげかどうかは知らないが、イギリス物にしてはらしくない音の使い方がミニマルだしピュアで良いのでないか、と言ってみたりする。

598 jyake06 1972

Little red record/Matching Mole

毛沢東、周恩来と続けざまに死んだのはもう少し後(76年?)だったか。毛の死は伏せられていた気がしたが、周恩来死去の報にはそれを聞いて泣いている中国人を見てなんだかひどく羨ましく感じたことを憶えている。でもこの時代、かぶれていた人は多かったに違いない。毛沢東語録を掲げてるし、カストロ(1926~)かゲバラ(エルネスト・チェ・ゲバラ、1928~1967)みたいな格好しているしなぁ。カンタベリィ自体が非常に裕福で伝統的で保守地盤な土地柄なわけだし、当然(1960年代に大学に行けるような階級)教育もあるし、インテリだからかぶれちゃうんだよなぁ。まぁ、ワイアットはかぶれただけじゃなくて、その後も一貫して真性という意味で立派です。ロビン・フッドに成ることも諦めてないのではないだろうか。デイブ・シンクレアは既におらずアレンジというよりはインプロにかなり偏った内容。7曲目の「God song」は後にハットフィールド(Hatfield & the north)でも演っていると記憶している。前作の牧歌的な部分は薄れたけれど、よりカンタベリィではありますか。

599 jyake07 1974

Viaggio negli arcipelaghi del tempo/Delirium

3作目でおそらく最後のアルバム。田舎臭いもったりしたところが随分と無くなって、タイトなあるいはシャープな洗練とか優雅さすら感じられるようになって少しびっくり。ジェスロ・タルの影響は明らかにあると思うが、以前の歌物という印象は薄くなったし、それなりに濃い演奏と複雑な展開は完成度も高くなった。でもアコースティックなギターとフルート、カンツォーネな野太い声の絡みがやっぱり一番の聞かせどころには違いない。キーボードと生ストリングズを上手く使い分けているなどアレンジは恐ろしく凝っているし複雑です。それを支えるテクニックも申し分ないでしょう。ストリングズを使いながらもシンフォにはならないで、ジャズっぽい展開とリリカルなアコースティックな部分の対比で聴かせるところも個人的に好感度が高い。頭と末尾をクラシカルな品の良いメロディが締めてトータルな全体構成をうまく形作っているようです。

600 jyake08 1989

Rock island/Jethro Tull

30年選手なタルですが、最早完全なイアン・アンダーソンの個人プロジェクトになっているようです。この時点で23枚目のアルバムだそうですがそんなにあったか、呆れたわ。鮭の養殖とどっちが本業なのかは知りませんが円熟味が増すにつれ、インパクトは下がっていくのはもののあはれ。多少トラッドに待避してみたり、そこはかとなくハードロック寄りだったりと時代に合わせて、本質は何も変っていないのに聞かせてしまう器用さも持合わせている。さすがに昔のようにアルバム1枚で1曲なんてことはしていませんが、全体を通して聞いているとあまり変らないく思ってしまう。えぐさは薄れたがトラッドっぽい曲なんかいい味出ています。芝居掛っているところなんか典型的なイングランド人かと思っていたらスコッツだそうで。ありゃりゃ。

601 jyake09 1974

Autobahn/Kraftwerk

テクノ・ポップのスタートはここか。シャッター開閉音、「コツコツ」と靴音、「バタン」とドアを閉める、イグニッション・スタート、23分間のアウトバーン走行。抜きつ抜かれつ、対向車もあったりしてドップラー効果しています。妙な変調の掛かった声で「オウトゥーバーンー」って発声してます。アウトバーンはご存知の通り、遡ること1930年代にヒトラーが建設を開始したドイツ全土に張り巡らされた無料の自動車専用道路網。制限速度がないそうで、ここを平均200km/h以上で走るために作られたのがベンツやらBMWという自動車なわけだ。アナログ・シーケンサによる反復リズムは今聞くとノリが良いってほどじゃないのだが、当時としては画期的だった。Kraftwerkは「クラフトヴェルク」で発電所の意。力+仕事という工業的というか第二次産業的な硬質でマッシブでモノクロームなイメージ。Craftworkは「クラフトワーク」で工芸とか職人芸の意。もちろん、どちらを取るかは御意のままに。後半の小品はちょっと可愛いものもある。まるで童謡みたいなものとかリコーダーにピアノとか。勿論エンジニアはコンラート(コニーの方が通りは良い)・プランク(Konrad Plank)。

602 jyake10 1976

Sowiesoso/Cluster

結局のところ元を辿ればここに行きつく"C"のクラスター、4作目。バックボーンとしてのコニー・プランクの存在を抜きには語れないだろうが、ノイ(Neu)と共に非伝統音楽の双璧を成す。最も今のテクノの方が圧倒的に(伝統的な)音楽の体を成してはいます。商業的な成功は伝統音楽を如何に導入するかにかかっているから。共同幻想たる伝統を排除するならば、創った人にしかわからない状態を生んでしまう。ここで聞ける音はグルーブ感はもとより緊張感やら高揚感といった音楽によってもたらされる基本的な感覚を極限的に捨象した、スカスカな音響だ。アンビエントな美しさは現代になって初めて絶賛されることになる。25年前には素通りして(寝てたか)しまうだけの音がするっと内側に入ってくるような気がするこのごろ。少しは大人になったかいな。

603 jyake11 1975

Bundles/Soft Machine

初めて数字以外のタイトルが付いた上に、1st以前の音源でしか聞けないデビッド・アレン以来のギターを加えた異色作。アラン・ホールズワース(Allan Holdsworth)のギターの割には控えめで乾いた感じ。リフもなかなかお上品に決まっています。『7』よりも長い曲が増えてミニマル色は薄まった。長くても構成が分かり易いから総じて聴き易いかもしれない。実質的にラストアルバムである秀才ラトリッジの存在感は既に少し薄いように感じる。アンサンブルはいつもの通り完璧で(完璧過ぎて)感情の入り込む余地はあまりないかもしれない。比較的ジャズ・ロック寄りの内容ですが、熱いような、冷え切ったような不思議な出来映えだ。アコースティックな小品なんかもあったりして少し意表を突かれたりするけれど、全体としては非常にかっちりとまとまった構成主義的な完成品。勿論全曲歌無し。

604 jyake12 1977

Gazeuse!/Gong

同じくアラン・ホールズワースが加わった「デビッド・アレン以後」の秀作。ソフト・マシンと比べる意味はないけれど、ギターはずっとエモーショナルです。前作『Shamal』の不可思議な東洋色は薄れたものの、ブノワ・モワルランとミレイユ・ボーの二人の専任鉄琴、木琴、マリンバ係りの効果が素晴らしい。ミノ・シヌルー(Mino Cinelou)なるアフリカ人? とモワルラン兄のダブル・パーカッションの壮絶な効果も合わせると、なかなか超絶なエスニック・ジャズ・フュージョンが展開されるのだ。ふわふわと空間を漂う鉄琴の音色は拡散的な鎮静効果をもたらすようで美しい。言い得て妙なジャケのデザイン通りキラキラと華やかで、ゴングの割には(ハチャメチャにならず)どうにもシックにセンスよくまとまった。錆びついた深夜の遊園地で、電飾遊具がいきなり廻り始めたような恍惚感。後にも先にもあまり例がない。やっぱり全曲歌無し。

605 jyake13 2000

Move me/Midge Ure

タイトでシンプル、独特の転調がかつての嘆き節を髣髴とさせる。前作の民族色はかなり薄まっています。一方でディジタルなパーカッションなんかも目立ったりして、スコットランドな民族色との兼合いが面白いというか不思議な感触だ。それなりの年齢もあろう、どっしりとした落着きと安定した確実さが見事だ。切々と訴えるような歌い方も一段とシンプルで力強くなった気がする。さり気ないようですが、打込みもそれなりに多用していると思われ非常に気を使った、かつ細部まで作り込まれた凝った音になっているようです。怪獣映画のサントラみたいなヘビメタみたいなインスト曲があってたまげますが、基本はやっぱり歌物です。ほんの少しだけ明るくなった。

606 jyake14 1979

Sombra y luz/Triana

独特の節回しが決り過ぎなアンダルシアの雄、トリアナ3作目。かなりタイトに決るリズムと甲高い哀愁のボーカル、泣きのギターが唸りまくる一方で、スパニッシュ・ギターと手拍子は完全にフラメンコのノリだわ。キーボードによる奥行感も大仰でなくだいぶ地味になってきて、スペイシィでSF風な音感と、光ばかりではない影の部分を田舎臭く表現できるようになった。もっとも歌も上手くなってもう完全にビブラート掛って節が唸っちゃっています。なかなかダイナミックな演奏で、飲んだくれのヒゲオヤジがジャカジャカとギターをかき鳴らしながら上擦っただみ声でくだを巻いてるようなところが最高。トリアナはどうあがいたってトリアナよみたいな、変に洗練されないところがとても好みなのだ。

607 jyake15 1999

The best best of Fela Kuti-the black president/Fela Kuti

おぉ~っと、ジブラルタルを越えてしもうた。ついでにサハラも越えてサバンナも越えてかつては人跡未踏の暗黒大陸と言われたそうな熱帯雨林もの。アフロ・ビートの偉人(1938~1997)である。ナイジェリアの良いとこの出らしいですが、コミューンはまずいな。おかげで政府と一悶着を起こす砦に篭って戦闘系だそうですね。ファンクなジャズと言ってしまえばその通りだが、重くて暗くてうねうねとうねるようなリフとリズムが延々と反復される。呪われたリズムの反復は徐々に染み込んできて暗澹たる高揚感に囚われてしまうのだ。今でも出ているのかは知らないが、一時は日本盤CDも出てたりしてそれなりに認知はされていたようです。これはベスト盤のベストみたいなものですが、一曲あたり12,3分の比較的長い曲が多く計158分の2CDでボリュームは凄い。

608 jyake16 1990

Blue pearl/Blue Pearl

レイブとかトランスとかプログレッシブ・ハウスっていうのよ。全然知らないし区別がつかんけれど。Durga McBroomなる女性ボーカルとYouthによるユニットだそうですが、マクブルームはピンク・フロイドでバッキング・ボーカルしていた人らしい。ユースはその道では有名なプロデューサですかね。かなりソウルフルでエモーショナルなボーカルなんだが、音が派手だもんで組合わせとしては丁度良いかもしれない。基本は打込みだけれど、生音(ギルモアのギターとか)をそれなりに(かなり多い方か)入れることで変化を出そうとしているみたいです。踊れなくちゃ意味がないんで、どうしても曲調は単調になりがちだし、気持の良い音だけを並べるから益々区別がつかなくなるんだよなぁ。その辺はおそらく仕方のないことなのだろう。

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最終更新日 2002/06/22