SAPPOROショートフェスト2006

イベントの総参加者数は9,130人


 第1回札幌国際短編映画祭(SAPPOROショートフェスト2006)が、2006年9月6日から10日まで、札幌東宝プラザをメイン会場に開かれた。特別会場のシアターキノでは、フレンチショートなどの特別プログラムが、上映された。私はメイン会場の全15プログラムを観た。

 多くの市民が会場に足を運んだ。実行委員会が公式発表した総参加者数は9,130人。内訳は、東宝プラザ、シアターキノ、マーケット会場、セミナー会場の公式来場者数合計が8,160人、レセプション・授賞式、先行上映会、プレビュー試写、ワークショップ(2校) などイベントの参加者数が970人。メイン会場の東宝プラザだけでも7200人が集まった。

 アワードは21の賞が用意された。作品部門グランプリは、リオン・フォード監督(オーストラリア)の「The Mechanicals メカニカル」、フィルムメーカー部門グランプリは、ダニエル・マロイ(Daniel Mulloy)監督(イギリス)に決まった。  監督賞は、「Medianeras(Side Walls)サイド・ウォールズ」(Gustavo Taretto グスタフォ・タレート監督、 アルゼンチン)。  また、特別賞が別所哲也(ショートショートフィルムフェスティバル代表)と「Monkeylove(モンキーラブ)」(監督:ロイストン・タン、主演:村岸宏昭)に贈られた。

 作品部門グランプリの「メカニカル」(オーストラリア)は、もし住宅の家電や水周りを人力で動かしていたらという、ドリフ的な設定だが、じつに手際良く笑わせてくれる。それでいて、観終わると現代生活について考えさせられる。この映画祭を象徴するのが、投票による観客賞で選ばれた「拍手」(イギリス)。クラシック・コンサートで楽曲が終了後、誰よりも早く正確に拍手することに情熱を燃やしている男と演奏者の関係を描いた作品。なかなかハートウォームなラスト。作品が終わるや否や、拍手に包まれ、それがこの作品にとてもマッチしていることに気づいて、会場は笑いに包まれた。映画祭ならではの、幸せな瞬間を体験できた。

「コリアン」と「オーストラリア」のプログラム

 「コリアン・ミュージック・クリップ」は、1人の監督にスポットを当てた。チャン・ジェヒョク監督に会えて感激。まさにクールという表現がぴったりな抜群のキレを持った才能豊かな監督だ。柔軟で多様な表現力は、世界的に観ても高い水準にある。宮崎駿監督に最も影響されたと語り、岩井俊二監督と感覚が似ていると話した。

 「オーストラリア・セレクト」は、6作品とも高水準。しかし、朝一番から濃厚なエロティックコメディを見せられて、目が覚めた。次にガン病棟のシリアスな物語が続き、ラストの「ブラッド・フッティ」は、多様性を抱えた家族愛を見せておおいに笑わせ考えされる内容。気持ちの良いラストを迎える。

国内作品のプログラムでは「ペイル・コクーン」

 国内作品のプログラム「NL-A」「NL-B」。「NL-A」では、「ペイル・コクーン」の総合的な表現力が抜きん出ていた。しかし、一番圧倒されたのは国内作品賞受賞の「タフ・ガイ」。スピードのあるCGパワーが炸裂した。ここまでのパワーはまれ。「またたく魔」のとぼけたストーリーも憎めなかった。「NL-B」では、ベリーショート賞を受賞した「The Trains」(ひらたたかひろ監督)が印象的。その独創的なデジタル編集力に嫉妬した。ギャグと美意識が融合した古田亘監督の「刺客の女」も好きだ。

「I-A」-「I-G」プログラムの驚くほど多彩な作品

 世界各地から集まった作品は、驚くほど多彩な表現とストーリーに富んでいる。その多様な個性を次々と楽しめるのが、ショートフイルム・プログラムの大きな魅力だ。「I-E」は、音楽に関連する作品を集めていたが、ドキュメンタリーから極めて実験的な映像まで、一番多様な表現が盛り込まれていたと思う。「うなぎ」の不気味さ、「極楽ロック」のカラフルさ、「マクラーレンの世界」の華麗さ。そして、観客賞の「拍手」で締めくくられた。「I-B」は、社会派の作品が集められ、さすがに重い。「ホテル・ルワンダ」でアカデミー主演男優賞にノミネートされた俳優ドン・チードルがガイドを務めるドキュメンタリー「地平線の彼方」は、オーソドックスな構成ながら胸に迫る。一番笑ったのは「I-D」の「ManOS」。これは、私がマックユーザーだと言うことが大きい。

チルドレン・プログラム「火星に行こう!」が出色

 多様な表現があるので、作品によっては暴力シーンなどの過激な描写もみられるが、チルドレン・プログラムは、子供が見ても安心な作品を集めていた。小学生以下を無料にした効果もあり、多くの家族連れで会場が埋まった。これまで世界の短編映画に接する機会が少なかった親子が大勢参加し、盛況だった。子どもたちは真剣に映画を見つめ、拍手していた。その光景が、とても嬉しかった。チルドレンといっても、子供向けの作品という訳ではない。大人が観ても十分に楽しめる。アニメーション賞に輝いた「火星に行こう!」は、アルゼンチンの作品で、大人の胸にしみる結末だった。セネガルを舞台にした「ちいさなビンタ」も、大人に子どもの可能性を伸ばす教育の在り方を訴えていた。

「フィルムメーカー部門」作家の強烈な個性が激突

 世界的にも珍しい試みだった「フィルムメーカー部門」では、3プログラム6監督の複数の作品をまとめて見ることができた。作家の強烈な個性が伝わってきた。グランプリに輝いたダニエル・マロイ監督の作品は、深く家族関係をえぐる。その力強い表現に圧倒された。カスミ・エックス監督は「フリー・スピーチ・ゾーン」が出色。コラージュの手法を駆使し反ブッシュ・反戦のメッセージを鋭くたたき付ける。その真摯さと情熱にうたれる。山口誠監督は、「何じゃ忍者」など、子供たちの目線で日常をとらえた脚本が見事。そして子役の演技の自然さに舌を巻いた。新しい子ども映画の誕生。学生の坂元友介監督は、「在来線の座席の下に住む男」「電信柱のお母さん」「焼魚の唄」など、独創的な世界を模索し、今後がとても期待できる。坂元監督本人と話す機会があったが「来年も必ず映画祭に作品を応募する」と約束してくれた。

★SAPPOROショートフェスト2006記録ビデオ集

★SAPPOROショートフェスト2006公式サイト

●Short Shorts Film Festival オフィシャル・サイト

●ショートショートフィルムフェスティバル2005in札幌の記録

●ショートショートフィルムフェスティバル2004in札幌の記録

●ショートショートフィルムフェスティバル2003in札幌の記録

●ショートショートフィルムフェスティバル2002in札幌の記録

●アメリカンショートショートフィルムフェスティバル2001in札幌の記録

●アメリカンショートショートフィルムフェスティバル2000in札幌の記録

Visitorssince2006.9.25