フィルムフェスティバル2004in北海道、盛況に終わるショートショート フィルム フェスティバル2004in北海道の札幌会場での上映が、7月7日から11日まで開かれた。会場は、アーバンホール(札幌市中央区南3西4、アーバン札幌7階)。26カ国の約130作品を上映。インターナショナル・コンペティション部門(6プログラム55作品) 、ナショナル・コンペティション部門(3プログラム13作品) 、ギリシャ・ショート(1プログラム5作品)のほか、北海道だけの多彩なオリジナルプログラムも用意した。1プログラム約90分。 北海道の特別プログラムは、コリアン、フレンチ、オーストラリアン、カリフォルニアの各ショートと、北海道セレクション。「デジタルシネマの技術とコンテンツ」と題したフォーラムも企画。10日は、オールナイト上映を実施した。多くの人が訪れ、プログラムによっては、満席になった。入場者は延べ5500人、2003年の3割増を記録した。 私は、インターナショナル・プログラムのA、B、C、E、ナショナル・プログラムのA、B、ギリシャ・ショート、北海道セレクション、オーストラリアン・ショートとカリフォルニア・ショートの一部を観た。 函館会場は、函館山山頂展望台イベントホールクレモナで、7月30日から8月1日まで開かれた。 ★ニュース!=ショートショートフィルムフェスティバルが、映画芸術科学アカデミー協会公認の映画祭として認定された。日本では、広島国際アニメーションフェスティバルが認定を受けているが、総合的なショートフィルムの映画祭としては、ショートショートフィルムフェスティバルが日本で初めての公認となる。今後、ショート・ショート・フィルムフェスティバルのグランプリ受賞作品は、自動的に映画芸術科学アカデミー協会会員のスクリーニングの対象となり、ショートフィルム部門にノミネートされる。
★ショート・ショート・フィルム フェスティバル札幌独自サイト
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5周年記念レセプションパーティー![]()
7月6日夜、札幌プリンスホテル・パミール館で、ショートショート フィルム フェスティバル2004in北海道5周年記念レセプションパーティーが開かれ、関係者や多彩なゲストが集まった。フォーラムにゲスト出演の真島理一郎さん、「誰も知らない」のキャンペーンで札幌を訪れていた是枝裕和監督らがスピーチした。 130の上映作品の中から「Early Bloomer」(IC)、「Dangle」(IA)、「Kitty」(IF)、「A kiss is a Kiss is a Kiss」(IC)、「Sunday Paper」(カリフォルニア)、「6:pm」(カリフォルニア)、「Japan」(北海道セレクション)を上映した。「Early Bloomer」の見事なアイデアに笑い、「Sunday Paper」の余韻に浸った。 ![]()
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インターナショナル・プログラム I-A「エクスカーション」(監督:Cris Jones、3分/2002年/オーストラリア)は、アイデアは面白いが、アイデアを生かすには短過ぎた。「ミゲリ−ナ」(監督:Reyther Ortega、13分/2002年/ベネゼエラ)は、人間と自然の不思議な関係を描く。「ひも Dangle」(監督:Phil Traill、5分54秒/2003年/ドイツ)。もしも空から一本のロープが奇妙にぶら下がっていたら-。脚本は2003年2月に行われたベルリン映画祭のTelent Campus で製作するようにヴィム・ヴェンダースによって選ばれた。誰でも思いつきそうなアイデアだが、面白くまとめている。 「亡命」(監督:Sandy McLeod、20分/ドキュメンタリー/2002年/ガーナ・アメリカ)は、ガーナにおける衝撃的な性的虐待の風習のドキュメント。バアバが、やっと探し出した実の父親は自分の選んだ男との結婚と女性器切除を強要する。センセーショナルにならず、淡々と記録している。「ハロー」(監督:Jonathan Nix、6分30秒/アニメ/2003年/オーストラリア)。温かなストーリーと蓄音機やカセットレコーダーの顔を持つキャラクターたちの表情が、心をなごませる。音楽への愛をこんなかたちで表現するとは。このアニメに会えて本当に良かった。 「水と花」(監督:Mahammad Ali Safoora、15分/イラン)。6歳のラスールは川にアヒルを見つけ、下流へと追いかけていく。素朴な味わいの中に自然の恵みが描かれる。「ピンクの風船」(監督:Kataneh Vahdani、2分7秒/アニメ/2003年/アメリカ)。かわいらしい架空の動物たちの冒険。「信号待ちの奇跡」(監督:Ruth Meehan、2分/2003年/イギリス)は、事故のような2分間の出会いの物語。心地よいエピソード。 |
インターナショナル・プログラム I-B 「夜の車」(監督:Taika Cohen、12分/2003年/ニュージーランド)。田舎のパブの駐車場で出会う男の子と女の子の初恋物語。「アクセサリー職人」(監督:Paul Daley、8分/アニメーション/2002年/イギリス)は、気球に乗った職人とおばさんの交流。もう少し観ていたかった。 「ミルトン」(監督:Harvey Wang、12分/ドキュメンタリー/2003年/アメリカ)は、ストレートで嫌味がない。ミルトン・ロゴビンは1950年代に政府の反米活動委員会によってブラックリストに載せられた後、生涯を彼の故郷であるニューヨーク州バッファローの貧しい地域の人々の写真を撮り続けている。「平壌ロボガール」(監督:Jouni Honkkanen and Simojukka Ruippo、3分30秒/ドキュメンタリー/2001年/フィンランド)は、北朝鮮の首都平壌の交通整理をする女警官を記録した作品。人形のような動きを、皮肉を込めてロボガールと表現している。 「メトロ」(監督:Aimee Lagos and Kristin Dehnert、11分/2003年/アメリカ)は、先入観について自覚させる作品。「つっつき合い」(監督Asier Altuna、4分/2002年/スペイン)も、雄羊の試合から闘いが人間に伝染する皮肉な物語「ネオ・ノワール」(監督:Chase Palmer、10分/2002年/アメリカ)は、1952年のアメリカを舞台にした「ロシアン」ルーレットを使った完全犯罪。見事なストーリーだ。「学校」(監督:Jonathan Hayes、8分/コメディー/2002年/カナダ)は、学校という異空間の物語。エドガーが教師を務めるクラスで次々と生き物が死んでゆく。 「ヒキガエル」(監督:Andrew Silke & David Clayton、4分/アニメーション/2002年/オーストラリア)は、キャラクターが面白い。 |
インターナショナル・プログラム I-C 「早熟 Early Bloomer」(監督:Kevin Johnson 3分50秒/アニメ/2003年/アメリカ)は、おたまじゃくしの成長の物語。単純に可愛くて楽しい。一転、「不可能な事柄」(監督:Annemarie Jacir 、16分30秒/2003年/パレスチナ)は、緊張する。占領下のパレスチナ軍事検問所。パレスチナ人の映画クルーが検問をうける。「クリッケルの冒険」(監督:Michael Zamjatnins 5分47秒/アニメ/2003年/ドイツ)は、チョークで描かれたクリケルと小鳥の黒板の上で素敵な冒険。 「フリーダブ ワン」(監督:Stephane Elmadjian 、8分/実験/2003年/フランス)は、戦争をめぐる映像実験か。「ゲルニカ」(監督:Marcelo Ortiz 、3分40秒/アニメ/2002年/カナダ)。名画の中をCGが動く。「着信」(監督:Theo Delane 、12分/フィクション/2002年/イギリス)は、携帯電話による新しい恐怖体験。拾った携帯電話を善意で持ち主に返そうとすると、とんでもない事件に巻き込まれる。12分を上手く使っている。「魚」(監督:Kim Spurlock 、4分35秒/2003年/アメリカ)は、男と少年、一匹の魚についての寓話か。 |
インターナショナル・プログラム I-E「ゴワナス、ブルックリン」(監督:Ryan Fleck 、19分/2003年/アメリカ)は、さりげない展開の中で、少女と先生の淡い絆が描かれている。「ストーンド」(監督:Leonard Palmest、30秒/コメディー/2002年/スゥエーデン)は、ヨーテボリ(スウェーデン)の町全体が2001年EUサミット期間中に暴力で溢れかえった記録に見せて、衝撃のキスシーン。「大脱出」(監督:David Gonzalez 、2分27秒/アニメーション/2002年/スペイン)は、3Dアニメのカメレオン大脱走劇。「恋のキューピット」(監督:Michelle Lehman 、1分/2002年/オーストラリア)は、実話に基づいたクスクス笑いのラブストーリー。母親の恋の応援をする幼い女の子が可愛い。 「結束」(監督:Hans Petter Moland 、9分/コメディー/2002年/ノルウェー)は、好きだ。ハイキングに出かけた8人の老人が、底なし沼にはまった若い女性に出会い、沼から助け出すが、今度は老人たち全員が沼にはまってしまう。そして皆死んでしまう。ノルウェーの労働党に触発されたというのが、いいね。「深い沈黙」(Deep Silence)(監督:Gustavo Loza 、15分/ドラマ/2003年/メキシコ)は、ほろ苦い物語の背景にキューバの現実を映している。SSFF2004オーディエンスアワード受賞作品。 |
ギリシャ・ショートオリンピックにちなんでセレクトされたギリシャ・ショートは、全体に固い印象を受けた。「リッスン」(監督:Katerina Filiotou、26分/ドラマ/2000年/ギリシャ)は、ふとしたはずみで浮気してしまった奥さんの話。緊張のあまり笑いながら夫に告白する姿が、なんだかリアル。唐突な終わり方をするが、結末は見えました。大人のショートです。 「脳みそをぶったたけ!Destroy All Brains!」(監督:Dimitris Emmanouilidis、22分/ドラマ/2003年/ギリシャ)は、少し怖い。一本の不思議な映画を見た後に人々は大きく変わる。「肉」 (監督:Cristo Petrou、5分/実験/2002年/ギリシャ)は、良く分からない未処理食用肉の記録映画。 |
オーストラリアン・ショート昨年7月北海道鷹栖町で開催された日豪短編映画上映会がきっかけで組まれた北海道独自セレクション。「FISH TANK」の監督ゲスト:デニスクインさんがゲスト出演し、作品について紹介した。 「FISH TANK」(監督:Denis Quinn、18分/1998)は、公のバーへは女性の出入りが禁止されていた1960年代に起きた有名な事件を題材にした。「MR. IKEGAMI'S FLIGHT」(監督:Robert Connolly、13分30秒/1995)は、企業戦士だったかつての日本人の生き方を描いたもの。折り鶴が、とても効果的に使われている。「THE CHRISTMAS TREE」(監督:Sandra Graham 、3分54秒/1999)は、クスクス笑いの小品。 |
カリフォルニア・ショート 「Sunday Paper」(監督:Eric Towner、12分)は、年老いた発明家バド・ワーリーが、偶然読んでいた本に発見した一枚の写真から、子供の頃の冒険を思い出す物語。ノスタルジックな映像が美しい。長く余韻が残る。「Spidermen」(監督:Harry Kellerman、8分)は、キャンデーをめぐって子どもと父親の交流を描くコメディ。微笑ましい。 |
ナショナル・セレクション・A 「オゴ Oggo」(監督:Saiman Chow, Han Lee、5分59秒/アニメーション)は、ランナーの身体内のアドレナリン細胞("oggo")の間で起こる徹底した戦いを通じた可愛くて残酷な物語。「ねこじる」的な毒。さまざまな時代の表現スタイルをミックスしている。「メロウ」(山崎大昇監督、15分/2003年)は、新しい人間関係の提示かと思わせて、ラストにキュンとさせられる。叙情あふれるアイデア。全編セリフなしの「ヘルムート」(監督:Isamu Hirabayashi、9分2秒/2003年)には、見事にやられました。この不思議な味わいをなんと表現したら良いのだろう。 「中毒」(監督:Shunichiro Sugihara、10分/2003年)は、リアリズムに徹したような地味地味な演出で、すこぶる寒いギャグをかます。ビフォー、アフター」(監督:TOMO、9分/2003年/カナダ・日本)は、シリアスで過酷な設定のドラマ。軍事政権側の兵士を次々と処刑する女性左翼ゲリラの葛藤を描く。ただ、図式的すぎる設定から自由になるわけではない。「楽屋」(監督:Hiroyuki Machino、12分/2003年)は、劇場の楽屋で起こる役者たちのいさかいをレトロな映像で切り撮っていく。それが、ラストのオチにつながる。ニャッとさせるが、ぎょっとはさせない。 |
ナショナル・セレクション・B「爆裂侍 SAMURAI SPRINTER」(板橋昌彦監督、4分40秒、2003年)は、勢いはあるが、アイデアがありきたりすぎる。「スイート・オプティミズム」(Ryotaro Muramatsu監督、24分/2003年)は、女の子の弱さとずるさを、少し優しい目で嫌味なく切り取っている。「天国に一番近い年よりたち」(Rintaro Ichikawa監督、4分18秒/アニメーション/2003年)は、特別養護老人ホームで働いた監督の経験を生かした、いかにも人を食ったアニメ。 |
北海道セレクション札幌ショートショート実行委員によるオリジナルセレクションプログラム。素人作品で質が低いという意見が、実行委が運営する掲示板に書かれていたが、私はどの作品にも才能を感じた。完成されていなくても、魅力的だった。 「放課後」(監督:小川亮輔、10分)は、思春期のさり気なさを切り取った。「求-rest-」(監督:中田千晶、3分42秒)は、独創的なアニメと実写の合成が印象に残る可愛い作品。「X2パイプ」(監督:登坂孝範、13分)は、アイデアは月並みだが、相変わらずのパワー炸裂。「占い師」(監督:滝内康太、5分5秒)は、稚拙にみえて、キャラクターの個性を引き出すというドキュメンタリーの王道に沿っている。「2 Shot」(監督:奥田萌、11分33秒)は、しっかりとした物語とカメラワークできっちりとまとめた。 「24」(監督:池田学、7分51秒)は、まっすぐなメッセージと映像処理のキレの良さが光る。「Persona」(監督:土江昌輔、11分)には、驚いた。こういう微妙なテーマに取り組み、まとめあげた監督の力量に感心した。そして、障害を持つカイを演じた山崎大昇が見事だった。「地球征服四畳半(第1話)」(監督:黒田拓、3分30秒)は、最も笑いをとっていた脱力コメディ。「つづく」のタイミングが素晴らしい。くつした宇宙人を操っていたのは、藤野羽衣子さん。なかなかの演技。「甘いびーだま」(監督:荒寿美子、4分30秒)は、ぎこちないが不思議な温かさがある。「Out In The Darkness」(監督:アラキマサヒト、4分)は、 CANDY YARDS JACK JAMのミュージックビデオ。アラキ監督らしいノリ。 |
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