本あれこれ

  本あれこれ2はここにあります。3はここです。


ここには分野に関係なく読んだ本から紹介しています


恒藤恭の学問風景/竹下他著/法律文化社/99年4月発行 2000/7/16
浪費なき成長/内橋克人/光文社/2000年2月発行  
買ってはいけない/週刊金曜日ブックレット/99.5発行 99/07/25 
国会議員/上田耕一郎/平凡社新書/99.5発行 99/06/06追加 
環境税とは何か/石弘光/岩波新書/99.2発行 
「金融恐慌」とビッグバン/大槻久志/新日本出版/98.9発行 
法と経済/石黒一憲/岩波書店/98.10発行 
「食べもの情報」ウソ・ホント/高橋久仁子/講談社BLUEBACKS 
蹴とばして前進/若林義文/光陽出版社/98.10.5 
大破局/徳間書店/フランクパートノイ・森下賢一訳/98年2月発行 
日本の社会保障/柴田嘉彦/新日本出版社/1998年9月発行 
エンパラ/大沢在昌/光文社文庫/98/6発行 
公共事業依存国家/中山徹/自治体研究社/1998年2月発行 
怪しいアジアの怪しい人々/クーロン黒沢/ワニ文庫/98年8月発行 
12万円で世界を歩く/下川裕治/朝日文庫/1998.3第6刷 
バンコク下町暮らし/下川裕治/徳間文庫/98年8月発行 
ザ・MOF−大蔵省権力とデモクラシー−/石澤靖治/中央公論社/95年10月発行
インターネット情報入手ガイドブック/池田冬彦/アスキー出版/97年5月発行 
身分制社会の真実/斎藤洋一・大石慎三郎/講談社現代新書/1995年7月発行 
環境ホルモン/田辺信介/岩波ブックレット456/1998年6月発行
地方に税源を/神野直彦・金子勝編/東洋経済新報社/1998年6月発行
大蔵官僚の復讐・お笑い大蔵省極秘情報/テリー伊藤/飛鳥新社/98年7月発行 
実戦・日本語の作文技術/本多勝一/朝日文庫/98年3月4刷 
日本財政の改革/岩波・谷山・中西・二宮/新日本出版/1998年3月発行 
税の攻防/岸宣仁/文芸春秋/1998年4月発行 
現代中国の経済/小島麗逸/岩波新書/1997年12月発行 
都市をどう生きるか/宮本憲一/小学館ライブラリー/1995年6月発行 
あきらめないでお父さん/全国税北海道地連/こうち書房/1998年5月発行 
新・サッカーへの招待/大住良之/岩波新書556/1998.4発行 
世界ウルルン滞在記/光文社/1998年3月発行 
フーテン老人世界遊び歩記/色川大吉/岩波書店/1998年.3月発行
インターネットの大錯誤/岩谷宏/ちくま新書/1998.4.20初版
牛島税理士訴訟物語/牛島税理士訴訟弁護団編/花伝社/1998年3月19日初版
弔辞/新藤兼人/岩波新書/1998年2月発行
野戦の指揮官中坊公平/NHK「住専」プロジェクト/NHK出版/1998年2月6版発行
きりひらこうあしたを 東京電力と19年2ヶ月/東電差別撤廃闘争支援共闘中央連絡会議
他編/非販売品?/1998年1月発行?
公共事業をどうするか/五十嵐敬喜・小川明雄/岩波新書/1997/3月発行
大蔵省改革−挫折の歴史−/石澤靖治/岩波ブックレット/1997年5月発行
ドキュメント税務署/大門路欣伴/エヌピー通信社「納税通信」編集部/1995年2月発行
サーチエンジン徹底活用術/原田昌紀/オーム社/平成9年12月発行
インターネットを使いこなそう/中村正三郎編著/岩波ジュニア新書/97年1月発行

恒藤恭の学問風景/竹下他著/法律文化社/99年4月発行


 ちょっとした理由があって法律学の勉強を再開したいと考えたとき基礎法学
の文献を手にしたいと考えました。そこで本屋でみつけたのがこの本でした。
 法哲学者ですが市民的にはあまり知られてないかもしれません。1970年代
までは著書(「法の本質」他)が本屋に並んでいたように記憶しています。
 昭和42年に生涯を終えているので今となってはしられてないのも当然かも知
れませんが、進歩的な法学者として、また平和運動の分野でも有名であったと
思います。
 読んでみてみてどうか・・・
 思ったより難解でした。時間の浪費とも思えましたが、一応最後まで目を通しま
した。
2000/7/16


浪費なき成長/内橋克人/光文社/2000年2月発行

大阪租税論研究会の例会で取り上げました。メンバーのなかにも著者のファンが多くて
テキストに決めるときも異存なく決まりました。
先日あった研究会では第1章のみの検討でしたが、なかなか興味を引かれる内容で
した。ここに取り上げたのも大辺がその報告を担当したからです。

著者は帰省緩和論を鋭く批判し、かつ今の日本の経済、財政のあり方に疑問を呈し、
幅広い知識から、それに変わりうるモデルも提示しています。
「はじめに」の要約を載せておきます。
■はじめに
●三つの開いかけ
○だれのための「改革」なのか − 九〇年代不況の根本を問う
 規制緩和論の真の意図は?
浪費を拒否する人を心配性と呼ぶ人
 先導する学者 60兆円問題
 市場主義の欺瞞 改革は誰のためになされれべきか
○節約と成長は両立しないか−−「浪費」を煽る政策形成者
 政府などはもう一度踊り狂わせたいと思っている
○「言葉」の真意はどこにあるのか−−「リスク社会」へのおびき出し
 個性尊重というけれど、それが自己責任、自助努力、自立などと結びついている
 金利をゼロにして、おびきだして、リスクを与える。。
 個の時代。。。競争は時代の流れ。。
 世界はリスクマネーを求めている 技術開発に必要なお金でもある 31
 努力する者が報われる社会というが。。32 リスク社会=個の尊重
2000/4/22


買ってはいけない/週刊金曜日ブックレット/99.5発行

 衝撃的なタイトルの本である。近くの本屋で売り切れたという話を小耳に
はさんだのが、関心をもったきっかけになった。
 内容は、一流メーカーの有名な商品を名指ししてそれがなぜ危ないか、
つまり、買ってはいけないかを説明している。この本については朝日新聞
もとりあげて、メーカーは抗議することなく、無視をする戦法であるらしいこ
ことを記事にしていた。
 取りあげられた商品は、、
 山崎製パンのクリームパン、ロッテのゼロ、サンキストのオレンジ
 味の素の味の素、コカコーラライト、森永牛乳の常温保存可能品、
 他、である。
 もちろん、その商品のなかのどの成分がどう危険かを具体的に書いている。
 本屋でもこれを手にとった女の子が「気にしたら何にも食べられへんか
ら、気にしないことにしてる」と言っていたが、確かにそういう側面はある
が、この本に書かれていることは、国民の間では常識となってもいい。

 99/07/25


国会議員/上田耕一郎/平凡社新書/99.5発行

 百科事典の平凡社が新書を! good newsだと思いました。
 事典の編集に関係した人々が、新書を書いてくれたら安くて、質の
 高い本が読めるからですが。

 創刊の数冊に共産党の上田氏が書いたものが入るとは意外な感
 じもするのですが、もちろん歓迎です。
 
 肝腎の感想ですが−−−
 思ったより、個人の感想が随所に入っていて、著者の人間性と自民党
 の議員を含めたところの周囲の人たちとの関係がそれとなく分かるなど
 興味深い箇所が多くありました。

 ○共産党には討論の自由がないと言われるけど、52年間言いたいこ
  とがあるのに黙っていたことがない−p35
 ○核密約問題で日本側の密使が若泉敬教授であることを突き止めた
  ときには、当時の副官房長官の木村氏俊夫氏が証言をしてくれたこと。
  −p51
 ○94年に沖縄問題が焦点になった国会で質問をした際には過去の国会
  での議論を読み返して、社会党の議員(川崎寛治)の質問を力作であると
  率直に評価していること。
 ○その社会党が国会のなかで表と裏の顔を使い分けていたことも、雑誌の
  引用で書いている。
  反対したように見せかけているけど、金が動いて結果的に採決に協力し
  たこと、他 −p79
 ○リクルート事件の発端が神奈川県警のリークに端を発していると言われ
  ていたこと。そのリークが例の盗聴事件でまずい立場に立った県警が当時
  革新市政だった川崎市のミスを公にしたかったとの推理を展開。

 新聞で大きく採り上げられた質問も多いことから、自分の記憶と照らし合わ
 せることができる事項も多く、かつ国会、議員、秘書のあり方など一国民とし
 して、知っておいた方が良い事項についても記述も多いので、この面からの
 勉強になる本である。

 自慢話になりがちなこの種の本のなかで、気持よく読める数少ない著では
 ないだろうか。

 99/06/06
 


環境税とは何か/石弘光/岩波新書/99.2発行

 大阪に「租税論研究会」(自治体労働者の数名と全国税税研メンバーで構成)
 という労働者が研究するための組織があります。
  これは今月と来月の研究会でテキストとして利用しているので手にした本です。
 著者は税制調査会の委員を長期に渡ってつとめています。したがって大蔵省の擁
 護者的立場の人物と思われますが、この本ではそうした立場とは別に、環境庁の
 各種研究会での成果であることを前書きで強調しています。

 肝腎の内容は
 第1章 現代の環境問題
 〃2〃 これまでの環境政策とその限界
 〃3〃 環境政策と経済的手段
 〃4〃 環境税のデザイン
 〃5〃 環境税の経済的効果と今後の課題
 エピローグ
 となっています。

 環境問題の現在とその原因、日本政府の今までの取り組みへの評価は当然私た
 ちの常識とは異なるのですが、そうしたことを抜きにして、環境税とはどんなもので
 どういう態様(タイプ)があるか、などが分かりやすく解説されています。
 99/05/23


金融恐慌」とビッグバン/大槻久志/新日本出版/98.9発行

 基礎経済科学研究所のある学科の研究会に出席してよんだ本である。
 著者は雑誌「経済」などで有名な人。

 内容としてはビッグバンの把握の仕方、その前提となる「金融恐慌」や
「金融の歴史の」の章立てもある。
 目次に従うと
 1 「金融恐慌」
 2 第二次大戦後の日本経済と世界
 3 金融の歴史
 4 バブル
 5 銀行業務と証券業務
 6 アメリカの銀行業の変化
 7 証券市場の変革
 8 デリバティブズとグローバライゼーション
 9 日本版ビッグバン
 10 日本経済の展望と国民のためのビッグバン

 上の7章〜8章をゼミで報告することになっています。
 後日、その成果?を付加します
99/02/08


法と経済/石黒一憲/岩波書店/98.10発行 

 国際私法、国際経済法を専門とする東大教授が書いた近代経済学の主流?派を
批判する本である。
 アメリカのご機嫌伺いをしているかのような経済外交とそれを擁護する学者とその
理論を批判しているので現在のマスコミの主要な思潮を批判的に考察する際には大
いに役立つ。
 構成は
 第一部 新古典派経済学のヘゲモニーを超えて
  第一章 新古典派経済学と近代経済学
  第二章 ”アメリカ的規制緩和”と日本
  第三章 コスト神話の虚実
  第四章 「ゲームの理論」の位置づけをめぐって 

 第二部 国際通商問題の法と経済
  第五章 自由貿易主義と公正貿易論
  第六章 ポスト・ウルグアイ・ラウンドと古派経済学?
  第七章 知的財産と公正貿易
 第三部 「社会全体の利益」と近代経済学
  第八章 国民生活と危機管理
  第九章 テレコムと高度化の理念と実践
  第十章 「郵政三事業民営化論」を超えて

 -------
 興味を持った記述を紹介すると
 ○スモン病と関連して外国の薬品の国内販売を認めるときのデータ
  の受け入れ問題に関連して、キノホルムは人種によって影響の表れ
  方が違うので自由貿易の観点からだけで解決すべきでない 98ページ

 ○規制緩和でよくでてくるテーマにアメリカの航空業界のことがある。規制
  緩和反対論者が自由競争を認めると安全に問題が出て来るというが、
  実際に事故は増えてないと主張するのである。
  著者はデータのとりかた、解釈の方法について、異論を述べている。
   データがとられた期間は技術革新によって安全がはかられているで
  その面の評価を含まないと正確な認識とは言えないという。210ページ
-------
 その他でも実名を挙げての批判など切れ味もいい。
 99/01/23
 


食べもの情報」ウソ・ホント/高橋久仁子/講談社BLUEBACKS

 食べ物には「俗説」があります。
 コーラは歯に悪い、缶ジュースの砂糖は体に悪い、・・
 この著者は「そんなに悪いの?」「そんなに良いの?」と疑問を持ちなさい
 と警告を発したいのであろう。

 面白かったのは有名な健康雑誌の<体に良いもの>特集の対象を集計して分析して
いたことである
 雑誌によってよく採り上げるものが固定する傾向にあること、ある食品は特定の雑誌は
注目するが、他では採り上げないとか、どの雑誌でもあるものが繰り返し採り上げられてい
ることとかが分かる。

98/12/25


蹴とばして前進/若林義文/光陽出版社/98.10.5

 労働、税金、平和を守る、政治革新の運動と地域で前面に立ち
活躍されてこられた著者。私は初めて聞く名前であった。
 この本は図書館で借りたが普通の本屋ではまず目にすることが
無かったのではないかと思える。
 有名な人だけが社会のために働いているのではない、当然のこと
かも知れないが、ともするとそうした考えに陥りやすい。著者の活躍を
読んでいくうちにこうした方がいてこそ現実に運動は前進することを
思い知らされます。若林さんは東京が活動の舞台なので大阪にいる
私が今まで知らなかっただけで東京では有名人なのかも知れないが。
 全国税の活動家のなかにも本にしたら面白く、他の人には教訓と
なるような人生を歩んで人がいる。

 読みやすい、論理明快、読んで元気になるような本。
98/12/21


大破局/徳間書店/フランクパートノイ・森下賢一訳/1998年9月発行

 サブタイトルとして「デリバテイブという『怪物』にカモられる日本」が表紙にも
書かれているが日本の銀行や証券会社が登場するのは一番最後のところだけで
少しがっかりした。
 著者はモルガン・スタンレー証券でデリバテイブの設計?とセールスを手がけて
いた人物。したがって話が具体的で理解しやすい。(*他と比べての話)
 これが翻訳出版になったのが98年2月のことで私が手にしたのは4月発行の
第4版だった。米国でベストセラーになったという話を評論家の紺谷典子(?)さん
がTVでしていたことが記憶にあったので買ったもの。

自分なりに理解したことの要点は・・
1 デリバテイブがそのような商品か、担当者としていろんなものを組み合わせる
  場面がでてくるのでそれなりに理解でるようになる。
2 そうした商品を扱っている人たちは非常に頭はいいがどこかで切れていると
  思わせる人物描写が多く、支える人間たちの心理と行動原理がわかるような
  気がする。
3 デリバテイブが投資というよりもギャンブルであることの側面が見える
  *本質は見えない。大辺には難しい用語がよくでてきて理解不能になる箇所
   も多い。
98/11/21  


日本の社会保障/柴田嘉彦/新日本出版社/1998年9月発行

 厚い本で645頁もあります。当然内容もそれにおうじて豊富です。
 値段も4800円と高く手を出しにくいので図書館で借りました。
 図書館で手にした理由は99年1月の税研全国集会の分科会(暮らしと税金)のための
基調報告を書く担当になったからです。日本の社会保障の現状と問題点、または歴史に
ついて役に立ちそうなことが書いてあるなという印象でした。
 目を通してみると、社会保障を守り発展させる運動について詳しく書かれていることも一
つの特徴だと思います。網羅的かつ体系を求める人にとっては読み甲斐のある本でしょう。

 下に引用するのは厚生白書で福祉先進国と比べても日本の年金が遜色がないといっている
部分への反論です。著者に全く同感です。
---以下引用----

根拠のない「遜色のない水準」宣伝

 臨調答申以後、政府と独占資本は、日本の社会保障が「国際的に遜色のない水準」に
達していると宣伝し、社会保障を抑制してきている。しかし、このような主張には根拠がな
く、依然として、日本の社会保障は立ち遅れている。たとえば、国内総生産あるいは国民
所得にたいする社会保障給付費の割合、国民一人当たり社会保障給付費はいずれも主
要国のなかで最低であることは周知の事実である。
 年金についてみても、年金給付費の対国民所得比は、日本は八・三と最低にある(九六
ぺ-ジ、第16図参照)。日本の年金水準が、「遜色のない水準」にあるかのように政府が宣
伝するために利用しているのが、第42表である。この表によると、日本の老齢年金額は円
に換算した額で主要国のなかで最高に近い水準であるかのようにしめされている(厚生省
の平成九<一九九七>年度版『年金白書』では、「主要国の被用者年金制度の概要」の
なかで、第43表のようにドイツとフランスについて、平均賃金に対する老齢年金の割合の
ところで両国の比率が低い理由を※印で説明している。このことは、前表の国際比較の数
字の欠陥の一部を認めていることを示している)。年金の水準についての国際比較は困難
であるというのが定説である。それにもかかわらず、このような単純な比較の表をつくり、こ
れを根拠に、日本の年金は主要国に「遜色のない水準」にあるなどということは、きわめて
意図的だといえる。

 この比較についてはつぎの五点を指摘しておきたい。
 @各国の年金制度の仕組みの違いを無視しているということである。スウェーデン、イギリ
スについての制度の対象者は一般国民、アメリカも一般被用者と自営業者などが対象とな
っているのにたいし、日本は一般被用者を対象とし厚生年金だけをとりあげている。
 厚生年金は、周知のように一般民間企業の従業員を対象としているが、その老齢年金受
給者は現在、日本の全老齢年金受給者の約三〇%にすぎない。
 日本で老齢年金受給者のもっとも多い年金制度は国民年金で、全体の約6割を占めてい
る。そして、その年金額は現在でも最低 額は現在でも月額4〜5万円程度の水準にある。

A各国の年金水準をしめしている数字は、それぞれの年金制度の平均の数字である。日本
の厚生年金の受給には、二〇年、二五年以上という長期の拠出期間を必要とする。ところが、
スウェーデンでは、基礎年金は居住期問ゼロでだれもが定額を受給でき、付加年金は三年以
上(事業主全額負担)、ドイツは五年以上、フランスは一・四半期(三ヵ月)以上、アメリカは四〇
・四半期(一〇年)、イギリスでも一〇年前後という短い拠出期問があれば年金を受給できる。

Bまた、各国の通貨の単位を単純に円換算しているが、円高のもとでは各国の換算した金額
は実態より低く表現されることになる。賃金水準と同じように年金額水準についても、円換算の
名目水準比較は正確ではなく、各国での実質的な年金水準(各国でそれぞれの年金でどれだ
けの物・サービスが購入できるかをしめす)のほうがより正しい比較となり、また水準の比較と
して重要である。周知のように、わが国は高物価であり・賃金比較でみられるように、実質年
金水準では名目水準よりかなり低くなるであろう。実質年金水準ともいうべきものをしめさなけ
れば真の年金水準の比較とはいえない。

Cさらに、一般に欧米では、公的年金に上乗せする「補足制度」ともよばれる私的・職域年金
が発達している。この私的.職域年金は、欧米では準公的年金ともいうべき性格をもっており、
一般に公的年金にこの私的・職域年金を含めたものが年金の水準とみられている。この私的
・職域年金は、スウェーデンとフランスでは全国的な労使協定により、被用者のほぼ全体をカバ
ーする強制適用となっている。アメリカも協約型に近くなりイギリス、西ドイツでも半数以上から
七割近くの被用者に私的・職域年金が適用されている一前述のように厚生省もこのことを認め
ている)。全体的にみて、退職前の所得のほぼ五〇-六〇%を公的年金、10〜20%を私的・職
域年金がそれぞれ受けもち、合わせて従前所得の六〇〜八〇%ぐらいの年金水準になっている
のが欧米主要国の実態である。
 たとえば、スウェーデンは従前所得の七〇〜七五%、アメリカは六〇〜八○%といわれている(
樫原朗) このことは、日本の企業年金は退職金の分割払い、あるいは厚生年金(報酬比例)
の代行であり、性格、水準、適用範囲などの点で欧米の私的・職域年金とは異なっている。年
金水準の比較では、欧米諸国のこのような私的・職域年金を無視しては正しい年金水準の比
較にはならないというのが衆目の一致するところである。

Dこのほか、所得保障としての年金は老後生活保障の柱であることはいうまでもないが、高齢
者の生活という場合、年金だけを他の生活条件から切り離してみることは正しくないであろう。
医療、社会福祉、介護、社会サービス、物価、税金、住宅、公共施設、雇用、文化、スポーツ、
旅行など生活を支える幅広い生活諸条件との関係で年金水準をみることが必要である。日本
の高齢者の生活条件に関する公的な保障がきわめて不十分なことは周知の事実である。年金
の国際比較では、このような生活諸条件も考慮しなければ、生活保障としての年金の水準を正
しくみることができない。高齢者の社会的な総合生活保障という視点での比較でなければなら
ない。
大辺注:518〜521頁 一部省略した
----引用終わり----
98/11/21


エンパラ/大沢在昌/光文社文庫/98/6発行

 推理は森村誠一以来読んでいない。それで最近の作家を見てもほとんど知らない。
 この本は作家大沢氏がベストセラー作家15人と対談をしている。

 その作家は船戸与一、京極夏彦、藤田宜永、瀬名秀明、宮部みゆき
 北村薫、梅原克文、綾辻行人、真保裕一、小池真理子、白川道、
 志水辰夫、北方謙三、内山安雄、浅田次郎である。

 宮部みゆきは高額納税者のリストにあったので興味はあった。あと小池
 、志水、北方、浅田、北村は名前は知っていたがどんなものを書いている
 かなどは全く知らなかった。

 98/10/24


公共事業依存国家/中山徹/自治体研究社/1998年2月発行

 私は今、中山氏は公共事業問題の第一人者だと思っている。
 中山氏は、自治体問題研究所の理事など幅広い運動にも加わっておられる研究者である。
 この本はわかりやすく教えられることが多い。
 具体的には、日本の財政赤字がここ数年の公共事業に毎年何十兆円とつぎ込んで
きたことが第一の原因であることが説明されている。その他にもごみ問題としての公共
事業という視角から、埋め立て中身は以外と土砂が多いことが示されている。専門家
の間では常識だったことかも知れないが、私はこの本で初めて知った。
 地方政治の場が公共事業の末端で仕事をもらう土建関係者が集まる場となっている
ことも指摘している。このことと関連して地方に於ける産業のあり方を市民自身が考えて
見る必要性にも触れているが、同感である。

 全体で56ページだから一時間くらいで読める。

 公共事業批判入門として最適の本である。
98/10/12


怪しいアジアの怪しい人々/クーロン黒沢/ワニ文庫/98年8月発行

 著者はプノンペンで貸本屋をやっている人

 下川ものの影響でアジアに興味が出てきて読んだ。
 かなりはずれた人々の生活を描いている。
 若い日本人がアジアの町を旅行したり、住んだりしているいることが分かる。
  目次から
    恋したベトナム少女を捜してアジアにテレビCMを流した青年
    姉ちゃんたずねて四千里

   東南アジア日本人たまり場情報 カンボジア−プノンペン編

   香港警察に逮捕された男

 日本人がアジアで「活躍している」様子がおおげさ?に書かれていて退屈しない本

98/09/13


12万円で世界を歩く/下川裕治/朝日文庫/1998.3第6刷

最近「下川もの」をよく読む。
 この本は「週間朝日」で題名と同じ企画をしたことがあってその旅行記をまとめたもの。
 たった12万円で行ったところは
   タイ、マレーシア−ヒマラヤのトレッキング−韓国バスで一周−神戸から船で中国へ、長江
   の終点へ−アメリカ大陸1万2千2百キロ−北京からベルリン列車の旅−・・と続く

 カメラマンを同行しているので写真も多く読みやすい。
98/09/13


バンコク下町暮らし/下川裕治/徳間文庫/98年8月発行

 著者は1954年生まれのフリーライターです。
 妻子を伴ってタイ語を学ぶためにバンコクで暮らす様子を読みやすい文体で
綴っています。
 この著者も書いていますが、10年くらい前から「今アジアがおもしろい」と言
われはじめたそうです。確かにこの本を読むと日本とは違うタイプの暮らし方が
あって、それはそれなりに存在理由がある(当然のことですが)ことがはっきりと
わかります。それが未知のものを知ったという気にさせてくれます。

 私なぞは単純なので日本、特に自分の周囲で起きることを基準に
してしまいますが、それはおかしいと気がつくのです。

 物乞いをするために子どもを誘拐する、しかも手と足を切り取って同情を誘うように
する−こんな話もでてきます。13ページ
 入国管理局に役人に奢らされて、そのあげく便宜はなかったこと。109ページ

 ガイドのたぐいでは分からないタイの庶民の暮らしがうかがえて興味をそそります。
98/08/31 


ザ・MOF−大蔵省権力とデモクラシー−/石澤靖治/中央公論社/95年10月発行

 著者は「ニューズウイーク日本版」副編集長でもあり、立教大学で非常勤の講師もしている。
 大蔵省関連の本ではここでもとりあげた「大蔵省改革−挫折の歴史−」を書いている。

 この本では国税庁の執行過程をとらえて「MOFの警察権力」として注目している。所得税法
違反事件がその後の大きな事件の端緒となることがあることを指摘している。そして金丸信の
ケースをとりあげて「キングメーカー」をも逮捕できるという警察権力をもっていることが明らかに
なったとしている。
 東京佐川急便事件、ロッキード事件の児玉誉士夫も東京国税局から脱税で告発されたこと
を挙げて、社会的に注目された事件で国税当局の「調査権」が行使されることが多く、それは
国民からの喝采を受けるとも書いている。
 著者はMOFの権力の最大の源泉は「予算編成」にかかわる権力だとしている。
 また、主計局を「裏から支える主税局、外局である国税庁、国債発行と国家の第二の予算で
ある財政投融資を管轄する理財局が、MOFの本流の顔ということになる。そして銀行局や証
券局、それに付随する国際金融局などの「市場型グループは」は、常にこれら統制型の「予算、
税収組」よりも下位に置かれてきた。」と書いている。

98/08/20


インターネット情報入手ガイドブック/池田冬彦/アスキー出版/97年5月発行

今では類書が多いのでこうした知識を得るのに不自由はないが、私の周囲で聞いて
みると、Yahoo以外はあまり使われていないようだ。
 
 この本はわかりやすく、書かれている項目ごとに「まとめ」があり、学習参考書みたい
に読む人の便宜を考えてつくられている。

 ひょっとするともう店頭では見かけないかも知れないが、買って後悔しない本だと
思う。


身分制社会の真実/斎藤洋一・大石慎三郎/講談社現代新書/1995年7月発行

 江戸時代の「身分制」の実際はどうであったのか、これを探る本です。
 本当に「士農工商」であったか?などの疑問を提示している。

学校日本史=国民の常識となっている をくつがえす本であると感じたが、次のようなこと
も書かれている。
−−−−−−−−−
八代吉宗の生母である浄圓院お由利の方一お紋一に至っては素性が一切わからず、諸説あ
る中から一番良い説を採って、紀州領内の百姓の娘ということになっている。お紋は、紀
州城の風呂場の水汲みと風呂焚きという下働きの女性であったが、当時の紀州藩主光貞の
お手つきとなったのである。
側室から生まれた他の将軍たちの生母も、以上の三人とそう変わらない。身分制社会の
頂点に立つ将軍の多くは、身分制を全く無視した形で生まれているのである。これは、諸
大名についてもいえることだった。
武士にとって最も大切な「禄」は「家」についているから、一般武士にとっても、家を
継いてくれる男の子を得ることができるかどうかは深刻な問題だった。このため、正妻は
その家の身分相応のところから迎えるが、後継ぎを生み出すために側室が必要とされたの
である。 18ページ
−−−−−−−−−−
 要するに身分制の頂点にあった将軍でも上に示されるように、内実は「ゆらぎ」があったと
説明されている

−−−−−−−−−−
また、同じ武士の中でも、犯罪を犯した者の身分によって処罰に差があった。例えば、
禁じられていた博打を幕臣がした場合を見てみると、旗本身分では、本人の遠島に加えて
その妻も縁座により遠島となるが、御家人身分では、本人は遠島となるものの妻には罪が
及ばない規定であった。武士の中でも、身分が高い者ほど処罰が厳しかったのである。
の点、今日の社会的地位の高い者ほど罪が軽く、低い者ほど重いのと正反対
だといえる。
以上のように江戸時代は、社会の全てに差別をつけて組み立てた、いわば「総差別」の
時代であったが、こうした差別の最たるものが「えた・ひにん」の問題であった。
江戸時代の差別が我々のイメージよりはるかに複雑な様相を帯びていることは既に指摘したが、
こうした問題も含めて、江戸時代の「被差別民」の実像を実証的に考証したのが、斎藤洋一氏によ
る本論である。 22ページ
−−−−−−−−−−−
はじめて知ったことも多かった。

98/07/15


環境ホルモン/田辺信介/岩波ブックレット456/1998年6月発行

 今本屋に行くと環境ホルモンに関する本が多分20種類以上並んでいます
 この本を選んだのは「薄さ」からです

 環境ホルモンが注目されるきっかけになったのは「奪われし未来」シーアコルボーン著
 である。この本には化学物質が体内でどう作用するか、その結果がどう症状に現れる
 かを論じたというのです。それまでの断片的な研究をつないで説明したということです
 これが理解しやすいものだったので反響を読んだ ということです *3ページ

 レセプターが化学物質をホルモンとまちがえるからで、その理由は分子構造などが似て
 いるといいます *7ページ

 女性化、精子の減少がとりあげられているが、ガンの発症や免疫機能の低下もきたす
 可能性がある *11ページ

 ごく僅かの量(ppt)=1兆分の1 でも作用をきたす *13ページ
 これはタンク車660台分のトニックにジンを1滴たらすのと
 同じ量だそうです 13ページ

 現代人であれば、環境ホルモン問題に関する本は一冊くらい読んだ方がいいような
 気がします
 
 98/07/14


地方に税源を/神野直彦・金子勝編/東洋経済新報社/1998年6月発行

 ここ数年大阪自治体問題研究所のなかにある「地方税研究会」に出席する機会が多いので
こうした地方税の文献も目にするようになりました。本代が一段と大変になるわけですが、今まで
「税研」と言いながら地方税・財政に関心を持っていなかったことが一種の恥にも思えて来ました。

 ところでこの本はまだ全面的に目を通した訳ではないですが、私にとってとても興味を惹かれる
部分がありました。
 それは第3章「どのような地方税が必要か」というところで徴税態勢とそのコストなどをいろんな
タイプに分けて分析しているところです。
 分権促進、税源移譲といいながら執行に目を向ける方が少ないというのが今までの印象だった
のですが、これを見るとその印象が覆されるようです。
 著者の結論と私見は異なりますが、一歩進んだ議論だと感じた訳です。






大蔵官僚の復讐・お笑い大蔵省極秘情報/テリー伊藤
飛鳥新社/98年7月発行 98/07/04

 テリー伊藤は外見とは反してまじめな人物で、日本は「今のままでいいのか」という
問題意識をもっていると私は見ています。
 同じシリーズの前著は読んでません。

 今回はノンキャリアも登場して「過激な」発言をしています。キャリアも登場してこれまた
「過激」です。

 印象に残ったのはノンキャリアが告白している「事務室でもノンキャリアはキャリアの机
に近づいてはいけない」という慣習があるということです。
 今までも同僚が大蔵省に人事異動で配転になったことがありますが、その全員がこうし
た待遇だったのでしょうか。にわかに信じがたいくらいの身分制社会が残っているので
しょう。
 
 すこしだけ引用を・・
 −−−−−−−
〔伊藤〕ノンキャリの人とキャリアの人というのは、基本的に仲が悪いんですか。.
〔ノンキャリア〕いいわけないでしょう。
 −−−−−−−以上13頁
〔ノンキャリア〕 まっとうなんです。人間をいろんな角度から見ることができる頭を持っているということ
     です。キャリアの連中は常に学校の成績でしか見ることができないから、なんでも点数
     に置き換えないと判断できないわけでしょう。でも、我々は普通のまともな育ち方をして
     きてるから、人間を総合的に見ることができるんです。だから我々のほうが頭がいいん
     ですよ。
     もう一で言いたいのは、大蔵省がいま叩かれているけれども、政策を間違ったのは、あ
     くまでも全部キャリアの連中であって、我々はただの一回も間違ってない。
〔伊藤〕ノンキャリアの人だから、もう少し謙虚かと思ってたけど、態度はでかいね(笑)。やつぱり
    大蔵省ですよね。
〔ノンキャリア〕 態度でかいかなあ。
 −−−−−−−−以上15頁
 などと面白くて興味深い会話が続きます。

 その他、キャリアが大蔵官僚の権力の源泉として「国税の調査権」をあげているところも興味を引きました。
−−−−−−−−−−−−−−
〔キャリア〕 一番大きいのは、ギリシャ・ローマから始まって、国家が国家として出現してきたとき
  に、最初から一番大きな権力は結局、税金を集める徴税権ですよ。徴税権から誰も逃れること
  ができなくて、しかも、あいつ税金払ってないと言われたら、守ってくれる人はいないでしょう。
  自分は仮に払ってなくても、税金を払わないやつはとんでもないと。世界のどこに行っても、税
  金を払ってない人は許されないですよね。普通は大蔵官僚が持っている最高の権力は、主計
  と言われてるけどね。主計というのは簡単にいえば、予算の配分を決めることだけど、それは実
  は国民一人ひとりに直接関係ないでしょう。例えば、テリーさんが予算の配分を主計局から受け
  るわけではないから。それはどちらかといえば、インナーサークル、内輪の権力。
   だけど、徴税権に関しては、その国家で生活している生きとし生ける者は全員網にかかるわ
  けです。それはどこの国家でも同じであって、それを握っているやつはすべての力を有してい
  るんです。相手が総理大臣だろうが、最高裁長官だろうが、庶民だろうが、税金に関しては全
  部この権力の網の中に入るから、大蔵官僚にとっては常にりーサル・ウエポン、究極兵器を持
  つているわけなんですよ。
  いいですか。一番暴力的な兵器を持っているから、例えば、テリーさんに弱みを握られて、テリ
  ーさんが何かをバラそうとしても、じやあ国税が調査に行きますよ、ということがいつでも使える
  という気持ちがあるんだ。
〔伊藤〕 だから大蔵官僚は怖いものがないんですね。徴税権という最後の切り札を自分たちが
   持ってると思ってる。
〔キャリア〕 そう。現に持ってる。
−−−−−以上70頁
 
 こういうことを言うとは、官僚がそうした場面を見たり聞いたり、あるいは実行したから言えるので
しょう。
 98/07/04


実戦・日本語の作文技術/本多勝一/朝日文庫/98年3月4刷

 本多勝一は27年前に住吉税務署で一期後輩のH君から「おもしろい本がある」と
薦められた本(アメリカ合州国?)の著者であった。それ以降関心を持ち続けてきた。

 もちろんドキュメントの著者として有名すぎるくらい。朝日新聞で読んだカンボジア虐殺
の跡を追ったものなどは記憶が鮮明である。

 この本は題名の「実戦」に引きつけられて買ったもの。
 テンの打ち方について詳しく書かれている。本当はこの説明は私にとってはあまり
参考にならなかった。

 テンの打ち方に関連してある有名な紀行文作家の論を批判したり、大久保忠利氏を
徹底的に批判している。
 特に大久保氏についてはかってその著作を数冊手にしていたので軽いショックを受けた。
なぜかというと、本多氏の言い分が正しいように思えるからである。私のなかでは大久保
氏は文法の大家であったが、考え直さねばならないのか。
98/06/28


日本財政の改革/岩波・谷山・中西・二宮/新日本出版/1998年3月発行

 内容
 1 「財政危機」と財政構造改革         谷山治雄
 2 財政赤字と政府債務累積の財政構造   岩波一寛
 3 財政構造改革路線と社会保障構造改革  二宮厚美
 4 21世紀の社会保障制度はどうなる     中西啓之
 5 「行財政改」と地域・自治体         中西啓之

 著者は私たちの税研集会で講師をされたことがある方達です。
 論調は想像のとおりですが、今の情勢を的確に把握し、政府の進める
 財政構造改革を正面から批判する内容となっています。

 類書が出ていますが、この本がもっとも体系的な批判の書となってい
るように思います。
−−−−−−−−−
 話は変わります。
 谷山氏の書かれた部分で私が関心をもったのは次の部分です。

 かりに消費課税を含むすべての間接税を廃止して直接税だけで税収を賄うとすると、
国税のばあい、現在の税収ベースでトータルとして直接税収入をおよそ五〇%程度増
やさなければならない。累進課税とそれを実行するためのもろもろの規制を考慮しても、
このような税制改革は理論的に不可能ではないが、実際には不可能に近いといってよい
ほどきわめて困難であるといってよいであろう。したがって現実的プランとはならないとい
えるが、一応モデルを作ってみることは価値があるのではないかと思う。
 つまり累進課税を軸にしてギリギリどこまで課税が可能かの理論モデルあるいは仮説
を示す、そして現実の税制改革としてはこれが不可能に近いとすれば、消費課税にどの
ようにシフトしたらよいのか、いわば原則からの「譲歩」を示すことができるからである。
 ここで強調したいことは、原則にもとづくということが、消費税およびその増税にたいす
るたたかいのいわば原点として重要だからである。いうまでもなく消費税は財政当局に
とっては「打出の小槌」―ヨーロッパではなんでも願い事のかなう「アラジンの魔法のラ
ンプ」と呼んでいるーであり、大企業や富裕者などの支配階級にとっては自己の負担を
・・・
上のように書かれて、次に消費課税が、どのような条件のもとで可能かを考察していま
す。

 谷山氏もことわっているとおり、当面の税制改革運動の課題ではないが、問題提起と
して考えたということです。

98/06/13


税の攻防/岸宣仁/文芸春秋/1998年4月発行

 著者は元読売新聞の記者、大蔵省担当が長かったもよう。1991年に退職している。
 「賢人たちの誤算 検証バブル経済」という本も書いている。

  攻防というからには登場する団体・組織・個人は多様で取りあげる税も多種にのぼると
想像されるが実際はそうではない。
 消費税が主にとりあげられ、登場する人物や組織は大蔵省関係者、自民党の政治家な
どが多い。
 消費税導入に反対してきた国民や組織の大半は名前さえ出ない。もっともないものねだ
りかもしれない。
 攻防の軸になるのは主計局対主税局、大蔵省対自民党、大蔵省対『朝日』だったりする。
 こうした軸を中心に逸話をはさみながら消費税をめぐるうごきを描写している。
 新聞記者というだけに取材力は抜群で、ある局面で誰がどういう発言をしたかとかについ
ては非常に詳しい。それゆえに面白いとは言えるのだが、物足りなさも感じる。
−−−−−−−−
 大蔵官僚がフランスで付加価値税に関心をもってレポートをおくったこと
 大平正芳「一般消費税」をいれようとした経過(昭和54年)
 中曾根「この顔が嘘をつく顔にみえますか?」と演説した場面(昭和61年6月30日)
  札幌での街頭演説
 竹下首相の六つの懸念(135ページ)
 等々と私たちの記憶を蘇らせてくれる記述が非常に多い。

 また、 次のような面白い科白もところどころに出てくる 
 中堅幹部もいた。「朝日が反権力だって、とんでもない。あそこの会社は役人がやるものは
全部駄目なんだ。正しいものは正しい、間違っているものは間違っているというケジメがない。
本来マスコミは是々非々でいくべきなのに、あの会社にはそれがない。単に重箱の隅を突っ
ついているだけじゃないか」 あからさまに批判し、こう付け加えた。「要するに、自民党がどう
言おうが朝日がどう言おうが、正しいことは、一つ。われわれは国家、国民ののためにやって
いるんだ。」(途中省略)
 私憤か高じて、義憤になった。朝日憎しの感情は相当なもので、最後は巨人かアンチ巨人
かのレベルにまで落ち込んだ,その裏には自らの意に沿わない者を切り捨てる、大蔵官僚の
おごりのようなものも見え隠れした。(253ページ)

 読売新聞では消費税関係の記事では上の検閲が厳しかったこと(もちろん消費税に反対の
意見に対して)
 
 旧社会党の西岡瑠璃子さんのことは好意的にとりあげられている。ここは国民の声を反映し
たうごきと、それに応えようという政治家の信念がうかがえて興味深いところです。
−−−−−−−−−−−
 報道されていないことも多く、舞台裏をちょっと覗いた気分にしてくれる、もちろん消費税を
めぐる動きがどうであったか、事実の確認のための基礎文献として一定の役割は果たしてくれる

98/06/04


現代中国の経済/小島麗逸/岩波新書/1997年12月発行

 中華人民共和国の建国から今日に至るまでの中国経済50年史。(表紙裏書きより)
 政治は社会主義、経済は資本主義とか言われている中国の経済については一度勉強して
みたいとおもっていたときに手にした本。
 今までこの種の本は読んだことがなかったので知らなかったことだらけ。
 国債は1950年代には発行していたものの60、70年代は全く発行されていなかったこと。
 これが「借金は悪」という考え方によるものであったこと。
 1989年以降は中国の賃金分配率が日本のそれを越えたこと。企業の福利厚生費を含めると
50%を超え欧米工業国と同水準であること。(148頁)
 など、など

 税金のことはあまりでていない。

98/05/21


都市をどう生きるか/宮本憲一/小学館ライブラリー/1995年6月発行

目次から
 はじめに
 君たちはどう生きるか
 街並みと芝居をみて歩く
 都市の再生をめぐって
 都市と大学
 環境の思想・アメニティの政治経済学
 未来のコストを誰が負担するか
 補論 地球環境時代の都市アメニティ
 あとがき

 宮本氏の都市論を随筆風の表現で展開しています。
 論文調の文章ではないので読みやすい。


98/05/21


あきらめないでお父さん/全国税北海道地連/こうち書房/1998年5月発行

 全国税北海道地連がこのたび右の本を出しました。
 内容は以下のとおりです。
 *連絡先−〒060−0042
   札幌市中央区大通西10丁目 第二合同庁舎
   п@011-271-2940


はじめに
1座談会 国税の妻たちは訴える
   はじめに 
  ○妻たちが語る単身赴任
    転勤は仕方ない?/単身赴任選択のワケ/喜んで単鼻赴任したワケじゃない/
    転勤の予告が出た日のこと/考える余裕もない転勤!/夫婦できめた約束事/
    夫の「自立」宣言/健康が心配/たまの帰宅は寝てばかり/家族も気を遣う
  ○子どもたちもつらかった
    七月転勤 − 夏休み前か後か? で悩むこと/子ともたちに故郷を/子どものい
    ない卒業アルバム
  ○国税の妻たちの嘆き
     ほんとうは語り合いたい/家庭崩壊
  ○妻たちの自立、仕事、人生のこと
     立てられない生活設計/家族は同居が当たり前/辞令があとからと   んできた
  ○単身赴任はなくせるか
    なぜ変わらない大量配転?/定住して仕事を/プライバシーもない身上申告書/
    公務の要請」は万能か?

2 単身赴任日記
  ○私の「倶知安」日記
  ○なぜ、私が?−いま日記を振り返って
  ○留守を支えて 

3「単身赴任」という名の人権侵害
  恥ずべき「ジャパニーズ・タンシンフニン」/「人間らしく生きる」権利として/生存権の
  保障と単身赴任/幸福追求権と単身赴任/両性の平等・夫婦の同居義務と単身赴任
  /子どもの人権と単身赴圧/働く女性の権利と単身赴任/わが国の裁判と今後の展望

4 とりもどしたい笑顔の職場と家族のだんらん
  Aさんからの手紙/人間破壊・家庭破壊に通じる単身赴任/なぜ大量の配転なのか
 /21世紀は単身赴任がない職場が必ず到来する/求められているのはルールの確立
 /単身者の悲痛な叫びを胸に刻み……

あとがき 


新・サッカーへの招待/大住良之/岩波新書556/1998.4発行

 著者はベースボールマガジン社で「サッカー・マガジン」の編集長を経てフリーに
なった人物。そうした経験もあってか非常に読みやすい。
 この本は、最近セレッソの試合を見てサッカーへの関心が高まってきたので手に
したもの。
 初めて知ったことは多い。
 サッカーは最初「フットボール」と呼ばれていたが、ルールの統一作業などを経て「
「アソシエーション・フットボール」と呼ばれることになり、その後「ASSOCIATION」の
一部をとって「SOCCER」という俗称が生まれたとのこと。(p3)
 日本では1974年まで「蹴球」が正式名称だったこと。
 1968年メキシコオリンピックで銅メダルをとったこと(これは微かに記憶がある)
 移籍金の慣習はクラブ運営の資金となっていたこと。
 オフサイド適用の基準がいろいろ変化してきたこと
 ゾーーンプレスの意味、これが加茂監督の発案ではないこと
 など、など
 98/05/09



世界ウルルン滞在記/光文社/1998年3月発行

 テレビのウルルン滞在記のことは他のページにも書いたがホントに良い番組だと
思う。観光旅行ではまず行かないところへタレントが泊まり込み(ホームステイ・多くは一週間)をし
一定の技術(仕事)を身につけるという設定である。
 最後の場面(タレントとホームステイ先の人が分かれる場面)では必ずといっていいほど涙を出すが
番組をみているだけでも涙がこぼれる。体験する人が涙を流すのは当然である。
 テレビでは一応クイズ番組だという形式をとっているが、中身は情報、人情ものである。
司会者の徳光氏も人間性が出た司会で好感がもてる。回答者の一部にはいい感じはないが。

 この本で登場するのは
モンゴル遊牧民の引っ越しに出会った-原田龍二
タイのサルに出会った−岩崎ひろみ
北極圏のオーロラとニューギニアの裸の部族に出会った−山本太郎
ウォッカで燃える人々に出会った−永作博美
知られざる人々モソ人に出会った−濱田マリ
スコットランドのバグパイプに出会った−山本耕史
バヌアツの裸の青年団に出会った−北原雅樹
ウエールズの牧羊犬に出会った−野村佑香
中国・桂林の鵜飼に出会った−加藤晴彦
大平原に出会った−別所哲也
ロシアのコサックに出会った−唐渡亮
本場イタリアの靴に出会った−阿部寛
アマゾンの大自然に出会った−河相我聞く
アラビアの砂漠に出会った−田辺誠一
ナポリの陽気なピザに出会った−羽野晶紀
ケベックのメープルシロップに出会った−秋本祐希
タイの舟そばに出会った−原千晶
イスランド・バイキングの兄弟に出会った−藤重政孝
イタリアの鞄に出会った−松村雄基
ジャングルとオランウータンに出会った−田中美奈子

ほとんどをテレビでも見ていたので書かれたことの背景などがよく理解できてなお面白く
感じた。本はタレントが自分の感想を書く形になっている。決して台本を要約したもので
はない。したがって、番組を見た人にとっては興味をもてるが、そうではない人には分かりづらい
記述が多いかもしれない。
98/05/05


フーテン老人世界遊び歩記/色川大吉/岩波書店/1998年.3月発行

 引きつけられる旅行記だった。訪れたところはユーラシア、ウズベキスタン、カザフスタン、
ニュージャージー、シチリア島、パキスタン、インド、中国、ソ連、イラン、イラク、アフガニスタン、
グアテマラ、クスコ、マチュピチュ、チチカカ、アルゼンチン(パタゴニア)、チリ、ハンガリー
チベット、と色々である。

 たいていの旅行に「女友達」を同行しているようであるが、これも意外なことであった。
 またいろんなところで国境を越える際の苦労がハラハラさせると同時に国柄がでていて
興味深いものがあった。
 
 本の頭にいろんなところで撮った美少女の写真が14枚ある。趣向としておもしろい。
 公式でない旅行記(最近は多いが)を望むものにとっては非常に参考になる。
98/05/05


インターネットの大錯誤/岩谷宏/ちくま新書/1998.4.20初版

 正直言って私の思考力では何を言いたいのかが理解できなかった。
 ただ、著者は「すごい事を言っている」という気持ちは持っているだろう。
 確かに著者の構想は広大で理想的ではあるが、段階的な進歩しかありえない諸技術
が自分の構想とは異なるからといって論難するのはどうかと思う。
 
 そこまで言うの? といった感じの記述が次から次へ出てきて狭い意味での刺激的な
本です。
 普通ではお目にかかれないインターネット論を味わって見たい方にとっては
絶好の本かもしれません。







牛島税理士訴訟物語/牛島税理士訴訟弁護団編/花伝社/1998年3月19日初版

 牛島税理士は税研集会でお見かけしたことがあります。
 毎回の参加ではなかったかと思います。その集会でこの本のテーマである裁判のことをいつも
うったえておられました。
 多分平成6年1月の集会だったはずですが、そこで最高裁が口頭弁論を
開くというニュースが伝えられました。
*この本からの抜き書きがここにあります


北野教授の序文から抜粋したものを載せておきます。
*序文の一部を省略しています

序文
日本大学法学部教授北野弘久

 牛島税理士訴訟物語というのはひとりの税理士によるほぼ二〇年に及ぶ税理
士制度のロマン追求のための裁判闘争のことである。一九八O年(昭和五五年)
に成立した改正税理士法は、あるべき税理士制度から言えば、かつて税理士業
界が一丸となって廃案としたあの一九六四年(昭和三九年)案よりも、全体と
して後退するものであった。
 この一九八○年案の成立に関連して当時の日本税理士会連合金執行部が巨額
の賄賂的政治献金すらをおこなった。熊本市に居住する税理士牛島昭三氏は、
自己の思想・信条に反する税理士法改正のために用いられる南九州税理士会(
氏は同税理士会の所属)の特別会費の納入を拒否した。この特別会費の納入を
拒否したために氏は、ほぼ二〇年間にわたって南九州税理士会の役員選挙の選
挙権・被選挙権を奪われるという驚くべき不利益処分を受けた。
 牛島税理士訴訟というのは、この不利益処分に対して氏が原告となり南九州
税理士会を被告として熊本地裁に提起した損害賠償等請求訴訟のことである。
その請求の主旨は、1.氏には同特別会費の納入義務がないこと、2.氏が受
けた損害を賠償すること、などであった。(途中省略)
私は第一審の熊本地裁における証言においてもこのことを含めて牛島昭三氏
に対する本件不利益処分等の違法性を証言したのであった.一般の企業政治献
金についてすらこのような議論が成り立つことに注意が向けられねばならない
であろう.税理士会は税理士業務をおこなおうとする者にとって強制加入の公
益法人である。それゆえ、本件不利益処分は同時に会員の思想・信条の自由(
憲法一九条)にも抵触する。税理士会の政治献金については、理論上この点か
らも前記の民法四三条違反、民法九〇条違反が成り立つ。思想・信条の自由違
反は厳密には一般の企業政治献金にも妥当するが、本件で問題になっている強
制加入団体である税理士会については、とりわけてその違法性が強調・指摘さ
れねばならない。税理士会の政治献金は現行税理士法に即して言えば税理士法
四九条六項、四九条の一二に規定する税理士会の目的を超えることとなる。
 一九九六年(平成八年)三月一九日に最高裁第三小法廷は、強制加入団体で
ある税理士会が政治団体である税理士政治連盟(税政達)へ資金を供与するこ
とは税理士会の目的を超えるものとして違法と判示した。牛島税理士への損害
賠償の件については原審福岡高裁へ差し戻された。一九九七年(平成九年)三
月一九日に福岡高裁で牛島税理士側の主張を全面的に肯認した「和解」が成立
した。
 本書は、牛島昭三氏がこの全面勝利を勝ちとるまでのたたかいの過程を関係
資料を織り込んでとりまとめたものである。
 第一審熊本地裁の簑田孝行裁判官は牛島税理士側の主張をほぼ全面的に肯認
する画期的な判決を示された。簑田判決の明晰性のゆえに、当時、南九州税理
士会執行部でも控訴を断念すべきであるという意見が少なからぬ理事から示さ
れた。また、日本税理士会連合会において意見を求められた有力弁護士も当時、
控訴を断念すべきであるという意見を表明したといわれる。最高裁は結論とし
て簑田判決を全面的に支持した。簑田孝行裁判官に厚い敬意を表さねばならな
い。
 第二審福岡高裁も、その審理過程からいって第一審以上にすばらしい牛島税
理士勝訴の判決を示すものと弁護団および関係者が確信していた。私は、たま
たま福岡高裁判決の直前の頃に、牛島税理士訴訟とは別の弁護士グループの研
究会から講師として福岡に招かれた。同研究会終了後、牛島税理士訴訟をも担
当しておられた若い浦田秀徳弁護士から、次のような自信あふれる言葉をいた
だいたものであった。「北野先生、ご安心下さい。牛島税理士が控訴審でも絶
対に勝ちます」。しかるに、福岡高裁は通常人には理解し得ない「理由」によ
って牛島税理士を逆転敗訴としたのである。
 最高裁第三小法廷は、歴史に残るすばらしい判断を示された。私は、園部逸
夫裁判長の判決言い渡しを同法廷で言葉に表現できない感銘をもってひと言、
ひと言拝聴したのであった。
 園部逸夫裁判長以下の各裁判官(可部恒雄、大野正男、千種芳夫、尾崎行信
の各氏)に対して、ひとりの法学徒として心から敬意を表させていただきたい
と思う。
 二〇年前の当時の税理士会には税務行政の「下請け組織」かと思われる前近
代的側面が存在した。とりわけ南九州税理士会にはそのような空気が強かった。
そうした環境のもとで牛島昭三氏は前記の不利益処分を受けたのであった。率
直に言って氏は事実上の「村八分」の状態に追いやられたといってもよい。氏
および牛島夫人をはじめとするご家族、氏の経営する牛島税理士事務所の従業
員らの置かれた状況は言葉に表現できないきびしいものであった。特別会費の
納入拒否というのは、氏にとっては税理士という職業専門家としての当然の主
張・行動にすぎない。


弔辞/新藤兼人/岩波新書/1998年2月発行

 シナリオライターで映画監督である新藤氏が杉村春子、勝新太郎、田村孟(シナリオ作家)、
松本清張、岡本太郎、甲斐庄楠音(かいのしょうただおと・日本画家)、 絲屋寿雄(映画プロ
デューサー、歴史学者)、横井庄一の各氏へ弔辞を語る形式で書かれている。
 田村、甲斐庄氏については全く知らなかったので新たに興味を持った。
 勝新太郎の部分では意外な素顔について書かれている。
 横井さんへは映画(伴淳三郎の事務所が制作予定だった)にするべく書いたシナリオを収録
 している。




野戦の指揮官中坊公平/NHK「住専」プロジェクト/NHK出版/1998年2月6版発行

 庶民、言い換えれば弱者のために働く弁護士のなかには多くの人々に感銘を与える生き方を
している人が多い。オウム真理教の信者から殺された坂本弁護士や、この中坊公平氏はそうし
た人である。
 また中坊氏は世論調査で「首相」になって欲しいと言われるうちの一人である。
確かに、中坊氏のような公務員や政治家が多かったならば今言われるような腐敗は起きていな
いし、庶民にとって暮らしやすい国になっていただろうと思わせる。
 放送に使われた部分がほとんど?なので理論的というよりも、具体的な場面でどう発言したか、
どう行動したかが重点的に取り上げられている。したがって読みやすい上に感動を強くする。
 多くの人に知られているように、中坊氏の原点は「森永ヒ素ミルク中毒事件である。
 一公務員として読んでも大いに参考になるが、理想的指導者論として読まれるべき本ではない
かと思う。
1998/4/4






きりひらこうあしたを 東京電力と19年2ヶ月/東電差別撤廃闘争支援共闘中央連絡会議
他編/非販売品?/1998年1月発行?


 大阪市立図書館で借りました。値段もはいっていないので市販はされていないと思われます。
 感動し、かつ教えられることが多い本です。
 自由や権利が何らの犠牲や闘争なしには守られないものだということはわかっているつもり
ですが、日常生活に溺れてしまうと忘れがちになります。
 思想信条による差別は全国税の組合員に対しても行われており、東電で差別された原告と
共通の体験をしています。
 また相手方(会社側、国税庁)の出方や事象に対する説明、言い逃れ、口実も大半が共通し
ています。
 この本に出てくる原告団の裁判における証明の方法、いろんなレベルでの運動、判決文の
内容で会社側を批判していることなどは私たちの組合活動にも非常に有益だと思われます。

 発刊にあたってを引用しておきます


発刊にあたって


1995年12月25日、19年2カ月におよんだ東京電力思想差別撤廃闘争は、全国のたたかう労働組合、民主団体、多くの国民のみなさんのご支援と五連続地裁勝訴判決によって、画期的内容で全面解決しました。
本争議は、大企業と働く者との基本的人権をめぐっての真正面からのたたかいでした。そしてまた、職場のなかに憲法14条(法の下の平等)、19条(思想、良心の自由)を生き生きと適用させるたたかいでした。
 原告団165名は、19年余にわたって「自由と民主主義ほど尊いものはない」を合言葉に「憲法が保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によってこれを保持しなければならない」(憲法12条)を文字どおり実践してきました。
 解決してはや1年、原告たちの職場は様変わりしました。職場労働者との間にあった反共労務政策の垣根は取り払われ、職場労働者はじめ関連労働者は、全面解決をわが事のように喜んでくれています。また、原告たちは、職場の仲間と仕事や職場・地域要求実現のため、新たな第一歩を踏み出しています。
  本争議の解決は、困難なたたかいでも「正しくたたかえば必ず勝利する」ことを証明しました。支援共闘中央連絡会議・統一弁護団・原告団は、長いたたかいの経過を総括し、教訓を引き出し、本争議の解決が、全国の労働者の思想差別をなくすたたかいや民主的労働運動の前進、さらに日本の民主主義擁護のたたかいに、いくらかでも寄与できればと総括集を発行することにしました。
  前半はおもに運動を、後半は裁判を中心にまとめました。ぜひ、ご一読ください。


公共事業をどうするか/五十嵐敬喜・小川明雄/岩波新書/1997/3月発行

著者の五十嵐氏は法政大学教授であり弁護士、小川氏は朝日新聞の編集委員
公共事業批判のハンドブックともいえる本。
内容は
 序章 公共事業に「ノー」の声 
 第1章 破綻する公共事業
 第2章 公共事業が止まらないわけ
 第3章 米国公共事業の転換
 第4章 公共事業を外堀から攻める
 第5章 公共事業の再生
 第6章 二十一世紀のデザイン
記述のすべてが目新しい訳ではないが知らなかったことも多い。
下の表は19ページにある各国の高速道路の密度比較を示すもの
であるが、これを見ると日本が可住面積でみるとすでに高密度に
なっていることがわかる。特定財源で道路の予算が確保されて
きたことが、こうした現象の一つの根拠となっている。

国土面積
A 千ku
可住面積
B 千ku
高速道路延長
C km
C/A
C/B
米国 9373 4581 73257 7.8 16.0
旧西ドイツ 249 159 8642 34.7 54.4
イギリス 244 156 3141 12.9 20.1
フランス 547 339 9000 16.5 26.5
日本 378 81 6545 17.3 80.8


公共事業に問題有りと思っている方にとっては必読の文献。

■1998/1/24

大蔵省改革−挫折の歴史−/石澤靖治/岩波ブックレット/1997年5月発行

 ブックレット形式で62ページしかない。字も大きく、書いていることも明瞭でわかりやすく、とっつき
やすいいといえる。大蔵省解体入門の書である。
 項目は
  六〇点の出来で要追試
  権力を解剖する
  政治は主役か脇役か
  将来への希望と落胆
  民主主義と報道

 著者はニューズウイーク日本版副編集長。
 ■1998/1/19 

ドキュメント税務署/大門路欣伴/エヌピー通信社「納税通信」編集部/1995年2月発行

 読みやすく、国税局や税務署の実際上の雰囲気がどんなものかを知りたい人にとっては有益。
 国税庁や大蔵省への批判的な記述はきわめて少ない。国税庁が違法な労務管理をしているこ
 とは職員一般にとっては衆知のことで、これが現在の国税組織の性格を表す重要な側面だと思う
 が触れていない。その一例としていわゆる天下り税理士への批判も甘い。
 職業集団としての税務署を書くことでは成功していると評価できるが、「ドキュメント」ととは言えない
 面もある。
 ■1998/1/19 

サーチエンジン徹底活用術/原田昌紀/オーム社/平成9年12月発行

年末に九州の実家に帰る新幹線の中で読みました。買ったのは新大阪駅の書店です。
著者はサーチエンジンODINの主催者です。当然実務に詳しいと同時に興味深く書かれ、結果的に読みやすいものとなっています。
また新しい技術についての説明もあり、インターネットに関する一般知識もちりばめれていて、この面からも多くの人にとって有益だと
思います。特にロボットの仕組みなどは興味を持ちました。

この本が手許にあれば、サーチエンジンに入っても殆どのケースで困らないと思われます。

189ページにODINのデータから利用者がどんな検索語を使っているかを拾っています。

 1位 ロリータ
 2位 アダルト
 3位 sex
 4位 adult
 5位 たまごっち
 6位 lolita
 7位 女子校生
 8位 アイドル
 9位 ヌード
 10位 flmask
 11位 ブルセラ
 12位 エヴァンゲリオン
 13位 エッチ
 14位 強姦
 15位 チャット
 16位 盗撮 
 17位 セックス
 18位 ゲーム
 19位 痴漢
 20位 パンチラ
 21位 巨乳
 22位 宝生舞
 23位 風俗
 24位 midi
 25位 アニメ
 26位 窓の杜
 27位 占い
 28位 game
 29位 競馬
 30位 pussy

このリストに関して著者は「あえてコメントは控えさせていただきます」と書いてます。
■98/01/10

インターネットを使いこなそう/中村正三郎編著/岩波ジュニア新書/97年1月発行

 高校生や中学生を対象にした本だけに読みやすい。インターネットがどんなものかを知りたい人
にとってはかっこうの入門書。
 しかし、類書で触れていないようなことも書かれている。
 たとえば、HTMLの<H1>タグの誤用について、”大見出しを指定するもので、それ自体はどう表示
せよと指定しているわけではありません。しかし、ほとんどのブラウザは大きな文字で表示します。(省略)
大きな文字にしたいがために、文書のどこにでも<H1>タグを使う誤用が広まりました。*207ページ
と書いている。
 私も<H1>は字の大きさを規定したものだと誤解していました。
■98/01/7