明日香亮のつぶやき日記

1998年4月
4月30日(木) 思い出世界へ時間飛行
休日、本屋に。ふと目についた一冊の本。『超』自分史ガイド」。例の「『超』整理法」の作者、野口悠紀雄教授の著書である。思わず手にとって立ち読み。「本書は、・・・『ノスタルジアの世界への時間旅行』へのいざないだ。始めてみると、寝るのを忘れるほど面白いことがわかるだろう。(はじめにより)」。ナルホド、これは思い当たる。「我が家の漫画今昔物語」の作成に結構嵌まっているのだから・・・。
自分史ブームだそうだ。世紀末日本の不透明で不安な先行き。自分自身の過去を振り返り、冷静に見詰め直すことで、不確定な未来への羅針盤を求めようとしているのかもしれない。この本は、そんな自分史作成の格好の素材を提供してくれる。
第1部は『キーワードで探る思い出』である。遊び、学校、家並みなどの各生活シーンごとに様々なキーワードが飛び込んでくる。「原っぱ」「缶蹴り」「ローセキ」「給食当番」「図工」「火鉢」「鏡台
」「蚊帳」等々・・・。それらのキーワードの連想から数々の思い出が蘇るというわけだ。
第2部は『世界と私の年表』である。1940年から1997年までの年別の見開きページである。上段には右頁に事件やニュースが、左頁にヒットした歌、映画、コマーシャル、ベストセラー等々の記述。下段は「私の記録」である。右頁に「月別書き込み欄」。左頁に家族の状況、友人、同僚、趣味、読書等々の記述欄。この記述欄を埋めていくだけで簡単な自分史ができるシカケだ。
著者は、個人の持っている情報を自分史のためのデータとして共有化しようという野心的な試みを提案している。『例えば「昭和30年代の初めには、○○駅の建物は、このような状態だった」というような情報を寄せて頂きホームページで公開するのである。』ということで著者のホームページ「野口悠紀雄 ON LINE」「時間旅行フォーラム」を設置したとのこと。これはなかなか意欲的で野心的な試み。税別1900円も高くない。
これでしばらく「思い出世界へ時間旅行」(サブタイトル)してみることにしよう。
4月27日(月) 出張!隠岐の島
昨日、今日と隠岐の島出張。こう書くと誰しも「え〜ナ〜ッ。出張で隠岐に行けるん?」と思う筈。小生もはじめはそーだった。ところが2、3度行ってみて隠岐の島の風景を眺めてしまえば、結局観光をするでもない只の出張。
担当役員共々日曜日に伊丹空港を13:10発のJACで約1時間のフライト。3時前から5時半頃までユーザー企業の社長、店長とのミーティング。店舗の改装計画を巡る意見調整と債権保全措置の協議。夕食懇親の後、軽くカラオケで午後10時過ぎにはホテルに。
翌日は9時半に店舗集合で10時からの「地鎮祭」に。約30分のセレモニー。神職主催の「かしこみかしこみまお〜す」の祝詞奏上の後、メインエベントの地鎮行事。祭壇前の盛り土を舞台に設計者、施主、建設者がエイッエイッエイッの掛け声とともに各々順次「鎌入れ」「鍬入れ」「鋤入れ」の儀を行う。初めて目にする分には結構興味津々。玉串奉奠の後祭壇のお神酒で参列者一同乾杯。お猪口にはお神酒が結構並々と注いである。隣の酒好きの店長は一気に飲み干してしまった。で神職退出でお開き。
場所をかえて建設業者主催の早めの昼食。11時50分隠岐空港発のJACを予約の身とあっては、昼食もそこそこにタクシーであたふたと空港へ。出雲空港でトランジット?(単なる乗り継ぎ)して伊丹空港着は13時45分。会議が待っている上司とともに職場に直行。
上司の感想「なんという出張やッ」。同感!絶好の行楽日和の中の慌ただしい出張。どこが「え〜ナ〜ッ」や!
4月24日(金) さらば「戦友」
今日も地方巡業島根場所。東西に長い島根県は、松江を中心とした「出雲」と浜田を中心とした「石見」に大きく分かれる。その西の中心・浜田市内に本拠を置く某社での会議を終えて定宿でもある「ワシントンホテル」へ。
午後6時に1階ロビーで知人と待合せ。山陰地区の有力地銀の浜田支店長である。先ごろ電話があり旧交を暖めることになった。
1年半程前、浜田に隣接する江津市の取引先で経営危機が発生。商品供給元の担当責任者としてメインバンクの支店を訪問した。支店長であった彼との最初の出合いである。銀行支店長との仕事上のつきあいなど経験のない身には結構緊張を強いられた一瞬ではあった。その後、商品と資金の供給を巡り、お互いのリスクを最小限に留めるべくつばぜり合いが交わされた。経営再建という共通目標に向け何度か懇親の機会もあった。彼のバンカーらしからぬ豪放な性格と多少強引とも思える腕力が、ワンマン経営者の退陣という再建に向けての最大の障害を乗越えさせた。当該企業の今期決算は単年度黒字化に漕ぎ着けている。
1年半ぶりの誘いは、そうした結果を受けてのお互いの慰労という趣旨だったのかもしれない。「今だから言える」話も双方から飛び出す楽しいひとときだった。
ビジネスという場での攻防を通した「戦友
を得ることは希である。江津支店から母店と呼ばれる西の拠点・浜田支店への転勤は異例の栄転だったらしい。
「戦友」の栄転を心から祝福し、次の再開を楽しみに浜田を後にした。
4月22日(水) 我が阿紗女
いよいよ日記ならぬ週記の様相。シャーないか。「日記につけておこう」などという出来事が、そうそうあるわけじゃない。と思いながら今日も1日の始まり。バス待ち、車中の合間にまず日経の連載物を。「失楽園」以来、連載小説は一種の中毒。現在は瀬戸内寂聴描くところの『いよよ華やぐ』。「高齢化」と「元気な女性」。世紀末日本を彩るこの二つのキーワードを駆使した寂聴さんのしたたかな計算。91才の主人公「阿紗女」は今日も元気。
例によってバス停5ツ手前からの通勤ジョギングを終えてJRの最寄り駅付近へ。来た来た「我が阿紗女」。駅の信号付近でいつもすれ違うチョー元気印のオバアチャン。年の頃は80前後か。ヘアースタイルはオワン頭に饅頭を乗っけた典型的オバアチャンルック。まんまるの濃い緑のサングラス。かすり風のあれは何というんだろ?小生の貧困なファッション知識では「うわっぱり」としか表現できないものを着込んでその上にリュック。こう描くと訳の分からないイメージになるが全体としてみればファッショナブルでカワユイオバアチャン。1メートル40センチ位と小柄ながら、背筋をシャンと伸ばして脇目も振らず闊歩。高齢化社会のアイドルみたいな人。あんな年寄りになれたら。そんな気にさせる「我が阿紗女」である。
彼女の姿を見掛けなくなる日が先か、小生の通勤の定年卒業が先か。後者の可能性は極めて高い。
4月15日(水) 因果は巡る。面接を受ける日。
先日は学生相手の採用面接の面接官だった。本日は、年俸者対象の審査面接を受ける日である。一転して被害者、いや被面接者の側に回ることになる。因果は巡る。楽あれば苦あり。(逆だったかな?)
しかし考えてみればこの面接官も大変だ。100人余りの年俸者の面接を4月初めから中旬にかけて業務の間を縫ってこなさねばならない。しかも相手は純真無垢な(?)学生とは大違いの、むしろ定年をカウントダウンするほどの年齢に達した海千山千のツワモノどもである。(もっとも面接官側も負けず劣らずであることはいうまでもない。むしろ面接する側にいるという事実こそ、それ以上であることのアカシともいえまいか。)
なにはともあれ面接である。本社3階の社長室隣の会議室へ。型通りノックし「失礼しま〜す」。(まるで学生に戻ったような礼儀正しさ)専務以下、常務、取締役、人事部長、人事担当の司会者の計6名。多勢に無勢(?)。勝てるわけがない(?)。ここは一番シオシオと有能なサラリーマンを演じ切る手か。先に面接を済ませた知人の作戦。『15分の予定時間をしゃべりまくって質問を最小限にとどめた。』とのこと。しかし、面接官経験の教えるところは逆である。しばしばしゃべり過ぎはポイントを端的に語れない自信のなさの裏返しに見える。
目論見どおり面接時間の半分ほどで『下期課題の達成状況』を説明。専務と総務担当役員の質問。若干の応酬。(「議論してどうするんだ!」との内心の声もあったが、そこはナリユキ。)
かくして小生の夏のボーナスの振幅根拠のひとつがつくられた。
4月11日(土) 採用面接傑作集パート2
採用面接2日目。引き続き傑作集。
【傑作その3】 「ゼミでの学習内容と、それを通してあなたが学んだことを紹介して下さい。」あまり勉強している風にも見えないB君への質問。「(例によって)ワタクシは、金融・証券ゼミを専攻いたしました。そして今日の日本経済における証券業界の状況を勉強いたしました。」(ナルホド、ナルホド)「そのことを通して私が学んだことは・・・・」(ウンッ)「証券業界の就職活動はやめておこうと言うことです。」(ダハ〜ッ。勉強せんと分からんことかッ!)
【シリアスなテーマ】 最後に予期せぬ事態でのシリアスな体験。5人1組の最後の学生は女子大生。ふと見るとスモークグラスの下の両目は明らかに開いていない。一瞬動悸が早くなる。事前提出の面接表はと見ると・・・問題はない。チャント書けている。質問役は相方の番。面接が始まった。彼女へも型通りの質問。(相方も心なしか緊張しているかにみえる。動揺の色は隠せない。)人事からは事前の連絡は何もない。目が不自由なのかどうか確認すべきでは?その点をコメントした上での判断を提出すべきでは。逡巡の間も面接はドンドン進む。意を決して口を挟んだ。「外見上は目が不自由なように見えますがその点はいかがですか?」「ハイ。不自由です。履歴書にはその旨書いておきました。」「面接表はキチンと書かれていますネ」「その位は大丈夫なんです。」物怖じしないはきはきした受け答えであった。ハンディキャップを何とか乗越えようという懸命さが伝わる。聞いて良かった。面接が終わり、ドアに一番近い彼女は、男子4人を先に通し最後の挨拶をすませ姿を消した。事前連絡のなかったことへの内心の不満を殺し顛末は事務局に報 告しておいた。
4月10日(金) 採用面接傑作集パート1
今日は1日、大卒採用試験の面接官に変身。数年前から採用面接の時期になると駆り出されている。面接官が質問役と記入役の2人一組で4〜5人の学生相手に集団面接する。10:30、13:30、16:30のスタート毎に各々3組のグループを面接する。面接官1組で合計42〜3人をこなすことになる。5組の面接官だったから今日だけでざっと210人位の一次面接だった。まだまだ早い時機の面接であり受けるほうも結構緊張している。そこで実際にあった傑作集の紹介。
【傑作その1】「当社の志望動機を聞かせて下さい。」「ワタクシは、(この場面ではボクとかワタシとは決して言わないものらしい。日常用語とは到底思えないワタクシなのである。)昔から人と接するのが好きでして接客業に絞って応募をしております。」 でもって事前提出の面接表の「他社での就職活動の状況欄」に目をやると『大阪府警』の文字が飛び込む。(オイオイ、どこが接客業に絞ってなんだ?まてよ、考えてみれば警察官も接客業か。接客相手が消費者か容疑者かの違いだけか。マッいいか!)
【傑作その2】先ほどから緊張の故か、しどろもどろの受け答えで明らかに×マークのA君への最後の質問。「それでは貴方のセールスポイントをどうぞ。」「実はワタクシは、大学受験で一度失敗しました。それ以来二度と失敗はしないことを信条に頑張ってきました。」面接官は、思わず心の中で叫んでしまった。
『君は既に2度目の失敗をおかしている!』
4月9日(木) 紙芝居「自分史」
あっという間の1週間。日記ならぬ週記になりそう。ヤッベー。
本日の休日はホームページいれ込みデー。ここんトコ、「我が家の漫画今昔物語」にハマっている。『紙芝居・自分史』みたいなものをアップしてしまったのだから果てがない。完結編は自分の葬式のシュミレーション風景にでもなるのか。この想像は恐ろしい。とりあえずは過去を振り返る作業である。漫画部分は、ネタもあり機械的作業でドンドン進む。問題はその年々のトピックスのコメント。当時の描写の材料になりそうなファイルをひも解く。結構まめに資料を残してる。考えてみればこの作業、自分自身を客観視する格好のひとときでもある。しばらくいれ込みは続きそう。
母は近くの養護施設のデーサービスに。彼女にとって楽しみな木曜ごとの外出タイム。
昼食は妻と外食。「近くの『地ビールビアレストラン三田屋』でおひとり1000円のランチバイキングを始めている」とは妻の情報。「ステーキ、ハムオードブル、ポテト、サラダ、コロッケ、かやくご飯、ケーキ、コーヒーのバイキング」。思わず「それにしよう!」と口走ったところで払いは夫の小遣いに決まり。集客力抜群の様子。12時半頃行くと満席に加えて3組の待機組みも。待たされること約15分。たどり着いた昼食は確かにコストパフォーマンスの高いものだった。
4月2日(木) 忙しい休日
忙しい休日だった。7時起床。休日とは言え、トシヨリの目覚めは早い。8時30分、母の通院の予約に病院へ。
9時、かねての目論見、土筆(つくし)取りに。年に一度の恒例行事である。昨日からの雨が一気に旬を迎えさせたようだ。太った茎に、程よい柔らかさの胞子をのせた土筆たちが稲田の土手沿いに群がって出迎える。土筆が30cm近くまで生育する植物であることを初めて知ったのもこの土手だった。小1時間ほどでスーパーの小さ目のビニール袋に一杯の収穫。200g前後か。
10時、母の付き添いで病院へ。パーキンソン病が歩行困難なまでに進行している。備付けの車椅子が有り難い。反面大病院の分業システムが、顧客(患者)に犠牲を強いている。診察、処方箋受取り、会計といった業務ごとの待ち時間の多さにうんざりさせられる。それでも事前の診察カードによる予約で今回は比較的早い。11時過ぎには完了。1kmほど離れた薬局で薬の受取り。病院での処方箋がすでにFAXで薬局に。10種類近くの薬の調合・梱包が5分程で終了。
この後、テレビもぼやけてきたという母のメガネのレンズ交換に。車から店内まで最短歩行距離の店が条件。隣接市・三田の「メガネのミ〜キ」へ。30前半の軽目の男子店員の扱いなれた接客。老人性白内障が原因では?と言いつつ結局交換。老人相手によどみなくおしゃべりできる「軽さ」の勝利!
「ほか弁」の旬の味(筍弁当)で昼食。その後イヨイヨ本日のメーンエベント!「土筆の油炒め」に着手。まずは工程中もっともいやな作業である袴取り。指先が胞子の粉や灰汁で黒ずんでくる。根気との闘い。作業時間約75分。水洗いの後熱湯でゆがく。ゆがきあがった土筆をオリーブオイルを垂らした熱したフライパンに投入。顆粒状の「だしの素」と醤油で味付けして一丁あがり。アツアツの土筆を肴に缶ビールをグットひといき。キク〜ッ。こたえられない。たまらない。この一瞬のためだけに朝からの苦難の道があった。ナントオーバー。ナントつましい幸せ。
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