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2007.02.01
小学校の先生からのメール
■昨年8月、私の個人HPの中に「にしのみや山口風土記」をアップした。老後のライフワークにしようと思って立ち上げた地域の紹介サイトである。5ヶ月を経過しアクセスカウントは2200を数え、意外と多くの訪問者があることに内心で驚いたり喜んだりしていた。
■1週間ほど前のことである。私の住む街にある小学校の先生からメールを頂いた。「授業の一環で地域の歴史や自然を教えたいと思ったが、適切な教材がなく困っていた所、『にしのみや山口風土記』を目にした。知りたかった情報が満載で、早速担当の3年生の児童にもプロジェクターで見せたところ好評だった。ついては作者に児童たちに直接話をしてもらえないか」という内容だった。
■私の住む地域は自然の環境に恵まれた歴史のある街である。休日の早朝には川沿いの豊かな自然を満喫しながらウォーキングを楽しんでいる。多くの人にこの地域の素晴らしさを知ってもらい、この自然の恵みをいつまでも護ってもらいたいと思った。そのことに少しでも貢献できればというのが、この地域紹介サイトを立ち上げた主要な動機である。
■頂いたメールは、こうした私の想いにかなったありがたい申し出だった。その後の打合わせで2月1日に児童たちに話をすることが決まった。小学3年生を対象とした話である。私には想像を超える世代である。私の想いが彼らに伝わるような話ができるかどうか甚だ心もとない。思いっきりスベル懸念も大きい。ともあれライフワークの具体的な実践の場でもある。精一杯やってみよう。
教壇から語る「山口の自然と歴史」
■2月1日、北六甲台小学校の120名余りの小学3年生の子供たちを前にして教壇に立った。私のこの「にしのみや山口風土記」を教材とした地域学習の講師である。
 大学時代に両親の願いもあって中学校の教職課程を履修し、教育実習で教壇に立った経験がある。はからずも還暦を過ぎての40年ぶりの体験となった。この晴れ舞台(?)を喜んでくれるはずの父母はもういない。
■11時からのスタートだった。3年生担任の先生に案内されて視聴覚教室に入る。机椅子が取り払われた広い視聴覚教室に足を踏み入れた。カーペット敷きの床に腰を降ろして待ち受けていた大勢の子供たちの視線が一斉に集まる。正面の白板にはノートパソコンにつながれたプロジェクターを通して、「にしのみや山口風土記」のトップページが写し出されている。
■先生の講師紹介の後、いよいよ本番である。1,800世帯、5,500名が暮らす新興住宅街のど真ん中に建つ小学校である。有馬温泉に通じる街道沿いの古い歴史を刻む集落「山口」の一角を切り開いてこの住宅街が開発された。生徒たちの大多数は、両親とともによそからこの街に引っ越してきた移住民である。子供たちに伝えられるこの地域の歴史や自然の知識を両親たちは持ち合わせていない。「他の地域からの通勤者である私たちも同様です」とは終了後の先生の述懐である。こうした事情が私を教壇に立たせることになった。同じ移住民ながらこの地域に20数年在住し、その自然と歴史に魅せられHPで地域紹介サイトをアップしたことが要因だった。
■与えられた60分の時間の30〜40分で説明し、残りで質問を受けるという予定だ。なんといっても大勢の児童相手の初めてのスピーチである。最初は静かに聴いていても、少し退屈してくるとそわそわしだしておしゃべりを始める子供もいる。声を大きくして注意を喚起するという手法が役立たないことはすぐに思い知らされた。質問こそが効果的なのだ。プロジェクターが写し出す画像をマウスポインターで示して尋ねる。「この大きな樹はどこにあるか知ってる人、手を上げて!」。途端に子供たちの敏感で元気いっぱいの反応が返ってくる。「知ら〜んッ」「知ってる、知ってる」。コツを覚えて少しばかり気持ちにゆとりが出てくる。子供たちにとっても見たことのある画像中心の授業であることも幸いした。40分ばかりを経過してどうにか予定の内容を話し終えた。
■先生の司会で質疑応答の時間になった。「聞きたいことがある人手を挙げて!」という先生の声にあちこちから一斉に手が挙がる。このあたりは大人たちの研修会やセミナーとはかなり雰囲気が違う。周囲を気にしたり物怖じしたりする気配は全くない。「丸山山頂の神社の前に石の狐が向かい合って建っているのは何故ですか」「パソコンを始めたきっかけは何ですか」「有馬鉄道は今どうなっているんですか」「西宮に古墳はいくつありますか」・・・・。質問はとどまるところを知らない。司会者があと3人と区切って12時過ぎにようやく終了。「それじゃ、3年生代表は前へ」と先生の合図に男女二人の生徒が進み出た。「私たちが作りました。今日はありがとうございました」と折り紙で作ったレイが差し出された。気恥ずかしさに照れながら、自分でレイを首にかけてあらためてみんなにお礼の言葉を口にした。
■自分の興味や努力が確かな手ごたえで報われた楽しいひと時だった。老後のライフワークと考えていた「にしのみや山口風土記」を通じた地域への関わりの初めての具体的な実践の機会だった。「風土記」にアクセスし、この機会を与えてもらった担任の先生に心から感謝したい。  快い満足感に浸りながら校長先生に見送られ校門を後にした。 
子供たちの感想文
■2月6日の夜、北六甲台小学校の教頭先生が来訪された。校長先生の礼状と生徒たちの感想文をわざわざ届けて頂いたのだ。
■116名もの生徒たちの感想文が私をなごませ、「にしのみや山口風土記」の充実に駆り立てる。以下、感想文の要旨とそれぞれについて私の感じたことを記しておこう。
・昔は、天上公園のあるところに公智神社があったなんて知りませんでした(私自身も天上公園の石碑を見て驚き、このホームページを作るきっかけになりました)
・北六甲台小学校のあるところが功地山という山だったと知って驚きました(それだけに北六甲台に残された自然を大切にしたいですね)
・山口町が昔から5つの村でできていたことをはじめて知りました(5つの村のなりたちも調べたいと思います)
・山口にも青石古墳という古墳があることを知ってびっくりしました(ぜひお父さんたちと行ってみて下さい)
・私の家の裏に丸山があります。丸山のお城のことを調べます(勉強するきっかけになったんなら嬉しいです)
・鳥の写真も見せてもらって嬉しかったです(山口のもっとたくさんの生き物を名前もつけて紹介したいと思います)
・山口や北六甲台をすごく大切にしていると思いました(私の話がそのように受け止めてもらえて嬉しいです)
・山口の歴史や自然のことがよく分りました。昔のことやふるさとのことをもっと勉強しようと思います(それこそ私がみんなにお願いしたいことです)
・昔あった有馬鉄道はどこを走っていたのですか(興味のあるテーマで必ずこのHPで掲載したいと思っています)
・大きくなったら自分の子どもにも聞かせてやりたいです(そうして順番に伝えられたら素晴らしいですね)
・私もパソコンでホームページを作ってみたいです(ぜひ頑張って作って下さい。できたら見せてください)