トップ 盆踊り'06  '08 ゑびす寄席 小学校の教壇

2007.12.01
■自治会の回覧で「ゑびす寄席」の案内があった。毎年この時期に私の住む住宅街で開催される恒例行事の出前寄席である。
 「ゑびす寄席」当日、休日の昼下がりのひと時を日本の伝統芸で過すことにした。14時開演の15分ばかり前に会場の自治会館に着いた。玄関左右に立てられた「ゑびす寄席」と大書された赤提灯が雰囲気をかもしている。受付には背広姿の係員が当日券(千円)を販売している。主催者の(財)西宮市文化振興財団の職員のようだ。ホール一杯に60席ほどのパイプ椅子が並べられ、すでに7割方の観客が埋めている。年配男性が主流だが30代から40代の主婦グループやおばあちゃんの姿も目につく。開演間近かになると満席状態になり、急遽補助椅子が運び込まれた。主催者の予想を上回る観客のようだ。女性落語家がヒロインのNHK連続ドラマ「ちりとてちん」効果なのだろうか。正面には松をあしらった背景幕の前に赤い毛氈に覆われた俄づくりの高座がしつらえられ、膝隠しを立てた見台が置かれている。すぐ右手には紫白の幕で囲まれたスペースが楽屋に化けている。
■受付で貰ったパンフレットには出演者である6名の若手噺家と「噺」が書かれている。【露の団姫:「鉄砲勇助」、笑福亭瓶生:「みかん屋」、笑福亭達瓶:「延陽伯(えんようはく)」、露の団四郎:「粗忽長屋」、笑福亭純瓶「黄金の大黒」、笑福亭三喬「ぜんざい公社」】
 開演少し前に賑やかな鉦、太鼓、三味線のお囃子が鳴り響いた。トップバッターの着物姿の若い女性が登場する。21歳の現役噺家最年少の露の団姫(きりのまるこ)さんの若さ溢れる高座が展開する。女優になぞって尋ねた自分の顔を観客がその丸顔から「泉ピン子」と叫んだという自虐ネタを披露した。その途端、私の前の席のおばあちゃんが思わず「ほんとやッ!」と叫んだ。ネタ以上の爆笑が会場に渦巻いた。そうかと思うと噺のオチを語る寸前に会場からのネタバラシが相次いだりする。わが街の皆の衆もなかなかやるもんだ。
■そんな調子で次々に6名の噺家の高座がトントンと進んだ。なんといっても圧巻は、トリをつとめた笑福亭三喬さんの「ぜんざい公社」だった。ぜんざい屋を公社で経営すればこうなるというお役所仕事の本質を痛烈に風刺した噺である。あちこち盥回しにされた挙句ようやくぜんざいにありついたがお椀の中には肝心の汁がない。「オーイ!ぜんざいに汁が入ってないデ!」。ここでオチがくる。「公社だけに・・・甘い汁はこちらで頂いております」。
 2時間余りの笑を満喫したひと時だった。