汚泥処理 Sludge Treatment
作成者  BON
更新日  2007/06/24

 沈殿池の沈殿汚泥,ろ過池の洗浄水など,不純物の濃度の高い水をさらに処理し,「固形物を取り出す」ことを目的とするプロセスです。基本的には,「いかに水分を取り除いて体積を減らすか」,が勝負であります。

脱水機
 機械による脱水。無薬注の長時間加圧脱水機が主流(浄水の場合)です。
天日乾燥床
 汚泥処理の最終段階。広い敷地に天日にさらして乾かす方法。
汚泥処分
 汚泥処理され,取り扱いしやすくなった汚泥は,なんとかして処分しなければなりません...

【参考】
 汚泥処分を分離。


脱水機 Dehydrator

 脱水機とは,排水槽や濃縮槽で含水率を高められた汚泥から水分を絞り出すことで,さらに含水率を下げるための装置で,比較的大規模な浄水場で使用します。天日乾燥床と比べると,運営にエネルギーが必要で設備費も高くなる反面,能力に対してコンパクト化でき,屋内設置などによる悪臭の抑制や自動運転化が可能,などのメリットがあります。

 脱水ケーキの含水率は60%程度となります。場合によっては,これを乾燥ケーキ(含水率50%程度)まで乾燥して減容(含水率60%を50%にすると量は80%になる...はず)することもあります。加温することによって,浄水汚泥に含まれる植物の種や,含まれるかもしれない細菌類などを殺せますので,園芸用として使用しやすくなります。

東京都水道局金町浄水場 汚泥脱水設備

 東京都水道局の金町浄水場では,ガスタービンによる自家発電/コジェネシステムをPFI方式で導入し,ここで得た蒸気をケーキの乾燥に有効利用していることで有名です。写真上は横型加圧脱水機,下は蒸気式の汚泥乾燥機で,いずれも金町浄水場の汚泥処理施設です。

【備考】


天日乾燥床 Sun Drying Bed

1)天日乾燥床の概要

 天日乾燥床は,汚泥の脱水プロセスの最終段階に位置し,排泥池または濃縮槽によりスラッジを濃縮したのち,上澄水の排除とろ過により汚泥の含水率を低下させた後,天日による蒸発を手段として乾燥を行わせるための施設です。

 天日乾燥床による汚泥乾燥が機械脱水方式よりも有利となるためには,

などの条件をクリアする必要があります。ただし,用地の確保が可能であれば,大規模な施設であってもコスト的に有利なことがありますし,汚泥処分に関する規制も機械脱水よりも緩い(汚泥処分参照)ので,機械脱水の更新時に天日感想床に切りかえるケースもあるそうです。

 維持管理の容易さ,設備の運用に関する経済性などの点において他の方式より優れます。ただ,汚泥のかき取りには人手(高度な技能は必要としません)が必要となりますので,排泥の頻度が高いような水源には向きません。

 天日乾燥床は,主として上水道,工業用水道事業の汚泥乾燥に使用されますが,小規模な場合は下水汚泥に使用されることもあります。ただし,上水汚泥の組成が無機質中心であるのと比べると,下水汚泥は有機物を多く含むため,悪臭や蝿などの発生による2次公害の恐れがあり,消化汚泥を対象とする,透水速度を向上するなどの対策が必要になります。

 天日乾燥床に類似する施設として,濃縮しない沈殿スラッジなどを直接受入れる,ラグーンと呼ばれるものがあります。ラグーンは構造が簡単で,濃縮槽を省略できるなどの長所がある反面,天日乾燥床以上に用地を必要とするなどの欠点があります。このため,発展途上国を中心に用いられる技術です。

 天日乾燥床の設計に当って留意すべき点は以下のとおりです。

  1. 処分するスラッジの含水率は60%程度とすること。
  2. 一日の処理能力が100m3をこえると産業廃棄物処理施設となり,技術上の基準が適用されることに留意。
  3. 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則」の制限を受けるため,浸透水が地下水を汚染しないよう,コンクリート製とすることが一般的であること。
  4. 乾燥スラッジの搬出の都合から,形状は長方形が望ましいこと。ただし,敷地の有効利用を図るためであれば,形状は問いません。また,ブルドーザなどが入れるスロープを設けることも工夫のひとつです。
  5. 天日乾燥床周りは植栽で隠すこと。草が生えたりして,あまり見た目が良くないことが多いので...

 このほか,天日乾燥床の機能を補助するための付帯施設として,上澄水分離設備(角落しなど),下部集水装置(排水のためのろ過層)を設置することになります。最近では,脱水促進装置(吸引脱水補助装置),乾燥促進装置(空気吹込み装置)などが実用化されているため,必要に応じてこれらの設備の導入を検討することができますので,調べてみてください。

【参考】
 水道施設設計指針・解説(1990) p330〜
 工業用水道施設設計指針・解説(1989) p281〜
 下水道施設設計指針・解説 p503〜
 浄水の技術(1985) p187〜


2)天日による汚泥の乾燥

 汚泥の乾燥の推移を写真で見てみましょう。

某所 汚泥乾燥状況

1 まず汚泥の打ち込み作業中。通常濃縮槽にて濃度を高められた汚泥は天日乾燥床に打ち込まれます。(cast)充分に濃縮されていれば,すぐに汚泥は沈降分離を始めます。

 ちょっと固まったかな。この汚泥はちと含水率が高すぎるような気がします。これが除除に含水率を下げていって,表面がひび割れてきます。

 ひびひびの表面はなんか生理的な嫌悪感を引き起こしてくれますが,この状態になったら汚泥を搬出します。なお,もう一段階乾燥工程を経る場合もあります。

【参考】


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